あらすじ
宙太と声と採用試験
誰にも聞こえない「声」を聞くことができる男子中学生の九ノ瀬宙太は、そのせいで周囲にはいつも独り言を言っている変わった奴と思われ、クラスに馴染めない日々を送っていた。そんなある日、宙太は宇宙の叡智とも称されるマザーズに選ばれ、宇宙警察「エルドライブ」にスカウトされる。実は宙太のクラスメイトの其方美鈴もエルドライブの一員で、宙太の独り言の癖を知っている美鈴は宙太のエルドライブ入りに強く反対するも、その態度に反発した宙太は逆に美鈴を見返すため、エルドライブに所属することを決めるのだった。エルドライブに所属するため採用試験をまず受けることとなった宙太は、チップス・オ・トゥールの協力のもと、犯罪者の逮捕に赴く。しかしターゲットの犯罪者は、数少ない宙太の友人、タテヤンを人質に取っていた。彼を助けたいと強く願う宙太は、己の中の声に向き合い、共生体、ドルーを目覚めさせる。ドルーと力を合わせることで宙太は犯罪者を無事に捕まえ、試験にも合格する。そして宙太はエルドライブの一員として宇宙人の犯罪にかかわっていくが、ドルーの力を使いこなせず、足手まといになりがちなため、宙太は自信を失っていく。また宙太は宇宙人とかかわることで、幼い頃に経験した竹取山の事件を思い出し、さらにエルドライブにかかわることが億劫(おっくう)となっていく。しかし、自分の行動が周囲を助けているのを実感し始めた宙太は自信を取り戻し、エルドライブの活動にも前向きな気持ちを抱き始めるのだった。
過去からの追撃者
少しずつ前向きになり始めた九ノ瀬宙太は、今まで目を背けてきた過去と向き合おうとしていた。しかし、エルドライブは太陽系に巨大犯罪組織デミルが入り込んだ情報をつかみ、その対策にかかりっきりだった。宙太たちの学校にもデミルの手が伸び始めたため、宙太もその対策に駆り出されるが、その最中、宙太のクラスに新たな転入生がやって来る。竹取山の事件で行方不明となった宙太の友人の面影を残す転入生は、怪しい情報だらけだった。エルドライブは宙太に転入生をマークするように指示するが、直後にエルドライブは妨害電波を受けてしまう。転入生を追う宙太であったが、エルドライブと連絡を取ることができず、孤立無援状態となり、その正体を現した転入生に襲われる。転入生は、宙太のかつての友人であるグッチーその人で、現在はデミルで艦長にまで上り詰めたグッチーは、宙太に恨み言をぶつけ、彼を殺そうとする。しかしそれらは全部演技で、グッチーはデミルとエルドライブの監視から逃れるため、わざと宙太を挑発したのだ。そしてわずかなスキを利用して、行方不明となった残りの友人も宇宙のどこかで生きていることを彼に伝える。
シンジラレルモノ
エルドライブは巨大犯罪組織デミルを退けたものの、マザーズ直属の監察官、ベラルゴから其方美鈴のスパイ容疑が掛けられ、署内は慌ただしい雰囲気に包まれていた。さらに実はタクラマカン計画の生き残りで、重度の後遺症を抱える美鈴は取り調べの最中、体調をひどく崩してしまう。美鈴を治療し、同時に彼女の無罪を証明するため、九ノ瀬宙太はタクラマカン計画に深くかかわったタクラマカン・ストレインジ・ラヴの保護に向かう。折しもラヴは何者かに命を狙われており、丁度地球にいることを告げられる。宙太は、捜査五課のベロニカ・ボロズウィックとニーナ・ミハイロヴナ・パーヴロヴァを新たな仲間として加え、ラヴの保護に向かう。しかし、ラヴの潜伏先にはすでに敵が先回りしており、ラヴの身には危機がせまっていた。敵は人間の意識を支配し、意のままにあやつる力を持っているため、宙太たちはあやつられているだけの人間を攻撃するわけにもいかず危機に陥る。なんとか危機をくぐり抜け、ラヴと出会うことに成功するも、今度はニーナが不意打ちで宙太たちに襲い掛かる。ニーナも撃退し、彼女もあやつられていたことに気づいたラブと宙太は、敵はエルドライブ内部に存在する本物のスパイであることに気づく。そしてベラルゴの部下のダリィ・ライムこそが真犯人だと突き止め、美鈴の無罪を証明するのだった。
新たな闇
タクラマカン・ストレインジ・ラヴは其方美鈴の体調管理を買って出て、太陽系方面署に残ることを決める。九ノ瀬宙太たちと同年代の姿に若返ったラヴは、護衛としてベロニカ・ボロズウィックとニーナ・ミハイロヴナ・パーヴロヴァを連れ、宙太のクラスに転入する。新たな仲間が加わったことで、宙太の周りはますます賑やかになり、彼らはエルドライブの一員として犯罪者との戦いを繰り広げていく。ドルーがアップデートしたことで、宙太も着々と成長していくが、美鈴からは匂いが臭くなったと不評を買っていた。しかしラヴは、それは心因性のものだと美鈴に指摘し、二人はお互いを強く意識し始めるようになる。一方、グッチーは宙太との約束を守るべく、巨大犯罪組織デミルの一員として情報を集めていた。だが、謎の襲撃者の攻撃を受けてデミルは壊滅する。一人残されたグッチーは、宙太に一つのメッセージを遺し、彼らの目を宙太から遠ざけるため、自らの命を絶つのだった。
太陽系方面署全滅
グッチーを殺し、巨大犯罪組織デミルを本拠地ごと壊滅させた謎の組織、ヘブンサイダーは、デミルの集めた情報を回収する。そしてデミルの情報を分析することで、彼らが求める「宙の設計図」が地球にあることを突き止める。宙の設計図を手に入れれば、全宇宙を掌中に収めることも夢ではないことから、ヘブンサイダーは暗躍を始める。まず彼らは自分たちの身分を貨物船の船員に偽装し、わざと事故を起こしてエルドライブ太陽系方面署に接触する。九ノ瀬宙太たちも彼らとつかの間の時間を共にして彼らを見送るが、その直後にヘブンサイダーが仕掛けた罠によって、太陽系方面署の内部でパンデミックが引き起こされる。宙太は宇宙遊泳がヘタなのを見とがめられ、その特訓で外に出ていたのが功を奏し、其方美鈴たちと共に偶然難を逃れたが、目の前で次々と仲間たちが死亡していくのを目の当たりにしてしまう。頼りのタクラマカン・ストレインジ・ラヴとレイン・ブリックも留守でいない状況で、宙太は奮起して仲間たちを励まし、生き残るための行動を始める。しかし、そこにヘブンサイダーが放ったシャキオンが襲来し、宙太たちに襲い掛かる。絶体絶命の危機に陥る宙太たちであったが、そこに美鈴の上司であるマディガンが駆け付け、彼らを救うのだった。
マディガンの覚悟
ヘブンサイダーは太陽系方面署を全滅させ、さらに三つの惑星でパンデミック事件を引き起こすことで、エルドライブ全体を機能不全に陥らせる。そして混迷した状況を利用し、ヘブンサイダーは悠々と地球に忍び込み、宙の設計図を探し始めるのだった。一方、マディガンは九ノ瀬宙太たちから事情を聞き、ヘブンサイダーに対して反撃を開始する。彼らの一人、リィリを打ち倒すも、ヘブンサイダーを倒すためには戦力不足だと実感したマディガンは、宙太たちにトレーニングを課す。危険だが短期間でSPHを増大させるトレーニングを乗り越え、宙太はドルーを新たな段階にアップデートさせる。だが、マディガンは時おり怪しい行動を取っており、宙太はマディガンへの疑念を募らせていくのだった。そして宙太は偶然、マディガンが情報屋と連絡を取るのを聞くが、その情報屋の正体はヘブンサイダーの一人、アルバだった。自らもヘブンサイダーの一人であることを明かしたマディガンは、宙太に襲い掛かる。怒りで新たな力に目覚めた宙太は、マディガンを激闘の果てに打ち倒す。しかし、それこそがマディガンが仕組んだ最後のトレーニングで、宙太に戦う覚悟を決めさせるのが目的だった。己の死を予期していたマディガンは、呼んでいたグロックに自分の記憶と遺志を託し、静かに息を引き取る。そして宙太は、マディガンの覚悟に応えるためにもヘブンサイダーを止めることを誓い、グロックを新たな仲間に迎えるのだった。
カケテイルモノ
マディガンはヘブンサイダーより先んじて宙の設計図を手に入れるべく、独自に情報を集めていた。彼の記憶を受け継いだグロックから、その話を聞いた九ノ瀬宙太たちは、集めた情報を分析し、竹取山に設計図があると推測する。ヘブンサイダーを迎え撃つため、一行は竹取山を目指す。一方、ヘブンサイダーも竹取山に設計図があるのを突き止め、天変地異を巻き起こして山を吹き飛ばし、その地下に眠る遺跡を白日のもとにさらす。遺跡に設計図があると目した両陣営は衝突。宙太はダーシムを打ち倒すも、其方美鈴が遺跡の中に取り込まれ行方不明となってしまう。美鈴が遺跡の奥に囚われたと考えた宙太は、仲間たちに送り出され、一人遺跡の奥を目指す。そして宙太は、そこに待ち受けていたヘブンサイダーのリーダーであるキング・ケーンと対峙する。自らのドルーと同じく、グリフィス星人の遺産「偏頭痛」を駆るキングに、宙太は苦戦するが、ドルーの言葉を受けて二人で戦うことを決意。その結果、ドルーはさらなる進化を果たし、巨大な姿となる。亡き兄の遺志を継ぎ、自分こそが唯一無二の存在と信じていたキングは、自分にせまる宙太とドルーという存在に心乱され敗北する。ヘブンサイダーの野望を食い止め、美鈴の無事も確認。さらに駆け付けたタクラマカン・ストレインジ・ラヴの連絡で、死んだ署員も復活させられるかもしれないという事実を知り、宙太たちは喜びに包まれるが、そこで美鈴の口から宙の設計図の正体が語られる。そして美鈴は自らの運命を受け入れ、宙太からドルーを引き離し、二人の前から姿を消す。一方、署員の治療を始めようとしたラヴのもとに、キエシ警視正から連絡が入る。実は一連の事件の真の黒幕であったキエシは、その正体を現して、ラヴが搭乗するジャンルノRを爆破し、すべてを闇に葬る。
ファースト アンド ラスト エルドライブ
宙の設計図を巡る戦いから4年後、九ノ瀬宙太はドルーを失い、其方美鈴とも別れ、失意の中を過ごしていた。平凡な大学生となった宙太は平和な日々を過ごしていたが、そんなある日、レイン・ブリックが再び彼の目の前に姿を現す。宙太はレインの計らいで株分けされたドルーを復活させ、かつての力を取り戻す。そして宙太はレインから、この4年間でエルドライブの頂点に君臨したキエシ警視総監が、新たな虐殺計画を立てていることを知る。4年間のパンデミック事件を裏で糸を引き、今また新たな悲劇を起こそうとするキエシを逮捕するため、グロック、ベロニカ・ボロズウィック、ニーナ・ミハイロヴナ・パーヴロヴァ、タクラマカン・ストレインジ・ラヴらかつての仲間たちが集まり、決意を新たにする。その中にはラブの治療のお陰で復活した旧大量系署員たちの姿もあった。彼らから美鈴の真意を伝えられた宙太は、キエシとの最後の戦いに赴くことを誓う。エルドライブ本部での絶望的な戦力差に加え、マザーズの恩恵を受けたキエシは、未来予知すら可能としていた。しかし、宙太はグッチーが過去から届けたメッセージをヒントにキエシの予知を打ち破り、キエシのもとにたどり着くことに成功する。そして宙太はキエシと直接対峙し、宇宙の命運を懸けた最後の戦いを始める。
コラボレーション
家庭教師ヒットマンREBORN!
