売国機関

売国機関

大国の戦争に巻き込まれて戦場となった国、チュファルテク合同共和国を舞台に、戦争後に訪れた曖昧な平和を維持するために暗闘する特務機関「オペラ座」の姿を描いた軍記漫画。「くらげバンチ」2018年6月号から連載の作品。

正式名称
売国機関
ふりがな
ばいこくきかん
原作者
カルロ・ゼン
漫画
ジャンル
軍隊・軍人
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

第1巻

緩衝国であるチュファルテク合同共和国を舞台に、西のクライス連邦、東のガルダリケ王国が争った大戦から1年が経過していた。戦争の影響が色濃く残るチュファルテク合同共和国では、現在が戦後なのか、それとも束の間の停戦の最中にあるのか誰もが疑問を抱いていた。そんな中、チュファルテク合同共和国は、クライス連邦とのあいだに安全保障条約を締結する調印式を開催する。国内の排外主義者たちが調印式の阻止のために襲撃を計画する中、国の防諜部門である特務機関「オペラ座」は首相官邸で調印式が行われるという欺瞞情報を流し、それにだまされて官邸へと押し寄せた群衆に対して掃討作戦を展開していた。声高に戦争の再開を叫ぶ群衆に対して、怒りをあらわにしたオペラ座の法務課長を務めるヨランダ・ロフスキは、かつての戦争の経験者だった。彼女は戦争を知らない群衆に対して、いっさいの容赦のない掃討を命じることで、民衆に戦場の悲惨さを教え込む。子供すら巻き込んだ排外主義者の掃討を終えたロフスキだったが、戦闘後のダメージレポートで投降した少年のだまし討ちにより、部下のジェイコブ中尉が戦死したことを報告される。ロフスキは祖国のために戦争を戦った部下が愛国を叫ぶ群衆に殺されたことに激昂するものの、頭を冷やすため、あとのことを部下に任せると街へ散歩に出かける。街中で煙草売りの兄妹を見つけたロフスキは、彼らから一本の煙草を購入すると代金としてチュファルテク合同共和国の通貨であるレパブリカルを支払う。だが、インフレーションのために価格が急激に下落したレパブリカルは受け取れないと、兄妹に断られてしまう。国の現状を嘆きながら、ロフスキは他国の通貨を支払うのだった。

第2巻

特務機関「オペラ座」は、チュファルテク合同共和国の東部へと派遣されていた。首相官邸を襲撃した排外主義者を調査した結果、シンパたちの本拠地が東部に存在すると判明したからである。しかし、東部はガルダリケ王国との激戦地となった地方であり、国の中でも一層の荒廃が進んだ悪感情うずまく土地だった。また、戦時中に流通していた除倦覚醒剤が市中にばらまかれているという現状もあり、オペラ座は平和の維持のためにそれらの問題の対処と、平和を脅かす主義者たちの資金ネットワークを探り出すことを求められる。オペラ座の法務課長であるヨランダ・ロフスキは、麻薬業者のような雑魚を取り締まることで、その背後にいる大物を誘い出すという「釣り旅行」を部隊に命じる。その一方で、同盟国であるクライス連邦が東部に駐屯させている軍の第15師団駐屯地を訪れたロフスキは、師団長からクライス連邦軍の内部に巣くっていたネズミに関する名簿を受け取る。軍内の腐敗を大いに嘆き、両国の関係維持のためならばなんでもやると大袈裟に振る舞う師団長の姿に、ロフスキたちは背後により巨大な問題が潜んでいる気配を感じ取る。他国が国内で好き勝手に振る舞う現状を受け、ロフスキは共和国の主人が誰であるのか教えてやると宣言すると、憲兵隊として釣り旅行を始めるのだった。

