あらすじ
第1巻
アパートに暮らす五人の宇宙人は、地球を汚さず、戦争はせず、地球人に気づかれないように地球侵略をしなければならないという無茶な制約のもと、各々が無為な日々を送っていた。そんなある日、アイドルオタクのヨイを見たサイが、地球でトップアイドルになったら地球を侵略した事になるのではないかと言い出す。それは名案だという事で、一行はとりあえず偵察のために男性アイドルグループのライブを訪れた。隊長はそこで感銘を受け、真剣にアイドルを目指す事を決意する。アイドルになるためには、まず最初に芸能事務所に入らなければならないため、ヨイを除いた四人は「ジャノン・スーパーボーイ・コンテスト」というオーディションを受ける事にした。イチイは真っ先に書類審査で落ちたが、ニイと隊長は最終選考まで残り、全員で会場に向かう事になる。その会場でヒマを持てあましていたイチイは、偶然から波多野プロダクションの社長の知遇を得て、直訴して波多野プロダクションに入れてもらう事になる。残りの四人もそれに同行し、アイドルグループ「ドルメンX」が結成された。
第2巻
活動を開始した「ドルメンX」であるが、幸先の悪い事に、住んでいたアパートを追い出されてしまう。橋の下でホームレスを始めた五人を見かねた社長は、五人を自らの住居でもある波多野プロダクションに住まわせる事にする。オーディションに落ち続けるのにもすっかり慣れた頃、ニイがミュージックビデオの仕事の一次審査に受かり、そして隊長とイチイも「力士の貴公子ミュージカル」のオーディションの書類審査に受かる。また同時に、路上ライブの許可がおり、ドルメンXはサイのオリジナル曲で初の路上ライブに臨む。さらにイチイと隊長は「力士の貴公子ミュージカル」のオーディションで、ついに最終選考まで進む。同じキャラクター「ミッカ=ゴマス」役でオーディションを受けているイチイと隊長はしのぎを削るが、最終的に役を勝ち取ったのは、イチイであった。
第3巻
「力士の貴公子ミュージカル」のオーディションの最終審査において、隊長は「ミッカ=ゴマス」役には選ばれなかったが、「杏定日ノ介」役を勝ち取る事に成功。実際に「力士の貴公子ミュージカル」を見学した隊長は、大興奮のまま楽屋に通され、主人公「宝条仁丸」役の実光修吾をはじめとする公演メンバーに紹介された。その後、「力士の貴公子ミュージカル」のための過酷なレッスンが始まる。悪戦苦闘しながらも必死で稽古する隊長だったが、ある日ケガをしてしまう。役を降ろされたくないと号泣する隊長だったが、ケガくらいで降板させられる事はないと、先輩の役者達から知らされ、自分はまだアイドルの世界をまったく知らない事を痛感させられる。一方、ニイもまたミュージックビデオのオーディションに合格するが、その仕事はニイが女装して美少女として売り出されるというものだった。
第4巻
ニイのミュージックビデオの撮影が始まったが、監督はニイの集中力が欠けている事をあっけなく見抜いた。ニイは自分がオーディションに呼ばれもしなかった「力士の貴公子ミュージカル」に隊長とイチイが出演する事に対し、激しい嫉妬心を抱いていたのである。その事をはっきりと口にして、二人を見返したいと語るニイに、監督はそれでいいと告げて彼の覚悟を後押しするのだった。それからしばらく経ったある日、イチイに付き合っている女性がいるという情報が、写真付きでインターネット上に流れた。いつの間に女を作ったのかと怪訝に思う関係者達が写真を見ると、となりに写っていたのはニイで、大きな問題になる事もなく騒動は収束する。さらに時は過ぎ、やがて「力士の貴公子ミュージカル」において隊長とイチイの終演が迫る頃、実光修吾が「ドルメンX」への加入を宣言する。そして修吾を新メンバーに加えたドルメンXは、Zeppoで初のワンマンライブに臨む事となる。
メディアミックス
TVドラマ
日本テレビで本作『ドルメンX』のTVドラマ版が、2018年3月から4月まで放映された。隊長を志尊淳、イチイを浅香航大、ニイを小越勇輝、サイを堀井新太、ヨイを玉城ティナ、実光修吾を桐山漣、社長を徳井義実がそれぞれ演じている。全4話。
実写映画
本作『ドルメンX』の実写映画版が、2018年6月15日に公開された。監督は小室直子、製作は日本テレビ放送網株式会社、よしもとクリエイティブ・エージェンシーが務めた。主なキャスティングはTVドラマ版と同じ。劇場版主題歌『参上!!ドルメンX』、並びに劇中歌『ナミダまで心臓(ハート)』は原作者の高木ユーナが作詞、くっきーが作曲を担当した。
