世界観
小学生たちの恋愛と友情がテーマ。野球選手になることが夢の、中性的な女子小学生・中谷遥が主人公で、遥が転入先の小学校で出会った同級生たちや、憧れの高校生と触れ合いながら、人間的に成長していく姿を描く。野球一筋で周囲の出来事に深い関心がなく、また、男性になりたいと願っていた遥が、田辺健に恋をしたことで、少しずつ他者を思いやれる女性へと変化し、その姿が周りに影響を与えていく姿も見どころとなっている。
あらすじ
第1巻
野球が大好きな小学5年生の中谷遥は、中性的な容姿も相まって男子に間違われることも多いが、特に気にすることもなく、楽しい学校生活を送っていた。そんなある日、遥は父親の退職を機に、若草第一小学校に転校することになる。そして迎えた転校初日、遥は新しいクラスの実態に驚く。そこは男女仲が非常に悪く、常にいがみ合っているようなクラスだったのである。こうして遥の波乱の新生活が始まる。
第2巻
マラソン大会を終え、中谷遥たちのクラスは、以前よりも雰囲気が良くなりつつあった。そんなある日、田辺家に遊びに行った遥は、想い人である田辺健が以前の交際相手とキスしているプリクラを発見してしまう。衝撃を受ける遥だったが、健の「とても大切に想う相手だからこそキスする」という言葉にを聞き、健とのキスを夢見るようになる。一方、秘かに遥に想いを寄せる田辺渡は、遥が健のキスプリクラに動揺しているのが面白くない。さらに、遥がキスプリクラの件を引きずって泣いている姿を見た渡は、遥を元気づけようと、無理やりキスをするのだった。しかし、それがきっかけで、周囲を巻き込む大喧嘩が勃発してしまう。
第3巻
冬。中谷遥の友人で、モデル志望の池口萌香が、雑誌の読者モデルとなり、モデル事務所の養成所に通うことになった。自分のことのように喜ぶ遥だったが、目立つことを嫌う萌香は、自分が読者モデルになったことは、友人以外には隠すつもりでいた。しかし、萌香の母親が周囲に触れ回ったことでバレてしまい、萌香は同級生たちからやっかみを受けるようになっていく。さらに、萌香の姉である池口美咲もまた、萌香の芸能活動を快く思っておらず、ある日、萌香の洋服を勝手に捨てようとする。その現場を目撃した遥は激怒し、思わず美咲を殴ってしまう。
第4巻
春。池口萌香と池口美咲姉妹の問題も解決し、中谷遥たちは6年生に進級する。残念ながら仲良しグループ全員が同じクラスとはならなかったが、遥は少年野球チームのチームメイトの中でも親しい山野一寛と同じクラスになり、安堵する。ある日、クラスメイトたちから仲の良さを冷やかされた遥と一寛は、そのまま一緒にクラス委員を務めることになる。さらに遥は一寛が自分に想いを寄せていると知り、想いを寄せていた田辺健のことを吹っ切るため、一寛と交際することを決める。しかし、遥の真意はすぐにばれてしまい、遥は一寛だけでなく周囲をも傷つけ、クラスの女子たちから無視されるようになってしまう。一方、遥が健に想いを寄せていると知った田辺渡は、すべてのことに意欲をなくし、新しい友人の佐山とばかり過ごすようになる。佐山との時間に心癒される渡だったが、ある日、佐山から万引きに誘われてしまう。
第5巻
友人の山野一寛を傷つけたことで、一寛を想うクラスメイトたちから無視されるようになってしまった中谷遥は、自分の行いがいかに周囲を悲しませたか自覚し、一寛に謝罪して友情を取り戻す。一寛もまた、田辺健の手厚いケアにより失恋を乗り越え、たとえ交際できなくても、常に遥の幸せを願うことを決める。一方、田辺渡は非行に走るクラスメイトの佐山を案じ、自分たちの少年野球チームに入団させることを思いつく。よりよい毎日のため、それぞれの努力を続ける遥たちだったが、試合の直前に遥は初めての生理になる。そして、体調に不安を残したまま、試合当日を迎えてしまう。
第6巻