第3巻

特務機関「オペラ座」は、チュファルテク合同共和国の東部の問題を解決した。そして、彼らを待ち受けていた次なる任務は隣国であり、戦時中の敵対国でもあったガルダリケ王国大使の警護任務だった。しかし、派遣されてきたオルロフ大使は貴族主義思想の持ち主であると同時に、ガルダリケ王国にとって不本意な形で終わった戦争の再開を目的とする主戦派でもあった。同時期、チュファルテク合同共和国は東部と南部のそれぞれが抱える問題から分裂の危機があらわとなり始めていた。国の情報部門トップの二人は、これをガルダリケ王国による分断工作とにらみ、対抗策を講じることを決意する。オペラ座の法務課長であるヨランダ・ロフスキは、モニカ・シルサルスキをはじめとした隊員を警護として派遣する。同時に、ロフスキはチュファルテク合同共和国が責任を追及され、再び戦火に包まれる原因とならない形での、オルロフ大使排除の計画を考え始める。一方その頃、チュファルテク合同共和国に潜入している、ガルダリケ王国の工作員であるシスター・テレサもまた、オルロフ大使と新しく自身の上司として着任してきたルィバルコ武官に対して嫌気を感じていた。特にオルロフの考えを美しくないと考えた彼女は自身の価値観に従い、独自に策謀を巡らせ始めるのだった。

メディアミックス

単行本発売記念PV

単行本の発売を記念したPVが製作され、YouTubeのくらげバンチ新潮社チャンネルにおいて動画が公開されている。内容は各巻の印象的なシーンを背景に台詞を声優がアテレコしたものとなっている。「『売国機関』コミックス1巻発売記念PV」ではヨランダ・ロフスキを内田真礼が、「『売国機関』コミックス2巻発売記念PV」ではシスター・テレサを下屋則子が、「『売国機関』コミックス3巻発売記念PV」ではジャコモ・ロッティを櫻井孝宏が、それぞれ演じている。

登場人物・キャラクター

ヨランダ・ロフスキ

チュファルテク合同共和国の特務機関「オペラ座」で、法務課長を務める女性。名門貴族であるロフスキ家の出身で、軍人としての階級は少佐。戦争を前線指揮官として経験し、戦場の凄惨さを知り尽くしている。そのため、チュファルテク合同共和国としては強国の都合によって押しつけられた現在の平和であっても、戦場で血を流した勇者たち、すなわち「塹壕貴族」の犠牲で勝ち取ったものと認識している。国の防諜部門である「オペラ座」の指揮官として現在の平和を守り、真の戦後を国へともたらすため、手段を選ばずにその脅威と対峙し続けている。そんなヨランダ・ロフスキ自身のポリシーを、本人はオペラ座に対する「売国機関」という誹(そし)りを踏まえ「売国的愛国奴」と評している。自らの価値観に対して絶対の自信を持っており、剛毅果断な性格をしている。凄惨な戦争を戦場で経験した「塹壕貴族」以外の人間が、現在の平和をなげうち、戦争を声高に叫ぶさまを非常に嫌悪している。また、戦争で敵対国であったガルダリケ王国の人間のみならず、同盟国であるクライス連邦に対しても好感は持っておらず、むしろ国家の主権を脅かして上から目線で見下ろす存在として唾棄している。しかし、無条件でチュファルテク合同共和国を信奉しているかというとそのようなこともなく、現在の首相をはじめとする政府に対しては、首相本人よりも祖国の首相官邸を守る方がまし、と言い切るほどに不満を抱えている。

モニカ・シルサルスキ

チュファルテク合同共和国の特務機関「オペラ座」に新任隊員として配属された女性。士官学校を首席で卒業した優秀な人物だが、慣例に従って希望どおりの部署へ配属されるところを、法務局の局長であるセルジョ・ハイネマンの鶴の一声によってオペラ座へと引き抜かれた。階級は少尉ながら戦場に出た経験はなく、凄惨な場面に立ち会った経験も少ない。そのため、ヨランダ・ロフスキのいう塹壕貴族としての資格を有していないことから、就任に際してはロフスキの断固とした反対にあった。法務官として隊に配属されてからは経験不足を周囲に補われつつ、他国や他部署との折衝の際にけんか腰になりがちな隊員たちを取りまとめる調整役として機能している。士官学校首席というだけあって優れた頭脳を持つが、ロフスキには自分の理解できるものは他人も理解できるはずと、他人に教える手間を怠る「怠け者」という評価を下されている。番外編では、「脂の木曜日」というポンチキ(甘い揚げドーナツ)を大量に食べなければならない伝統行事において、リーナ・マートン以外の誰もが轟沈する中でポンチキを完食しきるという健啖家な一面を見せた。

