執事たちの沈黙

執事たちの沈黙

表向きは品行方正な執事の和巳義経は、裏ではパチンコと女遊びにうつつを抜かすクズ人間だった。そんな義経に恋する世間知らずのお嬢様、泉川椿の恋愛模様を描いたラブコメディ。少女漫画でありながら、男性である義経の目線で描かれているのが特徴。小学館「Cheese!」2016年8月号から2020年9月号まで連載。

正式名称
執事たちの沈黙
ふりがな
しつじたちのちんもく
作者
ジャンル
ラブコメ
レーベル
フラワーコミックス(小学館)
巻数
既刊13巻
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あらすじ

第1巻

泉川椿の家族が暮らす屋敷で執事として働く和巳義経は、椿のたび重なるわがままに苛立ちを覚えていた。屋敷では完璧な執事として従事する義経だったが、プライベートではギャンブルと女遊びを愛するクズ人間で、その日も椿への苛立ちを募らせ、勤務を終えるとすぐさまパチンコ店へと足を向ける。ひとしきりパチンコに興じたあと、店の外に出た義経は、椿がひったくり被害に遭っている場面に遭遇する。さすがに不憫に思った義経は「歳三」と偽名を名乗って椿を助けるが、椿はそんな彼に一目惚れしてしまう。一方の義経は、自分の正体がばれないうちに、椿から嫌われるように仕向ける。しかし椿の歳三への一途な思いは本物で、どんな事をされても彼女の気持ちが変わる事はなかった。(第1話。ほか、3エピソード収録)

第2巻

和巳義経歳三に扮して、わざと散らかしたアパートの一室に泉川椿を招待し、嫌われる作戦を決行する。しかし歳三が、わざと嫌われようとしている事を見抜いている椿には、まったく効果がなかった。そんな中、義経は珍しく熱を出して仕事を休む事となった。すると椿は義経の自宅を訪問し、歳三を看病する練習だと称して家事をこなすが、慣れない家事に疲れてそのまま眠ってしまう。その姿を見た義経は、幼い頃に自分を素直に慕っていたかわいい椿を思い出し、思わずキスをしようとする。しかし、運悪く顔を近づけた際に、椿は目を覚ましてしまう。椿は歳三が好きなはずなのに、なぜか執事の義経にも胸をときめかせてしまう自分に混乱するが、顔が少し似ているだけだと必死にその思いを否定する。次の日、義経は忘れ物を届けに椿の学校へと向かう。学校では若くイケメンな義経は女子生徒たちの目を引き、教室内は大いに沸き立つ。その様子を見ていた椿は気分を害し、義経に嫉妬してしまう。

第3巻

このままでは泉川椿を本当に好きになってしまうと危機感を抱いた和巳義経は、歳三に扮して椿とは付き合えないとふってしまう。初めての失恋に椿は大いに落ち込み、いつものわがままな一面は鳴りを潜め、泣いてばかりの日々を送るようになる。そんな椿を見てペースを乱された義経は、椿を異性として意識している事実を受け入れ、歳三として椿との交際をスタートさせる。一方、義経と歳三が同一人物だと知らない椿は、歳三に対して「義経のふりをして屋敷に遊びに来てほしい」と依頼し、状況は非常にややこしくなっていく。そんな中、花房蘭の後押しもあって、歳三と椿は温泉旅行をする事になった。しかし、椿は行きの電車内で激しい腹痛に襲われてしまう。嫌われたくないとトイレを我慢する椿に対し、歳三はそんな事で嫌にならないと優しくフォローをする。

第4巻

結局、旅行中は泉川椿の体調は回復せず、和巳義経演じる歳三はそんな椿に付き添うだけで旅行は終了する。帰り道、なんとなく性欲の高まりを覚えた義経は風俗店に立ち寄るが、運悪く風俗店から出てくるところを椿に目撃されてしまう。椿は自分との旅行がつまらなかったからといって酷いと涙し、落ち込んでしまう。そんな椿の姿を見た義経は歳三に扮してフォローをし、なんとか椿の機嫌を取る事に成功。そして椿は初めて義経に対して日頃の感謝の気持ちを伝え、その姿に義経は椿の成長を感じるのだった。そんな中、アメリカに留学していた白鳥白鳥が帰国する。白鳥は椿と婚約したいと申し出るが、椿は自分は歳三と交際しているから無理だとはっきりと断る。椿が交際している相手は誰なのか独自に調査を開始した白鳥は歳三の存在を知るが、彼の人物評価は「クズ人間」にほかならなかった。結局、白鳥は義経と歳三が同一人物だと気づけず、状況はさらにややこしくなっていく。

