吸血鬼と薔薇少女

First Bite

人間と人ならざる者が共存する世界。高校1年生の白咲千結は、恋愛に強いあこがれを抱きつつも、異性が超苦手で恋とは縁のない暮らしを送っていた。そんなある日、千結はクラスメートで吸血鬼の夜宮朔が体調を崩していることに気づき、とっさに自分の血を分け与える。吸血鬼は異性の血しか飲むことができないため、千結は自分の血を差し出したのだ。これをきっかけに千結はすっかり朔に気に入られ、熱心にアプローチを受けるようになるが、千結は頑なに受け入れようとしない。それは朔が、ほかの女子生徒からも血をもらっているにもかかわらず、千結のことは独占しようとしていたからである。しかし朔曰く、ほかの女子生徒は朔のことが好きなわけではないらしい。彼女たちは吸血鬼という種に価値を感じているだけで、朔の人間性には興味がないという。その事実を後日、朔と3年生の女子の会話を聞いて実感した千結は、思わず二人に割って入り、彼女に朔自身のことをもっと知ってほしいと頼み込む。この言葉でますます千結に執着し始めた朔は、今後は千結の血しか吸わないと宣言する。

First Visit

白咲千結は異性に慣れるため、夜宮朔は血を分けてもらうという交換条件で、つねに行動を共にするようになる。その過程で二人はデートをしたり、いっしょに勉強をしたりして少しずつ仲を深めていく。しかし二学期が終わり、千結はしばらく朔に会えなくなることを残念に思っていた。だが朔は、千結の血しか吸わないと決めている以上、毎日会って血を吸わせてもらわないと生きていけない。そのため、千結は冬休みに入ると、さっそく夜宮家に遊びに行くことになる。そこで千結は、朔の両親は忙しくて不在がちなこと、朔はろくに食事もしていないことを知り、姉のように世話を焼くようになる。そして二人はいい雰囲気になるものの、そこへ謎の少女がやって来る。

First Rival

突如夜宮家にやって来た少女の正体は、「紫琉茉莉花」という名の吸血鬼で、夜宮朔の婚約者だった。朔に特別な女性がいたことにショックを受ける白咲千結だったが、朔は親が勝手に婚約者と決めただけで、朔にとって茉莉花は妹のような存在だという。こうして三人は共に冬休みを過ごすが、茉莉花は千結と朔が交際しているとカンちがいしたままだった。そんなある日、千結は茉莉花にパーティに招かれる。朔には内緒でと言われた千結は、素直に一人で会場へ向かうが、これは茉莉花の罠だった。このパーティは本来吸血鬼限定のもので、茉莉花は何も知らずにやって来た千結に、恥をかかせようとしたのである。しかし千結はまったくこれに気づかず、それどころか、ほかの吸血鬼に絡まれて困っていたところを助けてくれた茉莉花に感謝するのだった。さらにそこへ事態に気づいた朔がやって来る。そして千結は、朔が実は吸血鬼と人間のハーフ「半純血」であり、吸血鬼のあいだでは複雑な立場であることを知るのだった。茉莉花は、そんな朔を守るために他者に対して攻撃的になっていたのである。そこで千結は、茉莉花に本当は朔と交際していないことを打ち明けたうえで、それでも朔に恋しているとライバル宣言する。

First Scent

三学期初日の朝、白咲千結は電車で気分が悪そうな少年を見つけ、ハンカチを貸す。その後すぐに彼が転入生の山吹牙緒であること、その正体が狼男であることを知る。朝の一件ですっかり牙緒に気に入られた千結は、夜宮朔と共に狼男という種についての説明を受けることになる。狼男は吸血鬼同様に人間よりも高い能力を持つ種だが、滅多に人前に姿を現すことはなく、主に裏社会を牛耳る存在であった。しかし、男性は16歳になるとつがいとなる女性を探すために人里に降りる決まりがあり、牙緒もこのルールのもと都会に出てきたのだという。そんな牙緒を放っておけない千結は、さっそく牙緒といっしょに相性のよさそうな女性を探すことにする。しかし鼻が利きすぎる牙緒は、どの女性も匂いが気に入らないという理由で近寄ることができず、相手探しは難航するのだった。そのうえ、二人の親しげな姿に嫉妬した朔は、千結が一人になったスキを狙って強引にせまる。千結はいきなりのことにショックを受け、これに気づいた牙緒が助けたことでその場は収まるが、直後に千結は牙緒に告白される。

