世界観
タイトルの通り「同性愛」と「同棲生活」が題材。さまざまな事情で実家を離れた若者たちが東京都で出会い、2人1組の同棲生活を営む姿が描かれる。はじめは他人だった別の組み合わせ同士が次第に知り合いとなり、人間関係が広がっていく様子も特徴。
作品構成
本作『同棲愛』はメインキャラクターである杉浦椿、篁光太郎、江端薫、馬堀貴文、金巻千里の5人の物語が交互に展開される形式をとっている。はじめは中学生だった椿、光太郎、薫が成長する過程で貴文や千里と知り合い、全員が東京都に揃った時点で物語が本格的にスタートする。5人はそれぞれ学業やアルバイトに励みながら、恋人になったり別れたりを繰り返し、最終的には就職など、各人が進路を決めるまでが描かれる。
あらすじ
中学3年生の杉浦椿は、新学期早々長期欠席した結果、クラス委員長に任命されてしまう。不慣れな業務に戸惑う椿に助け船を出したのは、不良と噂されるクラスメイトの江端薫。彼の意外な一面を知ったことで親しくなっていく椿と薫だったが、ある日2人が疎遠な関係になってしまう1つの事件が発生する。
登場人物
ボーイズラブ漫画雑誌掲載作品ではあるが、作中には重要な役割を担う女性も多数登場するのが本作『同棲愛』の特徴。男性同士だけではなく、男女間での恋愛も描かれており、自分の性的嗜好がはっきりせずに悩む主人公たちと、彼らを支え時に叱咤する女性たちとの関係性も見どころの1つとなっている。
メディアミックス
作家情報
水城せとなは主に女性漫画誌で活躍中の漫画家。平成5年『冬が、終わろうとしていた。』で、「プチコミック」からデビュー。他の作品に『失恋ショコラティエ』『脳内ポイズンベリー』などがある。誕生日は10月23日で、血液型はA型。
登場人物・キャラクター
杉浦 椿 (すぎうら つばき)
群馬県高崎市にある中学校の3年C組に所属する男子生徒。春休みに遊びすぎたことが原因で新学期早々体調を崩し、欠席裁判的にクラス委員長に任命される。慣れない委員長業務に四苦八苦していたところを江端薫に助けられたのがきっかけで彼と親しくなり、自分が同性愛者なのではないかと悩むようになっていく。女の子が欲しいと願っていた両親から「椿」という女性的な名前を付けられたことで、自分が女性に生まれなかったことをコンプレックスに感じており、高校卒業以降は自分を好きでいるために放浪を繰り返す。 誕生日は12月18日で、血液型はO型。出身地は群馬県高崎市。
篁 光太郎 (たかむら こうたろう)
横浜にある私立栄秀学院中等部3年C組に所属する男子生徒。容姿端麗で成績もいい優秀な人物だが、過度な期待や反感を買わぬよう、わざと適度な範囲に成績を落とす計算高い一面がある。両親は小学生の頃に離婚しており、兄の篁大地と、海外出張で不在がちな父親の3人で暮らしている。大地を大切に想いつつも密かなコンプレックスを感じており、彼の恋人である志穂の誘惑に乗ってしまったことで人生が大きく変わり始める。 高校入学以降は他人と無差別に関係するようになり、1人の人間に執着しない一方で、非常に他人に気を遣う性格になっていく。誕生日は2月29日で、血液型はB型。出身地は神奈川県横浜市。
江端 薫 (えばた かおる)
杉浦椿の友人で、同じ中学の3年C組に所属する男子生徒。椿とは3年生で同じクラスになったが、1年留年しているため年齢は1歳上。留年理由は少年院に入っていたためと噂されているが、実際は病弱で喘息持ちなために出席日数が足りなかったことが原因。3年生になってすぐに椿と親しくなるが、椿の「薫が好き」という言葉に過剰反応してしまったことがきっかけで疎遠になってしまう。 高校卒業後はフリーターとなり、アルバイトに励んでいたところで椿と再会し、以降同棲生活を送るようになる。誕生日は5月6日で、血液型はA型。出身地は群馬県高崎市。
馬堀 貴文 (まほり たかふみ)
