君がトクベツ

君がトクベツ

地味な女子高生の若梅さほ子、国民的アイドルグループ「LiKE LEGEND」のメンバーの一人、桐ヶ谷皇太、人気若手女優の七瀬えみか、そして「LiKE LEGEND」のメンバーで皇太の友人でもある遊馬叶翔。2組の男女の恋愛模様と、芸能活動の様子を描いた胸キュンラブコメディ。「別冊マーガレット」2019年4月号から掲載の作品。

正式名称
君がトクベツ
ふりがな
きみがとくべつ
作者
ジャンル
アイドル
 
ラブコメ
レーベル
マーガレットコミックス(集英社)
巻数
既刊10巻
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あらすじ

皇太との出会い

高校1年生の若梅さほ子は、中学2年生の時、ひそかに思いを寄せていたイケメンのたっくんに、陰で笑われていたことを知り、それ以来、イケメンというだけで警戒し、必要以上に毛嫌いするようになっていた。そんなある日、さほ子の母親が営む定食屋「ホヤぼーや」に、人気男性アイドルグループ「LiKE LEGEND」のメンバー、桐ヶ谷皇太が来店する。その場でさほ子は、皇太ファンの友人、ゆう子のためにサインを頼むが、さほ子が自分のファンだとカンちがいした皇太は、さほ子を抱きよせて額にキスをするなど、過剰なファンサービスをする。この行動に怒ったさほ子は思わず暴言を吐いてしまうが、皇太は翌日も店にやって来る。この店は皇太の自宅から近く、客層も自分を知らない高齢者ばかりの「ホヤぼーや」に安心感を覚え、すっかり気に入ってしまったのだ。そして皇太は、「LiKE LEGEND」にも自分にも関心のないさほ子を自らのファンにしようと、さほ子と積極的にコミュニケーションを取ろうとする。

恋の自覚

若梅さほ子は、桐ヶ谷皇太のことをゆう子に教えてもらったり、彼と会話をするうちに、皇太への偏見がなくなり、その魅力を理解するようになる。しかし二度と恋はしないと誓っているさほ子は、皇太に惹(ひ)かれる自分の気持ちを抑え、興味がないと言い続けていた。そんなある日、さほ子は皇太の家まで出前に行った帰り道で、中学2年生の時にあこがれていた思い人、たっくんとその恋人に遭遇する。その場で二人はさほ子を笑いものにするが、そこへ助けに入ったのが皇太だった。偶然通りがかった皇太は、周囲にバレる危険を承知でさほ子の恋人のふりをし、その場から彼女を連れ去る。さらに皇太は、気落ちするさほ子を優しく励ます。この一件を機に、さほ子は皇太への思いを自覚するが、さほ子は自分に自信が持てるようになるまでは、自分から行動を起こさずにいた。そんな中、母親が手術でしばらく店を閉めることになり、さほ子は皇太と会えなくなってしまう。

告白

「ホヤぼーや」の一時休業をきっかけに、若梅さほ子桐ヶ谷皇太は、連絡先を交換した。そんなある日、さほ子の通う高校がドラマ撮影で使われることになり、さほ子は撮影中の皇太にお弁当を届けに行く。そこでさほ子は、「LiKE LEGEND」のメンバーの遊馬叶翔と出会う。以前さほ子は、皇太への思いを隠そうとするあまり、LiKE LEGENDで好きなメンバーは叶翔だとウソをついてしまったことがあった。それを覚えていた皇太は、叶翔をさほ子に紹介するが、叶翔はさほ子の本心を見抜いていた。さほ子のノートを覗き見た叶翔は、さほ子が傷つくのを恐れ、自分のファンであるとウソをついたことを理解していたのだ。このことを指摘されたさほ子は腹を立てるが、叶翔の言うことはすべて図星であることも自覚していた。それでもさほ子は、皇太と今の関係を継続させようとしていたが、ふとしたはずみで思いを伝えてしまう。

