あんずちゃんの日常を描いたハートフルコメディ
本作の主人公、中村あんず(あんずちゃん)は、2本足で歩く32歳の化け猫。立ち小便をしたり人前でおならをしたり、見た目は猫だが中身は普通のおっさんである。そして、マッサージやテキヤの仕事をする他は、基本ぶらぶらしており、様々な人達と交流していく。例えば、あんずちゃんをアニキと呼ぶ小学5年生の不良二人組や、川のパトロールのバイトで知り合った哀愁あふれる中年男性、テストの点数が悪くて悩む中学生などである。本作は、日々の悩みを抱えた人々との出会いと、時に彼らを助けるために一肌脱ぐあんずちゃんの姿を描いた、ハートフルなコメディ漫画である。
不思議な物の怪たちも多数登場
あんずちゃんはおっさんのようでも、やはり化け猫である。人間に見えない物の怪(け)の類が見えるのだ。何をやってもうまくいかない友達の吉田(よっちゃん)の家を訪ねたあんずちゃんは、そこに貧乏神の姿を発見する。意を決したあんずちゃんは、貧乏神と膝を突き合わせて談判し、負けたほうが町を去るという条件で、ある賭けをする。また、森の妖精のピーピーちゃんや、広い地下道に住む大妖怪のカエルちゃんなど、不思議な存在も数多く登場する。本作は港町を舞台にした人間ドラマだが、小学生に向けた漫画らしく、ファンタジックなストーリーも魅力である。
登場人物・キャラクター
中村 あんず (なかむら あんず)
32歳のオスの化け猫。携帯電話を首からぶら下げている。幼少時、段ボールに捨てられていたこところを、草成寺のおしょーさんに拾われ、大切に育てられた。30年を過ぎても元気で、いつの間にか化け猫に変身。2本足で歩き、人の言葉を話すようになり、おしょーさんの養子になる。マッサージの仕事をしているが、顧客は弦巻というおじいさんだけである。また、祭りの日にはテキヤの仕事もしている。毎日ぶらぶらしているが、おしょーさんやおかみさんには感謝の気持ちを抱き続けている。通称は「あんずちゃん」。
おしょーさん
草成寺の住職の中年男性。ハゲ頭とちょびヒゲが特徴。32年前の嵐の夜、捨て猫だったあんずちゃんを拾って育てる。一人息子の哲也は、プロレスラーを目指して家を出てしまい、寺の跡取りに困っている。川鵜からアユを守るアルバイトをあんずちゃんに紹介した。
吉田 (よしだ)
川鵜からアユを守るアルバイトであんずちゃんと知り合った中年男性。ハゲ頭と口ヒゲ、ずんぐりした体型が特徴。一流企業のホームセンター「ドナベ」に就職が決まるが、若い上司の厳しい指導に耐えられず一日でクビになってしまう。じつは貧乏神に取り憑(つ)かれており、やる気もお金もない生活を送っている。あだ名は「よっちゃん」。
カエルちゃん
裏山に広大な地下道を掘って暮らしているカエル。2本足で歩き、言葉を話す。自ら大妖怪を名乗っている。あんずちゃんと知り合いになり、地蔵やタヌキ、キノコのおじさんといった妖怪たちと、草成寺に遊びにきた。