First Triangle

白咲千結と夜宮朔は、あらためて話し合ったことで仲直りしたが、今度は山吹牙緒が学校を休んでしまう。これを心配した千結はお見舞いに行くべきかを悩んでいると、謎の男性に連れ去られてしまう。その男性は牙緒の兄・山吹創牙で、体調を崩した牙緒に会ってほしいとの思いから、山吹家まで千結を連れて行こうとしたのだ。事態を理解した千結は牙緒の部屋に向かうと、体調不良の原因は満月のせいだった。狼男は満月になると自らの制御が難しくなり、そのために学校を休んでいたのである。そんな牙緒に千結は襲われるが、そこへ朔が助けに来たことで事なきを得るのだった。

First Rose

バレンタインの日、白咲千結は夜宮朔から一輪の薔薇の花を受け取る。しかし、このことが紫琉茉莉花に知られたその次の日から、朔の様子がおかしくなってしまう。以前と同じように、誰彼構わず異性から血をもらうようになり、千結に対しても以前ほど興味を示さなくなってしまっていた。千結と山吹牙緒はこの行動を怪しむが、やはり朔の行動は、茉莉花の暗示によるものだった。茉莉花は、これ以上朔が千結に執着することを避けるため、千結と過ごしていた頃の記憶を消そうとしたが、朔はやがて自力でこの暗示を解く。本来、純血の吸血鬼である茉莉花がかけた暗示は、「半純血」つまりハーフの朔には解くことができない。しかし心身ともに成長し、今後も前向きに人生を送りたいと願う朔は、これを覆して自力で正気に戻ったのだ。これによって朔は、今までは特定の女性に負担をかけないために、不特定多数の女性から血をもらっていたが、今後は千結に迷惑をかけるとわかっていても、千結の血だけを吸いたいと思っていることを伝える。この気持ちに応えた千結は、正式に朔と契約。この日から千結の胸元には、薔薇の形のあざが浮かぶようになり、千結は朔の「薔薇少女」となる。

First Festival

春になり、2年生に進級した白咲千結たちは、5月の創立祭に向けて準備を進めていた。今年の創立祭は、姉妹校であり吸血鬼のみが通う学校・月城学園高校と合同の「合同学園祭」を行う予定となっていたため、昨年よりも力が入っていた。そんな合同学園祭の実行委員に選ばれたのは、中等部までは月城学園に通っていた夜宮朔と、千結の友人・都築凛だった。ある日、千結は多忙な凛に代わって、朔と共に学祭会議に参加することになる。そこで千結は、月城学園高校生徒会の面々が、男女ペアになって吸血し合っている姿を目撃し、衝撃を受ける。しかし、異性の血を吸わないと生きていけない吸血鬼にとって、吸血鬼同士での吸血行為は当然のことで、朔も中学時代は薄氷紗雪という女子生徒とパートナーになり、お互いに血を吸い合っていたのだという。その後、無事に会議が行われて解散するが、後日千結は朔が紗雪に血を分け与えている姿を目撃してしまう。それでも千結は、生徒会長の桐生一翠から説明を受け、元パートナーは、パートナー解消後もどうしてもお互いの血を求めてしまうことに納得する。だが、千結が朔の「薔薇少女」であることを知った一翠は、千結に強い関心を抱くようになるのだった。

First Race

星ノ宮学園高校と月城学園高校の合同学園祭が始まり、白咲千結は桐生一翠とペアを組んで「ブラッディカップルコンテスト」に出場することになる。このコンテストは、事前投票で決まったカップルは強制参加なうえ、同じ学校の生徒同士は出場できない。そのため、千結と一翠、夜宮朔と薄氷紗雪のペアで参加することになったのである。仕方なく千結は一位を目指して奮闘するが、その過程で紗雪の朔への理解の深さを見せつけられて落ち込む。さらに最終ステージでは、バラバラになったペアが、場内に隠された白い薔薇を見つけたうえで相手に渡し、吸血行為をすることで終了というルールになっていた。一翠はこのルールを利用して、体調不良を装って千結の血を吸おうとするが、千結に断わられてしまう。そして千結は、一翠を背負って白い薔薇を探すことになるのだった。