中谷遥は、所属する少年野球チームの試合当日、生理で体調を崩したまま出場することになってしまった。思うように活躍できず苦しむ遥だったが、偶然観戦していた女子高校生・波月凜に助けられる。凜も以前は女性選手として少年野球チームに所属し、遥と同じ悩みを抱えたのだという。凜の助言で調子を取り戻した遥は、無事に試合を終えるが、試合後、凜が田辺健と顔なじみであることを知る。これから3人で親しくできることを喜ぶ遥だったが、凜がかつて健に想いを寄せていたことを知る山野一寛は、健と凜が再会を機に、再び親しくなるのではと不安視する。そこで一寛は三木勇馬に相談を持ちかけ、健と凜を引き離す作戦を提案される。
第7巻
三木勇馬のなりすましにより、田辺健は波月凜に関する嘘の情報をメールで受け取るようになってしまった。健は怪しみながらも、メールの相談内容が深刻なため、あえて連絡を取り続けていた。一方、何も知らない中谷遥は、健が凜のものだと思っている電話番号が、実際は勇馬のものであることに気づく。その指摘がきっかけでなりすましが発覚するが、勇馬が凜を名乗って健に相談していた内容は、実は勇馬自身の悩みであり、実在する問題であった。勇馬を案じた健は、勇馬に会いに行くことを決める。
休載期間
本作『少女少年学級団』は、「別冊マーガレット」2011年9月号から長期休載に入った。だが、『ザ マーガレット』2018年2月号から、6年の時を経て連載を再開している。
スピンオフ
本作『少女少年学級団』のスピンオフ作品として、田辺健を主人公とした番外編シリーズ2作品がある。こちらは野球選手として活躍していた健の中学生時代を描いており、田辺渡はもちろん、山野一寛や波月凜、ヒロシも登場する。これらの番外編は「デラックスマーガレット」2009年1月号と「デラックスマーガレット」2009年11月号に掲載され、前者が本作のコミックス第5巻、後者がコミックス第4巻に収録されている。
関連作品
本作『少女少年学級団』の関連作品として、藤村真理の別作品『学級×ヒエラルキー』がある。こちらはある小学校のクラスを舞台に、親の会社における立場が子供のクラスにおける立場に直結する「格差社会」ならぬ「格差学級」について描いた作品で、本作の前身となった。
登場人物・キャラクター
中谷 遥 (なかたに はるか)
若草第一小学校に転校して来た、小学5年生の女子。のちに6年2組に進級する。野球が大好きで、少年野球チーム「リトルキャッツ」に所属しており、ポジションはピッチャー。中谷忍の妹。田辺健、田辺渡、山野一寛、小玉小絵、池口萌香、池口美咲らと同じ団地の307号室に住んでいる。前髪を目の上で切った、黒いストレートショートカットヘアにしている。 萌香からは「遥ちん」と呼ばれており、渡には「男オンナ」と呼ばれることもある。高身長で中性的な容姿と、野球という趣味から、男子と間違えられることが多い。明るく男勝りで、さっぱりとした素直な性格だが、やや喧嘩っ早く、怒るとすぐ手が出てしまう。特に、渡とはよく喧嘩になっている。 小学5年生の時、父親の退職がきっかけで、幼なじみの三木勇馬と過ごした土地を離れ、東京都に引っ越して来た。そして若草第一小学校に転入するが、所属するクラスの男女の仲の悪さに驚かされる。しかし、持ち前のはっきりとした正直な言動と、堂々とした態度で次第に周囲に慕われるようになり、クラス仲も改善させていく。さらにスポーツ万能でもあることから、同性に非常にもてるようになる。 一方で色恋沙汰には疎く、転校当初は小玉小絵と江島啓一の関係にもピンと来ていなかった。しかし、健に想いを寄せるようになったことを機に、少しずつ周囲の恋愛模様に関心を持ち、時に問題を起こして周囲を傷つけながらも成長していく。健を「ヒーロー」と捉え、1人の人間としても野球選手としても心から尊敬しており、健のような人間になりたいと思っている。 将来の夢は野球選手。苦手なものは虫。一人っ子で、同居する家族は両親のみ。
田辺 健 (たなべ けん)
