概要・あらすじ
天才ヴァイオリニストとして知られる伊集院英至の15年ぶりの帰国に合わせ、母校の私立洛陽音楽大学付属中学校では歓迎の意味で演奏会を催すことになった。そこで3年生の友成笑、的場類、樫本孝純、安東妙子の4人が組んで四重奏をすること決まり、担当教諭の神田から彼らに楽譜が渡される。その楽譜はシューベルト弦楽四重奏曲第16番「虹」という、一般にはあまり知られていない曲だった。
共に練習に臨む4人は当初は気が合わずいがみあっていたが、空き教室で偶然にシューベルトの直筆と思われる弦楽四重奏曲第16番「虹」の楽譜を発見したことから、その空き教室を使っていた教師の失踪及び直筆の楽譜をめぐる謎を解決しようと一致団結していく。
登場人物・キャラクター
友成 笑 (ともなり えみ)
私立洛陽音楽大学付属中学校3-A(ヴァイオリン科)の女子中学生。元気いっぱい明るさいっぱいの人気者。ヴァイオリンの成績は上位レベルで、情感豊かな演奏をする。四重奏では第一ヴァイオリンを担当している。将来の夢はヴァイオリニストで、楽器をとても大切にしている。小学校2年まで西ドイツに住んでいたのでドイツ語が少し理解できる。
的場 類 (まとば るい)
私立洛陽音楽大学付属中学校3-F(チェロ科)の男子中学生。四重奏ではチェロを担当している。黒縁眼鏡をかけた、常に成績トップの超秀才。中途半端なことが嫌いで、四重奏を引き受けたからにはしっかりやり遂げようと考えるなど真面目な性格。副科としてピアノの授業もとっているため、ピアノが弾ける。さらに作曲もでき、いずれは作曲家になりたいと思っている。
樫本 孝純 (かしもと たかすみ)
私立洛陽音楽大学付属中学校3-B(ヴァイオリン科)の男子中学生。四重奏では第二ヴァイオリンを担当している。校内きってのプレイボーイで、初めて4人で顔を合わせた際も、さっさと練習をすませてデートをしようと安東妙子に声をかけていた。
安東 妙子 (あんどう たえこ)
私立洛陽音楽大学付属中学校3-E(ヴィオラ科)の女子中学生。四重奏ではヴィオラを担当している。長いロングの黒髪、耳には赤いピアスをつけたツッパリ美少女。付属高校の不良グループと親交がある。免許は持っていないがバイクに乗り慣れており、友成笑が拉致された際には、付属高校の友人から借りてきたバイクで後を追った。
神田 (かんだ)
私立洛陽音楽大学付属中学校の教諭で、友成笑を担当している。口ひげを生やした紳士風の中年男性。笑たちの四重奏の指導をしている。笑、樫本孝純、安東妙子、的場類の4人を推して、四重奏を演奏させようとしている人物。愛車は紺のRX-7。
伊集院 英至 (いじゅういん えいじ)
ドイツで演奏活動を続ける天才ヴァイオリニスト。私立洛陽音楽大学付属中学校の卒業生。15年ぶりに日本でリサイタルをすることになり、久しぶりに母校である私立洛陽音楽大学付属中学校への訪問を打診する。母校の訪問をとても楽しみにしている。
小池 (こいけ)
私立洛陽音楽大学付属中学校の教諭。友成笑たちが四重奏で組むことになる前の2月10日に失踪した。学校付属の音楽博物館の展示品の管理を任されており、2月のはじめ頃、「芳野コレクション」と呼ばれる学校創立者が残した楽器や楽譜などの色々なコレクションを整理していた。失踪した日は生徒のレッスンが入っていたが、大変なものを見つけたと言って中止し、その日を境に姿を消している。
エリザベート・シュテルン (えりざべーとしゅてるん)
伊集院英至のマネージャーで金髪の美女。名前にあるシュテルンはドイツ語で「星」を意味している。神田がドイツに留学していた時、音楽大学で同期だった。神田とは今でも友人で、演奏会当日廊下で立ち話をしていた。
場所
私立洛陽音楽大学付属中学校 (しりつらくようおんがくだいがくふぞくちゅうがっこう)
友成笑たちが通っている中学校。学校創立者の名は「芳野」。ドイツで演奏活動を続ける天才ヴァイオリニストの伊集院英至もかつて在籍していた。ヴァイオリン科やチェロ科、ヴィオラ科など楽器によってクラスが分けられている。付属の音楽高校もある。
その他キーワード
シューベルト弦楽四重奏曲第16番「虹」 (しゅーべるとげんがくしじゅうそうきょくだいじゅうろくばんにじ)
シューベルトの幻の遺作で伝説の未発表曲と言われている曲。シューベルトの弟子の作品ではないかという説が有力な楽譜で、ずっと昔に全集から削られているため一般にはあまり知られていない。この楽譜は簡単に手に入るような代物ではなく、曲を収めたレコードすら発見されていない。神田はこの楽曲をシューベルトの作品だと信じており、作風が多少異なっているのは晩年のものだからだと考えている。 空き教室から出てきた直筆と思われる楽譜の裏にはイタリア語で「星」という意味の「ステラ」という文字が書かれていた。