第5巻

和巳義経扮する歳三に会いに行った白鳥白鳥は、こんなクズ人間では泉川椿を幸せにできないと確信。そして椿に振り向いてもらうため、遊園地デートに誘う計画を立て始める。一方の椿は、白鳥とは婚約できないものの友人関係は続けたいとの思いを伝えるため、手作りクッキーを作る。そんな椿を見て義経はデリカシーに欠ける行動だと強く否定し、椿を怒らせてしまう。その後、椿は白鳥からの遊園地デートに応じるが、そこで人の気持ちを軽んじていた自分に気づいて反省し、悪態をついた義経にも謝罪をするのだった。後日、恋人であるはずの歳三が、なぜ自分の体を求めてこないのか気になった椿は、白鳥にその事を相談するなど暴走を開始。さらに思い悩んだ椿は、歳三の自宅アパートに赴いて自らせまるものの、実際に歳三から触られそうになると恐怖心から逃げ出してしまう。このままでは歳三に嫌われてしまうと考えた椿は、義経に対してセックスの練習をさせてほしいとお願いをする。

第6巻

泉川椿和巳義経を異性として意識してからというもの、義経と歳三の二人に心惹かれている自分にとまどう。その姿を見た義経は、あえて歳三の姿で椿に優しく接して心をかき乱す事に成功。いずれ椿の方から歳三に別れを告げてくるだろうと思っていた義経だったが、ちょとした油断で義経と歳三が同一人物である事がばれてしまう。義経は必死にごまかすものの椿には通じず、ついにこれまで一人二役を演じていた事を告白する。しかし、椿は怒るどころか「これからは義経との幸せな交際がスタートする」と喜び、執事として働いている時間もベタベタと密着するようになってしまう。このままでは椿の父親に二人の関係が明るみに出る事を恐れた義経は、あえて椿に冷たく接する。そんな義経の気も知らずに、椿は勤務時間外ならいいだろうと、自宅に押し掛けたりと問題行動を起こしていく。二人の思いにすれ違いが起こる中、その日も悪天候にもかかわらず椿は義経の自宅を勝手に訪問。椿は帰宅できなくなり、そのまま義経の自宅で一泊する事になる。

第7巻

泉川椿は少しでも和巳義経の気配をそばに置いておきたいと、執事として働く義経はもちろん、歳三と偽っていた時代の写真も大切に保管していた。それを知った義経は、椿の父親に見られたら大変な事になると椿に写真の処分を命じるが、椿は応じようとしない。そんなある日、義経は深酒をして酔っぱらい、勝手に写真を処分しようと大胆にも泉川家に忍び込む。そして椿の部屋で写真の隠し場所を探し当てるが、椿の父親に見つかりそうになってしまう。椿のベッドに潜り込んだ事で難を逃れた義経だったが、そのまま二人は激しいキスを重ね、いい雰囲気に包まれる。しかし、深酔いしている義経は下半身がうまく反応せず、椿は義経は不能なのだとカンちがいし、次の日に滋養のある食べ物を持って自宅を訪問する。一方、椿が頻繁に外出し、帰宅時間が遅くなっている事実に、椿の父親は誰かと交際しているのではないかと疑い始める。そして椿の父親は義経にどんな男性と交際しているのか、早急に調べるよう命令する。