スキャンダル

若梅さほ子桐ヶ谷皇太に告白するが、皇太からは誰とも恋愛する気はないとふられてしまう。これによって二人の友人関係は終わってしまうかに思えたが、その直後、遊馬叶翔が皇太を連れて「ホヤぼーや」にやって来る。皇太は週刊誌に過去のスキャンダルを暴かれ、自宅をマスコミにマークされていたのだ。叶翔の提案もあり、若梅家は一時的に皇太をかくまうことを決める。こうしてさほ子と皇太の不思議な同居生活が始まるのだった。さほ子はスキャンダルには触れずに皇太をサポートするが、ある日、その一部は事実であると皇太から打ち明けられる。そのスキャンダルとは、皇太が多忙で病気の母親を放っておいた結果、母親が亡くなり、恋人も皇太のせいで自殺したというものだった。さほ子はこの言葉を信じられずにいたが、皇太の母親が病死したこと、皇太の幼なじみの女性が亡くなったことは事実だった。

木崎玲衣

時はさかのぼる。小学生の桐ヶ谷皇太は、病気がちで入院中の母親、桐ヶ谷咲良と二人暮らししながら、幼なじみの木崎玲衣と、その家族に支えられて芸能活動を行なっていた。玲衣は歯に衣(きぬ)着せぬ物言いで皇太に厳しい指摘もするが、二人は非常に仲がよく、家族同然の関係を築いていた。しかし皇太が中学生になり、芸能活動が忙しくなり始めた頃、咲良が病死。木崎家の支えもあって皇太は高校に進学するが、玲衣は皇太の様子がおかしいことに気づいていた。皇太は咲良が亡くなってから、以前よりもますます仕事に打ち込むようになっていた。だが、玲衣には皇太が自分を責め、自分を傷つけるために働き続けているようにしか思えず、見ていられなかったのだ。このことを指摘された皇太は、芸能活動よりも咲良を優先して、活動自体を休止して傍にいてやればよかったと、後悔の念を打ち明ける。しかし玲衣から、咲良が誰よりも皇太を応援していたことを教えられ、元気を取り戻す。この言葉で吹っ切れた皇太は、さらに人気を獲得していくが、ある日、眠っていた際に突如玲衣にキスされて驚く。この行動に混乱した皇太は、この気持ちが恋愛感情なのか友情なのかわからず、忙しさに身を任せて彼女と距離を置いてしまう。だがそんな中、玲衣が交通事故で亡くなったことを知らされる。

告白

桐ヶ谷皇太が誰とも恋愛をしないと決めていた理由は、木崎玲衣ときちんと向き合えないまま、死に別れてしまったことが原因だった。これを知った若梅さほ子は、少しでも皇太の力になりたいと願うが、具体的にできることは限られており、思い悩んでいた。そのうえ、若梅ひまりとの散歩中にスマートフォンを川に落としたことで、皇太と連絡が取れなくなってしまう。一方その頃皇太は、さほ子と連絡が取れないことを不思議に思っていた。これを知った遊馬叶翔は、さほ子はもう皇太との関係を断つつもりらしいとウソをつく。叶翔はさほ子が真剣に皇太を思っていること、皇太もまたさほ子に心を許し始めていることを知っていた。そこで、皇太に自分の気持ちを自覚させるために、口から出まかせを言ったのだ。同時に叶翔は、生前の木崎玲衣とのメッセージアプリでのやりとりを見せる。そこには玲衣の、皇太への深い愛情が綴られており、これを読んだ皇太は、玲衣の気持ちに応えるためにも幸せになろうと決意し、さほ子に会いに行く。

七瀬えみかとの出会い

若梅さほ子は、桐ヶ谷皇太からずっといっしょにいて欲しいと告白されたが、この現実を受け止められず、何かの間違いだろうと自分を戒めていた。一方の皇太も、未(いま)だに遊馬叶翔のウソを信じているため、さほ子は自分とは義務感で交際しているのではないかと、不安を抱いていた。そこで皇太はさほ子をデートに誘い、改めて告白し、正式に交際をスタートさせるのだった。そんな中、皇太は「LiKE LEGEND」のメンバーたちにさほ子を紹介するため、仕事先までお弁当のデリバリーを頼む。そこで温かく迎えれられたさほ子は、ほっと一安心するが、その際に人気若手女優で皇太たちの友人でもある七瀬えみかに出会い、自分とのあまりの違いにショックを受けて自信喪失する。そんなさほ子を皇太は優しく励ますが、その姿をえみかに目撃されてしまう。さほ子はこの場をごまかそうと、とっさにウソをつき、偶然通りがかった叶翔もこれに協力する。しかし、その行動でえみかは、さほ子が叶翔に思いを寄せているとカンちがいしてしまう。