高校2年生の男子で、田辺渡の兄。中谷遥の想い人でもある。遥、中谷忍、山野一寛、小玉小絵、池口萌香、池口美咲らと同じ団地の505号室に住んでいる。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした、ふんわりとした銀色のウルフカットの髪型をしている。弟の渡だけでなく、遥をはじめとする周囲の小学生たちに非常に慕われており、あだ名は「健兄」。 同じ高校の後輩である忍と美咲からは「田辺先ぱい」と呼ばれている。チャラチャラとした容姿をしているが、穏やかで心優しく、誠実な性格。そのため老若男女問わず非常にもてる。また、かつては野球選手として活躍しており、甲子園出場も果たすほどの優秀なピッチャーだった。しかし肩の怪我により野球をやめて転校し、現在は忍や美咲と同じ高校に通っている。 遥とは、渡と遥が喧嘩した際、遥が田辺家に謝罪しに来たのがきっかけで知り合った。その際に遥を男子と誤認識して傷つけてしまうが、そこで「傷つけたお詫びに何でもする」と約束したのを機に親しくなっていく。遥に対しては頼れる兄貴分のようなスタンスでいたが、ともに過ごすうちにその明るく前向きな人柄に感化されていき、一度は諦めた野球に再度向き合う。 そして、遥らが所属する少年野球チーム「リトルキャッツ」のコーチを不定期に務めたり、進学にも意欲を示すようになる。友人のヒロシとは非常に仲が良く、野球部時代も、野球をやめて以降もずっと親しい。波月凜とは少年野球チーム時代からの知り合いで、凜の友人である星野はかつての交際相手。
田辺 渡 (たなべ わたる)
若草第一小学校に通う5年生の男子で、田辺健の弟。5年次は中谷遥、山野一寛、小玉小絵、池口萌香のクラスメイト。のちに6年3組に進級する。遥と同じ少年野球チーム「リトルキャッツ」に所属しており、ポジションはピッチャー。遥、中谷忍、一寛、小絵、萌香、池口美咲らと同じ団地の505号室に住んでいる。 前髪を目の上で切った、茶色のストレートショートカットヘアにしている。小柄で猫目、身長が低いことがコンプレックス。性格は単純で子供っぽく、わがままなトラブルメーカーとして知られている。しかし、学校に行きたくないというストレスから一時期歩けなくなってしまったり、試合で一度失敗すると深く引きずり、そのまま実力を発揮できなくなってしまったりという、非常に繊細な一面もある。 スポーツは万能で、特に足が非常に速い。遥と出会った当初は、互いに野球選手同士で、ポジションも同じピッチャーという共通項がありながらも、「女性が野球をやってもプロにはなれない。つまり無駄である」という考えから、見下した態度をとっていた。さらにその後、ピッチャーとして遥の方が優秀であることを知り、焦るあまり意地悪をしてしまう。 その後しばらくは険悪な関係だったが、校内行事のマラソン大会がきっかけで、遥の公正で頼れる一面を知り、遥に想いを寄せるようになる。健とは非常に仲が良く、健が怪我で野球を続けられなくなったことを気にしている。そのため、健の代わりに自分が甲子園出場を果たし、将来的にはメジャーリーガーになるという夢を抱いている。 また、髪型はある時期まで毎朝健にセットしてもらっていたが、遥の想い人が健であることを知った際に一時期気まずくなってしまい、以後は自分で整髪するため、複雑なセット不要のベリーショートに変えた。一寛とは親友と言えるほど仲が良いが、2人とも遥に想いを寄せていることから、一時期気まずくなってしまったこともある。 三木勇馬もまた遥に想いを寄せており、さらに野球選手としては勇馬の方が格上なことから、友人というよりはライバルに近い関係と見なしている。苦手なものは虫。子供の頃に健から悪気なく渡されたセミがきっかけで虫全般が苦手になってしまった。
山野 一寛 (やまの かずひろ)