本作『エルドライブ【ēlDLIVE】』のテレビアニメ版には、本作と同じく天野明が手掛ける『家庭教師ヒットマンREBORN!』のネタが随所に織り込まれている。さらに2017年4月1日にはエイプリルフール企画として、サプライズで両作品のコラボレーションが行われた。コラボレーションではそれぞれの作品のキャラクターの衣装が交換され、『エルドライブ【ēlDLIVE】』のテレビアニメ公式サイトにはマフィア衣装を身にまとった九ノ瀬宙太のイラストが掲載され、『家庭教師ヒットマンREBORN!』のアニメ化10周年記念情報サイトにはエルドライブの制服を身にまとった沢田綱吉のイラストが掲載された。
メディアミックス
テレビアニメ
2017年1月から3月にかけて、本作のテレビアニメ版『エルドライブ【ēlDLIVE】』がTOKYO MX、BS11、読売テレビほかで放送された。制作はstudioぴえろが担当。テレビアニメ版も、本作と話の大筋は同じで、九ノ瀬宙太が宇宙警察・エルドライブに入ったのをきっかけに成長していく青春物語となっているが、アニメ独自の展開やアニメオリジナルキャラクターも登場する。また、天野明の『家庭教師ヒットマンREBORN!』とテレビアニメ版『エルドライブ【ēlDLIVE】』は同一世界の物語と設定されており、ファンサービスの一環で、アニメには『家庭教師ヒットマンREBORN!』のネタが随所に仕込まれている。
登場人物・キャラクター
九ノ瀬 宙太 (ここのせ ちゅうた)
城堀中学校に通う2年生の男子。年齢は14歳。黒い髪を短く切りそろえ、消極的でおとなしい性格をしている。誕生日は7月20日で、血液型はO型。身長は158センチで、体重は48キロ。その身には共生体、ドルーを宿し、彼の声がつねに聞こえている。しかし他人にはその姿は見えず、声も聞こえないために妄想癖や独り言をいう癖があると周囲に見られ、友達もほとんどいない。また両親との死別や、竹取山での事件を幼い頃に経験した結果、後ろ向きで内向的な性格となり、自分に自信を持てずにいる。裁縫や料理といった家庭的な趣味を持ち、よく物事を料理に例えて話す。マザーズに選ばれたことで、エルドライブに所属することとなり、ドルーとの交流や仲間たちとの触れ合いによって、少しずつ前向きな性格へと成長していく。クラスメイトで同僚の其方美鈴のことを意識している。彼女からは冷たくあしらわれているが、九ノ瀬宙太自身の成長に伴って少しずつ心を通わせるようになる。エルドライブでは捜査2課に所属し、階級は巡査。ドルーとのコンビネーションによる戦闘能力の高さを見込まれており、凶暴な宇宙人の無力化を担当する。ドルーのアップデートによって宙太の力も徐々に成長していく。繊細で打たれ弱い一面もあったが、マディガンとの戦いで彼の覚悟を目の当たりにしてからは、彼の遺志を継いで能動的に動くようになる。宙の設計図を巡る戦いでは激闘の末にキング・ケーンを打ち倒すものの、美鈴とドルーを失う結果となり、失意に暮れることとなる。美鈴自らの意思で去った冷たい態度に、裏切られた思いを抱く。4年後は国立大学に通う平凡な大学生となり、力を失ってエルドライブとのかかわり合いもなくなる。しかし、レイン・ブリックとの再会によってドルーが復活し、力を取り戻す。美鈴の真意を伝えられ、再びエルドライブとしてキエシと戦うことを決める。4年の年月で、よくも悪くも物わかりがよい落ち着いた性格となっている。
其方 美鈴 (そのかた みすず)
城堀中学校に通う2年生の女子。金色の髪をボブカットにしたクールビューティーで、任務を忠実にこなすストイックな性格をしている。身長は156センチ。九ノ瀬宙太よりずっと前からエルドライブに所属し、宙太をスカウトする際も、彼を観察していた。その評価はかなり辛辣なもので、宙太が試験を合格してエルドライブとなったあとも、彼によく苦言を呈している。宙太の成長に伴って、彼のSPHが臭くなって仕事に支障が出たため、それ以降は「SPHカーテン」を付けるようになる。しかし、のちにそれが自分の心因性によるもので、宙太の成長に無意識に焦りを抱いていると知らされてからは、徐々に彼を意識した言動をするようになる。エルドライブでは捜査2課に所属し、階級は巡査。高い戦闘能力を持ち、凶暴な宇宙人の無力化を担当する。戦闘時はレオタードのような戦闘服となり、SPHをリング状の光にして投擲(とうてき)する。SPHは高い切断力を持ち、羽を生やすことで飛行もできる。タクラマカン計画の被験者の一人で、今もその後遺症で苦しんでいる。後遺症を抑えるための薬を服用しており、長期間薬を断つと体調を崩す。また、実験の副作用で過去の記憶がほとんど失われているため、その過去には謎が多い。その正体は宙の設計図そのもので、マザーズの中枢「マザーオブマザーズ」。竹取山の遺跡で使命に覚醒し、成長したドルーを取り込み、マザーオブマザーズとなり、宙太たちの前から姿を消す。宙太からは裏切られたと思われていたが、宙太をふつうの生活に戻すため、あえて冷たく振る舞っていただけだった。4年後の世界では、マザーオブマザーズになりかけて自我を失いかけている状態となっている。キエシの暴走を止めるため、最後の力を振り絞ってマザーオブマザーズの権限を使い、キエシの逮捕令状をレイン・ブリックに託す。
ドルー
九ノ瀬宙太に取り憑く共生体。当初は姿かたちがない声のみの存在で、その正体を知らない宙太は多重人格のようなものだと思っていた。宙太の精神力が活動の源となっており、宙太が信じることでその存在が強固なものとなる。正式名称は「第四世代共生体水惑星対応ドゥルーブリットTYPE390」で、これを縮めて宙太に「ドルー」と名づけられる。宙太とは二身同体の関係で、ドルーが傷つくと宙太もダメージを受ける。また、宙太の精神の影響を強く受けており、宙太がネガティブになると実態を保てず、力もほとんど振るえなくなってしまう。無邪気で無垢な性格をしており、好奇心旺盛に物事を学習していく。宙太に取りついているため、彼に関係したものほど理解が深い。そのため共生技も、裁縫を反映して「なみぬい」、料理を反映して「輪切り」、ガムはがしの知識を反映して「冷却ガムはがし」などの宙太の経験を反映したものが多い。のちに死の危機に瀕してアップデートし、「DOLUGH EVOLUTION Ⅱ」へと進化し、飛行と高速移動の能力を得る。マディガンとの特訓を経て「DOLUGH EVOLUTION Ⅲ」へと進化。DOLUGH EVOLUTION Ⅲでは赤いヘルメットのようなものが追加され、このヘルメットは戦闘時は宙太のグローブ型の武装となり、さらに攻撃力と機動力が上がる。また、ドルーの分身である「グミ」を生み出す共生技を発現する。ただし、DOLUGH EVOLUTION Ⅲはマディガンとの特訓で強い怒りに呑まれて使ったため、当初はドルーの意識を奪い、実質的には宙太がドルーを道具のように使って戦うものだった。のちにそのことを指摘され、宙太は反省。二人で戦うことを決めたことで、巨大な人型ロボットのような姿となる。宙太の存在と、一連の事件は実はドルーを成長させるために、マザーズが仕組んだもの。キング・ケーンとの戦いで到達点に達したドルーは、マザーオブマザーズの片割れとして其方美鈴と融合する。美鈴と融合したため宙太から取り外されるが、4年後の世界で残っていた細胞から株分けされる形で復活する。
レイン・ブリック
エルドライブの太陽系方面署で署長を務める男性。銀髪で右目に眼帯をしている。飄々(ひょうひょう)とした変わり者ながら優秀で面倒見がよい性格で、部下たちからは慕われている。誕生日は6月11日で、血液型はB型。身長は180センチで、体重は70キロ。実は元海賊の棟梁。生まれつき右目に宿した「先見の瞳」の力で悠々自適な生活を送っていたが、幼い頃の其方美鈴と出会った際に、彼女の未来を見たことで価値観が一変。レイン・ブリック自身の自由は、彼女の過酷な運命で成り立っていることを知り、彼女を守るべく運命に立ち向かう決心をする。その後、エルドライブに逮捕された際に、先見の瞳を欲したマザーズと取引を行い、彼らの監視下に入ることと引き換えに、美鈴を自分の部下にすることを交換条件に出す。先見の瞳のポテンシャルを完全に引き出すには、自らの状態も安定させる必要があるため、エルドライブ上層部はこれを受け入れ、レインを署長として採用した。先見の瞳の力はほとんど失われているが、その残り香で、天才的ともいえる見切りの能力を持つ。ふだんはほとんど戦闘に出ないが、ヘブンサイダーとの戦いでは、その見切りでアルバを圧倒している。ただし見切りは負担が大きいらしく、長時間使うことはできない。4年後の世界では、警視総監のキエシに対抗するために地球の海底基地に潜伏し、力を蓄えていた。九ノ瀬宙太の力を取り戻すため、一芝居打ち、力を取り戻した宙太を再びエルドライブに勧誘する。4年のあいだに先見の瞳の力を取り戻しつつあり、キエシとの決戦では瞳の力を使って未来を読み合いながら、オーギュストで指揮を行う。好物は餡子(あんこ)で、菓子をよく食べている。
共生体 (もにたりあん)
