あらすじ
第1巻
ある日、宇佐美杏はアルバイト先のカフェで、プロポーズをしたものの女性からは付き合っている意識すらなく、一方的にふられてしまう残念な男性を目撃する。そして次の日にいつも通り登校した杏は、新しいクラス担任として赴任して来た古屋遼平が、昨日ふられた残念な男性だと気づく。一方の遼平も杏を覚えており、誰にも言わないでほしいと懇願する。杏は遼平の事を、最初は残念でヘタレな男性だと思っていたが、会話をしていく中で優しく一途な人なのだと知り、好意を抱く。教師である遼平は杏のアプローチを拒否するが、杏は負けじと気持ちを伝え続ける。そんな中、杏は遼平から君嶋悠人と共に文化祭実行委員を任されるが、悠人は杏が遼平に恋心を抱いている事を見抜き、ばらされたくなければ委員の仕事をすべてやれと命ずる。さらに一生懸命委員の仕事をこなす杏に、どうせ先生との恋など叶わないと悠人は辛辣な言葉を放つ。その言葉に応じて杏が言い返した事で悠人は気分を害し、杏を自分に惚れさせて捨てる計画を思いつく。しかし、悠人は次第に杏のペースに飲まれていく。
第2巻
体育祭が催され、君嶋悠人はこれまでなら嫌がるようなかっこ悪い役もこなしていた。そして悠人は宇佐美杏の手料理を食べるなど、二人の距離は縮まっていく。そんな杏と悠人の姿を見た古屋遼平は、杏に悠人と付き合ってみてはどうかと提案。その発言に号泣した杏に対し、あわてた遼平はお試しで自分と交際してみないかと提案する。遼平としては実際に交際してみて、理想と違うとあきらめさせる計画だったが、杏はますます遼平に好意を寄せるようになる。一方の遼平も杏といっしょの時間を少しずつ楽しいと感じ始めていた。そんな中、杏のクラスに転入生の我妻いのりがやって来る。教師嫌いな我妻は遼平に悪態をつくが、遼平の優しさに触れるうちに恋心を抱くようになる。我妻が遼平に接近している時、杏は風邪を引いて学校を休んでいたため、その状況を知らずにいた。積極的な我妻に対して拒否をするでもない遼平を見た悠人は、遼平が流されやすい性格だと判断。風邪で休んでいる杏の家に行き、遼平のような不誠実な奴の事は忘れるべきだと進言する。しかし杏は、誰にでも優しく接するところが遼平の長所だと反論する。
第3巻
古屋遼平に恋心を抱く我妻いのりは、補習にかこつけて遼平が管理する資料室に入り浸っていた。加えて本当に成績が悪い宇佐美杏、さらに学年トップの成績を誇る君嶋悠人までもが杏に教える名目で資料室に頻繁に出入りし、放課後は四人で過ごす日々が続く。そんな中で我妻は遼平に告白をするが、遼平は好きな人がいるとその申し出を断る。我妻はすぐにそれが杏だと気づき、今後は二人の恋を応援する事を決める。そんなある日、遼平と杏が二人で帰宅していると、杏の母親と出会う。テンションの高い杏の母親からの夕食の誘いを断り切れず、三人は杏の家へと向かう。遼平と杏は二人の関係を家族に知られまいと行動をするものの、杏の母親には見抜かれてしまう。こうして遼平と杏は宇佐美家公認の関係となる。そんな中、バレンタインデーが訪れる。杏のアルバイト先で臨時勤務する悠人に、日野未架子は恋心を抱き、悠人への猛アプローチを開始。あまりにもしつこい未架子に対して悠人は、杏がそばにいるにもかかわらず、その場の勢いで自分は杏が好きだと暴露してしまう。
第4巻
姉の古屋真澄に彼女を紹介しろと迫られた古屋遼平は、宇佐美杏をOLとして紹介する。しかし、真澄は杏の言動に違和感を抱く。結果、杏の実年齢を知った真澄は激怒するが、杏と遼平が真剣に付き合っていると知り、温かく見守る事にした。そんな中、遼平は真澄と食事をした帰り道、杏と君嶋悠人が親密そうに歩いている姿を目撃する。不本意ながらもあとを付けていった遼平は、杏にその真意を問いただす。実は遼平の誕生日をサプライズでお祝いしようと、杏は悠人にプレゼント選びの相談をしていたのだ。トラブルを乗り越えて杏と遼平の絆は強くなるが、やがて杏の成績不振が問題になる。このままでは杏の進級が危ぶまれ、遼平は休日の学校で補講を行う事にしたが、デートだと勘違いした杏は派手な私服で学校に来てしまう。学校に入れないため、遼平が一人暮らしをする部屋で勉強をする流れになり、杏は何か進展がないかとテンションが上がる。そんな中、なぜか悠人が現れ、いっしょに勉強をする事になる。
第5巻