若草第一小学校に通う5年生の男子で、中谷遥や田辺渡の友人。5年次は遥、渡、小玉小絵、池口萌香と同じクラスで、のちに6年2組に進級する。少年野球チーム「リトルキャッツ」に所属しており、キャプテンを務めている。遥、中谷忍、田辺健、渡、小絵、萌香、池口美咲らと同じ団地の105号室に住んでいる。 前髪を額が見えるほど短く切り、左から右に向かって斜めに切った黒いショートカットヘアにしている。あだ名は「カズ」。5人兄妹の長男で、妹が4人と、少女のように若々しい母親、そして父親の7人家族。穏やかで公正な性格でリーダーシップに溢れ、成績も優秀。人望も非常に厚く、「リトルキャッツ」でのキャプテン業務のみならず、クラスでも小学5年、6年次において委員長を務めている。 そのため、異性から密かに人気が高い。しかし山野一寛自身は兄弟が多いことから高校進学は難しいと考えており、野球チームでの活動も学校生活も、同級生よりも活動期間が短いからこそ全力を尽くそうと考えている。遥に対しては彼女が転校して来た当初から好意的で、早いうちに遥の実力を認めていた。 そして校内行事であるマラソン大会を機に遥の明るく頼もしい人柄に惹かれ、想いを寄せるようになる。そのため友人の渡とはライバル関係になってしまい、一時期は気まずくなったこともあった。また、遥を想っているもの同士というつながりから三木勇馬とも親しくなる。健とは渡を通じて知り合い、非常に慕っているが、健にはかなわないと密かにコンプレックスを感じてもいる。
小玉 小絵 (こだま さえ)
若草第一小学校に通う5年生の女子で、中谷遥や池口萌香の友人。5年次は遥、萌香、田辺渡、山野一寛と同じクラスで、のちに6年3組に進級する。遥、中谷忍、田辺健、渡、一寛 、萌香、池口美咲らと同じ団地の601号室に住んでいる。前髪をカチューシャや髪飾りで上げて額を全開にしたり、斜めに分けたり、前髪だけ編み込むといった、額を見せるヘアスタイルに、胸まで伸ばした茶色のストレートロングヘアにしている。 クールで大人びた性格で、クラス内の揉め事に関しても、一歩離れた場所から静観していることが多い。一方で、想い人で、5年次の担任教師である江島啓一には影響されやすく、すぐ啓一と同じものを好きになってしまう一途な一面もある。 しかし、啓一は萌香の母親と交際していることを知っており、萌香とは親しいものの、萌香の母親のことは嫌悪している。普段は非常に落ち着いており、同級生でありながら、遥と萌香の姉的存在である。しかし、啓一がからむと抑制が効かず、遥や萌香に八つ当たりしてしまったり、啓一に関するものを盗むために萌香の母親の部屋をあさったりと、急に不安定になってしまうこともある。 母親は元エステティシャンであるため、ファッションやメイクに悩む遥と美咲に母親を紹介したこともある。特技はお菓子作りで、周囲に振る舞うことも多い。
池口 萌香 (いけぐち もか)
若草第一小学校に通う5年生の女子で、中谷遥や小玉小絵の友人。5年次は遥、小絵、田辺渡、山野一寛と同じクラスで、のちに6年3組に進級する。池口美咲の妹。遥、中谷忍、田辺健、渡、一寛、小絵らと同じ団地の202号室に住んでいる。両親は離婚しており、母親と美咲との三人暮らし。前髪を目の上で切って左右に流し、ポニーテールや高い位置でのお団子ヘアなど、アップにした髪型にすることが多い。 可愛らしい雰囲気の、新しいもの好きなミーハー。華やかな容姿と、やや八方美人な態度から同性の反感を買いやすいことに悩んでおり、過度に目立つことを嫌っている。将来の夢はモデルで、のちに雑誌の読者モデルに選ばれ、モデル事務所の養成所に通うようになる。 しかし、それがきっかけで、周囲の女子たちの嫉妬に苦しめられたり、着飾ることを良しとしない美咲との確執が生まれ、一時期悩みを深めていくことになる。その後、遥、小絵、健などのサポートにより美咲と和解してからは、健を慕う美咲を応援するが、やがて遥も健に想いを寄せていることを知り、板挟みになって悩む。だが小絵の助言により、どちらにも肩入れしすぎず、両方の恋路を静かに見守ることに決める。 小栗旬のファン。
池口 美咲 (いけぐち みさき)
