十十虫は夢を見る

十十虫は夢を見る

長期連載となった幹本ヤエの代表作。昭和4年、帝都と呼ばれた時代の東京を舞台にしている。無意識のうちに他者の夢に侵入し、必ず的中する「お告げ」を授ける異能を持つ高校生の高月英兒が夢と現のあいだから、さまざまな事件の解決に奔走する姿を描いたミステリ仕立ての昭和モダン・ファンタジー。関東大震災の被災者遺族、発声映画の勃興により立場が危ぶまれている活動弁士など、この時代ならではのキャラクターが各エピソードのキーパーソンとして登場するのが特徴となっている。若き日の榎本健一や浅草公園水族館など、実在の有名人や観光地が登場するエピソードもあり、往時の空気感を味わうことができる。また、高月と喫茶「十十虫」のウェイトレス、叶美和子の惹(ひ)かれ合っているのに素直になれない焦(じ)れったい恋模様も見どころとなっている。なお、連作短編形式が採用されており、多くのエピソードは1話完結だが、中には2話以上のボリュームで構成されたエピソードも存在する。秋田書店「ミステリーボニータ」2010年4月号から2018年8月号まで連載の作品。

正式名称
十十虫は夢を見る
ふりがな
てんとうむしはゆめをみる
作者
ジャンル
推理・ミステリー
 
異能力・超能力
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概要・あらすじ

登場人物・キャラクター

高月 英兒 (たかつき えいじ)

本郷區の喫茶「十十虫」に入り浸る男子高校生。色白で睫毛(まつげ)が長く、人気女優に一目惚(ぼ)れされるほどの容姿ながら、「血色の悪い女顔」とも評されている。いつも学生服で、学生帽やマントを身につけている。早退と遅刻の常習犯で、運動が苦手。珈琲(コーヒー)を飲みながらの読書を何よりの楽しみにしており、進級を心配されるほど店に通い詰めている。他者の夢に現れて必ず的中する「お告げ」を授ける能力が備わっているが、発動は無意識で、その内容は高月英兒自身の記憶にはまったく残らない。夢で得た情報を頼りに、現実の高月に会うために十十虫を訪ねる者は多く、そのまま事件に巻き込まれるのがお決まりのパターンとなっている。ウェイトレスの叶美和子とは喧嘩(けんか)が絶えず、迷惑客番付の1位に選ばれるほど嫌われていた。しかし、協力してさまざまな事件を解決するうちに、互いを意識する関係となる。なお、夢の高月は現実よりも男前と評判で、本物を見て落胆する者も少なくない。蛙(かえる)が大嫌いで、飛びつかれて気絶したこともある。

叶 美和子 (かのう みわこ)

本郷區の喫茶「十十虫」のウェイトレスを務める少女。セミロングの茶髪を後頭部でシニヨンにまとめ、華やかな和服を身につけている。男勝りの快活な性格で、成人男性を軽々と投げ飛ばすほどパワフルで怪力の持ち主。幼なじみからは「凶暴ザル」「女番長」と評されている。マッチ棒クイズを腕力で解こうとするなど、突飛な行動に出ることもあるが、涙脆(なみだもろ)かったり、二の腕の太さを気にしたりと、乙女心も持ち合わせている。常連客の高月英兒とは諍(いさか)いを起こしてばかりで、犬猿の仲。だが、高月の「お告げ」を聞いて店にやって来る客の悩み事に首をつっ込んでいるうちに仲を深め、憎まれ口を叩(たた)きながらも、互いを意識する関係となる。なお、周囲には秘密にしているが、孝道館(こうどうかん)柔道の創始者、叶路五郎(じごろう)の孫にして、現館長、叶響一郎(きょういちろう)の一人娘でもある。好物は木村屋のあんパン。

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