グリフィス星人の遺産の一つ。惑星監視用にグリフィス星人が各地に送り込んだ人工生命体で、その惑星の生命体に取り憑き、わずかなエネルギーを糧として生き続ける。ēl文明圏では存在そのものは知られているが、共生体が自分から姿をさらす事例は存在せず、その姿を見た者はいない。現在はグリフィス星人は滅び去っているが、共生体は未だに生き続け、役目を果たし続けている。共生体と、取り憑(つ)いた共生主は二身一体の関係で、お互いのダメージを共有し合う。また、共生体には生き残るためのプログラムが搭載され、危機的状況に陥ると爆発的な進化「アップデート」を行う。アップデートは危機的状況に適応するためではなく、新たな共生主に取り憑くことを目的としており、新た共生主に取り憑くと、進化して得た能力はリセットされデフォルトの状態に戻る。新たな共生主に取り憑く前であれば、共生主が再共生を行えば、能力はアップデートされたまま元の共生主の元に戻る。共生体は「共生技」という能力を持つが、この能力は共生主と共生体のイメージの一致が必要であるため、共生主の精神、価値観が色濃く反映されている。ドルーの場合は、九ノ瀬宙太が家事が得意であるため、共生技は裁縫や料理の経験を反映したものが多い。
グッチー
巨大犯罪組織デミルに所属する少年。赤毛の髪を短く切りそろえている。不愛想で、凶暴な性格をしている。誕生日は4月12日で、血液型はAB型。身長は169センチで、体重は56キロ。九ノ瀬宙太のクラスに転入し、彼をおびき出して襲い掛かる。宙太の幼い頃の友人である「グッチー」こと「溝口健」その人で、竹取山の事件で瀕死の重傷を負うが、デミルに拾われ、治療されたうえで彼らの手先となる。宙太をすべての元凶として恨んでおり、彼を追い詰めるものの、宙太の反撃を食らうこととなった。実はデミルに監視用のレコーダーを付けられており、宙太に見せた姿はデミルの目を欺くための演技。その後、宙太の攻撃をレコーダーに受けて壊したことで、宙太に真実を語る。本来は明るく優しい性格で、過去の事件も事故と考え、宙太のことも恨んではいない。未だに行方不明となっている友人、松太郎とミチヨを探すため、宙太とそれぞれの立場で彼らを探すことを約束する。デミルでは戦艦一隻を任せられる艦長を務め、多数の部下を抱えているが、デミルに対して忠誠心はなく、監視として送り込まれた部下は使い捨て同然の扱いをしている。デミルでの悪事も可能な限り避けるようにしており、デミルの目を誤魔化すため、独自の装備を用意している。一方で仲間意識は非常に強く、本当に仲間と思っている部下は大切にしている。デミルに戻ってからは独自に調査をしていたが、ヘブンサイダーの襲撃を受け、部下たちを皆殺しにされる。宙太の命を守るためにメッセージを彼に飛ばし、ヘブンサイダーに情報を渡さないように自爆して死亡する。グッチーのメッセージは4年の月日を経て宙太に届き、キエシとの戦いで勝利に大きく貢献することとなる。
松太郎 (まつたろう)
エルドライブの本部強襲部隊に所属する少年。天然パーマでボリュームのある髪型をしている。九ノ瀬宙太の幼なじみの友人で、7年前に竹取山の遭難事件で行方不明となった松太郎その人。実は「運命を紡ぐ者」の一人で、同じ役目を持つミチヨと共に宙太とドルーの見張り役を務めた。ただし、松太郎たちは幼すぎてよくわかっておらず、自分たちの役割で宙太を深く傷つけたことを、のちに大きく後悔している。現在はスカーレット博士の側近として働いており、中立を宣言しつつも、パンデミック事件ではレイン・ブリックをサポートし、間接的に宙太たちを手助けしている。キエシがその正体を明かした際に、用済みとしてタクラマカン・ストレインジ・ラヴたちと共に殺されそうになる。しかし、強力な防御用のSPHを持っていたため、ラヴたちを守りつつ生き残ることに成功する。4年後の世界では宙太と再会し、罪を告白して謝罪する。グッチーが宙太に当てたメッセージを受け取っており、謝罪の際にそれを彼に手渡している。
ミチヨ
九ノ瀬宙太の幼なじみの少女。ツインテールの髪型をしている。小柄な体型で、明るく無邪気な性格の持ち主。7年前、竹取山の遭難事件で行方不明となった。実は「運命を紡ぐ者」の一人で、同じ役目を持つ松太郎と共に宙太とドルーの見張り役を務めた。現在は竹取山の地下遺跡に待機し、宙の設計図であるドルーと其方美鈴がやって来るのを待っている。現在は長く伸ばした髪をポニーテールにしてまとめ、白いローブを身にまとっている。性格も子供の頃からがらりと変わっており、使命を遂行するためだけの厳格な性格となっている。空の設計図を巡る戦いの終盤に美鈴を遺跡奥地にさらい、彼女の覚醒をうながす。そして、マザーオブマザーズとなった美鈴と共に姿を消す。
チップス・オ・トゥール
エルドライブの太陽系方面署に勤める宇宙人。年齢は10歳。身長はある程度まで伸縮可能で、だいたい20センチから40センチほどの大きさをしている。所属は捜査2課で、階級は警部補。ハバト星人という宇宙人で、目が三つあり、デフォルメした水色のくらげのような姿をしている。地球ではおもちゃのフリをして正体を隠している。語尾に「チュ」を付ける話し方をする。九ノ瀬宙太をスカウトするため、宙太の目の前に現れた最初の宇宙人で、以降も宙太と其方美鈴と共に任務に当たることが多い。正義感が強く、脱サラしてエルドライブに所属する。まじめな性格のため、規則を破ることを嫌っている。6種類のSPHを持ち、転送システムを使うために必要な遊動変異SPHも使えるため、地球上で転送システムを使う際にはなくてはならない存在。また、ほかにもサポート系のSPHを保有しており、マディガンの特訓で体力を回復させ、傷を癒やす「ヒーリングSPH」も習得している。地球の緑茶を飲むと酔っぱらったり、息を一時間止められるなど、地球人とはまったく違う体質をしている。酔っぱらうとふだんとは一転して陽気な口調となるが、意外にも的確に相手の話に応対するため、「酔った方が優秀」ともいわれている。
イサク教授 (いさくきょうじゅ)
エルドライブの太陽系方面署に勤める宇宙人。署員の健康管理および治療を担当する医師として働いている。太った中年の男性のような姿をしているが、肌の色がピンク色で、トカゲのしっぽのようなものが生えている。目元部分はつねにバイザーで覆い、素顔を隠している。其方美鈴の事情を知っており、彼女を支えられる存在として、九ノ瀬宙太にも彼女を支えるように頼む。無重力空間で作業をするという癖があり、そのため彼の作業場は物が空中に散乱した状態となっている。パンデミック事件では、感染源のすぐ近くにいたため、第一の犠牲者となってしまう。その後、タクラマカン・ストレインジ・ラヴの治療でほかの署員と共に復活する。4年後の戦いでは、オーギュストに搭乗してキリエとの戦いに赴く。
タクラマカン・ストレインジ・ラヴ
宇宙最高の科学者の一人とされる男性。年齢は500歳。白髪と白いヒゲを生やした老爺の姿をしていたが、自分で開発した減齢処置によって若返り、現在は九ノ瀬宙太と同年代の水色の髪をした少年の姿となっている。エルドライブに協力し、数々の発明品でその活動に貢献してきたため、宇宙中の犯罪者に恨まれている。しかし、タクラマカン・ストレインジ・ラヴ自身が窮屈な保護を嫌っているため、五人の影武者を別々の場所に放ち、襲撃者の目を誤魔化している。好奇心旺盛な性格で、デリカシーのない言動が多い。特に女性たちからは不評で、昔から女性の扱いはヘタだといわれている。しかし根は善良な人物で、宙太に保護されたあとは其方美鈴の体調をケアするため、太陽系方面署に滞在することを決める。科学捜査のバックアップを口実に、宙太たちの中学校に生徒として転入する。地球人として「田倉間缶愛之助」の偽名があるが、本人が偽名であることを忘れていたため、タテヤンが付けた「タッ君」のあだ名で呼ばれる。スカーレット、キエシとは古い友人の関係。しかし、キエシは長い年月で性格が大きく変わっているため、現在の彼の姿を嫌い、よく皮肉を言う。宇宙最高の科学者という評価は伊達(だて)ではなく、あらゆる分野の学問に精通し、高い技術と幅広い知識を持つ。医学の腕も卓越しており、死亡寸前の重傷者も難なく救っている。だが何より優れているのは、その直観力とユニークな思考回路で、「素人的な発想において優れた玄人」ともいわれる。パンデミック事件では感染して死んだ人の遺体を見て、直感で復元できると確信。メェル・リッグスの遺体を調べて治療法を確立するも、それを邪魔と思ったキエシによって葬られそうになる。松太郎の奮闘によって生き残り、その後は地球に潜伏しながら感染病の治療法を確立し、太陽系方面署の署員たちを復活させる。減齢処置は不完全な若返りだったため、副作用でさらに若返り、幼い少年の姿となっている。4年後の戦いではオープウェアの開発や、先見の瞳を騙す仕掛けなどを作って戦いを助ける。
ベロニカ・ボロズウィック
エルドライブの太陽系方面署に勤める少女。所属は捜査5課で、階級は警部補。オレンジ色の髪をツインテールにセットし、勝気でアグレッシブな性格をしている。地球人の少女のような姿をしているが、クシュト星人の末裔(まつえい)で、額の部分に小さな角があり、SPHを使うと角が大きくなる。誕生日は8月14日で、血液型はB型。身長は154センチで、体重は45キロ。5課のリーダーを務めており、ニーナ・ミハイロヴナ・パーヴロヴァといっしょに捜査に当たることが多い。ニーナ、其方美鈴とは宇宙警察学校からの同期兼友人の関係で、特に美鈴をライバルとして意識している。そのため美鈴には口が悪く、時おりケンカのような言い争いをすることがあるが、本音ではお互いを認め合っている。SPHを発動すると足の先にピンク色の光をまとい、身軽で機敏な動きで敵を攻撃する。体術の腕前はかなりのもので、足技が主体の戦い方をする。クシュト星人であることを誇りに思っており、負けたり、無様をさらすことを何より嫌う。しかし実は昇進試験の際に、圧倒的な力を持つアルバと遭遇し、恐怖のあまり命乞いをしてしまった過去がある。その出来事は心の中で大きなしこりとなっていたが、美鈴の厳しくも優しい叱咤(しった)で奮起し、立ち直った。マディガンの特訓で、それを思い出してからはSPHも大きく強化される。パンデミック事件では九ノ瀬宙太の特訓に付き合っていたお陰で、危機を逃れることに成功し、宙太たちと共にヘブンサイダーと戦う。4年後の世界では、太陽系方面署からほかの署に転勤するも、レイン・ブリックの呼びかけに応えて、キエシとの戦いに合流する。最終決戦ではオープウェアに搭乗し、エルドライブ本部の大部隊と戦う。