ジャコモ・ロッティ

チュファルテク合同共和国の特務機関「オペラ座」で、軍医を務める青年。軽妙洒脱な人柄で、軍人としては退役軍医中尉という階級にあたる。また、法務省嘱託の法医学医としての立場もあり、オペラ座の医務を担っている。医師としての腕前は確かで人を治すことも得意だが、オペラ座の職務において避けられない尋問において人を壊すことも得意としている。特に地下牢の囚人たちに対しては、ウォーターボーディングという口に布を掛けて濡らす「尋問」を加えるような情け容赦のない一面がある。その一方、ガルダリケ王国から来たオルロフ大使への襲撃事件の際には、ヨランダ・ロフスキに襲撃犯を死なせるために生かすように求められ、医師としての使命に真っ向から相反する現実の醜さに対して悪態をついていた。かつての戦争の経験者でもあり、番外編ではその一幕が描かれている。内容は既に終戦しているにもかかわらず、チュファルテク合同共和国の前線に情報が伝わるのが遅れたために死んでいった戦友とのエピソードで、終戦時に彼が感じた無念が雄弁に描かれている。

ロベルト・ナイマーク

チュファルテク合同共和国の特務機関「オペラ座」で、課長代理を務める男性。浅黒い肌を持ち、唇の左端を縦断する一筋の傷痕がある。砲兵上がりの大尉で、オペラ座では法務局独立行動大隊の課長代理という立場にもある。法務課長であるヨランダ・ロフスキの片腕的な立場で、非常に冷静沈着な性格をしている。職務に忠実でありながら、オペラ座らしい暴力的な価値観も持ち合わせた人物である。法務官としてオペラ座の地下牢におさめられた囚人の監督も行っており、任務目的に応じた仕分けを担当している。

リーナ・マートン

チュファルテク合同共和国の特務機関「オペラ座」で、隊員を務める女性。目つきの悪い人物で、階級は准尉。戦争経験者で元衛生兵だが、現在はもっぱら狙撃手を務めることが多い。味よりもニコチン重視のヘビーな煙草を絶え間なく吸い続けるチェーンスモーカーで、任務中以外は吸えないときに備えて煙草をくわえている。狙撃手としての腕前は高く、暗がりの中で武器を構えた敵の腕をライフルで的確に撃ち抜くほどの実力を持っている。また、拳銃であっても片膝だけを狙って撃ち抜けるほどの腕前を誇っている。戦場経験者ということもあり、一兵士としての酸いも甘いも経験している。そのため、戦場を知らないモニカ・シルサルスキに当時の話や兵士独特の雰囲気を伝えることも多い。戦場で上官に恵まれなかった経験があるのか、叛乱の空気に敏感で、チュファルテク合同共和国のガルダリケ王国大使館内で発生していた叛乱の気配にいち早く気がついていた。

ベルナルディーノ・バーク

チュファルテク合同共和国の特務機関「オペラ座」で、隊員を務める男性。階級は中尉。カイゼル髭を生やした人物で、隊内一のジェントルマンである。爆発物の取り扱いに秀でており、オペラ座の任務で発破が必要となった際にはそれを担当している。そのためか、首相官邸の防衛任務の際に銃撃戦となった折りには、敵を建物ごとまとめて発破してしまいたいと発言し、職業病的な考えを覗かせた。

デイブ・グローリー

チュファルテク合同共和国の軍務省嘱託ケース・オフィサーの男性。眼鏡を掛けており、人を食った表情を浮かべていることが多い。特務機関である「オペラ座」の事務方を担当しており、作戦行動のマネジメントを通して隊を支えている。主にセルジョ・ハイネマンと共に行動していることが多く、汚れ役としてのオペラ座の役割をよく理解したうえで仕事をこなしている。事務方ではあるものの机にかじりついているわけではなく、時には現場に出て暴力的な一面をかいま見せることもある。

