勝利の朝

勝利の朝

殺人の罪を着せられた少年たちが、無実を訴えて弁護士とともに戦う姿を描いた社会派作品。えん罪事件をテーマに、警察や弁護士の実態が綿密に描かれる。横川和夫・保坂渉共著の『ぼくたちやってない』を参考文献としており、コミックスには他に吉池康之、大下宏を主人公とした外伝エピソード「テープは語る」も収録されている。

正式名称
勝利の朝
ふりがな
しょうりのあさ
作者
ジャンル
社会問題
レーベル
コミック文庫(女性)(小学館)
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概要・あらすじ

学校に居場所のない森下祐二田島光夫金子隆の3人の少年たちは、近所で起こった殺人事件の現場を見物に行ったことをきっかけに、警察に拘束され、嘘の自白をさせられてしまう。少年鑑別所に入れられ審判の日を近くに迎えたある日、少年たちの家族の働きかけで、少年弁護に長けた吉池康之弁護士が彼らの前に現われる。

吉池を中心とした弁護団と少年たちの真実を求めた戦いが始まる。

登場人物・キャラクター

森下 祐二

事件当時は中学3年生で、中学卒業後はガソリンスタンドで働いていた少年。審判にかけられる時点では16歳になっている。外見は少し長めの髪できつい表情をしているが、口下手で誤解されやすい性格。小学生の頃からの友達の田島光夫、金子隆といつも一緒におり、光夫、隆とともに強盗殺人の容疑者とされている。朝野茂、川内秀次の執拗な取り調べに殺人を認める自白をして、少年鑑別所に入れられた。 審判の直前、少年たちの家族の依頼により吉池康之率いる弁護団が結成され、無実の罪を晴らすために戦うことになる。中学校は不登校になっていたが、わずかながら関わりを持った立花、中島はるみ、中谷保らからは応援されている。

田島 光夫

事件当時は中学3年生で、中学卒業後は配送業の助手をしていた少年。森下祐二、金子隆とともに強盗殺人の犯人とされているが、体つきが非常に小さく、気の弱い少年。殺人事件があった団地に興味本位で見物に行き、目立ちたいという単純な理由で人影を見たなどと証言したことで、殺人の容疑をかけられてしまった。朝野茂、川内秀次の執拗な取り調べを苦に自殺を考えるほどに追い詰められてしまう。 少年鑑別所に入れられ、審判にかけられる時点では16歳になっていたが、少年たちの家族の依頼により吉池康之率いる弁護団が結成され、大下宏が担当についた。

金子 隆

事件当時中学3年生で、中学卒業後は塗装工の見習いをしていた少年。森下祐二、田島光夫とともに強盗殺人の犯人とされている。ずんぐりとした体型で、当時はデコトラに憧れていた。朝野茂、川内秀次の執拗な取り調べに殺人を認める自白をして少年鑑別所に入れられたが、殺人事件のあった当日は塗装のアルバイトで、「竹中塗装」の山村貢と一緒に駅ビルで外壁塗装の仕事をしていたというアリバイがある。 少年鑑別所に入れられ、審判にかけられる時点では16歳になっている。

吉池 康之

主に少年弁護を手掛ける弁護士。七三分けの髪型に眼鏡をかけた真面目な印象の持ち主で、非常に正義感の強い中年男性。吉池法律事務所の所長で「子どもの人権弁護団」の事務局長を務めている。森下祐二、田島光夫、金子隆の家族の訴えで、彼ら3人が容疑者となった殺人事件の弁護団の責任者となり、大下宏、安倍などを招集する。 祐二が安倍に心を開かなかったため、のちに祐二の担当弁護をすることとなる。

大下 宏

主に少年弁護を手掛ける弁護士。少年の聞き取りの腕が抜群で、少年と同じ目線で話す若い男性。明るく正義感の強い性格。事務所の女性からは、大下宏本人が子供っぽいから子供に信用されるのだと言われたりしている。吉池康之に少年弁護の腕を買われて、田島光夫の弁護を任される。