ニーナ・ミハイロヴナ・パーヴロヴァ
エルドライブの太陽系方面署に勤める少女。所属は捜査5課で、階級は巡査。黒い髪を長く伸ばし、木の葉っぱを象(かたど)った特徴的な髪飾りを付けている。優しくおとなしい性格をしている。愛称は「ニノチカ」。誕生日は11月20日で、血液型はA型。身長は158センチで、体重は47キロ。同じ課のベロニカ・ボロズウィックといっしょに捜査に当たることが多い。ベロニカ、其方美鈴とは宇宙警察学校からの同期兼友人の関係で、三人の中で最も温和であるため、二人のフォロー役に回ることが多い。SPHは竜巻を作って攻撃や防御を行うもので、非常に強力。しかしSPHを発動させる関係上、ほとんど裸に近い格好とならなければならないため、性格に反して戦闘服のデザインは露出度が高めで、かなり大胆。ニーナ・ミハイロヴナ・パーヴロヴァ自身も戦闘服のデザインを気にしており、異性の目の前では使いたがらない。またダリィ・ライムにあやつられて、九ノ瀬宙太を襲った際には、あとで宙太に見られたことを思い出し、深く落ち込んでいる。実は幼い頃に父親とは死別、弟のドミートリイも病弱だった過去がある。弟の医療費を稼ぐために幼くして母親といっしょに働いていたが、その思いは報われず弟とは死別。苦労した母親を幸せにするため、そして弟の夢を継ぐためエルドライブを志した。つねに付けている髪飾りは、ドミートリイが生まれた日に、母親が緑風樹から摘んだ葉っぱを加工して作ったもので、母親から託された髪飾りを弟の魂が宿るとして大切にしている。マディガンの特訓で母親と弟のことを思い出し、SPHを大幅に強化させる。パンデミック事件では九ノ瀬宙太の特訓に付き合っていたお陰で、危機を逃れることに成功し、宙太たちと共にヘブンサイダーと戦う。グロックを亡き弟に重ねて見ており、何かと彼の世話を焼こうとする。4年後の世界では、太陽系方面署からほかの署に転勤するも、レイン・ブリックの呼びかけに応えて、キエシとの戦いに合流する。最終決戦ではオープウェアに搭乗し、エルドライブ本部の大部隊と戦う。
ダリィ・ライム
ベラルゴの部下で、「リイド星人」と呼ばれる宇宙人。緑色の肌を持ち、ずんぐりむっくりとした体型をしている。顔の部分には口が一つと、大きな赤い目が三つある。其方美鈴がスパイ容疑で逮捕されたあと、署員たちの取り調べを行う。実は遠隔操作SPHの使い手で、対象を意のままにあやつる能力を持ち、タクラマカン・ストレインジ・ラヴを襲撃した真犯人。遠隔操作SPHは同時に複数の人間をあやつることもでき、自爆を命令することも可能と、非常に凶悪な能力を持つ。ただし遠隔操作するためには、強く意識を集中させた状態で、対象と目を合わせなければならない。また、遠隔操作できるのは相性のよい人間のみで、成功率はおよそ5%ほどとなっている。美鈴とラヴの存在に強い興味を持っており、彼らの身柄を欲して、ベラルゴの部下として太陽系方面署に潜り込む。何人もの人間を遠隔操作SPHで支配下に置き、ラヴの身柄を手に入れるため、各地で襲撃事件を引き起こしていた。自分の正体がバレたあとは、美鈴の身柄だけでも手に入れるべく、ベラルゴを殺して監察官権限を奪い、それを使って美鈴をさらおうとする。しかし脱出ポットに乗ろうとして、そのまま外に排出され、窒息死してしまう。
シャキオン
キング・ケーンの飼っているペット。好戦的な性格をした非常に凶暴な宇宙生物で、暗緑色の岩のような質感の肌を持つ巨大な獣。誕生日は11月24日。身長は315センチで、体重は920キロ。その巨体に見合った強烈なパワーと、頑丈な体を持つ。最果ての宇宙で確認された希少な生き物で、宇宙空間を生身のままで動き回る。5隻の探索船を沈めたため、「最果ての悪魔」とも呼ばれており、一部ではその余りの出鱈目(でたらめ)な身体能力から、作り話ではないかと思われている。実はある程度知能があり、特殊な言語をあやつり、他者の言葉もある程度理解している。一方でただ単に暴れるだけではなく、だまし討ちするなど悪知恵も働き、単純な力押しだけではない強さを持つ。パンデミック事件を逃れた九ノ瀬宙太たちの目の前に現れ、彼らを追い詰めるが、宙太たちの助けに駆け付けたマディガンの攻撃を食らって死亡する。
タテヤン
城堀中学校に通う2年生の男子生徒。金髪の小太り体型で、明るくお調子者な性格をしている。異性に興味津々で少しエッチな一面があるが、誰とでも分け隔てなく接する陽気な少年で、クラスで孤立しがちだった九ノ瀬宙太とも仲がいい。タクラマカン・ストレインジ・ラヴたちが転入して来た際も、彼らにいち早く声を掛け、クラスに馴染ませることに一役買っている。ニーナ・ミハイロヴナ・パーヴロヴァを一目見て気に入り、彼女をフットサル部のマネージャーに勧誘している。4年後の世界では小太りした外見から一変して、たくましい体つきの青年へと成長。大学に進級し、ゼミにサークルで毎日キャンパスライフをエンジョイしている。別々の学校に進学したが、宙太のことを気にかけており、宙太の家の近くを寄った際には遊びに訪れている。
スカーレット
グリフィス星人の研究を行なっている科学者の女性。高齢の老婆で、ふだんは仮面と紫の付け毛で顔を隠している。タクラマカン・ストレインジ・ラヴとキエシは古い友人で、ラヴの元助手。現在もお互いに軽口を叩き合う仲で、年老いて地位も名誉も興味がないからと、自分の研究成果を彼に託している。実は其方美鈴と同じくマザーオブマザーズの素質を持つ存在。しかし彼女は300年前に、その運命を拒絶し、ラヴとキエシの協力を得て運命に抗(あらが)った過去がある。そのため美鈴には思うところがあり、美鈴がマザーオブマザーズの運命を受け入れた際に、引き留めるか最後まで悩んでいる。パンデミック事件では感染対策委員長を務め、広がるパンデミックに対抗するため奔走する。しかしラヴが治療法を見つけた瞬間、その正体を現したキエシに不意打ちを食らって死亡、治療法も闇に葬られる。
ルージン
元A級犯罪者の中年男性。黒い髪とヒゲを生やした宇宙人で、地球で起業するため資金集めをしている。グロックの育ての親で、マディガンとは旧知の仲。現在は北欧で運送業を生業としているが、地球のあらゆる宇宙犯罪にかかわり、100件以上の宇宙人の殺人事件にかかわっているとされる黒い噂の絶えない人物。ルージン本人によれば、現在は黒に限りなく近いグレーではあるが、一応犯罪者ではないとのこと。精神に極めて有害なSPHを放つ危険生命体「ギルモンチ」を飼育しており、その力を利用して他者の記憶を読む能力を持つ。ベロニカたちのトレーニングを担当し、ギルモンチの力を使ってベロニカ・ボロズウィックたちの「生への執念」を自覚させ、SPHの覚醒をうながす。マディガンが死んだ際は、その死を悼み、マディガンの遺志を受け継いだ九ノ瀬宙太たちを激励する。4年後の世界では、キエシのやり方に反発するものたちから援助を引き出し、レイン・ブリックを資金面でサポートする。
九ノ瀬 ミミ (ここのせ みみ)
九ノ瀬宙太の叔母。ライトイエローの髪をポニーテールにした女性で、快活な性格をしている。誕生日は2月3日で、血液型はO型。身長は163センチで、体重は53キロ。宙太には自分の子供のように愛情を注ぎ、宙太からも大切な存在と思われている。天才的なマフィン作りの腕を持ち、その腕を活かしてマフィン屋を営んでいる。ただしマフィンを作る以外のことは何もできず、家事が不得意。このため洗濯や掃除、料理、裁縫といった雑事は宙太が担当しており、彼が家事を上達させる要因となっている。宙太がエルドライブとして働いていることは知らないが、最近明るくなったことは好意的に考えている。宙太の成長のために、結婚といった自分の幸せは先送りにしている。しかし、のちに宙太から幸せになっていいと言われ、自分の幸せにも向き合っていく。竹取山に異変が起きた際に、宙太から真実を伝えられる。宙太が危険な場所に行くのを最後まで反対しつつも、手作りのマフィンを渡して、見送る。
キエシ
エルドライブで警視監を務める男性。長髪の青白い肌をした宇宙人で、物静かで不気味な雰囲気を漂わせている。タクラマカン・ストレインジ・ラヴとスカーレットは古い友人で、かつては暑苦しいくらい正義感にあふれる熱血刑事だったが、現在はエルドライブの負の面を象徴する汚水のような存在とラヴに評されている。一連のパンデミック事件の黒幕でもある。マザーズと先見の瞳の力を使い、数百年後に避けようのない宇宙の破滅を予知してしまう。それを避けるため、宇宙の全人類に「喪失」を味あわせ、生き残る人間を選別するために暗躍していた。ヘブンサイダーも彼の駒の一つにしか過ぎず、其方美鈴をマザーオブマザーズに仕立て上げたあと、正体を現してスカーレットを殺害し、ラヴも殺そうとする。かつてはスカーレットを愛し、彼女がマザーズオブマザーになるのを阻止するため、ラヴに協力していた。しかし、その思いは長年のうちに歪み、肥大化して独善的な人間へとなり果てる要因となっている。その後、エルドライブの最高責任者であるコポラ警視総監にパンデミックの責任を取らせて失脚させ、自らが警視総監に就くことでエルドライブの権力を手中に収める。4年後の世界では、マザーズ至上主義を打ち立て、中央集権化を進め、己の権勢を強化している。現在は新たにēl文明圏の人間の3分の1を殺し、3分の1を奴隷化する計画を進めており、それを阻止するためにマザーオブマザーズとなった美鈴により逮捕状を出される。ドルーのクローンを自らに植え付けており、最終決戦ではマザーのバックアップを受けたうえでクローンを展開。黒い鎧をまとった巨大な姿となるも、クローンを道具としか見ていなかったため、その性能を発揮することができず、九ノ瀬宙太とドル-のタッグに敗れ去る。