第8巻

ある日、テレビアニメを見ていた泉川椿は、「男性にとって元彼女は特別な存在」というセリフに引っかかりを覚える。和巳義経の元彼女がどのような女性なのかを知りたい椿は、義経のスマートフォンをこっそり調べようとするがうまくいかない。そんな椿に対して義経は、椿の写真やデータしか入っていないから自由に見ればいいとスマートフォンを渡す。これにより椿は自分の行いを大いに反省する。夏休みを前にして椿は通知表を渡されるが、そこには椿に友達が一人もいない事実が記されていた。椿は友達をつくろうと街に繰り出したところ、書店で和巳馨と出会う。馨は好きな漫画家、角砂糖カオルのファンだと言う椿に友達になろうと名刺を渡すが、実兄だと気づいた義経は絶対にだめだと阻止する。一度は引き下がった椿だったが、行きつけのネコカフェで馨と再会。さらに馨から、実は角砂糖カオル本人なのだと聞かされ、椿は義経に内緒で馨と親睦を深める。そして椿は、義経が淫行条例のために手を出してこない悩みを打ち明ける。それに対して馨は、だったら義経と婚約すれば問題ないとけしかける。

第9巻

ついに和巳義経の前に和巳馨が現れ、兄弟なのだからもっとなかよくしようと接近してくる。これまで馨から受けていた過度な愛情を避けていた義経だが、自宅の合鍵を勝手に作られて侵入されるなど、連日気が休まるヒマがない。さらに泉川椿が夏休みである事から、一人の時間を取れずに性欲を持て余していた。そして夏休みの最終日、椿は義経に対して「計画的に宿題をすればなんでも言う事を聞く」という約束を守ってほしいと切り出す。椿は義経に対し、婚姻届も指輪ももらったのだから淫行条例に触れる事はないと主張し、体の関係をせまる。ふだんならばそんな誘いに応じる事のなかった義経だったが、性欲の高まりもあり、二人は初めて体の関係を持つ。

登場人物・キャラクター

和巳 義経 (かずみ よしつね)

泉川椿の住む屋敷に執事として勤務している男性。年齢は20代で、高身長で手足が長くスタイルがいい。クールな雰囲気を漂わせた美男子でもあり、兄の和巳馨から溺愛されている。幼い頃から椿の世話をしており、行動パターンや食べ物の好き嫌いなどもすべて把握している。仕事をしている時には品行方正な執事を演じているが、プライベートではパチンコと女遊びを愛するダメ人間。自分でも「クズ」だと自覚している。椿に対してはわがままで自分勝手な女だと苛立ちを覚えていたが、一途なアプローチを受けるうちに、少しずつ異性として意識するようになる。椿に対しては和巳義経自身の名前を「歳三」と偽っており、椿の思い込みを利用して義経と歳三は別の人物だと偽り、交際をスタートさせた。のちに歳三は義経だと知られるが、椿からの気持ちは変わらず、交際を続ける事になった。執事業だけでなく、投資目的のアパートも所有している。

歳三 (としぞう)

和巳義経がプライベートで泉川椿と行動する際の人格で、偽名の男性。髪の毛はボサボサで、デニムパンツにTシャツといった適当な服装をしている。また、椿にわざと嫌われるために個性的なファッションをする事もある。ギャンブルと女遊びを愛するだらしない行動が目立ち、やや誇張はされているものの、義経にとっては歳三の性格こそが本来の自分でもある。義経が投資目的のために保有しているアパートの一室に住んでいる設定。

泉川 椿 (いずみがわ つばき)

世間知らずのお嬢様。椿の父親と花房蘭の娘。年齢は16歳で、私立女子高校に通っている。両親は離婚しており、椿の父親と二人暮らし。顔立ちは非常に整っており、抜群のプロポーションを持つ。幼い頃から甘やかされて育っており、性格は非常にわがままで自分勝手。執事として働く和巳義経に対しても、心無い言動を繰り返していた。自己中心的な振る舞いばかりするために友達はほとんどおらず、心を許せる相手はネコの歳三と白鳥白鳥しかいなかった。ひったくり被害に遭った際、自分を助けてくれた歳三に一目惚れしてしまい、猛アプローチを仕掛けていく。義経と歳三を完全に別の人物だと思い込んでいた。のちに同一人物だと気づくものの、変わらず義経に一途な愛を貫いている。義経に恋をしてからはわがままな言動は影を潜め、他人を思いやる事ができるようになり、かわいらしい一面ものぞかせるようになっていく。

ネコの歳三 (ねこのとしぞう)

泉川椿の家に住んでいるオスのネコ。非常にふくよかな体形をしており、動きも鈍い。人間の言葉を理解している節があり、その場の空気に合った行動をする事が多い。

椿の父親 (つばきのちちおや)