修学旅行

若梅さほ子は、桐ヶ谷皇太遊馬叶翔七瀬えみかと四人で打ち上げをしたことで、えみかと友人となる。えみかは芸能界に入る前から叶翔にあこがれており、叶翔と親しくなるために芸能界入りを果たす。そのためえみかは、さほ子をライバルとカンちがいして警戒していたが、さほ子の人柄を知り、誤解が解けたことで心を開いたのだ。その後、皇太と初めてのキスをしたさほ子は、すべてが順風満帆に思えたが、その後多忙を極めた皇太とは、1か月近く会えなくなってしまう。それでも二人は連絡を取り合いながら仲を深め、さほ子の修学旅行先の京都で、さほ子は皇太に声をかけられる。皇太も京都でロケの仕事をしており、あらかじめさほ子のスケジュールを把握したうえで、内緒で会いに来たのである。この行動に感激したさほ子は、もっといっしょに過ごしたいと素直な思いを皇太に伝え、ゆう子の協力もあって、二人は2日間にわたって楽しい時間を過ごす。

真夜中の教室

桐ヶ谷皇太が主演の連続ドラマ「真夜中の教室」の撮影が始まり、最近困っているという皇太の力になるため、若梅さほ子はお弁当を届けに行く。ドラマには皇太の後輩である木村初芽も出演しているが、初芽は生真面目すぎる性格がゆえに、皇太に頻繁にアドバイスを求めに来るのだという。これについては皇太はあまり気にしていない様子だったが、大物俳優の大栗殉の演技に関する漠然とした要求には、少し辟易(へきえき)しているようだった。そんな中、皇太や初芽、殉の三人が「ホヤぼーや」にやって来る。殉は先ほど偶然この店を見つけ、気に入って二人を連れてきたのだった。そこでさほ子は、ひとまず皇太と他人のふりをして接客するが、殉の皇太やアイドル全般を軽視する発言に腹を立て、思わず会話に割り込んでしまう。これにシラけた殉は先に一人で帰ってしまうが、皇太がさほ子をかばってくれたことを嬉しく思っていた。その後、皇太は演技力で殉を認めさせ、問題は解決したかのように思えたが、さほ子と皇太が家で楽しく過ごしていると、そこに突如初芽が来訪し、二人の関係がバレてしまう。

先生体験

若梅さほ子桐ヶ谷皇太は、交際に反対する木村初芽と向き合い、自分たちの気持ちをしっかり伝えたことで、無事に交際が認められた。そんなある日、突如さほ子たちの高校に皇太がやって来る。8月には皇太の主演映画「センセイ失格」が公開されるのだが、これに合わせて映画の特別番組が作られることになった。そこで皇太は、自らが先生役を演じていることになり、以前撮影に使ったさほ子の高校で、2週間の先生体験をすることになったのだ。そこで皇太のお手伝い役に選ばれたさほ子は喜ぶが、いっしょにお手伝い役を務める芥川夏はアイドル全般に偏見を抱いており、皇太のことも快く思っていない様子だった。またさほ子は、夏にスマートフォンの画面や皇太と二人でいる場面を見られてしまい、交際していることはバレていないものの、個人的なやり取りをする関係なのを知られてしまう。これによってさほ子に興味を持った夏は、その日からさほ子に執拗(しつよう)につきまとうようになる。しかしさほ子は、夏の、異性と遊びの関係のみに徹し、飽きたらすぐに冷たくするという姿勢に疑問を抱いていた。その思いを素直に伝えたことから、さほ子と夏の関係は微妙に変化していく。

沖縄コンサート

若梅さほ子桐ヶ谷皇太への真剣な思いが芥川夏に伝わったことで、夏はさほ子をからかうのをやめ、困った時はサポートしてくれるようになる。そんな夏をライバル視した皇太は急遽(きゅうきょ)若梅家へ行き、さほ子の母親と若梅ひまりに交際宣言する。こうして家族公認になったさほ子は、直後に「LiKE LEGEND」からの正式な依頼で食事担当スタッフに任命され、沖縄でのコンサートに同行することになる。そして、スケジュールを合わせて遊びに来た七瀬えみかと共に、さほ子は仕事をこなしながらLiKE LEGENDのメンバーとえみかの七人で楽しい時間を過ごす。終演後はえみかと遊馬叶翔たちの計らいで二人きりで過ごし、改めて気持ちを確かめ合うのだった。