トント・アート・トント
エルドライブの太陽系方面署に勤める女性。年齢は26歳で、身長は171センチ。猫の特徴を持つザスキー星人で、桃色の肌を持ち、猫耳に尻尾が生えている。明るく気さくな性格で、年若い署員たちの面倒をよく見ている。九ノ瀬宙太のことを気に入っており、彼と其方美鈴のことをお似合いだと思っている。タロとは恋人同士で、結婚の約束を交わしている。ジャンルノRの管理を担当する航行課に所属しており、ふだんはメインブリッジでオペレーターを務めている。戦闘能力がないために荒事は苦手だが、動体視力がずば抜けてよく、ハエ叩きを得意とする。艦隊戦をする際には特殊なシステムを利用してジャンルノRと同調し、ジャンルノRのレーザー砲を一手に操作する砲撃手となる。ハエ叩きの技術を応用したその砲撃の腕前は百発百中の命中率を誇る。パンデミック事件で死亡するが、タクラマカン・ストレインジ・ラヴの治療でほかの署員と共に復活する。4年後の戦いでは、オーギュストに搭乗し、キリエとの戦いに赴く。オーギュストでも引き続き砲撃手として活躍している。
グロック
ルージンの息子。ピンクに近い赤い髪に、ピンクのメッシュを入れた少年。ルージンは育ての親で血のつながりはないが、彼を父親として慕っている。一方、マディガンとは親戚関係にあたるため、彼を「オジさん」と呼ぶ。マディガンのことはかなり嫌っており、いっしょにいるだけで不機嫌になる。その正体はマディガンと同じくウィドマックのクローン。自分ではヘブンサイダーに勝てないと悟ったマディガンが作り出して英才教育を施した武術の達人で、マディガンを超える力を持つ。ただし、グロック自身は勝手にクローンとして生み出したマディガンを恨み、彼と同じルーツであることを否定している。髪も本来はマディガンと同じ金髪だが、赤く染めている。マディガンの死亡後、彼の最後の頼みを聞き入れ、彼の記憶を受け入れる。その後はヘブンサイダーを倒すためマディガンの代わりとして、九ノ瀬宙太たちを導く存在となる。ニーナ・ミハイロヴナ・パーヴロヴァからは弟扱いされており、よく小言を言われている。マディガン以上の最強の武術「ウィドマック」の使い手で、対象をバラバラに溶かす奥義「溶爆裂技巧」も使える。ヘブンサイダーとの戦いではアルバと戦う。アルバとの戦いには敗北するも、彼を足止めして宙太を助けた。4年後の戦いではエルドライブに正式に所属し、太陽系署員の一人としてキエシとの戦いに参加する。久しぶりに再会する宙太をマディガンのコスプレで驚かそうとするも、ほとんど背が伸びなかったため、あっさり正体がバレる。最終決戦ではオープウェアに搭乗し、エルドライブ本部の大部隊と戦う。
マッケイ
ヘブンサイダーでサブリーダーを務める中年男性。冴えない風貌ながら、狡猾で強(したた)かな性格をしている。誕生日は2月5日。身長は178センチで、体重は81キロ。ヘブンサイダーのNo.2だが、これは仲間に入る際に条件として提示したもので、実力で手にしたものではない。そのためメンバーからは慕われておらず、特にチェリルとは折り合いが悪い。自分でも薄々ヘブンサイダーに馴染めていないのに気づいており、ノリを軽くしたりするが、基本的に空回りで終わっている。元政治家で、宙の設計図を手にしたあと、宇宙の支配権を約束されて彼らに力を貸す。ふだんは地球人のような姿をしているが、戦闘の際には変形し、大きなハサミをいくつも持つ、青い甲殻類のような姿となる。しかし、顔は冴えない中年男性のままのため、ミスマッチで非常に気味悪い姿となっている。体中からビームを出すなど戦闘能力は高いが、基本的に臆病者であるため自分より弱い者としか戦わず、強い者に対しては逃げ回る。ベロニカ・ボロズウィックやニーナ・ミハイロヴナ・パーヴロヴァを弱いと思って戦うが、思わぬ強さに驚き、そのまま倒される。なお、仲間思いのキングからもどうでもいいと思われていたらしく、キングがエルドライブと戦って散った仲間の名を呼んだ際、ペットのシャキオンですら呼ばれていたのに、マッケイの名前だけ呼ばれていない。
トランボ
ヘブンサイダーに所属する科学者の男性。大量の花を頭の部分に飾り付けた小柄な少年で、自らを天才と称する。誕生日は10月19日。身長は156センチで、体重は53キロ。メンバーの中でもっとも残忍な性格をしており、女性を殺すのを好む。そのため、女性体のチェリルからは嫌われている。天才と称するだけあり、数々のハイテク機械の操作ができ、情報の分析能力は高い。巨大犯罪組織デミルの中枢コンピューターを調べて、宙の設計図の在り処(か)が地球だと突き止める。地球ではわずかな手掛かりから、グリフィス星人の痕跡を探し出し、設計図の在り処を絞っていく。竹取山の遺跡に入った際、遺跡のトラップにはまり死亡。死の間際に、キング・ケーンに遺跡の深部に向かうための方法を伝える。
ヴァージル
エルドライブの太陽系方面署に勤める中年男性。階級は警部で、丸刈り頭に色黒い肌を持ち、面倒見のよい性格をしている。SPHの「ビバノイズ」は、ヴァージル自身を中心とした広範囲で機械を故障させる能力があり、地球ではカメラを使用不能にし、地球人から宇宙人の存在を隠すのに一役買っている。ビバノイズは非常に強力かつ広範囲だが、科学が進んだ文明の機械には効果がないため、ローカル地方の署に配置されている。家族思いなところがあり、現在も単身赴任で家族と会えずにいるため、家族の話になると涙もろくなる。息子と同じ年齢の九ノ瀬宙太をかわいがっており、愛情の裏返しとして時に厳しく宙太を指導する。パンデミック事件では、彼が宙太に宇宙遊泳の特訓をするように命じていたのが功を奏し、宙太たちを被害に巻き込まずに済む。パンデミック事件で死亡するが、タクラマカン・ストレインジ・ラヴの治療でほかの署員と共に復活する。死んだことになっているため、家族と会えない状況になっているのを嘆いている。4年後の戦いでは、オーギュストに搭乗し、キリエとの戦いに赴く。
E (いー)
双子の元B級犯罪者で、パーク兄弟の弟。恰幅のいい男性で、黒髪であること以外は弟のJとそっくりな姿をしている。窃盗を繰り返して逮捕され、地球を追放処分となっていたが、マディガンにトレーニング要員の一人として呼ばれる。彼の持つSPHは兄の撃退用SPHの臭いを中和する働きがあり、撃退用SPHの内側にドーム状の無臭空間を作り出すことができる。トレーニング用の土地確保のためSPHを使う。見た目どおりの大食漢で、つねに食べている。しかし、ベロニカ・ボロズウィックの攻撃を難なくかわすほど身軽で、機敏に動くことができる。地球のゲームが大好きで、ノリが軽く、享楽的な性格をしている。実はヘブンサイダーのアルバとつながっているスパイで、竹取山に宙の設計図があることを密かにアルバに伝える。しかしその後、エルドライブからの報復を恐れ、兄と共に自分から地球の警察に捕まるために逃げ出す。
キング・ケーン
ヘブンサイダーのリーダーを務める黒い髪の青年。一度眠りにつくと、髪に寝癖が付くまで起きない癖がある。誕生日は3月30日。身長は184センチで、体重は77キロ。ēl文明圏に存在するすべてを憎んでいるため、宙の設計図を手にしてēl文明圏すべてを消滅させることを目論む。仲間と家族を大切に思っており、物静かな性格をしているが、情は厚い。「偏頭痛」と呼ぶ不滅生命体を宿しているため、その戦闘能力は絶大。あまりの強さに、彼の存在そのものがヘブンサイダーの存在意義にして、心のよりどころとなっている。キング・ケーン自身も、亡き兄の遺言から偏頭痛を唯一無二のスペシャルな存在と信じており、彼の中で強さの象徴であり兄弟の絆そのものとなっている。しかし逆に言えば、それしか自分を証明するものがないともいえ、竹取山の遺跡でドルーと九ノ瀬宙太と戦った際、彼らが自分に並び立つ存在として成長した際には、それを認められずに大きく動揺する。実は彼の兄は運命を紡ぐ者の一人で、キングもマザーオブマザーズを生み出すために導かれたのが真相。宙太に偏頭痛を倒され、逮捕されたあとその真実を聞かされ愕然とする。
偏頭痛 (へんずつう)
キング・ケーンに取り憑く不滅生命体。グリフィス星人の遺産だが、共生体とは似て非なるもので、戦闘に特化した生命体だとされる。巨大な手を持つ黒いロボットのような形をしており、不可視の存在で、ほかの者には眼にすることはできない。その体は非常に頑強で、あらゆる攻撃をはじき、その攻撃はあらゆるものを粉砕する。ドルーのように意思疎通はしないが、感情はあるらしく、不機嫌になるとキングに頭痛を与える。そのため、キングからは「偏頭痛」と呼ばれている。キングが無敵といわれるのも偏頭痛の存在があるからで、偏頭痛の存在がキングを含めヘブンサイダー全員の心のよりどころとなっている。高い戦闘能力に不可視の攻撃を行うため非常に凶悪だが、ドルーと共生する九ノ瀬宙太には姿を見ることができる。ドルーを巨大化させた宙太と戦い、「ドルーバースト」を受け消滅する。