First Broken Heart

合同学園祭が終わり、白咲千結は「ブラッディカップルコンテスト」を経て夜宮朔と絆を深めていた。これで二人は学園公認カップルと認知されるようになるが、実際は千結の片思いのままで、一向に進展せずにいた。そこで都築凛と雪野陽葵は、夏祭りで告白するべきだと千結に提案し、お祭り当日に朔に告白するものの千結はあっさりとふられてしまう。そんなある日、千結は凛の頼みで、最近学校を休んでいる山吹牙緒の家までプリントを届けに行くことになる。そして山吹家へ向かった千結は、牙緒が未だにつがい候補を見つけられないことで追い詰められており、このままでは山吹家にあてがわれた女性とつがいにならなくてはいけないことを知る。そこで千結はこれを避けるため、山吹創牙の提案で、牙緒のつがいのふりをして山吹家の儀式に参加することになる。しかしその途中、千結が朔にふられたことを知った牙緒は、計画を無視して儀式を実行して千結にキスをし、つがいの関係を成立させてしまう。

First Sin

白咲千結は山吹牙緒とつがいの関係になったことで、儀式会場に1週間も拘束されてしまう。千結と連絡が取れない夜宮朔は心配するが、都築凛と雪野陽葵からは、交際する気もないのに中途半端にかかわるのはやめてほしいと釘を刺されてしまう。一方その頃、千結は牙緒とあらためて話し合い、牙緒がずっと千結に思いを寄せていたことを知る。千結はこれに応えることができずに困惑するが、牙緒からは朔といっしょにいても、千結は幸せになれないと指摘されてしまう。しかしその夜、儀式に侵入者が現れたことを知った千結は、朔に違いないと考えてすぐさま探しに行く。そしてこれを制止する牙緒に、自分が朔に幸せにしてもらうのではなく、自分が朔を幸せにするために会いに行くのだと宣言する。こうして外に出た千結は、朔といっしょに来ていた彼の従者、ジョルジュ・グランチェスター・モンテスキューの助けもあってどうにか朔と再会する。しかし、4日間も血を吸っていない朔は、気丈に振る舞ってはいるものの、すっかり体は弱り切っていた。それでも朔は千結の血は吸わないと言い放ち、さらに山吹創牙がその場に現れる。

First Kiss

白咲千結は、夜宮朔と山吹牙緒に助けられて何とか自宅に戻ったものの、朔は未だに千結の血を吸わないままだった。朔は現在開発されている新薬「ブラッディカプセル」を服用しており、これを血の代わりにしていたのである。これに悩んだ千結はひとまず都築凛と雪野陽葵に相談し、これを案じた二人の提案で、みんなで海に行くことになる。しかし千結は、海に来ていた男性たちにしつこく絡まれ、拒否すると海に落とされてしまうが、朔が助けてくれたことで事なきを得る。これをきっかけに二人は仲直りして、交際を始めるのだった。

First Medicine

秋を迎え、白咲千結と夜宮朔が交際を始めてから数か月が経過した。そんなある日、千結たちは、都築凛の恋人・笹倉真琴が通っている宵春学院大学の学院祭兼オープンキャンパスに参加することになる。そこで千結は真琴と知り合い、彼の研究室で「ブラッディカプセル」と朔にそっくりな男性・篠原信志に出くわす。そんな信志は自分は朔の父親だと主張するものの、なぜか朔は認めず、人違いだと言ってその場を去ってしまう。これを不審に思った千結は、朔のことをもっと教えてほしいと信志に頼む。そこで後日、千結は朔の育ての親である、祖父のところへ遊びに行くことになり、衝撃の事実が判明する。まず、千結が夜宮家に遊びに行った際、朔から聞かされていた家庭事情はウソで、朔は祖父に育てられていた。それから、朔の父親はやはり信志で間違いなかったが、信志は朔が幼い頃、家族を捨てて夜宮家を出ていってしまったのだという。そのため、母親の夜宮月華は精神に異常をきたし、朔のことも信志のことも記憶からなくしてしまう。このことで朔は信志を父親と認めず、嫌っていたのだった。そんな中、千結はまたも偶然信志に出会い、朔についていろいろ尋ねられる。その姿はとても家族を捨てた父親には見えず、千結は困惑するのだった。そんなある日、ジョルジュ・グランチェスター・モンテスキューが千結のもとに現れる。そして再び朔の祖父と会った千結は、信志と月華が別れた真相を知る。それは月華が血を求めて暴走し、信志が死にかけるまで血を吸ってしまったからだった。

