脳内タイムトラベルがテーマ
本作で行われるタイムトラベルは、「脳内(インブレイン)タイムトラベル」と呼ばれるもの。過去20年間、春日市内を中心に「あすとおん」という装置を使ってスキャンした物理・物質・霊質構造を、被験者の脳内に投影し、特定の時空を再現する架空の技術である。被験者は、実際に過去に戻ったかのような現実感を味わうが、本当にタイムワープするわけではないため、過去で何をしても「タイムパラドックス」が起こらないというのが特長。過去に介入して現在を改変したり、過去の物質を持ち帰ったりはできない。また、被験者が時間旅行先に長時間留まり続けると、精神が危険な状態に陥る。通常はシステムを強制切断して現実世界に引き戻すのだが、被験者の精神状態が危険レベルを超えている場合は、精神障害を引き起こすこともある。
SFハートフルストーリー
タイムトラベル春日研究所を訪れるのは、過去に後悔を抱いていたり、知りたいことがあったりなど、自分の道に迷ってしまった人たち。自殺を考えるまで行き詰まった35歳のホスト、堂島は、18年前、好きだった女の子に振られた直後の自分に会いにいく。そして、服装や髪型にむとんちゃくなSFオタクだった自分を、かっこよく生まれ変わらせ、再び彼女に告白させようとする。25歳の引きこもりのオタク、森井は、両親の離婚で離れ離れになった実の妹との約束が思い出せず、10年前の妹に会いにいく。そして妹の本当の気持ちを知ることになる。本作は、タイムトラベルによって、前向きな人生を取り戻そうとするドラマを描いたSFハートフルストーリーである。
タイムトラベルに隠された謎
本作の舞台は、東京が地震等による大災害に見舞われてから10年後の世界。主人公の風見鶏亜紀は、被災地の中心地にいながら生き残った女性だが、死体の山の中で亜紀だけが助かった理由は本人にもわかっていない。また、「あすとおん」は20年前から今現在も、春日市内をスキャンし続けているが、過去のデータを見ると、タイムトラベル春日研究所はなぜか存在しない。それどころか、10年前の大災害以降、亜紀はいないことになっているのだ。さらに、実験で死んだはずの亜紀の妹、瑞紀が、3年後に現れて研究所の新所長になることが、第2巻の冒頭で明かされている。ストーリーが進むにつれ、タイムトラベルに隠された謎が判明していく構成が本作の魅力の一つでもある。
登場人物・キャラクター
風見鶏 亜紀 (かざみどり あき)
有限会社タイムトラベル春日研究所の所長の女性。ポニーテールが特徴の28歳の美女で、武道の達人でもある。亡き父が作った研究所を引き継ぎ、1回30~50万円程度の費用でタイムトラベルサービスを行っているが、経営状況は赤字続きである。また、タイムトラベルの実験で3歳違いの妹、瑞紀を亡くした過去を持つ。
宮山 広規 (みやま ひろき)
有限会社タイムトラベル春日研究所で、亜紀の助手を務める31歳の男性。高校生の頃から一途に思い続けた女性を1年前に亡くし、春日研究所の広告を見て来所。タイムトラベルの被験者第1号となり、その後研究所で働くことになった。亜紀と過ごすうち、彼女に恋をする。
書誌情報
君と僕のアシアト : タイムトラベル春日研究所 6巻 集英社〈ジャンプ・コミックスデラックス・GJ〉
第5巻
(2011-12-01発行、978-4088587813)
第6巻
(2012-08-01発行、978-4088587929)
君と僕のアシアト : タイムトラベル春日研究所 4巻 集英社〈ジャンプ・コミックスデラックス〉
第1巻
(2010-01-01発行、978-4088598161)
第2巻
(2010-11-01発行、978-4088598628)
第3巻
(2011-03-01発行、978-4088598741)
第4巻
(2011-07-01発行、978-4088598895)