登場人物・キャラクター
隊長 (たいちょう)
地球侵略を企む五人の宇宙人のリーダーを務める。少年の姿をしているが、年齢という概念はなく年も取らない。一見クール系に見えるが、独特のパッションとカリスマ性があり、ほかの四人からはそれなりに信頼されている。ヨイに男性アイドルのライブに連れて行かれた際に感銘を受け、地球侵略のためにアイドルになる計画を発案する。その後、「力士の貴公子ミュージカル」のオーディションを受け、「ミッカ=ゴマス」役には落選するものの、「杏定日ノ介」役に選ばれた。公的には「河合隊長」と名乗っているが本名ではなく、ほかのメンバーである「河合」姓の三人とも血縁関係はない。ヨイに好意を寄せているが、ヨイからどう思われているのかは不明。
イチイ
地球侵略を企む五人の宇宙人の一人。少年の姿をしているが、年齢という概念はなく年も取らない。性格は情にもろい熱血漢。隊長と共に「力士の貴公子ミュージカル」のオーディションの最終面接まで残り、「ミッカ=ゴマス」役を勝ち取った。公的には「河合イチイ」と名乗っているが本名ではなく、ほかのメンバーである「河合」姓の三人とも血縁関係はない。
ニイ
地球侵略を企む五人の宇宙人の一人。少年の姿をしているが、年齢という概念はなく年も取らない。いかにもアイドル然としたフェロモン系タイプだが、極めて嫉妬深い性格の持ち主。「力士の貴公子ミュージカル」のオーディションでは声を掛けられなかったが、一人だけで受けていたミュージックビデオの仕事が舞い込み活躍する。公的には「河合ニイ」と名乗っているが本名ではなく、ほかのメンバーである「河合」姓の三人とも血縁関係はない。
サイ
地球侵略を企む五人の宇宙人の一人。少年の姿をしているが、年齢という概念はなく年も取らない。眼鏡がトレードマークのインテリ系で、「ドルメンX」では作詞・作曲を担当している。アイドルとしては前面に出る事は少ないが、眼鏡を外して髪を下ろすとヨイが見とれるほどの美少年になる。公的には「河合サイ」と名乗っているが本名ではなく、ほかのメンバーである「河合」姓の三人とも血縁関係はない。
ヨイ
地球侵略を企む五人の宇宙人の一人。少女の姿をしているが、年齢という概念はなく年も取らない。もともとアイドルオタクで、ほかの四人がアイドルを目指すきっかけを作った。「ドルメンX」の活動が始まってからは、マネージャー役を務めるようになる。
実光 修吾 (じつみつ しゅうご)
「力士の貴公子ミュージカル」で主人公の「宝条仁丸」役を務める少年。突拍子もない言動をして周囲を振り回している。何故か隊長の事を気に入り、突如として「ドルメンX」への参加を自ら申し出て、社長の鶴の一声で五人目のメンバーとなる。
社長
芸能事務所、波多野プロダクションの社長を務める壮年の男性。オーディションの会場でイチイをスカウトしたところ、隊長やニイ、サイも芸能界に入りたいと言ったため、彼らをアイドル部門として事務所に受け入れ、「ドルメンX」と命名した。
棚代 勇斗 (たなしろ ゆうと)
芸能事務所、波多野プロダクションに所属する男性アイドル。「ドルメンX」の先輩にあたる。昔付き合っていた芸能人の女性にリークされて過去の交際が発覚した。それがきっかけとなり、波多野プロダクションを辞める事になる。
ななこ
隊長の追っかけをしているアイドルオタクの少女。隊長が初めてファンレターをもらった相手であるが、アイドルファンの世界でよくないとされている「出待ち」をして、隊長を困らせた。その後、新たに「ドルメンX」に加入した実光修吾のファンに転じ、隊長を落胆させた。
集団・組織
ドルメンX (どるめんえっくす)
芸能事務所、波多野プロダクションに所属する男性アイドルグループ。結成時メンバーは隊長、ニイ、ニイ、サイの四人で全員宇宙人だが、のちにふつうの地球人である実光修吾が加入し、五人組のグループとなる。名称の「ドルメン」はアイ「ドル」の「メン」ズと、古代遺跡の一種を指す「ドルメン」をかけたもので、「X」はSFドラマ『Xファイル』にちなんでいる。
その他キーワード
力士の貴公子ミュージカル
アイドルマニアのあいだではカルト的な人気を誇るミュージカル。若手男性アイドルの登竜門として知られる。原作は漫画で、アニメ化もされている。相撲をテーマにして、登場する相撲部屋やキャラクター毎にそれぞれ熱狂的なファンがいる。ミュージカルは10年以上も公演が続いており、役者達は一定の期間でオーディションにより代替わりしている。ファンのあいだでは、略称で「リキミュ」と呼ばれる。