あこがれの人

若手女優の七瀬えみかは、老若男女に支持され、順調に仕事をこなしていた。しかし、ひそかに思いを寄せる遊馬叶翔とはずっと友人止まりで、もどかしい関係のままだった。そんなある日、叶翔とダブル主演のドラマ「アゲイン -あの日の君に会いに行く-」の撮影が始まり、えみかはこの撮影期間中に距離を縮めようと意気込むが、撮影中に体調を崩してしまう。えみかは迷惑をかけまいと体調が悪いことを隠し通そうとするが、叶翔が突如スケジュールを変えたいと言い出す。それはあたかも自分のわがままのように見せ掛け、えみかを休ませようという心配りだった。その直後、えみかは友人の若梅さほ子のアドバイスで、遊園地に叶翔を誘う。さほ子が勧めてくれた遊園地は郊外にあって閑散としており、芸能人二人が遊んでいても気づかれなさそうな場所だった。ここで楽しい時間を過ごしたえみかと叶翔は、叶翔が桐ヶ谷皇太と親しくなったきっかけや、えみかが芸能界入りした理由を語り合う。しかし、えみかはここでも素直になれず、叶翔にあこがれて芸能界に入ったことは語らず、漠然とあこがれの芸能人がいるからという説明に留める。

追加キャスト

七瀬えみか遊馬叶翔が共演するドラマ「アゲイン -あの日の君に会いに行く-」の追加キャストとして、「LiKE LEGEND」の来栖晴が参加することになった。晴はクールな美少年で知られており、えみかと叶翔にとっては弟的な存在だった。しかしドラマでは、えみか演じる主人公を、叶翔演じるヒーローと取り合う幼なじみを演じることとなる。晴の出演を知らされていなかったえみかは驚くが、そんなえみかに晴はさらなる衝撃の事実を告げる。えみかは先日の沖縄コンサートで、LiKE LEGENDのメンバーや若梅さほ子と過ごしていたが、叶翔が好きだと寝言で言ってしまい、晴はえみかの思いを知ってしまったのだ。しかし晴はこれを誰かに言うつもりはなく、むしろ恋が叶(かな)うように協力したいのだという。そんな晴が提案したのは、えみかに叶翔以外の親しい男性がいるかのように見せかけることだった。

キャンプ場デート

七瀬えみか来栖晴の提案で、晴と親しいふりをして見せたが、遊馬叶翔の気持ちはよくわからないままだった。実際の叶翔は晴の存在に焦っており、えみかが晴の家に遊びに行ったと聞いて、慌てて迎えに行こうとする。しかしえみかは、叶翔が明日の撮影に差し支えないよう晴を休ませ、酔った自分を帰宅させるために迎えに来たとカンちがいしてしまう。実はえみかと叶翔はとっくに両思いなのだが、アプローチの仕方が遠回しすぎるために伝わらず、一向に進展していなかったのだ。二人はこの関係を知らないまま、日帰りキャンプデートに行くことになる。叶翔は晴だけでなく、えみかが芸能界に入るきっかけとなった男性にも嫉妬していた。それはもちろん叶翔のことなのだが、真相を知らない叶翔は、ライバルが自分自身であることも知らずに本気のアプローチを始めたのだ。そしてデート当日、二人はいい雰囲気になってキスをしそうになるものの、結局果たすことはできなかった。これは叶翔が踏み留まったのだが、これがきっかけで、二人の関係はさらにこじれてしまう。

打ち上げ

七瀬えみか遊馬叶翔は、お互いの気持ちを確かめるべく叶翔の家で食事することになったが、その途中で桐ヶ谷皇太が乱入したことで、結局なんの進展もないままだった。その後「アゲイン -あの日の君に会いに行く-」の撮影も終了し、次の映画の撮影に入る叶翔とは、しばらく会えなくなってしまう状況となる。そして、もともと叶翔とは縁がなかったのだと思い込もうとするが、そもそもえみかは叶翔のファンになるまでは一般人で、芸能界デビューして叶翔との縁を手繰り寄せ、ここまで距離を縮めてきたのだ。これに気づいたえみかは、今度こそ勇気を出して叶翔に告白することを決意。「アゲイン -あの日の君に会いに行く-」の打ち上げの挨拶で、自分は叶翔にあこがれて芸能界に入り、今回そんな彼と共演できて嬉しかったことを打ち明ける。この言葉に叶翔は挨拶のあと、すぐさまえみかに駆け寄ってキスをして自分の思いを伝える。こうして二人は、ついに両思いになるのだった。