篁光太郎が高校1年の時にゲイイベントで出会った、1歳年上の少年。長髪で、派手な雰囲気の根っからの同性愛者。出会ってすぐに光太郎を気に入り、光太郎の初の男性経験の相手となる。自他共に認めるプレイボーイだが本人はいたって恋愛に真剣で、日夜遊びに出かけているのもあくまで運命の相手を探すため。恋人のことは非常に大切にし、熱心に愛するが、相手を1人の人間というよりも愛玩動物のように扱ってしまうため、関係が破綻することも多い。 高校卒業後は1年の浪人期間を経て東京都の大学に合格し、通い始めた頃に杉浦椿と知り合い同棲生活を送るようになる。出身地は千葉県佐倉市。
金巻 千里 (かねまき ちさと)
篁光太郎が東京都の大学に進学後、アルバイト先の塾で出会った高校2年の男子生徒。暖かな両親と友人に囲まれ平和な日々を送る、純真な性格。将来の目標が見つからず、高校を退学したいと悩んでいた折に光太郎と出会い、悩みを打ち明けたのがきっかけで彼と同棲生活を送ることになる。素直でまっすぐな心の持ち主だが、時に自身の正論すぎる意見が相手を傷つけることがあるのには気づいていない。 誕生日は1月31日で、血液型はA型。出身地は東京都大田区。
喜多嶋 春 (きたじま はる)
馬堀貴文の友人で、同じ大学に通う女子大生。腰まで伸ばしたストレートロングヘアの、雑誌モデルを務めるほどの美形。浪人している貴文に対し彼女はストレートで合格しているため、年齢は貴文の1歳年下に当たる。学内で唯一貴文が同性愛者であることを知る人物だが、自分も貴文に想いを寄せていることは秘密にしている。
菊池 智之 (きくち ともゆき)
篁光太郎の高校時代の友人。心優しく屈託のない人柄の、いわゆる「いいヤツ」。光太郎とは2年生の時から親しく、優秀で容姿も良い光太郎のことを高く評価していた。異性愛者だが、光太郎の性的嗜好を知った結果ある秘密を共有したり、大学進学後に出会った杉浦椿に迫られたりと、同性愛者の男性と縁が濃い。
篁 大地 (たかむら だいち)
篁光太郎の8歳年上の兄。社会人で、眼鏡をかけた穏やかな雰囲気の人物。容姿でも成績でも弟の光太郎には劣り、周囲も光太郎の方をより可愛がっていたため、光太郎のためにすべてを諦めて彼の母親的存在に徹する人生を送っていた。会社の同僚の志穂と交際しており、「女性のいる家庭」を知らない光太郎のためにも早く結婚したいと考えている。 血液型はA型。
志穂 (しほ)
篁大地の恋人。前髪を真ん中で分け、胸のあたりまで伸ばしたウェーヴヘアの軽薄な印象の女性。交際半年を経て家に招かれ、その際に初めて会った篁光太郎を気に入り誘惑する。その直後に妊娠し、大地の子供か光太郎の子供かわからない息子・篁空也を出産した。血液型はAB型で、光太郎さえ黙っていれば兄弟のどちらが父親でも周囲にばれることはないと考えている。
篁 空也 (たかむら くうや)
篁大地と志穂の息子。戸籍上は大地の子供だが、実際は篁光太郎の子供の可能性もある。大地は結婚後も実家で暮らすことを選んだため、同居している光太郎を「こーちゃん」と呼び懐いている。容姿が幼い頃の光太郎に非常によく似ている。
池上 (いけがみ)
杉浦椿が高校時代に知り合った生物教師。新任の若い男性だが、生物準備室に男性の裸体の石膏像を置いているなどの理由から、生徒たちには同性愛者と噂されている。一目見て椿を気に入り、彼に同性愛者の気があることを見抜き誘惑して以降、彼に強い執着心を抱くようになる。
有吉 風子 (ありよし ふうこ)
杉浦椿が18歳の時に東京都で出会ったフリーターの女性。年齢は21歳で新宿区百人町に住み、真ん中で分けたセミロングヘアをしている。古ぼけて部屋の鍵の壊れたアパートで一人暮らししており、自分を守ることと引き換えに椿を住まわせるようになる。笑みを絶やさない明るい性格だが、実家を出るまでは複雑な家庭環境に苦しんでいた。
羽村 晶 (はむら しょう)