チェリル
ヘブンサイダーに所属する構成員の一人。黒髪ショートヘアのスタイルのよい少女の姿をしているが、かなり特殊な種族で決まった性別がなく、環境によって男にも女にもなることができる。現在は女性体の姿を取っており、彼氏探しをしている。誕生日は6月24日。身長は170センチで、体重は54キロ。ヘブンサイダー創設期からいる古参メンバーの一人で、キング・ケーン、アルバとは幼なじみの関係で信頼されている。九ノ瀬宙太が頼りなさげに見えて芯のある人物だと気に入っており、いくつもの危機的状況を奇跡的に乗り切った宙太に対して、偏執的ともいえる愛情を抱くようになる。高い格闘戦力を持ち、再会した宙太を一蹴するが、トドメを刺さずにあえて宙太を見逃している。宙の設計図を手にするため、キングと共に竹取山の遺跡深部に潜り込む。遺跡深部でのキングとアルバのやり取りで、アルバに疑念を抱くが、それを確かめる際にアルバに声を掛けたところ、彼から不意打ちを受け死亡する。
ベラルゴ
マザーズ直属監察官を務める中年男性。監察官の中でも地位が高い上級監察官で、黒い髪をオールバックにし、ナマズのようなヒゲを生やしている。地球人に近い外見をしているが、紫色の肌を持つ。内弁慶で傲慢な性格で、監察対象に対しては居丈高で嫌味な態度で接するが、自分が危機的状況に陥るとたちまち慌てふためいて周囲に助けを求める。エルドライブの太陽系方面署に紛れ込んだスパイを調査するため、太陽系方面署を訪れる。其方美鈴をスパイだと考え、彼女の取り調べを行う。しかし、実は部下のダリィ・ライムに利用されており、美鈴を捕まえたあと、監察官の権限を欲したダリィにだまし討ちされ死亡する。
J (じぇい)
双子の元B級犯罪者で、パーク兄弟の兄。恰幅のいい男性で、金髪であること以外は弟のEとそっくりな姿をしている。窃盗を繰り返して逮捕され、地球を追放処分となっていたが、マディガンにトレーニング要員の一人として呼ばれる。彼の持つSPHは強烈な臭いのある撃退用SPHで、おならとして放出し、そのひどい臭いによって嗅いだ宇宙人を撃退する。臭い臭いのSPHは数あれど、その中でも強烈なタイプで、SPHを認識できない地球人も無意識に臭いの空間を避けてしまうほど撃退効果が高い。トレーニング用の土地確保のためSPHを使う。見た目どおりの大食漢で、つねに食べている。しかし、ベロニカ・ボロズウィックの攻撃を難なくかわすほど身軽で、機敏に動くことができる。地球のゲームが大好きで、ノリが軽く、享楽的な性格をしている。実はヘブンサイダーのアルバとつながっているスパイで、竹取山に宙の設計図があることをひそかにアルバに伝える。しかしその後、エルドライブからの報復を恐れ、弟と共に自分から地球の警察に捕まるために逃げ出す。
アルバ
ヘブンサイダーに所属する青年。金髪ロングヘアの優男で、人当りがよく気さくな性格をしている。誕生日は1月20日。身長は186センチで、体重は80キロ。ヘブンサイダーの中では古参で、ムードメーカー的な存在でもあり、ほかの仲間やキング・ケーンからも信頼されている。見込みのある人間をヘブンサイダーに勧誘しており、マディガンやパーク兄弟といったスパイを各地に放っている。昇進試験中のベロニカ・ボロズウィックの前にも現れ、彼女を勧誘しつつ、大きなトラウマを与えている。ふだんは抑え込んでいるが莫大なSPHの持ち主で、力を解放しただけで、エネルギーが周囲を破壊する。戦闘では両手をさまざまな形で変形して戦う。黒いムチ状に変形させて対象を切り刻んだり、羽状に変化させて飛行したりと、その能力は多彩。竹取山の遺跡ではグロック、ベロニカ、ニーナ・ミハイロヴナ・パーヴロヴァの三人と戦うも、終始優勢で彼らを瀕死に追い込む。しかし、応援に駆け付けたレイン・ブリックに敗北する。実はキングに兄の遺言を伝えたのはアルバで、遺言を盾にキングの行動を誘導している。敗北後は遺跡深部に逃げ込み、キングを言葉巧みに焚きつけ、その行動を怪しんだチェリルを殺している。キング敗北後はエルドライブに逮捕される。
テレンス
4年後、エルドライブの太陽系方面署の新署長を務める初老の男性。40年以上仕事一筋に生きてきた実直な人物で、前任者のレイン・ブリックたち旧太陽系方面署の署員を反逆者として討伐する任を与えられていた。発進したオーギュストを発見するも、内心はキエシのやり方に疑問を抱いており、レインたちの様子を見たことでそれを確信へと変える。そのためオーギュストにも攻撃を加えず、現署員たちと共に敬礼をして彼らを見送っている。
タロ
エルドライブの太陽系方面署に勤める男性。黒い毛並みの狼男のような姿をした宇宙人で、刑事の仕事に対して強い情熱を抱いている。マディガンを尊敬しており、彼を「兄貴」と呼んでいる。トント・アート・トントとは恋人同士で、結婚の約束を交わしている。パンデミック事件ではレイン・ブリックとタクラマカン・ストレインジ・ラヴの付き添いで、ジャンルノRをたまたま留守にしていたため、感染から逃れることに成功する。しかし、トントと仲間たちが亡くなったことを知り号泣する。レインたちと共に地球の危機を知り帰還、ラヴのサポートとして、署員たちの治療を手伝う。4年後の戦いでは、オープウェアのパイロットに選ばれ、エルドライブ本部の軍勢と戦う。
シェロニモ
エルドライブの太陽系方面署に勤める宇宙人。階級は二等巡査で、緑色の肌を持ち、大柄な体型をしている。語尾に「シェロ」を付けたしゃべり方で、「任せろ」を意味する「マカシェロ」を口癖とする。太陽系方面署の転送係で、転送装置を使って署員を目的地にワープさせるのを役割とする。ただし、彼の転送はなぜかいつも真っ逆さまとなり、転移した瞬間、頭から地面に衝突することとなる。パンデミック事件で死亡するが、タクラマカン・ストレインジ・ラヴの治療でほかの署員と共に復活する。4年後の戦いでは、オーギュストに搭乗し、キリエとの戦いに赴く。
マディガン
エルドライブの太陽系方面署に勤める男性。捜査2課の課長で、九ノ瀬宙太たちの直接の上司にあたる。目つきが鋭い金髪の青年で、言動は落ち着いているが、任務を遂行するためには実力行使もいとわない強引な性格をしている。誕生日は10月4日。身長は183センチで、体重は73キロ。正義感は強いが、暴走しやすい一面があり、あまりに独断専行が行き過ぎたためレイン・ブリックに強制的に冷凍睡眠装置に放り込まれ、閉じ込められていた。パンデミック事件で太陽系方面署が全滅した際、レインにヘブンサイダーに対抗できる存在として目覚めさせられる。それ以降は生き残っていた宙太たちを率い、ヘブンサイダーと戦う。ēl文明圏では最強の武術家であるウィドマックのクローンで、ウィドマックが編み出した最強の武術「ウィドマック」を習得している。ウィドマックの奥義「溶爆裂技巧(ようばくれつぎこう)」は対象をズタズタに引き裂き、溶かす威力がある。SPHを使用した際には髪の一部がメッシュのようにピンク色となる。ヘブンサイダーを追跡するが、宙太にウソの報告をするように強要したり、事情にやたら詳しい情報屋とたびたび隠れて連絡していたり、怪しい行動が見られる。実はヘブンサイダーを倒すため、彼らの一人、アルバとつながり、二重スパイをしていた。かつてヘブンサイダーと遭遇した際に敗北し、実力差を痛感する。彼らの危険性を訴えるもエルドライブ上層部には取り合ってもらえず、ヘブンサイダーから宇宙を守るべく、あらゆる手段を講じていた。グロックもその一環で彼が生み出したクローンであるため、彼から恨まれている。宙太と特訓した際、彼の潜在能力に気づき、その才能を開花させるため、自らがヘブンサイダーのスパイであると悪役を演じ、彼に討たれる。そして自らの記憶と遺志をクロッグに託し、息を引き取る。
ダーシム
ヘブンサイダーに所属する筋骨隆々とした大男。青い肌をした宇宙人で、頭の部分に奇妙な枝が刺さっており、非常にインパクトのある姿をしている。誕生日は5月15日。身長は215センチで、体重は202キロ。その昔、とある戦闘で頭に枝が刺さった際に、神の教えと星のSPHをあやつる力を授かり、それ以降、神の教えに従って生きている。神の教えに敬虔なまじめな性格をしており、無益な争いは好まない。ヘブンサイダーの中でも仲裁役を買って出ている。ただし、キング・ケーンの命令には忠実で、仲間以外の存在には非情な面を見せる。戦闘では星をあやつる能力を展開することで、雷をあたり一帯にまき散らし、天変地異レベルの破壊をもたらす。また、その力を両の手に宿すことで、さらに破壊力を引き上げることが可能。竹取山の遺跡では九ノ瀬宙太と戦い敗北。実は脳みそが肩の部分にあり、最後の悪あがきで肩の部分を分離して不意打ちを行うも通じず、逮捕される。
リィリ
ヘブンサイダーに所属する少女。桃色の髪を長く伸ばし、目を隠した髪型をしている。ファッション好きで、いろんな服を着ている。最近は地球のファッションを好み、特にゴスロリファッションをよく身につけている。誕生日は3月1日。身長は155センチで、体重は50キロ。実は本来の肉体は赤い巨大なウミウシのような肉塊で、巨大な一つ目に、体中に口があるという醜悪な姿をしている。人間体は皮膚を服のようにまとったもので、口から舌を伸ばすように本来の体を出現させる。体内で大量の毒を生成しており、特殊な感染菌を生み出し、銀河中でパンデミック事件を引き起こした張本人。エルドライブ太陽系方面署にも、貨物船の副船長と身分を偽って潜り込み、署内でパンデミックを引き起こして署員たちを全滅させる。その後、パンデミックから逃れていたマディガンとの戦闘で溶爆裂技巧を食らって死亡する。