登場人物・キャラクター

若梅 さほ子 (わかうめ さほこ)

とある高校に通う1年生の女子。のちに2年生に進級する。実家の定食屋「ホヤぼーや」で、アルバイトをしている。黒のセミロングヘアをポニーテールにしている。地味でさえない雰囲気を漂わせ、大きな眼鏡をかけている。しかし、これはファッションやヘアメイクに無関心なだけで、肌や髪の毛は非常に美しい。そのため友人のゆう子からは、その気になれば一気に垢抜(あかぬ)けると言われ続けている。芥川夏からは苗字(みょうじ)から取って「梅ちゃん」と呼ばれている。生真面目で心優しく、まめな性格の持ち主。しかし、中学生の時に片思いした同級生のたっくんに陰で笑われていたことを知って以来、すっかり卑屈でネガティブ思考となった。また、たっくんが美形であったことから、「イケメン」全般を毛嫌いし、必要以上に悪い印象を抱くようになる。しかしある日、「ホヤぼーや」に人気男性アイドルグループ「LiKE LEGEND」のメンバー、桐ヶ谷皇太が来店したのをきっかけに、変化が訪れる。当初は、イケメンの代名詞のような皇太のことを一方的に嫌っていたが、彼の誠実で心優しい人柄を知ってイケメンへの考えを改める。そしてアイドルとしても、一人の男性としても皇太を愛するようになる。また皇太とのかかわりの中で、少しずつ自分に自信が持てるようになる。いつも店の手伝いをしていることから、料理と接客を得意としている。私服は無意識にボーダー柄を選びがちで、ボーダー柄の服を大量に所有している。

七瀬 えみか (ななせ えみか)

人気女優として知られる女性。黒髪ストレートロングヘアで睫毛(まつげ)が長い。年齢は22歳。イケメンなため異性だけでなく、同性からの支持も得ている。さばさばとした明るい性格で、プロ意識が非常に高く、どんな仕事にも真摯に取り組んでいる。バラエティ番組で虫を食べたり、鼻をほじる演技もいとわなかったりと、いつも全力の姿で人気を博している。その一方で、恋愛には非常に奥手で交際経験はまったくなく、ひそかにコンプレックスを抱いている。中学1年の頃、テレビで見た遊馬叶翔の高い演技力にひとめぼれし、彼と知り合いになるために芸能界入りを決意。以来ずっと一途に叶翔を思い続けている。特に大きな瞳が魅力ながら、七瀬えみか自身は、子供の頃に目がぎょろぎょろして気持ち悪いといじめられたことがあり、あまり自分に自信を持てずにいる。桐ヶ谷皇太とは高校が同じで、上京を機に転校して来た皇太と当時から仲がよかった。しかし、皇太から叶翔を紹介してもらうことなく、女優として軌道に乗り始めてきた頃に仕事を通じて知り合った。その後、叶翔とは共演を通じて親しくなるが友人止まりで、異性として見られていないのではないかと心配していた。そんなある日、叶翔とダブル主演の連続ドラマが決まり、これを機に距離を縮めていく。お酒が大好きで、仕事のあとは頻繁に飲み歩いている。

桐ヶ谷 皇太 (きりがや こうた)