セルジョ・ハイネマン

チュファルテク合同共和国の法務局局長を務める初老の男性。割腹のいい体型で、名門貴族の出身。正式名称を軍務省法務局独立大隊とする「オペラ座」の実質的なトップでもあり、ヨランダ・ロフスキの上官にあたる。オペラ座の活動内容についてはロフスキに信任しているが、オペラ座と首相のあいだを取り持つ役割を担っており、任務を与えることも度々ある。戦争後にクライス連邦とガルダリケ王国の和平によって、強制的にもたらされた現在の平和を維持することに心血を注いでおり、排外主義者をはじめとする平和を脅かす者たちと敵対している。また、ロフスキら戦争経験者である軍人たちの心理に理解を寄せる一方で、彼らから評判のよくない首相に対しても清廉で公平という一定の評価を与えている。その立ち位置からオペラ座の対外的な折衝役を担うこともあり、メディア対応の際にはロフスキの代わりに表へ出ることもあった。

グスタルボ

チュファルテク合同共和国の特務機関「オペラ座」に新人隊員として加入した男性。階級は軍曹。元第14独立守備隊所属の軍人で、戦時中に激戦区となったイルガの戦いでMIA(戦闘中行方不明)となる。左足を失いながら捕虜となって生き延びたものの、捕虜交換でチュファルテク合同共和国に戻ってきたところで物乞いに身をやつしていた。オペラ座のヨランダ・ロフスキやジェイコブとは戦時中に共に戦った中で、特にジェイコブのもとで保護者役の下士官として活動していた。物乞いをしている最中、その窮状が通りすがったロフスキの目に留まり、即座にオペラ座へとスカウトされる。オペラ座では課長代理であるロベルト・ナイマークのもとについているが、基本的にはリーナ・マートンと共に行動していることが多い。戦場経験者であり、捕虜となった経験から士官学校出身の戦場を知らない上官のモニカ・シルサルスキに経験談からくる所感を語ることが多い。また、オペラ座配属後は失った左足の代わりに義足を着用している。

ジェイコブ

チュファルテク合同共和国の特務機関「オペラ座」で、隊員を務める男性。階級は中尉。戦時中からヨランダ・ロフスキと共に戦場を駆け回った仲で、部下として信任も厚く別働隊を任されることもある。しかし、クライス連邦とチュファルテク合同共和国の調印式を狙った排外主義者から首相官邸を守る任務中、降伏した少年兵を捕虜に取ったところ背後からだまし討ちをされて殉職している。その後、オペラ座の関係者がジェイコブのことを口にするときは、階級が特進した関係で中尉から「少佐」となっているため、ジェイコブ少佐と呼ばれている。死亡の報告を受け取った際、ロフスキはくわえたばかりの煙草を口元から落とし、珍しく動揺した姿を見せた。また、ジェイコブの死後にオペラ座に加わったグスタルボ軍曹は、戦時中、ジェイコブのもとで下士官として働いていた保護者役で面識があった。

首相

チュファルテク合同共和国の首相を務める男性。公平な精神を持ち、戦地となって荒れ果てた東部と、農業地帯として国に搾取され続ける西部という、それぞれの事情によって分断するチュファルテク合同共和国をおさめている。政治家として公正な反面、軍人に対する気遣いや心情を読み取る能力に欠けており、オペラ座や参謀本部など、軍部とのあいだに心理的な軋轢がある。特にオペラ座の持つ暴力装置としての側面に対しては必要悪として認めながらも、その目的達成のために手段を選ばない過激さに対し、難色を示すことも多い。そのため、戦場で戦った経験のあるヨランダ・ロフスキからは馬鹿を見たことのない、人間全部を信じる頭の持ち主と軽蔑されており、首相官邸を守る方が首相本人を守るより気が進むと断言されている。

ディアナ・フォン・バルヒェット

クライス連邦の在チュファルテク合同共和国連邦軍の合同調査局大佐を務める女性。国の内外から認められる女傑で、二児の母親でもある。合同調査局の人間としてチュファルテク合同共和国内における、駐留連邦軍に対する肯定的な世論づくりのため、工作活動に従事しており、オペラ座にとっては連邦軍の窓口的な存在となっている。クライス連邦にとっての盾としてのチュファルテク合同共和国を誰よりも評価する人物で、クライス連邦ないしは自らの子供たちから戦争を遠ざけるためならば手段を選ばない剛胆な性格をしている。ヨランダ・ロフスキとは情報交換や資金援助のために度々顔を合わせており、知己の間柄にある。もっとも、その関係性は気の置けない仲の正反対ともいうべき関係で、顔を合わせるたびに両国の利益のため、お互いの腹を探り合っている。その一方、ロフスキの容姿や軍人としてのまじめさは評価しており、思惑はどうあれ何かと気にかけている。軍人としては国の利益のために同じ軍内の人間を粛正することすらためらわない、冷徹な思考の持ち主。しかしその反面、自分の子供たちに対しては優しくも厳しい母親としての一面を見せる。

