女性の「声」をテーマにしたサクセスラブコメディ
本作はアナウンサーや歌手、声優、動画配信者といった、いわゆる「声」を活かした職業にスポットが当てられ、大財閥の御曹司ゆえに社会の趨勢(すうせい)に機敏な有栖が、放送部の女子たちを声のプロに導いていく姿が描かれる。また、五十嵐正邦の『川柳少女』がアニメ化された際に主役を務めた花澤香菜は、本作の推薦コメントで「作者が声フェチだと思わせるほど、漫画内で声の表現が巧みに演出されている」と語っている。
「アポロ」の正体を探るべく奔走する主人公
大財閥の御曹司である有栖は、中学生の時に「アポロ」と名乗るラジオ配信者に魅了され、若気の至りから愛の告白をしてしまう。だが、高校生になった今はこの事実を黒歴史として受け止めており、仮に財閥を継いだ際にアポロからなんらかの脅迫じみた言葉をかけられたり要求をされることを危惧していた。そのため口止めの必要性を感じた有栖は、かつてアポロがラジオ配信で話していた情報をもとに、現在彼女が楓林学園女子高校に通っていると推測し、近隣の楓林学園男子高校へと進学する。そして、1年後に楓林学園女子高校と楓林学園男子高校が合併したことで、改めてアポロの正体を探るべく、放送部に入部して四人のアポロ候補の女子と交流を深めることになる。
「声」にかかわる仕事を夢見る四人の女子
楓林学園高校の放送部は、合併前の楓林学園女子高校時代から活動しており、生徒たちから絶大な人気を集めている。部員はいずれも「声」に関係する仕事のプロになる夢を持ち、雨月しのぶはアナウンサー、霧乃イコはヴァーチャル動画配信者、姫川寧々は声優、井ノ華立花は歌手を志している。彼女たち四人の誰かがアポロであると考えた有栖は、放送部の機材が古いことに気づくと、株で儲(もう)けた100万で新機材の購入を決め、強引に放送部へ入部し、やがて本気で彼女たちのプロデビューを後押しすべく奔走するようになる。
登場人物・キャラクター
山吹 有栖 (やまぶき ありす)
楓林学園高校の2年C組に所属する男子。財閥「山吹財閥」の御曹司であることに誇りを持ち、将来の日本を背負って立つことを自負しており、その自信に見合った決断力と実行力を備えている。社交的な明るい性格で、誰に対しても分け隔てなく接するため、男子生徒からの受けもいい。一方でデリカシーに欠けるところがあり、女子生徒からの評価は芳しくない。また、つねに完璧でありたいという願いが強いため、些細(ささい)な失敗で大げさにうろたえる傾向がある。中学生時代にアポロのラジオ配信「真夜中ハートチューン」を視聴しており、心の拠(よ)り所となっていた。桃が大好物。
アポロ
有栖が中学1年生の頃に活動していたラジオ配信者の女性。有栖と同い年で同じ県在住。毎日深夜0時に「アポロ」と名乗って、「真夜中ハートチューン」をラジオ配信していた。番組の聴取者は少ないものの、有栖からはその配信内容を絶賛されており、番組内の会話コーナーで、彼から愛の告白じみた言葉を受けたことがある。しかし、ある日突然配信が停止され、履歴もすべて削除されてしまう。その後も自らの正体を徹底的に隠しており、有栖の情報網を駆使しても未(いま)だにその正体はつかめていない。だが、有栖が昼休み中の校内放送で、アポロの声に似た声がスピーカーから流れてきたことで、放送部に所属しているしのぶ、イコ、寧々、立花の四人はアポロの声と似た特徴を持つため、この中の一人がアポロであることを確信する。
書誌情報
真夜中ハートチューン 6巻 講談社〈講談社コミックス〉
第1巻
(2023-12-15発行、 978-4065337547)
第2巻
(2024-02-16発行、 978-4065345702)
第3巻
(2024-04-17発行、 978-4065354155)
第4巻
(2024-06-17発行、 978-4065357774)
第5巻
(2024-09-17発行、 978-4065367735)
第6巻
(2024-11-15発行、 978-4065375112)