田辺健や中谷忍らと同じ高校に通う1年生の女子。池口萌香の姉。中谷遥、忍、健、田辺渡、山野一寛、小玉小絵らと同じ団地の202号室に住んでいる。両親は離婚しており、母親と萌香との三人暮らし。前髪を目の上で切って左寄りの位置で分け、胸まで伸ばしたストレートロングヘアを耳の下の高さで二つに結んでおさげにし、眼鏡をかけている。 そのため地味な印象だったが、小絵の母親のアドバイスを受けてからは髪をおろし、華やかな印象に大きく変わることになる。成績優秀なのに加え、家事全般を担当し家族を支える真面目なしっかり者。しかし自分に自信がなくイライラしがちで、他人、特に萌香には攻撃的な態度をとりがち。さらに母親とは非常に仲が悪く、母親のように、着飾って男性とばかり遊んでいるチャラチャラした女性を激しく嫌悪している。 そのため萌香の芸能活動にも批判的だったが、本心では「萌香が可愛らしくなりすぎると、下心ある悪い異性が多数集まってきそうで危険」と心配もしており、そのような理由から萌香に冷たくしていたことがのちに発覚する。その後、萌香と和解してからは小絵の母親のアドバイスを受けてイメージチェンジを果たし、以前よりも明るく優しい性格になった。 健に想いを寄せているが、いきなり告白はせず、少しずつ親しくなっていきたいと考えている。
三木 勇馬 (みき ゆうま)
若草第五小学校に通う5年生の男子で、中谷遥の幼なじみ。以前は別の地域に住んでいたが、家庭の事情と、少年野球チーム「集英リトルリーグ」に参加するために引っ越し、現在は祖父母と暮らしている。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした、ふんわりとしたショートカットヘアにしている。落ち着いているが、やや生意気な雰囲気の、目的のためなら手段を選ばない策略家。 遥とは幼い頃から非常に親しく、遥が転校するまでずっと一緒に野球をしてきた間柄。そのため遥に想いを寄せており、遥を傷つける人間を許さない。家族関係は複雑で、以前は、母親が父親から暴力を振るわれていた。最終的に両親は別居したものの、母親が肉体的にも精神的にも勇馬を育てられる状態ではないことから、小学5年次から祖父母の家で暮らしている。 それを誰にも言わず、あくまで何事もなかったかのように生活していたが、田辺健と波月凜の関係を進展させるために、一時期凜になりすまして健と連絡を取っており、その際に健にだけは間接的に悩みを話していた。
佐山 (さやま)
若草第一小学校6年3組に所属する男子。6年生に進学した田辺渡や小玉小絵、池口萌香とクラスメイトとなる。前髪を目が隠れそうなほど伸ばしたショートカットヘアにしている。長身で目が細く、口が大きい。裕福な家の息子で、大きな家に住んでおり、やや周囲を見下したところがある。特に大人は、自分の演技にすぐ騙される馬鹿な存在だと捉えているため、同じクラスになって親しくなった渡を、ある日「見つかっても謝れば許してもらえるから」と万引きに誘う。 しかし、万引きは失敗に終わり、渡と佐山は家族に連絡されてしまう。その際、二度と万引きはしないと決めた渡とは疎遠になるが、佐山を案じた渡から、のちに少年野球チームに誘われる。
ヒロシ
田辺健の友人で、同じ高校に通う2年生の男子。額が見えるほど前髪を短く切ったベリーショートカットヘアにしている。穏やかでのんびりとした性格で、健のみならず田辺渡とも親しく、また健に「マザコン」呼ばわりされるほど母親とも仲が良い。健とは中学校時代から親しく、当時先輩部員から嫌がらせを受け、冷遇されていた健を支えた。 以前は身長が低いことが悩みだったため、小柄な渡の悩みには共感している。そのため、健を通じて身長を伸ばす方法を伝授した。
中谷 忍 (なかたに しのぶ)
田辺健と池口美咲と同じ高校に通う1年生の女子で、中谷遥の姉。健、田辺渡、山野一寛、小玉小絵、池口萌香、美咲らと同じ団地の307号室に住んでいる。前髪を目の上で切って左寄りの位置で分け、肩の高さで切ったボブヘアにしている。のちに髪を切り、耳の下まで伸ばした内巻きボブヘアに髪型を変える。 落ち着いた雰囲気の穏やかな性格で、遥の喧嘩っ早い一面をたしなめたり、トラブルを起こした際にアドバイスをすることが多い。