神父

ガルダリケ王国の対外工作部に所属する工作員の男性。ふだんはチュファルテク合同共和国で、教会の神父として活動している。チュファルテク合同共和国の分断工作を主任務としており、クライス連邦とチュファルテク合同共和国の安全保障条約調印式を狙った排外主義者による襲撃事件に関与していた。その後はチュファルテク合同共和国の東部にある教会に派遣され、クライス連邦の第二兵站部が秘密裏に行っていた麻薬の流通情報を基に、情報工作を仕掛ける。しかし、その内容に面白みを感じられなかった部下であるシスター・テレサの反感を招き、彼女の策謀に巻き込まれる形で命を落とす。

シスター・テレサ

ガルダリケ王国の対外工作部に所属する工作員の女性。ふだんはチュファルテク合同共和国で、教会のシスターを務めている。チュファルテク合同共和国の分断工作を主任務としており、クライス連邦とチュファルテク合同共和国が結ぶ安全保障条約に反対する、排外主義者による襲撃事件にも関与していた。その後、チュファルテク合同共和国の東部で任務に就いていたが、現地で共に働く上司である神父の方針に反発を覚えて独断での行動を始める。敬虔なシスターであり、子供たちを慈しむ心優しい性格をしているが、同時に陰謀や策謀を巡らせることに望外の悦びを感じる性癖を持っている。反面、戦争や権力による力業を嫌っており、それらによって自分の巡らせた謀略が台無しになると、子供のような態度で悔しがる素振りを見せる。ガルダリケ王国から派遣されてきた新しい大使のオルロフが主戦派であるために、彼の排除に乗り出す。結果、神父の後任として自分の上司となったルィバルコの生まじめさに目をつけ、大使館内に駐在していた、元捕虜である王国人の叛乱をあおる手伝いを無自覚で行わせた。

オルロフ

ガルダリケ王国からチュファルテク合同共和国へと派遣されてきた大使を務める初老の男性。貴族の青い血を尊ぶという貴族主義者。元軍人ではあるが貴族出身で、戦場に出たことはない。セルゲイという息子がいたが、戦争で失っており、それが原因でチュファルテク合同共和国とクライス連邦に対して恨みを抱いている。和平という形で終わった戦争の結末に納得しておらず、己の遺恨を晴らすために主戦派として戦争を再び引き起こそうとしている。そのため、チュファルテク合同共和国内に人道支援物資を送る一方で、王国民を露骨に優遇したり、チュファルテク合同共和国内でガルダリケ王国の国歌を音楽隊に奏でさせようとしたりと、国民感情を利用した分断工作を仕掛けている。その強引で偏った思想からチュファルテク合同共和国やクライス連邦の人間はもちろん、大使館に務める部下たちからの評判もすこぶる悪い。そのため、オペラ座からの抹殺の対象のみならず、ガルダリケ王国の工作員であるシスター・テレサからもその命を狙われることとなった。

ルィバルコ

ガルダリケ王国からオルロフ大使の護衛としてチュファルテク合同共和国に派遣されてきた武官の女性。海軍に所属しており、階級は少佐。生まじめな性格で、再びの戦争に反対という考えを持っている。しかし、軍人として政治にかかわらず命令に従うのみというサイレント・ネイビーの考えを徹底しており、自らの考えを行動に起こすことはない。護衛対象であるオルロフ大使は主戦派であり、海軍の出身であるルィバルコが見下されていることも重なって、彼の独断専行や考えに度々振り回されることとなる。武官であると同時に工作員でもあり、チュファルテク合同共和国の内部に潜伏している工作員に指示や情報の交換を行う立場にある。そのため、現地に潜伏している工作員であるシスター・テレサは部下であり、度々交流していた。しかしオルロフ大使の考えや、思想を嫌ったシスター・テレサによって謀略の一部に組み込まれてしまう。