First Enemy

白咲千結と夜宮朔は、先日の宵春学院大学のオープンキャンパスに参加したことがきっかけで、お互いの家族を紹介し合い、恋人としてさらに仲を深めていた。しかしここ数日、千結たちの街では吸血鬼が人間を襲う事件が多発しており、宵春学院大学でも「ブラッディカプセル」が盗まれるという、不審な事件が相次いでいた。そんなある日、千結は階段から落ちてしまった際、同級生の水瀬太陽に助けられる。しかし太陽は手首をひねってしまい、これに責任を感じた千結は、当面のあいだ太陽の所属する男子サッカー部の手伝いをすることになる。一方その頃朔は、ジョルジュ・グランチェスター・モンテスキューからブラッディカプセルが盗まれているだけではなく、偽物が出回っていることを知らされていた。そこで、ジョルジュが押収した偽のブラッディカプセルに嗅いだことのある匂いを感じ取った朔は、慌てて千結に連絡する。だが時すでに遅く、帰宅中の千結は暴走した吸血鬼に襲われそうになる。しかし、そこに助けにやって来たのが太陽で、その正体は犯罪者の吸血鬼を取り締まる政府公認組織「ヴァンパイアハンター協会」の一員だったのだ。

First Chase After

白咲千結は先日の吸血鬼に襲われた一件から、しばらくのあいだ水瀬太陽に護衛されることになった。こうして太陽と過ごす時間が増えた千結は、太陽の姉が1年前吸血鬼の恋人に襲われ、以来ずっと昏睡状態にあることを知る。これがきっかけで、太陽はヴァンパイアハンターになったのである。その後、太陽の助けもあって千結はなんとか平穏な日々を過ごしていたが、太陽はあまりにも千結を狙う吸血鬼が多すぎることに気づき、夜宮朔に報告する。これを重く見た朔は、千結と距離を置くことを決意し、誰にも何も言わずに月城学園高校へ編入するのだった。そして千結は、朔の真意を確かめるためにすぐさま月城学園高校に向かうが、朔は冷たい態度で、一方的に「薔薇少女」の契約を切ったことを告げられてしまう。昨夜朔は、眠っている千結の部屋に忍び込み、同意を得ないまま契約解除を施していたのだ。これにショックを受けた千結は、朔の態度を不審に思う薄氷紗雪に慰められるが、彼女と別れた途端、男子生徒たちに襲われる。

First Judgement

白咲千結が月城学園高校の男子たちに襲われたことで、千結と夜宮朔は仲直りしかけるが、そこに水瀬太陽たちヴァンパイアハンターがやって来たことで、朔は無実の罪を着せられてしまう。太陽には、朔が千結を襲っていたように見えたらしく、千結が弁解しようとするものの通じず、騒ぎを聞きつけてやって来た桐生一翠のアドバイスもあり、その場は事なきを得る。そして千結は、一翠から現在「ブラッディカプセル」の偽物が出回っており、それを飲んだ吸血鬼たちが暴走していることを知らされる。本来ブラッディカプセルとは吸血衝動を抑える効果があるのだが、偽物にはその逆の効果があるため、本物だとカンちがいして飲んだ吸血鬼たちが、一連の吸血事件を起こしていたのだ。千結がこれに衝撃を受ける間もなく、朔が裁判にかけられるという報せが入る。太陽から先ほどの件について証言してほしいと頼まれた千結は応じるが、太陽はウソの証言をしてほしいと言い出す。姉が吸血鬼に嚙まれた件から吸血鬼に恨みを持つ太陽は、吸血鬼界でも大きな影響力のある夜宮家の吸血鬼である朔を陥れることで、吸血鬼の危険性を世に知らしめようとしていたのだ。そのうえ太陽は、偽のブラッディカプセル事件にまで関与していた。

First Distance

裁判において白咲千結は、水瀬太陽が夜宮朔に偽の「ブラッディカプセル」を飲ませて暴走させようとしていたことを指摘し、朔の無罪をあらためて主張した。これに桐生一翠が続き、偽のブラッディカプセルが出回っている事実を証明したことで、太陽は罪を認め、ヴァンパイアハンターの中でも吸血鬼を嫌っている一部の人間が、吸血鬼を陥れようとしていたことが明るみになる。こうして朔は解放されるが、朔はこのまま星ノ宮学園高校には戻らず、月城学園高校で卒業することを決意していた。以前朔は、半純血の吸血鬼として月城学園にいることがつらくて、逃げるように高校から星ノ宮学園に移った。しかし、今後は夜宮家の後継ぎとして学ぶため、前向きな気持ちで月城学園に通おうと考えていたのだ。千結はこれを寂しく思いつつも、応援することを決める。