メリエス
エルドライブの太陽系方面署に勤める宇宙人。三日月形の体に顔が付いた姿をしている。ナルシストで物事を美醜で判断する癖がある。実はふだんは隠しているが筋骨隆々とした腕があり、腕を出すと顔に腕が付いた形となる。ただし、メリエス本人はこの腕がある姿を「美しくないフォルム」と嫌っており、ふだんはどうやっているのかは謎だが、跡形もないように隠している。実は手先が非常に器用で、パソコンのタイピングも目に見えないほど速い。SPH調査室に勤務しており、機械でSPHを調査して犯人を追跡する仕事をしている。ちなみに手を使わない場合は、アゴでパソコンを操作する。パンデミック事件で死亡するが、タクラマカン・ストレインジ・ラヴの治療でほかの署員と共に復活する。4年後の戦いでは、オーギュストに搭乗し、キリエとの戦いに赴く。
ハリー
エルドライブの太陽系方面署に勤める宇宙人。年齢は22歳で、階級は巡査。クリント星人という三角頭の小人のような姿をした宇宙人で、全身が黄色。まったく見た目が同じ数人の小人が、つねにいっしょにおり、「ハリー」という名前はこの小人一人一人の名前であるのと同時に、彼らの総称も兼ねている。コンピューターの扱いに長けており、ジャンルノRのオペレーターを務める。ドルーは、何人もいるハリーが分身のようだと考え、自らの分身を生み出す共生技を生み出すヒントとしている。パンデミック事件で死亡するが、タクラマカン・ストレインジ・ラヴの治療でほかの署員と共に復活する。4年後の戦いでは、オーギュストに搭乗し、キリエとの戦いに赴く。
メェル・リッグス
エルドライブの太陽系方面署で副署長を務める男性。年齢は38歳で、身長は212センチ。黒い金属質な肌を持つマーティン星人で、筋骨隆々とした大柄な体型をしている。100以上の格闘技を習得している武闘派で、現場からの叩き上げで現在の地位に就く。レイン・ブリックの右腕的な存在として、署員たちからも慕われている。ふだんは冷静沈着な性格をしているが、酒が大好きで酔うと饒舌家となる。二日酔いで体調を崩すことがよくあるため、酔い止めの薬を常備している。ヘブンサイダーの引き起こしたパンデミック事件で死亡するが、メェル・リッグスが飲んでいた酔い止めの薬が治療法確立のための大きなヒントとなる。その後、タクラマカン・ストレインジ・ラヴの治療でほかの署員と共に復活する。4年後の戦いでは、オーギュストに搭乗し、キリエとの戦いに赴く。
集団・組織
巨大犯罪組織デミル (きょだいはんざいそしきでみる)
銀河を股にかける巨大犯罪組織。大多数の構成員を抱え、独自技術の開発や戦艦を運用するほどの巨大組織で、彼らの犯行の結果、天体規模で被害が広がって惑星が死に至ることもあるほどの凶悪な存在となっている。刃を風車状に描いたような紋章を巨大犯罪組織デミルのマークにしている。構成員の体には「レコーダー」と呼ばれる機械が埋め込まれており、これによってつねに構成員の行動を監視している。任務に失敗したり、裏切った場合はすぐさま構成員の体を爆発させ、粛清する。構成員を殺した場所には、見せしめとして組織のマークを残すのが特徴。グリフィス星人の遺産発掘を目的としており、手段を選ばずに銀河中から彼らの遺産や情報を集めている。本拠地は氷の惑星、スコウ星で、本拠地にはレコーダーを統括する中枢コンピューター「マザー」が存在する。マザーはマザーズから切り離された個体で、単体でも高い処理能力があり、デミルはこれにレコーダーの全記録を保存している。レコーダーの記録を欲したヘブンサイダーの襲撃を受け、ボスと幹部は全滅し、組織も壊滅する。
ヘブンサイダー
ēl文明圏に属さない者たちで構成された謎の集団。ヘブンサイダーの名は「ēl文明圏外の者」を意味しており、宙の設計図を手にし、ēl文明圏を一掃することを目的としている。リーダーのキング・ケーンを含め、構成員はいずれも名だたる猛者ばかりで、宙の設計図を手にするため各地で暗躍している。巨大犯罪組織デミルを襲撃し、デミルのボスと幹部を皆殺しにする。そしてデミルの情報から宙の設計図は地球にあると推測し、地球に襲来する。目的のためなら手段を選ばない非情な集団で、地球ではエルドライブの介入を避けるため、リィリの能力で宇宙各地と太陽系方面署でパンデミック事件を引き起こし、宇宙を混乱の渦中に叩き落とす。
場所
竹取山 (たけとりやま)
九ノ瀬宙太の家の近所にある山。7年前、小学生だった宙太たちが遠足で訪れたところ、土砂崩れで足場が崩れ、宙太の友人であるグッチー、松太郎、ミチヨの三人が行方不明となってしまう。一人無事だった宙太は強い責任を感じ、この事件が宙太が消極的な性格となった大きな要因となっている。エルドライブに所属してからも、宙太はたびたびこの事件のことを思い出しており、彼の心を揺さぶっている。実は宙の設計図が眠る地で、竹取山の地下にはグリフィス星人が残した巨大な遺跡が存在する。設計図自体が強烈なSPHを放っているとされるため、竹取山周辺は超常現象が起きやすい環境となっている。宙の設計図を巡るヘブンサイダーとの戦いで、竹取山はダーシムによって吹き飛ばされ、遺跡の姿を露出することとなる。
エルドライブ本部 (えるどらいぶほんぶ)
エルドライブの本部がある人工星。太陽系から遠く離れた場所に存在し、金属でできた真っ黒な星が二つとなり合って宇宙を漂っている。二つの星はそれぞれ「執行星」と「居住星」と呼ばれるもので、居住星には1200万人にも及ぶエルドライブ署員と、その関係者が生活を営んでいる。エルドライブ本部はēl文明圏の社会と公共の秩序維持の中枢であるため、ēl文明圏中から人々が集まり、居住星はさながら「生物種のるつぼ」ともいえる。本部には大量かつ精強な戦力がそろっており、難攻不落の要塞と化している。4年後の戦いでは、レイン・ブリック率いる旧太陽系方面署を10万を超える無人機の大軍で迎え撃つ。
その他キーワード
エルドライブ
宇宙の平和を守る治安維持組織。その活動方針にはマザーズが深くかかわっており、署員の選定から活動方針の決定までマザーズの思惟が反映されている。宇宙の各地に存在し、地球のような宇宙人の存在に気づいていない惑星も、宇宙犯罪者のターゲットとなることがあるため、エルドライブの活動範囲となる。ただし、地球のような科学技術が遅れた惑星はローカル署扱いされている。地球の宇宙犯罪の取り締まりを担当する太陽系方面署は、「ジャンルノR」と呼ばれる宇宙船を署として運用しており、ひそかに地球上で宇宙犯罪者の取り締まりを行っている。活動は基本的に地球人には秘密で、宇宙人の痕跡を消したり、地球人の記憶を操作したりしている。階級は地球の警察と同様。現行犯の逮捕の場合は荒事にもなるが、基本的に宇宙人の戦いはSPHを用いた戦いとなるため、署員に武器の支給は行わない。署員は「了解」を意味する返事として「ヨーヨーサー」という掛け声を使う。
SPH (えすぴーえいち)
宇宙人が分泌する特殊な分泌物。「SPH」は「スペース・フェロモン」の略称で、地球人には見ることも、嗅ぐこともできない特殊なフェロモンとなっている。それ自体が特殊なエネルギーを発しており、「暗黒エネルギー」とも呼ばれる。人間の指紋と同じく、一つとして同じものはないため、エルドライブはSPHを分析することで犯人の特定や追跡も行っている。また、SPHは固有の能力を備えていることも多く、種類によっては攻撃や防御、対象の心理に働きかけるなどさまざまな効果を及ぼすことができる。SPHは一つとして同じものはないが、遺伝子と同じくある程度は子孫に受け継がれるため、似たものは存在する。ただし同じ遺伝子を持つクローンであれば、同じSPHを持った者が誕生する。
なみぬい
ドルーの放つ共生技。九ノ瀬宙太とドルーが初めて習得した共生技で、宙太の特技である裁縫のイメージをもとに編み出された。糸状の物体をドルーの口から放ち、敵を縫い詰める効果がある。またこの糸は攻撃以外にも使え、味方や民間人が危機に陥った際に、糸を使った救出にも利用されている。
マザーズ
「宇宙最高の叡智」とも称される思惟システム。「マザー」と呼ばれる宇宙生物が特殊なネットワークを構築することで稼働するシステムで、未来予知にも等しい高い演算能力を持つ。「マザー」の名のとおり、女性しか存在しない。マザー単体でも生体コンピューターとして非常に優秀で、巨大犯罪組織デミルは多大な犠牲を払ってマザーを手に入れ、自分たちのメインコンピューターとして使用している。マザーズの中枢には、ネットワークを構成する要となる「マザーオブマザーズ」と呼ばれる特別な個体が存在する。マザーオブマザーズはマザーズを稼働させるための「場」を形成する重要な役割を持っているが、その素質を持つ者は数百年に一度しか誕生しない。現在は数百年以上にわたって新たなマザーオブマザーズの素質を持つ者が現れていないため、年老いたマザーオブマザーズの能力は大幅に劣化、マザーズの処理能力は全盛期の10分の1にも満たないとされる。
マザーズ直属監察官 (まざーずちょくぞくかんさつかん)
エルドライブの監察を役割とする職業。マザーズによってエルドライブとはかかわり合いのない人物の中から選出され、エルドライブの内部犯罪や不祥事の捜査、会計監査、スパイの調査などを主な仕事とする。マザーズ直属監察官には上位の権限を持つ上位監察官がおり、上位権限であれば各方面の署のメインシステムにもアクセスができる。
