絶滅動物物語

絶滅動物物語

人間によって絶滅させられた、ステラーカイギュウ、モーリシャス・ドードー、ニホンオオカミなど8種の動物や鳥たち。彼らが絶滅した経緯と人間の所業を描いた、実話短編集。監修は『ざんねんないきもの事典』の監修者である今泉忠明。小学館「ビッグコミック」2021年第16号から第23号まで連載。

正式名称
絶滅動物物語
ふりがな
ぜつめつどうぶつものがたり
作者
ジャンル
動物・ペット
 
その他歴史・時代
レーベル
ビッグ コミックス(小学館)
巻数
既刊2巻
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あらすじ

第1話「ステラーカイギュウ」

1741年11月。医師・博物学者のゲオルグ・ヴィルヘルム・ステラーを乗せた聖ピョートル号は、アラスカ探検の帰途、アリューシャン列島で遭難。とある無人島に座礁した。クジラ並に大きいステラーカイギュウの存在を認めたステラーたちは、彼らを捕獲。カイギュウは、飢えた乗組員の体力と健康増進の源となった。1742年8月13日、無人島脱出に成功したステラーたちは、大型のカイギュウのことを報告。この報告をきっかけに、カイギュウはラッコ漁に向かった漁師たちの食料源として駆られ続け、1768年に絶滅する。

第2話「モーリシャス・ドードー」

1866年の春。少女・アリスは、チャールズ・ドドソン=ルイス・キャロルに本を読んでもらっていた。そこに登場するドードーに興味を持ったアリスは、その鳥がかつて実在していたことを聞かされる。キャロルに連れられ、ドードーの剥製があるというアシュモレアン博物館に向かうアリス。彼女はそこで、モーリシャス・ドードーの幻に会い、彼らが絶滅した経緯を知る。

第3話「アメリカバイソン」

アメリカバイソンは、20世紀の初めには絶滅の危機に瀕していた。その原因はアメリカによる西部開拓にあった。1867年頃。ネイティブ・アメリカンは、その生活のほとんどをバイソンに依存していた。それを知った陸軍省南西方面司令官フィリップ・シェリダンは、バイソンの絶滅を計画。大規模なバイソン狩りを奨励し、間接的にネイティブ・アメリカンの根絶を狙う。1890年、アメリカは「インディアン戦争」に勝利。6000万頭いたバイソンは、1894年には家畜化したものも含めて1000頭未満になり、野生個体にいたってはわずか20頭になっていた。1905年、ニューヨーク動物学協会会長ウィリアム・ホーナディは、第26代アメリカ大統領セオドア・ルーズベルトに手紙を送る。動物園で繁殖しているアメリカバイソンを、野生に戻すための、新たな保護区を作ってほしいというものだった。

第4話「オオウミガラス」

1847年。ベルギー王立自然史博物館館長ベルナール・デュ・ビュス・ド・ジジニーのもとに、オオウミガラスの剥製が届けられる。剥製を届けたディーラーによれば、これが最後の個体だという。この頃、オオウミガラスの数が少なくなった途端、ヨーロッパ中の博物館が展示用の剥製を欲しがっていた。この世のすべての鳥のコレクションを目指す館長は、心のなかで「ぎりぎり間に合った」とつぶやくのであった。

第5話「ピレネーアイベックス」

2003年、スペイン。アラゴン州土壌栄養学研究技術センター研究員ホセ・フォルクは、クローンによって、絶滅したピレネーアイベックスを復活させようとする。絶滅直前に採取し、冷凍保存されていた皮膚を使って「クローン胚」を作成。208個のクローン胚を57頭の山羊に移植するが、妊娠に至ったのはわずか7頭だった。しかもそのうち6頭は流産。残すはただ1頭のみとなった。