人気男性アイドルグループ「LiKE LEGEND」のメンバー。20代前半でリーダーを務める。オレンジ色の髪をウルフカットにしたイケメンで、無邪気で人懐っこく、親しみやすい雰囲気を漂わせている。明るく素直な性格で、誰にでも分け隔てなく接している。またプロ意識が非常に高く、人気者になって多忙を極めても、ファン一人一人と誠実に向き合い、積極的にコミュニケーションを取るようにしている。この人柄から、芸能人としても一人の人間としても、好感を持たれている。しかし、これは人に好印象を持たれたという気持ちの裏返しでもあり、繊細で人の悪意に弱く、傷つきやすい一面がある。家は母子家庭で母親の桐ヶ谷咲良と二人で暮らしていたが、中学生の頃に咲良が病死。この頃から芸能活動が忙しく、咲良とあまりいっしょにいられなかったことを後悔している。木崎玲衣とは幼なじみで家族同然の関係だったが、高校生の頃にささいなことから距離ができ、のちに彼女が亡くなったことから、桐ヶ谷皇太自身は決して恋愛をせず、特別な相手を作らないと誓っている。しかしある日、偶然入った定食屋で若梅さほ子に出会い、変化が訪れる。特技は物まねで、「LiKE LEGEND」のメンバーの全員の物まねができる。好きな食べ物はハンバーグ。のちにさほ子と交際を始めてからは、二人の関係がばれないように「ゴリラ」という隠語で呼ばれている。

遊馬 叶翔 (あすま かなと)

人気男性アイドルグループ「LiKE LEGEND」のメンバー。20代前半で、桐ヶ谷皇太と七瀬えみかの1歳年下。榛名優生には「かなティー」と呼ばれている。黒髪ショートヘアで、ちょっと意地悪な印象のイケメン。クールに振る舞う聡明な人物で、何事もそつなくこなす。また周囲をよく観察しており、さりげなくフォローに回るのを得意としている。しかし、それゆえに少し辛辣な指摘をしてしまったり、わざと自分が悪者になったりする傾向があり、その優しさが相手に伝わりにくい。皇太とは事務所の研究生時代からの付き合いで、自分とは正反対の性格で、誰にも好かれる皇太に当初はライバル意識を抱いていた。しかし皇太の明るく器の大きい人柄を知り、グループのメンバーとしても友人としても無二の関係となる。えみかとは仕事を通じて知り合い、出会った当初から好感を抱いていた。しかしお互い素直になれずに、なかなか関係が進展しないまま現在に至っていた。しかしある日、えみかとダブル主演の連続ドラマが決まり、これを機に距離を縮めていく。恋愛経験はそれなりにあり交際人数も多いものの、価値観が合わないと感じるとすぐに別れてしまう。そのため、自分がアイドルということを理解したうえで交際してくれる相手を探している。基本的に器用ながら、イラストを描くのは苦手で、写真を見ながら犬を描いても、なぜか足が5本になってしまう。また虫が苦手で、非常に恐れている。

来栖 晴 (くるす はる)

人気男性アイドルグループ「LiKE LEGEND」のメンバー。20代前半で、桐ヶ谷皇太と七瀬えみかの2歳年下。ショートヘアの中性的なイケメンで、左目尻にほくろが一つある。天使のような美少年と知られているが、意地悪な性格で毒舌家。実は心優しい一面もあるものの、これを指摘されると、そっけない態度を取って照れ隠ししてしまう。えみかとは中学2年の時に知り合い、以来姉と弟のような関係を築いている。しかしある日、えみかが遊馬叶翔に思いを寄せていることを知り、二人が両思いになるために協力している。実はえみかを憎からず思っているが、その本心は隠している。

木村 初芽 (きむら はじめ)

桐ヶ谷皇太の後輩で、芸能人の若い男性。ショートヘアで、左目の下にほくろが一つある。生真面目な性格の努力家ながら、やや大げさなリアクションで、何事も深く考えすぎてしまう傾向にある。そのためドラマの撮影も、台本に書いてあるとおりを忠実に演技してしまい、キャラクターの心情を考えないなど、少しずれた一面がある。姉が皇太の大ファンで、彼女に勧められて芸能界入りし、彼女の影響で皇太に関心を持つようになった。また事務所に所属してからは、皇太のようなアイドルを目指している。現在でも皇太を慕うと同時に熱心なファンでもあり、皇太が恋人を作ることには反対していた。そんなある日、若梅さほ子と交際していることを知って異を唱えるが、さほ子の思いを知って考えを改めていく。

芥川 夏 (あくたがわ なつ)

若梅さほ子と同じ2年3組に在籍する男子。さほ子とは2年生になってから親しくなった。ショートヘアのたれ目が特徴で、爽やかなイケメン。両耳にピアスをしている。異性に非常に人気があり、入学当初から女子と交際を繰り返している遊び人である。男性アイドル全般に偏見を抱いており、ある日、桐ヶ谷皇太が芥川夏たちの高校で教師体験をすることになった際も、女子生徒と遊ぶだけだろうと思い込んでいた。そんな中、地味な印象のさほ子が皇太と親しくしていることを知り、さほ子に興味を抱いてからかうようになる。