宇佐美杏と君嶋悠人は高校2年生になり、古屋遼平も引き続きクラスの担任になる。新たに同じクラスになった成瀬茅乃は、杏と悠人が付き合っていると勘違いしており、杏がその誤解を解こうとしても聞く耳を持たない。また、同じクラスになった城ヶ崎陸は、遼平と杏が交際している事を知っているような口ぶりで杏に接近。杏は遼平との関係を秘密にするため、悠人と交際をしていると周囲にウソをつく。悠人は杏と二人で行動する事が多くなり、ますます恋心を募らせていく。一方、陸は杏と遼平ではなく、杏と悠人が周囲には秘密で付き合っていると勘違いしていた。ウソとはいえ、今や公然の関係になった杏と悠人に対し、陸は悠人へのライバル心から杏を略奪しようとする。しかし二人は、付き合っておらず、悠人が片思いをしている事実を知った陸の競争心は失せ、一連のトラブルは終息する。そんな中、杏は進路希望調査票を提出し、正直に遼平のお嫁さんになりたいと希望を書く。当然遼平からはあきれられるが、杏はどうすれば結婚できるのかを真剣に考え始める。
登場人物・キャラクター
宇佐美 杏 (うさみ あん)
高校1年生の女子で、年齢は16歳。明るく一途な性格の持ち主で、カフェでアルバイトをしている。学校の成績は非常に悪い。これまで彼氏がいた事はなく、恋愛経験もない。由妃にプロポーズをしてふられた古屋遼平を接客した事で、顔見知りになる。後日自分のクラス担任としてやって来た遼平に驚くが、本来の遼平がヘタレな性格である事は周囲に秘密にしている。 遼平に対しては最初は残念な人だと思っていたが、ふられても由妃の悪口を言わず相手を大切にしていることを知り、遼平の優しさに好意を抱くようになった。一度好きだと自覚してからは自分からキスをするなど、積極的なアプローチを開始。一途な気持ちが通じ、お試しながらも遼平との交際がスタートした。君嶋悠人からも好意を抱かれているが、まったく気づいていない。
古屋 遼平 (ふるや りょうへい)
産休に入った教師の代わりに宇佐美杏のクラスの担任になった男性教師。担当科目は国語で、年齢は24歳。イケメンで優しい性格の持ち主。本人は完璧な王子様キャラクターを気取っているところがあり、女子生徒達からの人気は非常に高い。一方で断る事が苦手で気の小さい「残念でヘタレ」な一面も持ち合わせる。ただし、この短所は杏にしか知られていない。 そのため、杏に対しては周囲の女子生徒達よりも気を許し、学校内でこっそり二人でコーヒーを楽しむなど仲を深めていた。杏から好意を寄せられている事は知っているが、教師という立場から拒否し続けていた。しかし、杏からのアプローチがあまりにもしつこいため、あきらめさせるために試しで付き合ってみる事を提案する。実姉の古屋真澄から溺愛されている。
君嶋 悠人 (きみしま ゆうと)
宇佐美杏と同じクラスに在籍する高校1年生の男子。学年でも有名な美男子で、さらに文武両道に秀でている事から、女子生徒からの人気は非常に高い。クールでミステリアスな性格の持ち主で、これまで努力せずに自然とモテてきたために、女性を軽視するなど恋愛観が歪んでいる。杏の古屋遼平への恋心を知り、自分に惚れさせてこっぴどくふる計画を立てたものの、杏の明るい人柄に心を奪われてしまう。 杏をふり向かせようとアプローチを開始するが、現在は親友関係の立場に落ち着いている。普段はアルバイトはしていないが、杏が勤務しているカフェの忙しい時期だけ臨時で働いている。杏からは「キミシマン」と謎のあだ名で呼ばれる事が多く、君嶋悠人本人も由来が気になっている。
我妻 いのり (あづま いのり)
宇佐美杏のクラスに転校して来た高校1年生の女子。黒髪のロングヘアで、いつも冷静沈着なクールビューティー。成績は優秀ながら、国語だけが苦手。先生という立場の大人が嫌いで、最初は古屋遼平にも悪態をついていたが、遼平の温かな人柄を知って改心し、恋心を抱くようになった。基本的に一人での行動を好み、杏にも冷たい態度を取るものの、嫌っている訳ではない。 のちに君嶋悠人の杏への一途な思いを知り、密かに応援するようになる。杏からは「いのりん」と呼ばれているが、我妻いのり自身はあまり気に入っていない。
城ヶ崎 陸 (じょうがさき りく)