第6話「リョコウバト」

19世紀初頭。リョコウバトは世界で最も数の多い鳥だった。その数はおよそ50億羽。当時の世界人口を遙かにしのぐ数であり、アメリカにいる鳥類の40パーセントを占めると推定されていた。しかし、そのリョコウバトも、西部開拓時代の乱獲によって激減。1914年には、アメリカ・シンシナティ動物園にいる「マーサ」が最後の1羽となっていた。

第7話「キタシロサイ」

1990年代。反政府組織・スーダン人民解放軍(SPLA)は、武器弾薬購入資金の一部を、象牙やサイの角の密売によってまかなっていた。解放軍のキールとコアンは、キタシロサイの角を求めて、コンゴ民主共和国(旧ザイール)・ガランバ国立公園にやって来る。キタシロサイの縄張りへの侵入に成功する二人だったが、公園では、密猟者を狩るパークレンジャーたちが厳重なパトロールを行っていた。

第8話「ニホンオオカミ」

ニホンオオカミは、かつて田畑を荒らす鹿や猪を退治する「農耕の守護神」として崇められていた。しかし、1736年以降、その神格は喪失してしまう。長崎で発生した狂犬病が、瞬く間にニホンオオカミの中で拡大。「危険な猛獣」と化したニホンオオカミは、害獣として狩られるようになっていく。

登場人物・キャラクター

ゲオルグ・ヴィルヘルム・ステラー

第1話「ステラーカイギュウ」の主人公。1709年生まれの男性。ドイツ出身で、ロシア帝国の医師、博物学者。1741年11月、聖ピョートル号でアラスカ探検に出かけ、その帰途、アリューシャン列島で嵐に遭って遭難。カムチャッカ半島の東の沖200キロメートルに浮かぶ無人島に座礁した。隊長をはじめ、大部分の乗組員は壊血病で死亡。生き残った乗組員たちと、なんとか越冬し、春には島を脱出するための小型船を作り始める。その間、医師として乗組員の健康を管理しながら、博物学者として島の野生動物を観察。クジラ並に大きいステラーカイギュウの存在を認める。腹を減らした乗組員たちが、カイギュウの捕獲を試みた際、傷ついた仲間を助けるために、カイギュウが群れで寄ってくることを発見する。カイギュウを食料として生き延び、1742年8月13日に無人島を脱出。2週間後、カムチャッカ半島の母港に到着し、ラッコ、トド、オットセイ、クロテンなどとともに、大型のカイギュウのことも報告した。1746年11月4日、自らの業績の公式な報告書を作成するため、ペテルブルクに向かう途中、熱病で他界。享年37。同名の実在人物をモデルにしている。

アリス

第2話「モーリシャス・ドードー」の主人公。 おかっぱ頭が特徴のイギリス人少女。チャールズ・ドドソン=ルイス・キャロルの著作『不思議の国のアリス』に登場する「ドードー」に興味を持つ。キャロルから、ドードーが実在した動物だと知らされ、アシュモレアン博物館でその剥製を見学。そこに現れたドードーから、自分たちが絶滅した経緯を聞く。

ウィリアム・ホーナディ

第3話「アメリカバイソン」の主人公。ニューヨーク動物学協会会長。禿頭、口ひげ・あごひげが特徴の中年男性。自らが管理するブロンクス動物園で、絶滅の危機にあったアメリカバイソンの繁殖を行う。1905年、第26代アメリカ大統領セオドア・ルーズベルトに書簡を送り、動物園のアメリカバイソンを、野生に戻すための、新たな保護区を作ってほしいと嘆願。大統領の協力を取り付けることに成功する。同名の実在人物がモデル。

ベルナール・デュ・ビュス・ド・ジジニー

第4話「オオウミガラス」の主人公。ベルギー王立自然史博物館館長。ベルギー出身で、丸眼鏡と立派な口ひげが特徴の中年男性。出入りディーラーから、エルディ島最後のオオウミガラスの剥製を仕入れる。「博物学の基本は、剥製の収集と分類」であるとし、貴重な剥製を所有できるなら、その種が絶滅しても構わないという考えの持ち主。同名の実在人物をモデルにしている。