ロイド・クランゲル

クライス連邦の新聞紙「フェデラルアライアンス」で、記者を務める中年の男性。チュファルテク合同共和国の東部で問題となっていた麻薬取り締まりの実情を取材するという名目で、オペラ座へ合同記者として部下のテオドール・バッハともども派遣されてきた。経験豊かな敏腕記者でカンも鋭く、取材途中に今回の合同取材がチュファルテク合同共和国とクライス連邦の両方によって仕組まれたものだとカンづいた。合同取材後も度々「フェデラルアライアンス」の記者として名前が登場しており、現場へは取材にも訪れている。

テオドール・バッハ

クライス連邦の新聞紙「フェデラルアライアンス」で、記者を務める若手の男性。上司であるロイド・クランゲルと共にチュファルテク合同共和国の東部で問題となっている麻薬取り締まりの現場を取材すべく、オペラ座へ派遣されて合同取材を行った。チュファルテク合同共和国とガルダリケ王国の国境付近を取材し、管理が行き届かない現状を見せつけられる。この時、麻薬取り締まりの現場へ同行させられ、重要な証拠を発見する現場をカメラにおさめることに成功した。しかし、それらはオペラ座によって作り出された偽りの真実であり、批判の矛先をガルダリケ王国へと向けるための情報工作であった。そのため、その事実を察した上司のロイドによって原稿の掲載を見送られることとなり、そうと気づいていなかったテオドール・バッハは納得のいかない怒りをロイドへとぶつけることとなった。

集団・組織

オペラ座

チュファルテク合同共和国が、平和を維持する目的で設立した特務機関。正式には軍務省法務局公衆衛生課独立大隊という名称で、情報部門である参謀本部と並び立つ防諜部門であり、通称「オペラ座」と呼ばれる。チュファルテク合同共和国を舞台に行われたガルダリケ王国と、クライス連邦による戦争の終結から一年が経過した今も、国内には戦禍が色濃く残されている。そのために国民は数多くの不満を抱えており、排外主義やガルダリケ王国、クライス連邦のどちらかになびこうとする勢力があとを絶たない。さらには他国の工作員も入り乱れており、多くの主義主張に平和が脅かされることとなっている。オペラ座はそういった諸外国からの工作に対応し、平和を維持するために活動している。そうした背景から、時にはチュファルテク合同共和国民にも平然と銃口を向け、同盟国であるクライス連邦におもねるような行動すらも取るため、反対する勢力の人間からは「売国機関」とも呼ばれ、蔑視されている。防諜を主任務としている一方、公的には警護や憲兵などの任務も行っており、そのための権限も有している。

場所

チュファルテク合同共和国

東のガルダリケ王国と、西のクライス連邦という二大列強国に挟まれる国。二国が直接的に衝突するのを防ぐ緩衝国としての立ち位置にあったが、国としての自立を望み、新外交として西側のクライス連邦へ接近した。この決断は緩衝国としての価値をチュファルテク合同共和国に見いだしていたガルダリケ王国の怒りを招き、結果としてクライス連邦とガルダリケ王国による戦争が、チュファルテク合同共和国の国土を舞台に行われることとなる。戦争は二国間の都合によって和平が結ばれ、現在は平和が訪れている。しかし、チュファルテク合同共和国の頭越しに行われた和平に心の底から納得できるものは少なく、国の内外を問わず戦争の火種は燻ったまま、いつ再び戦端が開かれるかわからない緊迫した情勢が続いている。そのため、チュファルテク合同共和国は防諜部門として、軍務省法務局公衆衛生課独立大隊、通称「オペラ座」を設立した。彼らは時にはチュファルテク合同共和国民にすら銃を向けるその姿勢から、「売国機関」と揶揄されながらも平和を維持するための活動を展開している。終戦から一年が経過した現在、クライス連邦とのあいだに安全保障条約が締結され、戦後へ向けて確実に歩みを進めている。なお、チュファルテク合同共和国は、現実のポーランドがモデルとなっている。