宇佐美杏が高校2年生に進級した際、同じクラスになった男子。周囲からは「ジョー」の愛称で呼ばれている。明るく人懐っこい性格で、同じタイプの杏とはすぐに意気投合した。ただし、杏とは異なり計算高い一面を持っている。爽やかでかわいらしい雰囲気の持ち主で、読者モデルとしても活動している。中学時代までは女子からの人気も一番だったが、君嶋悠人が現われた事で二番手になってしまう。 その事から悠人を逆恨みし、彼女の杏を奪おうとした。しかし杏が彼女ではないうえに、悠人が片思いをしていると知ってからはやる気が失せた。成瀬茅乃からは悠人に片思いをしている設定にされているが、本人も悠人からジュースをもらって赤面するなど、不本意ながら胸をときめかせてしまう事が多い。
成瀬 茅乃 (なるせ かやの)
宇佐美杏が高校2年生に進級した際、同じクラスになった女子。以前杏と君嶋悠人がラーメン屋に行った際に、アルバイトをしていた成瀬茅乃の失敗を悠人がフォローした過去があり、茅乃は二人の存在を知っていた。同じクラスになった事が縁で杏とは友達になる。杏と悠人が交際していると勝手に思い込んでおり、杏と悠人の仲を応援している。 アルバイトをしている時は髪の毛を三つ編みにして瓶底眼鏡をかけて地味な容姿をしているが、学校では儚い雰囲気を漂わせた美少女に変貌し、男子からの人気が高い。普段はおっとりとした話し方をするが、一旦スイッチが入ると強気に相手を押していくタイプに変わる。杏からは「なるる」と呼ばれており、気に入っている。
はるポン
宇佐美杏と同じクラスに所属する高校1年生の女子。杏とえみとの三人で行動している。ふわふわとした話し方をする癒し系の天然ボケタイプだが、恋愛に関しては肉食系で恋愛上級者。カラオケに行って即キスをして、交際をスタートさせた彼氏がいる。高校2年生に進級した際には杏とクラスが別れてしまった。
えみ
宇佐美杏と同じクラスに所属する高校1年生の女子。杏とはるポンとの三人で行動している。大人っぽい容姿をしており、性格はサバサバとした姉御タイプ。バレー部に所属しており、同じ部活内に先輩の彼氏がいる。高校2年生に進級した際には杏とクラスが別れてしまった。
日野 未架子 (ひの みかこ)
宇佐美杏と同じカフェでアルバイトをしている女子高校生。杏とは違う高校に通っている。明るくかわいらしい容姿で、ややぶりっ子な一面があるものの、性格が悪いわけではない。恋愛体質でつねに好きな人がいないとダメなタイプで、臨時のアルバイトとしてやって来た君嶋悠人に一目惚れをした。しかし、悠人の興味が杏にあると知ったあとは、あっさり別の男性に乗り換えている。 また、城ヶ崎陸がカフェに来店した際には目ざとくチェックし、すぐに個人情報を聞き出そうとした。ニックネームは「みかるん」で、杏をはじめ周りにも自らそう呼ばせている。
由妃 (ゆき)
古屋遼平の大学時代からの友人の女性。明るく華やかな美女だが、文字が壊滅的に汚い。大学の時に遼平にノートを貸し、その縁で親しくなる。遼平に対しては友情以外の気持ちを抱いていなかったものの、勝手に付き合っていると勘違いした遼平から突然プロポーズされ、はっきりと断った。現在交際中の彼氏がいる。
古屋 真澄 (ふるや ますみ)
古屋遼平の実姉でキャリアウーマン。規律に厳しく、ルールを守らない相手には容赦をしないまじめで厳格な性格の持ち主。ただしアルコールはめっぽう弱く、絡み酒になりがち。遼平の事を溺愛しており、彼女の宇佐美杏にもすぐに会わせろと迫った。杏が女子高校生だと知った時は激怒したものの、二人が真剣に交際している事を知り、世間一般の常識を知らない杏を教育する、という名目で温かく見守っている。 また、年々人に愛されたい気持ちが強くなっており、よくわからない場面で涙を流すなど少々情緒不安定気味。
おもち
宇佐美杏のペットの白いうさぎ。ふくよかな体型で体毛がふかふかなため、まるで毛玉のように見える。宇佐美家のマスコットキャラクター的存在だが、古屋遼平にだけは懐かず、闘争心をむき出しにする。
書誌情報
古屋先生は杏ちゃんのモノ 5巻 集英社〈りぼんマスコットコミックス〉
第1巻
(2017-01-25発行、 978-4088674445)
第2巻
(2017-05-25発行、 978-4088674605)
第3巻
(2017-09-25発行、 978-4088674759)
第4巻
(2018-01-25発行、 978-4088674865)
第5巻
(2018-05-25発行、 978-4088675039)