ホセ・フォルク

第5話「ピレネーアイベックス」の主人公。スペインにあるアラゴン州土壌栄養学研究技術センターの研究員。黒縁メガネと禿頭、小太りの体型が特徴の中年男性。史上初の哺乳類の体細胞クローン、羊のドリーの誕生に刺激を受け、絶滅種ピレネーアイベックスのクローンによる復活を目指す。絶滅直前に採取し、冷凍保存されていたピレネーアイベックスの皮膚を使って「クローン胚」を作成。208個のクローン胚を57頭の山羊に移植するが、実際に誕生したのは1頭のみ。その1頭も、呼吸不全で480秒後に死亡。その後、2014年にも再びクローン作成を試みるも失敗に終わる。同名の実在人物がモデル。

キール

第7話「キタシロサイ」の主人公。反政府組織・スーダン人民解放軍(SPLA)に所属する黒人の青年。1990年代後半、コンゴ民主共和国(旧ザイール)に向かう。武器弾薬の購入資金にするため、キタシロサイを狩り、その角を持ち帰ろうとする。ヨーロッパの動物捕獲業者の手伝いをした経験から、排泄物を探してキタシロサイの縄張りに侵入することに成功。首尾よくキタシロサイを仕留めるが、野生動物の保護を目的としたパークレンジャーに射殺される。

ステラーカイギュウ

第1話「ステラーカイギュウ」に登場する絶滅動物。海牛目ジュゴン科。北大西洋、特にベーリング海に分布。1742年頃、遭難し、カムチャッカ半島の東の沖200キロメートルに浮かぶ無人島に挫傷した、ゲオルグ・ヴィルヘルム・ステラーによって発見される。クジラ並の大きさながら、人間が近くにいても気にする様子もなく、とてもおとなしい。銛が刺さった仲間を群れで囲み、ロープにのしかかって銛を抜くという頭の良さと優しさを持っている。ステラーがその存在を報告したことをきっかけに、ラッコ漁に向かった漁師たちの理想の食料源として狩られ続け、1768年に絶滅する。

モーリシャス・ドードー

第2話「モーリシャス・ドードー」に登場する絶滅動物。ハト目ドードー科。インド洋マスカリン諸島、モーリシャス島に分布。1599年、東インドでの調査を終えたオランダ艦隊が、モーリシャス島に立ち寄った際に発見される。火山活動で生まれた離島のモーリシャス島には、天敵が入ってこられない。そんな平和な環境に適応したのか、ハトの仲間ながら七面鳥ほどの大きさがあり、羽根が退化しているために飛ぶことができない。また、地べたに卵を産むぐらい無防備で警戒心がなかった。1638年、モーリシャス島にオランダ人が入植。彼らが連れてきたペットの犬や猿、家畜のブタ、荷物に紛れていたネズミたちにより、地べたの卵・ヒナを食われてしまい、1681年に絶滅した。

セオドア・ルーズベルト

第3話「アメリカバイソン」の登場人物。第26代アメリカ大統領。立派な口ひげと鼻眼鏡が特徴の中年男性。1905年、ニューヨーク動物学協会会長ウィリアム・ホーナディの要請を受け、動物園のアメリカバイソンを野生に戻すための、新たな保護区制定に乗り出す。しかし、その動機は「種の保存」ではなく「狩場」の保存であり、バイソン狩りができるまでに数を回復させたいと考えていた。同名の実在人物をモデルにしている。

アメリカバイソン

第3話「アメリカバイソン」に登場する動物。偶蹄目ウシ科。北アメリカの国立公園や保護区に分布。ネイティブ・アメリカンにより、食用、衣服、武器、テントなどさまざまに利用されていた。西部開拓時代を迎え、白人による大規模な狩りによって個体数が激減。20世紀初めには絶滅の危機に瀕する。その後、保護区の設置などで、現在の野生個体数は約1万1千~1万3千頭にまで回復。また、商業的に飼育・繁殖している個体数は約30万頭いる。