金巻千里の憧れの写真家。中性的な名前から千里は男性と推測していたが実際は女性で、千里が自身の写真展に訪れたのをきっかけに知り合う。その際千里が趣味で撮っている写真に興味を持ち、アシスタントの仕事をしないかと誘う。普段は気さくな雰囲気だが、業務が始まると人が変わったように厳しくなる。
本上 なるみ (ほんじょう なるみ)
羽村晶の姪で、彼女の写真の被写体やアシスタント業務を務めている少女。女性だが篁光太郎と雰囲気が似ており、それが理由で金巻千里は関心を持つ。無口無表情でそっけない雰囲気だが他人に関心がないわけでなく、一緒にアシスタントをするようになった千里としだいに親しくなっていく。整理整頓が苦手で、自宅は非常に荒れている。
矢島 (やじま)
馬堀貴文と喜多嶋春の友人で、2人と同じ大学に通う男子大学生。春に想いを寄せており、彼女と親しくなるために貴文に近づいたと推測されている。春に振られた後も積極的にアプローチを繰り返し、それが貴文と春の関係に思わぬ影響を及ぼすことになる。
杉浦椿の母親 (すぎうらつばきのははおや)
杉浦椿の母親。夫とは大学時代オペラ同好会で出会い、両者共にオペラ好きなことから、結婚して女の子が生まれたらジュゼッペ・ベルディの「椿姫」から取って「椿姫(つばき)」という名前にしようと考えていた。しかし実際に生まれたのは男の子だったため、「姫」を抜いて「椿」と名付けた。悪気こそないが椿をよその女の子と比べ落胆しているような発言を繰り返し、無意識に彼を傷つけてきた。
杉浦椿の父親 (すぎうらつばきのちちおや)
杉浦椿の父親。妻同様子供は女の子を望んでおり、椿をよその女の子と比べては娘がいる家庭を羨んでいた。しかし、椿が高校時代に起こした事件で息子の性的嗜好が発覚して以降、大きなショックを受ける妻に振り回されるようになる。彼自身は、息子に自分の意見を伝えてはいない。
江端薫の母親 (えばたかおるのははおや)
江端薫の母親。杉浦椿の両親同様、子供に女の子を望んでおり、「薫」という中性的な名前を息子に与えた。気さくで話好きの人物で、椿が家を訪れた際、薫が喘息持ちであることを明かし薫の不良疑惑を消し去った。
金巻千里の父親 (かねまきちさとのちちおや)
金巻千里の父親。妻と息子2人の4人家族で暮らしており、彼を中心とした金巻家の暖かい雰囲気は、千里や篁光太郎に「ホカホカ家族」と称されている。進路に悩み「高校を辞めたい」と相談した千里を心配し、退学を承諾しつつも、当面考える時間を持つことを提案する。
金巻千里の母親 (かねまきちさとのははおや)
金巻千里の母親。家族のことを非常に大切にしており、家庭内に問題が起きると自分が悪かったのではと考えてしまう思考の持ち主。千里が高校を退学したがっているとはまるで想像していなかったため、相談を受け深いショックを受ける。その際千里の相談相手となった篁光太郎と親しくなり、当面光太郎のもとで暮らしたいという千里の願いを受け入れる。
智佳 (ちか)
金巻千里と同じ高校に通う同級生の女子生徒で、千里の初体験の相手。積極的な性格で、千里と関係を持ったことを周囲に吹聴して歩いている。千里の前は杉浦椿に憧れており、クリーニング店に勤務する彼に手作りのお菓子を贈ったこともある。
有吉風子の義妹 (ありよしふうこのぎまい)
有吉風子の義理の妹。前髪を真ん中で分けたストレートロングヘアの、落ち着いた雰囲気の人物。ある事件後風子の実家を訪れた杉浦椿に、実家にいた頃の風子について語る。血のつながらない妹である自分の存在が風子を苦しめていると考えていたが、その誤解が解けて以降椿と親しくなっていく。
村木 (むらき)
新都銀行人事部に勤める中年の男性。眼鏡をかけ、太い眉が特徴の人物。ある理由から篁光太郎と金巻千里の住む家を訪れ、即座に2人の暮らしぶりを見抜く。その際光太郎の予想しなかった一面を知り驚かされることになる。