SPHカーテン (えすぴーえいちかーてん)
特殊な装置。特定のSPHのみをカットし、その臭いを遮断する機能がある。九ノ瀬宙太が急激に成長し、そのSPHの臭いを嫌うようになった其方美鈴が装着する。美鈴が付けたものはヘアピン型で、薄紫色の三日月の形をしているが、美鈴はデザインが子供っぽいと気に入っていない。実は美鈴の失われた記憶に関係するもので、幼い頃の美鈴もこのSPHカーテンを付けていた。エルドライブ本部に保管されていたが、タクラマカン・ストレインジ・ラヴが本部と取引を行って回収し、美鈴のもとに行くよう手配していた。美鈴がマザーオブマザーズに覚醒し、その運命を受け入れた際に髪からはずれてその場に残っていた。実はSPHカーテンはその機能を発揮するために、カットする対象のSPHをセットする必要がある。美鈴は宙太とドルーのSPHをカットするために、彼らのSPHをセットしていたため、SPHカーテンにはドルーの細胞が保存されていた。SPHカーテンはレイン・ブリックによって回収されており、4年後の世界ではドルーが復活するための鍵となる。
ジャンルノR (じゃんるのあーる)
エルドライブの太陽系方面署が保有する最新鋭の宇宙船。太陽系方面の警察署そのものとして扱われており、内部には事件の捜査に必要な設備が備えられている。全長195.5メートル、全幅315.3メートル、全高89.1メートル。色は白を基調とし、羽を広げた鳥のような姿をしている。船内には12兆種類の宇宙人に適した気体「ブレンドエア」に満たされ、また意思疎通のための言語を共通化する「翻訳チップ」がブレンドエアと共に浮遊しており、あらゆる種族の生存・交流に配慮された造りとなっている。製造はビクトリゼ社によって行われたが、その開発指揮はキエシが務め、設計はマザーの思惟が深くかかわっている。そのため、キエシによって実はひそかに自爆装置が組み込まれており、パンデミック事件後、その正体を現したキエシによって破壊されてしまう。完全に破壊され墜落してしまうが、4年後に新造されたオーギュストにはジャンルノRのメインブリッジが受け継がれている。
先見の瞳 (せんけんのひとみ)
レイン・ブリックの右目。未来を見通す力を宿した瞳で、10秒先の未来をかいま見ることができる。若かりし頃のレインはこの力で海賊の棟梁となり、「運命」は自分が引き当てた楽勝な人生だと思っていた。しかし其方美鈴と出会った際に、先見の瞳が美鈴のSPHの影響を受け暴発。美鈴の過酷な運命を見たことで、レインは己の生き方を恥じ、美鈴を守ることを誓った。それ以降、レインが干渉することで先見の瞳が見せる美鈴の未来は変わり続けており、その中に美鈴と自分がエルドライブに入り、笑顔でいる美鈴の未来を見つける。レインはその未来を選び取り、エルドライブ入りを決める。折しもその直後にレインは海賊としてエルドライブに捕まり、マザーズはマザーオブマザーズの経年劣化によって大幅に衰退していたため、その穴を埋めるべく先見の瞳を欲していた。レインは瞳を引き渡すのと引き換えに、自分のエルドライブ入りと美鈴を部下にすることを交換条件に出す。先見の瞳はレインから摘出後マザーズの手に渡るが、レインから切り離されていても体調は連動しており、レインが死んだり、体調が不安定になるとその力を発揮できなくなる。そのためマザーズ側も交換条件を受け入れ、レインを太陽系方面署の所長とした。現在のレインは先見の瞳のSPHが視神経に残り香のように存在し、わずかだがその力を使うことができる。一方、マザーズはその処理能力と先見の瞳を連動することで、宇宙中の未来を望む方向に導くことすら可能で、新たなマザーオブマザーズ誕生のため暗躍している。4年後の世界では、レインの右目が再生し、その力を取り戻しつつある。一方、マザーズ側の先見の瞳は酷使され続けたため、その力を失いつつある。レインとキエシは先見の瞳を用いて、お互いの望む未来を読み合う戦いを繰り広げる。
ēl文明圏 (えるぶんめいけん)
高度な文明の星で形成された星団および銀河を指す言葉。F・トリュフ・フォウが提唱した概念で、知的生命体の存在効率や科学文明の発達度など、813の項目をクリアした文明が認められ、加入することとなる。文明の成熟度は、宇宙に存在する全物質のうち解明できた物質がいくつあるか、その数によって分類されている。地球はその基準を満たしておらず、未だēl文明圏に認められていない。そのため、ēl文明圏に属する者が過度に地球に干渉するのは法律で禁止されている。しかし、宇宙人の中にはその法を破り、地球で犯罪行為を冒す者も存在するため、地球もエルドライブの管轄範囲となっている。
異時空層の粒 (いじくうそうのつぶ)
特殊な空間「異時空」を発生する拳大の粒。SPHが異様に集中する空間「フェロモン昇降群」でグッチーが見つけ、その在り処を九ノ瀬宙太に伝えた。粒の周囲には神経伝達SPHが超高速で渦巻いており、通常の時間の概念には囚われない異なる時空を生み出している。宙太もこの粒を手にする際に、過去のグッチーの姿を見ており、粒の内部では時空を超えた光景を身にすることができる。また、この異時空は通常の時間の概念が通用しないため、異時空内部の光景は先見の瞳でも見通すことができない。4年後の世界で、グッチーからメッセージを受け取った宙太が、フェロモン昇降群で粒を手に入れることに成功し、先見の瞳で苦しめられていた宙太たちを大いに助けることとなる。
オープウェア
タクラマカン・ストレインジ・ラヴが4年後の戦いで開発した新兵器。名前は「場違いな兵器」を意味する「OUT OF PLACE WEAPON」を略したもので、グリフィス星人の残したオーバーテクロノジーを再現した兵器であり、現行兵器を圧倒する絶大な戦闘能力を持つ。ラヴがスカーレットの遺品の研究成果を使って生み出したもので、材料には4年前に採取したドルーの細胞が使われている。全部で4機作られ、パイロットはグロック、ベロニカ・ボロズウィック、ニーナ・ミハイロヴナ・パーヴロヴァ、タロが選ばれた。それぞれの機体はパイロットに合わせて、武器や人工知能がデザインされている。理論上はパイロットの力を数百倍に高め、数の不利を一気に跳ね返すポテンシャルを持っているとされるが、未完成品で現在の技術ではドルーからSPHの補給を受けなければ稼働しない。それに加えて、SPHを満タンに補充しても最大稼働時間は30分と短いなど、欠点が存在する。また、ラヴは九ノ瀬宙太とドルーの関係を目標として開発しており、オープウェアにはそれぞれにも共生体と同じく意識が存在する。そのため、オープウェアときちんとコミュニケーションを取り、共感しなければ起動すらしない仕様となっている。
宙の設計図 (そらのせっけいず)
グリフィス星人が残した遺産。全宇宙の仕組みを紐解き、記しているとされている。宙の設計図を手にしたものは星の生き死にから、銀河の配置まですべてを思うままにあやつることができるとされる。その正体はマザーズの中枢ユニット「マザーオブマザーズ」そのもの。マザーズを形成するためになくてはならない存在で、「姿なき中心」とも呼ばれる。現在のマザーオブマザーズは深刻な老朽化で機能が10分の1以下まで落ち込んでおり、新たなマザーオブマザーズが求められている。宙の設計図は新たなマザーオブマザーズを生み出すための計画ともいえ、マザーズが先見の瞳でマザーオブマザーズを生み出す未来を計算し、「運命を紡ぐ者(スピナー)」と呼ばれる者たちがマザーズの計算通り運命を操作することで、マザーオブマザーズの素質を持つ者たちを導いてきた。宙の設計図が全宇宙を意のままにあやつれるというのも、キング・ケーンを思いどおり動かす方便にしか過ぎなかった。
タクラマカン計画 (たくらまかんけいかく)
タクラマカン・ストレインジ・ラヴが行った計画。他者のSPHを移植することで、人格の修正を試みる実験だったが、大量の被験者が死亡したことでタクラマカン計画は中止に追い込まれる。其方美鈴も実験の被験者の一人で、記憶を失い、後遺症で薬なしでは生きられない体となっている。なおその事実を知る人間は数少なく、美鈴自身も知らずにいる。イサク教授も環境適応用の薬と偽って、彼女に後遺症を抑える薬を渡している。実験を行ったのはラヴだが、彼に実験を強要したのはエルドライブの上層部。ラヴは美鈴を健康体に戻すつもりだったが、上層部はそれを拒絶している。
グリフィス星人 (ぐりふぃすせいじん)
40億年以上前に栄えていた種族。現在は滅んでしまっているが、高度な文明を持っていたとされ、共生体など彼らが存在した名残が宇宙各地で発見されている。彼らの持っていた技術は現在でも完全には解明されておらず、グリフィス星人の遺産は今も科学者たちによって日夜研究されている。グリフィス星人はマザーズとも深いかかわり合いのある存在で、マザーオブマザーズはマザーの選んだ娘と、グリフィスで最強の「芽」が交わることで誕生する。グリフィスの芽は、グリフィス星人の遺した共生体が進化の到達点に達することで生まれるとされる。
オーギュスト
4年後にエルドライブの太陽系方面署の旧署員たちが建造した新造の宇宙船。沈没したジャンルノRの面影を色濃く持つ船で、メインブリッジはジャンルノRとまったく同じ造りとなっている。海底基地で秘密裏に建造され、キエシとの決戦の際にその姿を現す。タクラマカン・ストレインジ・ラヴが開発した新ステルスSPH、別名「Dr.ラヴJr.」を搭載しており、高い航行能力とステルス能力を併せ持つ。