オオウミガラス

第4話「オオウミガラス」に登場する絶滅動物。チドリ目ウミスズメ科。北大西洋の島や海岸に分布。かつては「ペン=グウィン(白い頭)」と呼ばれており、南極のペンギンは、オオウミガラスに似ていたことからその名がつけられた。ペンギン同様、潜水が得意で高速で泳ぐ。しかし、飛ぶことはできず、陸上では直立のヨチヨチ歩きしかできない。人間に警戒心がなかったため、毎年夏の間中、羽毛のために狩られ続け、生息地はほとんど破壊される。唯一の安息地は、本土から40キロメートル以上離れた、アイスランド南西沖に浮かぶ「ウミガラス岩礁」だけだった。しかし、1830年、海底火山の噴火により、「ウミガラス岩礁」は消滅。噴火から生き残ったわずか50頭は、エルディという小さな島に逃げ延びる。1844年6月4日、エルディ島にいた最後のつがいが、3人のハンターによって殺され、つがいが温めていた卵はいつの間にか割れていたという。

ピレネーアイベックス

第5話「ピレネーアイベックス」に登場する絶滅動物。偶蹄目ウシ科。スペイン北部のピレネー山脈とカンタブリア山脈東部に分布。スペインでは「ブカルド」と呼ばれる。オスは大きな角と、特徴的なたてがみ、あごひげがある。メスは角も体も少し小さい。銃を使った狩猟が盛んになったことで、2000年に絶滅する。1999年、最後の個体であったセリアという名のメスから、採取した皮膚が冷凍保存されており、ホセ・フォルクによる「クローン胚」作成に利用された。

リョコウバト

第6話「リョコウバト」に登場する絶滅動物。ハト目ハト科の渡り鳥。中央アメリカから北アメリカ東部に分布。1914年に絶滅。19世紀初頭には、およそ50億羽が生息し、ブナやオークの森を餌場としていたが、西部開拓による森林伐採で餌場が減少。開拓民の畑を荒らし始めたために駆除され、食用として重宝される。その後大量に狩られ続けて激減。19世紀末には、アメリカ・シンシナティ動物園が所有し、初代大統領夫人にちなんで「マーサ」と名付けられた個体が最後の一羽になる。そのマーサも、1914年9月1日午後1時に29歳で死亡。ワシントンのスミソニアン博物館に運ばれ、展示用の剥製となった。

キタシロサイ

第7話「キタシロサイ」に登場する動物。ウマ目サイ科。アフリカ中央部に分布。1970年代頃から、サイの角を目的とした乱獲が急増し、個体数が激減。1990年代後半には、スーダン南部に隣接する、コンゴ民主共和国・ガランバ国立公園が唯一の生息地となる。その野生個体数はわずか30頭のみであった。その後、2008年に野生が絶滅。2009年、チェコスロバキアのドブール・クラローベ動物園から、雌雄各2頭を、ケニアのオルペジェタ自然保護区へ移動。2018年3月19日、最後のオス・スーダンが死亡。メスのナジンとその娘・ファトゥの2頭のみとなる。

ニホンオオカミ

第8話「ニホンオオカミ」に登場する絶滅動物。食肉目イヌ科。日本の本州、四国、九州に分布。オオカミ類中、最小の種の一つで、特に耳介と四肢が短いのが特徴。古代から、田畑を荒らす鹿や猪を食べる益獣として崇められ、「大口の真神」と称えられていた。しかし、1736年に長崎県で発生した狂犬病が、ニホンオオカミにまん延。以後、害獣として駆逐されるようになり、1905年に絶滅する。

クレジット

監修

今泉 忠明

書誌情報

絶滅動物物語 2巻 小学館〈ビッグ コミックス〉

(2022-01-28発行、 978-4098612758)

第2巻

(2023-04-28発行、 978-4098617654)

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