波月 凜 (はづき りん)
田辺健の友人で、私立高校に通う3年生の女子。健、ヒロシとは同学年で、2人が3年生に進級した後に再会した。前髪を左寄りの位置で分けて額を見せ、胸まで伸ばしたロングヘアにしている。クールで落ち着いており、困ったことがあっても1人で耐える辛抱強い性格。小学校時代は中谷遥のように少年野球チームに所属しており、優秀な選手だった。 しかし中学校入学後、男子との体格差に悩み、野球をやめてしまった。現在もそれを後悔しており、ある日偶然観戦した試合で、かつての自分と似た境遇の遥に関心を持つ。そして、試合中に体調を崩して困っていた遥に声をかけて助けた。健とはかつて少年野球をしていた時に対戦しており、また同じ中学校に進学したことから親しい。 実は当時から健に想いを寄せていたが、同じく健に恋していた友人の星野に遠慮しており、また想いを伝えようと書いた手紙が健に届かなかったことから、恋を諦めていた。しかし遥と出会ったのを機に健と再会し、想いを告げることを決意する。
江島 啓一
若草第一小学校で教師を務める若い男性。田辺渡、小玉小絵、池口萌香にとっては5年次の、中谷遥と山野一寛にとっては、5年次、6年次と2年連続の担任教師でもある。前髪を右寄りの位置で斜めに分けたストレートショートカットヘアに、眼鏡をかけている。一見穏やかで落ち着いた雰囲気だが、男女仲の悪い担任クラスに対して特に対策をしていなかったり、生徒の母親である萌香の母親と交際していたりと、いい加減な一面がある。 小絵に想いを寄せられていることを知っているが「まだ幼いから」という理由で断った。その後、遥たちが6年生に進級してから赴任して来た養護教諭の左海に一目惚れし、すぐに結婚した。
花帆 (かほ)
波月凜の友人で、同じ高校に通う3年生の女子。田辺健、ヒロシとは同学年で、2人が3年生に進級した後に再会した。前髪を目の上で切り揃え、顎の高さで内巻きにしたボブヘアにしている。髪型や雰囲気などが星野に似ている。可愛らしい雰囲気だが、何かと上目遣いと「アヒル口」をするぶりっ子。交際相手がいるが、振り回されがちで不満を抱いている。 ある日、凜のつてで合コンをし、そこで出会った健に想いを寄せる。のちに交際相手とは別れ、健に積極的にアプローチするようになる。
星野 (ほしの)
波月凜の元友人で、田辺健の元交際相手の女子。前髪を目の上で切り揃え、顎の高さまで伸ばした内巻きボブヘアにしている。髪型や雰囲気などが花帆に似ている。凜と健とは中学校が同じで、ある日部活中の健を見て気に入り、想いを寄せるようになる。そこで同じ野球選手として凜と健が知り合いであることに目をつけ、凜を通じて健と知り合い、交際するようになる。 しかしその後、凜と健の親しさを不審に思い、凜も健に想いを寄せており、自分を利用して健と親しくなろうとしたのではないかと思い込む。その結果、凜を理不尽に恨むようになり、クラスメイトの女子を味方につけて、中学校卒業まで凜を無視し続けた。
根津 (ねづ)
若草第一小学校6年2組に所属する女子。6年生に進学した中谷遥や山野一寛のクラスメイトとなる。友人たちからは「ちな」と呼ばれている。前髪を目の上で切りそろえ、顎の高さまで伸ばしたボブヘアを、耳の下の位置で2つに結んでおさげにし、眼鏡をかけている。物静かな恥ずかしがり屋で、ややドジな性格。一寛に密かに想いを寄せていた。 のちにそれに気づいた遥から、一寛を異性として好きでないにもかかわらず一時的に交際していた件で根津のことも傷つけたとして、謝罪を受けることとなる。
中谷遥の母親 (なかたにはるかのははおや)
中谷遥と中谷忍の母親。前髪を上げて額を全開にし、胸まで伸ばしたストレートロングヘアにしている。堂々とした雰囲気の落ち着いた性格で、周囲と衝突しやすい遥を時に叱りつつも温かく見守っている。しかし、遥の怒るとすぐ手が出る点については非常に厳しく、改善されないようであれば少年野球チーム「リトルキャッツ」をやめさせると遥と約束している。