あらすじ
第1巻
江戸にある古河藩の上屋敷に呼ばれた佐々木類は、藩主の土井勝利から、婿を取らずに傾奇者と辻勝負で刃傷沙汰の喧嘩を繰り返していることを叱責される。翌日、類は自分の道場で門下生に指導した後に、門下生の1人の中瀬古早和と一緒に出かけると、少し前の喧嘩で打ちのめした関係者たちに取り囲まれてしまう。喧嘩が始まる直前に類と居酒屋で知り合った切鵺が助太刀に入り、3対16と圧倒的に不利な状況にもかかわらず、あっという間にすべての相手を倒す。喧嘩後に類、早和、切鵺は団子屋に立ち寄って、早和の発案で仲良しグループ「団子三別式」を結成。のちに類の幼なじみの成田魁も加えて「団子四別式」を結成して、4人で行動することが多くなる。
第2巻
1637(寛永14)年の10月に起こった島原の乱で父親が死亡し、中瀬古早和は国元の島原にいる家族を養うために帰郷。仲良しグループ「団子四別式」のムードメーカーだった早和がいなくなったので、佐々木類、成田魁、切鵺はそれぞれ気落ちして、互いに疎遠になりつつあった。しかし、そんな状況を心配した九十九は年長者としてアドバイスを送り、そのおかげで3人は早和がいた時と同じ関係に戻るのだった。そんな中、類の道場に通う佐目慎太郎の父親で奉行所に務める佐目慎之進と、慎之進と同じ奉行所に務める久慈直亮が相次いで殺される事件が発生する。
登場人物・キャラクター
佐々木 類 (ささき るい)
江戸で道場を開いて剣術を教える女性。年齢は20歳。古河藩で武芸指南役を務めていた父親から剣術を教わっており、剣の腕は並みの侍では太刀打ちできないほど高い。父親が嫡男に恵まれないまま死亡したため、佐々木家は断絶しており、婿を取って佐々木家復興を目指している。しかし婿の条件を「イケメンで自分より強い」としているため、婿の目処はたっていない。 やや古風な考えの持ち主で、自分より強い男性しか認めていない。本音がすぐに顔に出るので隠し事ができない。認めた男性に押し倒されて、身体を蹂躙されたいという願望がある。
土井 勝利 (どい かつとし)
古河藩十六万石の藩主の男性。徳川家を代々支えてきた老中を務めている。父親が亡くなって家も断絶し、未だに独身の佐々木類に、婿候補を何人も紹介する。普段は真面目な性格だが、カツラを被って若作りし、城下町に繰り出して合コンするなど、お茶目な一面もある。また全国各藩の蹴鞠倶楽部で組織された蹴鞠ーグに所属する、古河比丘斗利亜(こがビクトリア)のチームオーナーも務めている。 合コンに参加する時や藩主としての身分を隠している時は「カッくん」を名乗る。
九十九 (つくも)
名門藩士の出の男性。古河藩主である土井勝利から信頼されており、極秘任務を受けたり、勝利が城下町に繰り出す時は護衛役を担う。普段は飄々とした性格で、女性に気軽に声をかけるなど、軟派で不真面目な態度ながら、実は凄腕の暗殺者の襲撃をいとも簡単に防ぐほどの達人。周囲の人間のちょっとした雰囲気の違いに気づくなど、心身ともに優れている。 親しい人間以外には「白」と名乗っている。
成田 魁 (なりた かい)
別式女(べつしきめ)の筆頭を務める女性。年齢は20歳。江戸にある古河藩上屋敷で奥の間を警護している。佐々木類とは幼なじみ。小さい頃からあらゆることで勝てない類にコンプレックスを抱き、人付き合いが苦手なこともあって、類とは疎遠となっていた。上屋敷での再会をきっかけに、類との関係が復活する。冷静な性格ながら、好意を寄せる九十九のことになると、たまに暴走してしまう。 また記憶がなくなるほど酒に酔っぱらうと、類でも手に負えないくらいの剣さばきを見せる。
中瀬古 早和 (なかせこ さな)
島原藩で別式女(べつしきめ)を務める女性。年齢は20歳。江戸にある島原藩の屋敷に滞在中に、佐々木類の道場に入門する。香取神道流の使い手で、棒術の腕は非常に高い。語尾に「っす」を付けてしゃべる。人懐っこい性格で、誰とでもすぐに友達になれる。類が居酒屋で知り合った切鵺とも、あっという間に打ち解け、類、中瀬古早和、切鵺の3人で仲良しグループ「団子三別式」を結成して永遠の仲間の契りを結ぶ。 グループに成田魁が加わって「団子四別式」となると、持ち前の明るさとアクティブさでグループのムードメーカー的存在となり、箱根の温泉旅行などを企画する。島原藩および唐津藩天草で起こった島原の乱により、島原城勤めの父親が死亡すると、父親の代わりに家族を養うために、別式女を辞めて国元に帰った。
切鵺 (りや)
佐々木類が居酒屋で知り合った飲み友達。四国丸亀藩の出身で天涯孤独の身。名字を捨てて渡来人となって、親の仇である岩渕源内を探している。性別は男性だが、顔や体つきは女性と変わらず、女性のほうが色々メリットが多いため女性として振舞っている。類、中瀬古早和、成田魁と仲良くなった時も性別を偽っていたが、3人が自分のことを仲間と見てくれていることを知って、カミングアウトする。 言葉使いは荒いが、自分と同じ身寄りのない子供たちに蹴鞠を教える姉御肌の人物。
田口 家寿多亭 (たぐち いえすたてい)
佐々木類が、中瀬古早和に頼まれて参加した合コンで知り合った男性。貸本絵師をしており、似顔絵を描くのが得意。「多苦労」という名前で同人環(サークル)「砲槍刀」の代表を務め、毎年夏に江戸前海上で行われる同人紙即売会「草双紙市」にも参加している。
岩渕 源内 (いわぶち げんない)
狐目が特徴の男性。「生きることは素晴らしいが、積み上げてきた1つ1つの刹那を忘れてはいけない」を信条とし、常に刹那を感じて生きている。切鵺の目の前で切鵺の母親を犯して父親を殺したため、切鵺から行方を追われている。また九十九にも、江戸と幕政を探る密偵として行方を追われている。
刀萌 (ともえ)
辻占い師の女性。柔和な容姿と穏やかな口調に、人を包み込むような魅力があって、周囲の人間からは「日本橋の母」とも呼ばれる。ペットのモモンガが落とした紙を、二刀の居合いで斬り刻んで占う。剣捌きは素人とは思えないほどで、刀萌は、昔加わっていた旅芸座で教わった大道芸だと説明するが、正体は凄腕の暗殺者。依頼人とは占い師の時に仲介人として会っている。
佐目 慎太郎 (さめ しんたろう)
佐々木類に師事する少年。類が剣客と戦っていた姿を見て衝撃を受け、父親の佐目慎之進を説得して、類の道場に通い始める。類を師匠として尊敬し、さらに女性として好意を寄せる。父親が殺された事件が解決後、残された家族は安房国にいる親戚の家に引っ越したが、佐目慎太郎は類の道場に住み込んで下働きと修行を行う。