大企業を経営する男性。泉川椿の父親。椿の母親の花房蘭とは離婚しているが、未だに未練を抱いている。高校生の娘がいるとは思えないほど若々しい容姿をしている。幼い頃から椿を溺愛し、すべて言いなりになってきた。そのため、椿のわがままな性格をつくり上げてしまった張本人ともいえる。年々過激なモンスターペアレントになっており、和巳義経を困らせている。義経の言動に気に入らない事があると、すぐに給与やボーナスをカットすると脅している。

花房 蘭 (はなふさ らん)

泉川椿の母親。椿の父親とは離婚している。一見おとなしくて優しそうな美人だが、人を焚きつけるのがうまい。和巳義経と歳三が同一人物である事にいち早く気づき、義経と椿が惹かれ合っていく様子を面白がっている。椿の父親からは未練を抱かれている事には気づいているが、再婚する気はまったくない。

白鳥 白鳥 (しらとり すわん)

大企業「白鳥グループ」の御曹司の少年。3年間アメリカに留学していた。椿の父親がアメリカの大学で語学を学び、友達が100人できたら泉川椿と婚約してもいいと約束したため、懸命に努力を重ねている。ただし友達100人に関しては「インターネット上の友達」が100人であるため、達成したかどうかは微妙なところである。年齢の割に背が低く、かっこいいよりもかわいらしい容姿を持つ。その容姿のコンプレックスから、私服ではスカルやクロスが付いたハードなデザインのアクセサリーを好む。思い込みが激しい性格で、世間一般の常識とややずれているところが多い。幼い頃からずっと椿にあこがれ続けているが、椿からは異性として意識されていない。和巳義経からは、騒がしく面倒くさい奴だと思われて相手にされていない。

和巳 馨 (かずみ かおる)

大手不動産会社「和巳グループ」の会社役員を務めている男性。和巳義経の兄で、クールな雰囲気を漂わせた美男子。次期社長候補でもあり、自分の右腕として義経に戻ってきてほしいと願っている。昔から義経の事を溺愛し、自分の手元でかわいがりたいという願望があり、義経からは気持ちが悪いと避けられている。また、義経が椿の父親の愛人だと勝手にカンちがいをしているなど、やや天然気味。会社役員でありながら少女漫画家「角砂糖カオル」としても活動している。代表作はアニメ化もされた「キミ?ラブ」「禁断★執事(バトラー)」で、泉川椿には恋愛の教科書として参考にされている。

高坂 (こうさか)

バーテンダーを生業とする男性。和巳義経と大学時代からの友達で、クールな雰囲気を漂わせた美男子。どことなく義経と雰囲気が似ている。義経と同様、女性関係にはだらしないクズ人間の一面を持ち、同じタイプの女性に手を出す事から、いつのまにか義経と親しくなった。働いているバーには義経はもちろん、花房蘭も頻繁に飲みにやって来る。泉川椿とはSNSでつながっており、ネコの歳三のファン。

業田 武吉 (ごうだ たけよし)

白鳥白鳥の護衛を務める男性。頭をスキンヘッドにしている強面で、屈強な体を誇る。しかし内面は穏やかで心優しい性格で、白鳥の事を心の底からかわいがっている。白鳥が世間知らずなのも、自分たちが甘やかし過ぎたのが原因ではないかと後悔している。

書誌情報

執事たちの沈黙 13巻 小学館〈フラワーコミックス〉

第1巻

(2016-11-25発行、 978-4091387875)

第2巻

(2017-02-24発行、 978-4091391346)

第3巻

(2017-06-26発行、 978-4091391810)

第4巻

(2017-09-26発行、 978-4091394989)

第5巻

(2018-01-26発行、 978-4091398727)

第6巻

(2018-05-25発行、 978-4098700769)

第7巻

(2018-09-26発行、 978-4098701568)

第8巻

(2019-01-25発行、 978-4098703876)

第9巻

(2019-05-24発行、 978-4098704873)

第10巻

(2019-09-26発行、 978-4098706129)

第11巻

(2020-01-24発行、 978-4098707966)

第12巻

(2020-06-26発行、 978-4098710096)

第13巻

(2020-09-25発行、 978-4098710775)

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