埼玉在住の女子高校生視点で見る埼玉
本作は、埼玉県行田市に住んで16年になる白鳥小鳩と姫宮アグリ、そして最近東京から行田市に引っ越してきた東上ミナトの三人の女子高校生を中心に物語が展開される。作品のテーマは埼玉県そのもので、県民ならおなじみの名所から、地元のマイナースポットまで登場し、埼玉あるあるネタがふんだんに盛り込まれている。作者の渡邉ポポ自身も、「秩父や長瀞などの名所はあるが、埼玉といえばこれという明確な特徴がない。とはいえ、ほどほどに都会ということもあり、卑屈さと小さな優越感が同居している」と語っており、作中でも小鳩が埼玉について自虐的に語り、アグリが埼玉の魅力を解説し、それにミナトが感心するという流れが定番となっている。
埼玉といえばイモっぽさが魅力!?
埼玉に完全に染まっている小鳩とアグリは、二人そろってどこか垢抜けない、イモっぽさを醸し出している。一方のミナトは、東京から引っ越してきたばかりで、当初は洗練されたオーラを漂わせていたこともあり、小鳩たちからは「東京風を吹かせている」と評されたりしていた。しかし、小鳩とアグリの純朴さに触れるうちに、ミナトも次第にイモっぽさを見せるようになっていく。埼玉の地にいい意味で順応し、変化していくミナトの姿が見どころとなっている。ちなみに、行田市より田舎である秩父郡出身の委員長・影森モナは、そんな小鳩たちを「都会っぽい」と見なしており、埼玉という地の奥深さが垣間見える。
身近で展開される淡い恋模様
白鳥小鳩や姫宮アグリ、東上ミナトにはきょうだいがおり、彼らを巻き込んだ人間関係も魅力となっている。両思いで周囲にはバレバレなのに、肝心の二人がその気持ちに気づいていない、小鳩の妹・小毬とアグリの弟・修。さらに、出会いが偶然だったため、互いが近い関係性であることを知らない、ミナトの兄・霞と小鳩の関係など、爽やかでほのぼのとした恋愛模様も楽しめる。
登場人物・キャラクター
白鳥 小鳩 (しらとり こばと)
埼玉県行田市在住の女子高校生。埼玉県民歴は16年。茶髪のボブヘアで、自他共に認める地味な顔立ちをしている。胸が小さくスタイルもあまりよくないこともあり、自分のイモっぽさを気にかけている。クラスメートの姫宮アグリや東上ミナトと仲がよく、何かと行動を共にしている。基本的にネガティブ思考で、埼玉県民であることを理由に自虐的になる場合が多いが、親友のアグリのフォローでいつもなんとなく立ち直っている。ちなみに切り替えは早すぎるため、本心で傷ついているかは不明。また、埼玉県に関連する数値データに異様に詳しい。不思議と子供や動物に好かれる体質の持ち主。小さい頃、埼玉県のマスコットキャラクターと同じく「コバトン」と呼ばれていたことがあり、アグリが今更それを蒸し返したことで、ミナトの妹・岬からは「コバトン」と呼ばれている。
姫宮 アグリ (ひめみや あぐり)
埼玉県行田市在住の女子高校生。埼玉県民歴は16年。明るい茶髪のショートヘアで、少々きつめの顔立ちと八重歯が特徴。クラスメートの白鳥小鳩や東上ミナトと仲がよく、何かと行動を共にしている。小鳩の埼玉県に絡めた自虐ネタに対して、激励とも哀れみともつかないツッコミを入れることが多い。外見や荒っぽい口調から子供に怖がられるときもあるが、実際は穏やかな性格で、姫宮アグリ自身もそのことを気にしていない。実は「埼玉」の名の由来ともなったといわれる、由緒正しい前玉神社の娘。
東上 ミナト (とうじょう みなと)
埼玉県行田市在住の女子高校生。埼玉県民歴は1か月。ピンク色のロングヘアで触覚を長く伸ばしており、スタイル抜群で巨乳の持ち主。クラスメートの白鳥小鳩や姫宮アグリと仲がよく、何かと行動を共にしている。その洗練された雰囲気から、小鳩には「東京風を吹かせている」と評されることもあるが、実は内気な性格に加えて人付き合いも苦手で、東京にいた頃は親しい友人もいなかった。小鳩やアグリとの友人関係も含め、埼玉での生活を非常に気に入っており、埼玉県民として早く地域に溶け込みたいと考えている。ちなみに、オシャレな物事になるとすぐに気後れする小鳩に頼られがちだが、東上ミナト自身もかつての交友関係の影響から、キラキラした都会的なものに関する知識は疎い。