須田

主に少年弁護を手掛ける若い弁護士。真面目な性格で、眼鏡をかけた男性。吉池康之の依頼により金子隆の弁護を担当し、山村貢にアリバイ証言を頼んだ。山村が警察に拘留されたことで証言が覆りそうになったため、山村を警察から取り戻すべく奔走する。

安倍

主に少年弁護を手掛ける弁護士。眼鏡をかけた小太りな中年男性。吉池康之の依頼により森下祐二の弁護を担当したが、祐二に心を開いてもらえなかった。そのため、最終的には吉池に祐二の担当を交代する。

山村 貢

「竹中塗装」に勤める塗装工の30歳の男性。パンチパーマにひげ面で、派手な柄シャツを着ている。事件当日は金子隆とともに駅ビルで外壁塗装の仕事していた。吉池康之から依頼され、事件当日の隆のアリバイ証言をするが、のちに警察に拘留され、証言を撤回するように朝野茂、川内秀次の執拗な取り調べを受けることとなる。

朝野 茂

42歳の男性刑事。短髪で、ネクタイはせずにジャケットを羽織っている。威圧的な性格で、森下祐二、田島光夫、金子隆を暴力と恐怖で支配し、嘘の自白をさせた。山村貢が隆のアリバイを証言した際には、山村も拘束して怒鳴り散らし、証言を撤回させようとする。

川内 秀次

朝野茂と組んでいる、28歳の男性刑事。朝野の暴力や恫喝に協力し、森下祐二、田島光夫、金子隆を追い込んだ。また、隆のアリバイ証言を撤回させるため山村貢を拘束した際にも、朝野に協力した。しかし証言台で吉池康之に執拗に質問された時はひどく動揺し、良心の呵責を感じる。

橋上

捜査一課課長の男性。森下祐二、田島光夫、金子隆が無罪になった後に吉池康之が司法記者クラブで警察に猛省を促すコメントを出したのを受け、記者会見を行った。あくまでも捜査は適切に行われ、無罪が決定した後も、祐二、光夫、隆らが犯人であることを確信していると主張した。

森下祐二の父親

森下祐二の父親。気が短く、すぐに怒鳴る。祐二がクラスメイトに苛められて学校を休んだ時も、理由を聞こうとせずに殴った。しかし、すぐに大声や手が出るのは思ったように話せない口下手な性格のせいであり、祐二が口下手なのも父親に似たため。

立花

森下祐二の中学の現国教師。穏やかな壮年男性で、祐二の担任ではなかったが、夏休みに本を10冊以上読んだ祐二のことを褒めていた。吉池法律事務所を通して祐二に応援のハガキを出した他、中島はるみ、中谷保など、祐二を信じている仲間の署名を集めて彼のことを支える。

中島 はるみ

森下祐二の中学の同級生で、クラス委員長だった女子生徒。祐二がクラスメイトと喧嘩し大怪我をさせた時の様子をよく見ていて、祐二からは手を出していなかったことを証言した。立花が祐二宛てに出した応援ハガキに署名し、がんばってとコメントを添えた。

中谷 保

森下祐二の中学の陸上部の仲間で、黒髪をツンツンに逆立てたいかにもスポーツマンといった風貌の少年。祐二とは一緒に朝練などもしており、偏見なく付き合っていた。祐二が学校で一番の俊足であることも認めており、祐二が先輩のスパイクを盗んだ嫌疑をかけられた時にもそれが誤解であると証言した。立花が祐二宛てに出したハガキに、応援の意味を込めて署名した。

木島

最初に森下祐二たちを担当した弁護士。眼鏡をかけて頭髪がやや薄く、やる気のない間延びした話し方をする。少年たちの家族から、もう一度少年たちと会ってくれと言われても、調書を読み直すのすら面倒だと取り合わなかった。

クレジット

監修

吉峰康博 , 木下淳博 , 須納頼学

書誌情報

勝利の朝 小学館〈コミック文庫(女性)〉

(2011-09-15発行、 978-4091930293)

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