ゆう子 (ゆうこ)

若梅さほ子と同じ高校に通う1年生の女子。のちに2年生に進級する。癖のあるロングヘアをツインテールにしており、おおらかでさっぱりとした性格をしている。さほ子とは仲がいいが、さほ子の自虐的で自己評価が低すぎる一面を心配している。アイドル好きで、桐ヶ谷皇太の大ファン。しかし皇太に恋愛感情を抱いたり、付き合いたいと考えている訳ではなく、皇太を陰から見守っていたいと願っている。そのため、さほ子が皇太に思いを寄せていると知ってからは、皇太の幸せのためにも熱心に二人を応援するようになる。昔から近所に住む年上の男性に片思いしており、積極的にアプローチしているが、交際には至っていない。恋愛経験が少なく、さほ子に恋愛に関する具体的なアドバイスができないことを歯がゆく思っている。しかし、おしゃれで流行に敏感なためファッションやヘアメイクに関して、さほ子の手助けをしている。人前で皇太について話す時は、二人の関係がバレないよう、皇太を「ゴリラ」と呼ぶように提案したのもゆう子である。このネーミングには特に意味はなく、皇太の外見の印象から遠いものであればなんでもよかった。

若梅 ひまり (わかうめ ひまり)

若梅さほ子の妹。年齢は3歳。額が見えるほど前髪を短く切ったボブヘアで、明るく社交的な人懐っこい性格をしている。年の離れたさほ子を慕っており、「ホヤぼーや」の客たちにもかわいがられている。物怖(お)じしないため、桐ヶ谷皇太が人気芸能人だと知ってからも、まるで兄と妹のように接している。

木崎 玲衣

桐ヶ谷皇太の幼なじみの少女で、故人。ロングヘアをポニーテールにしている。歯に衣着せぬ物言いながら、実直な性格で情に厚い。皇太とは母親同士が親友の関係で、同じマンションであったため、幼い頃から非常に仲がよかった。皇太のことを家族のように大切に思いつつ、ひそかに好意を寄せていた。皇太の、人前で格好つけたがりな性格を理解しており、無理に自分をよく見せようとせず、格好悪い一面や素の自分を見せた方がいいとアドバイスしたこともある。桐ヶ谷咲良とも親しく、咲良が亡くなる直前に皇太を頼むと言付けされていた。しかし高校生のある日、眠っている皇太にこっそりキスをしたことで気まずくなり、距離ができてしまう。その後、交通事故に遭って亡くなるが、皇太のことを深く愛しており、恋人として選ばれることはなくても、皇太の幸せを願い続けていた。

桐ヶ谷 咲良 (きりがや さくら)

桐ヶ谷皇太の母親で、故人。ボブヘアにしている。明るい性格ながら、病気がちで、皇太が生まれてからもずっと入退院を繰り返していた。皇太が芸能事務所に所属するようになってからも、彼の活躍を心から応援していたが、皇太が中学生の時に病死した。木崎玲衣の母親とは仲がよく、玲衣とも親しかった。そのため、亡くなる直前には、玲衣に皇太を頼むと伝えていた。

大栗 殉 (おおぐり しゅん)

俳優の若い男性。癖のある髪の毛をショートヘアにしている。目と目の距離が近く、鼻の穴が大きい。偏屈な性格で近寄りがたい印象を与え、顎ひげを伸ばしている。芸歴は長く、子供の頃は非常にかわいらしく、天使のようだといわれていた。しかし成長するにつれ当時の面影が薄れ、今ではすっかり残念な容姿になってしまったと、噂(うわさ)されている。しかし演技力には定評があり、現在は名脇役として知られている。演技に対して高い理想とプライドを持っており、桐ヶ谷皇太のようなアイドルが俳優としても持ち上げられていることを快く思っていない。そのため、皇太と共演したドラマ「真夜中の教室」では、漠然とした演技指導で皇太を困らせるが、最終的にはその人柄と演技力を認めた。

書誌情報

君がトクベツ 10巻 集英社〈マーガレットコミックス〉

第10巻

(2022-08-25発行、 978-4088446936)

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