ガルダリケ王国

チュファルテク合同共和国の東部に位置する列強国。チュファルテク合同共和国を緩衝国としながら、その西部に位置する列強国であるクライス連邦と敵対している。チュファルテク合同共和国はかつてガルダリケ王国を構成する州だった過去があり、ガルダリケ王国の貴族の一部にはチュファルテク合同共和国を対等な国と認めず、下に見る気風が今もなお残っている。緩衝国だったチュファルテク合同共和国が主権国家としての自立を唱え、新外交としてクライス連邦へと接近したことを皮切りに、チュファルテク合同共和国を戦場とした戦争へと発展した。戦争は始まった時と同様に、ガルダリケ王国とクライス連邦の都合によって和平が結ばれたものの、ガルダリケ王国の主戦派としては納得のいく和平ではなく、未だにわだかまりが残っている。そのため、チュファルテク合同共和国の東部と西部の分断工作といった情報戦を展開しており、国内には情報工作員を潜ませて暗躍させている。

クライス連邦

チュファルテク合同共和国の西部に位置する列強国であり同盟国。チュファルテク合同共和国を挟んで東に位置するガルダリケ王国とは同じ列強国でありながら敵対関係にあり、かねてチュファルテク合同共和国を緩衝国として挟みながらにらみ合いを続けていた。しかしチュファルテク合同共和国が、主権国家としての自立を目指したことをきっかけに新外交としてクライス連邦への接近をもくろんだために均衡が崩れ、チュファルテク合同共和国を舞台にしてのガルダリケ王国との戦争へと発展する。戦争は最終的に舞台となったチュファルテク合同共和国の意向を省みることなく、クライス連邦とガルダリケ王国の両国家間の都合によって和平が結ばれる。以後、戦場となったチュファルテク合同共和国を再び緩衝国としながら、チュファルテク合同共和国の情勢を自国に有利になるように情報戦を展開している。また、ガルダリケ王国との国境に位置するチュファルテク合同共和国の東部にはクライス連邦の軍事拠点が現在も置かれており、安全保障条約が結ばれたこともあって重要な地域となっている。チュファルテク合同共和国内では、他国の力を借りているという事実や、不況でありながら他国の軍費を負担せざるを得ない現状などにより、不満の温床にもなっている。同様にクライス連邦内でも、チュファルテク合同共和国を防衛するための費用を負担することには批判の声が強く、結果、軍は資金獲得の目的で除倦覚醒剤を東部地域に流通させるという問題行為へと発展した。

その他キーワード

レパブリカル

チュファルテク合同共和国が発行している自国通貨。戦後の不況によって極度のインフレが発生しており、煙草1箱が7万レパブリカル、被服費が1200万レパブリカルと、通貨価値の大幅な下落に直面している。オペラ座で働くリーナ・マートン准尉が月に貰える給料が47万レパブリカルであるため、現在の状況は給料が紙くずになっていくようなものと揶揄されている。オペラ座の酒保は、辛うじて戦前に決められた公定価格でやりとりしているため、オペラ座の隊員たちは煙草代に困るような状況だけは回避できている。しかし、家賃を含めたどうしようもない部分は、インフレの起こっていない他国の通貨に頼らざるを得ない状況に陥っている。

ロイヤル・ノート

ガルダリケ王国が発行している通貨。チュファルテク合同共和国の国内では、自国が発行している通貨であるレパブリカルが極度のインフレによって通貨価値の暴落に直面しているため、代替通貨としてクライス連邦の通貨であるフェデラル・ビルと共に信頼され、使用されている。

フェデラル・ビル

クライス連邦が発行している通貨。チュファルテク合同共和国の国内では、インフレーションにより自国通貨であるレパブリカルが通貨価値を失って暴落しているため、ガルダリケ王国が発行している通貨のロイヤル・ノートと共に代替通貨として使用されている。

塹壕貴族

オペラ座の法務課長であるヨランダ・ロフスキ少佐が多用する言葉。造語であり、戦時中に塹壕戦を経験したことのある戦友を指す。チュファルテク合同共和国の防諜部門であるオペラ座の性質とロフスキの気質から、隊員の資質として共に「血と鉄の試練」を経験した塹壕貴族であるかないかを非常に重要視している。そのため、隊の補充要員として派遣されてきた新兵であり、戦場を知らないモニカ・シルサルスキ少尉の入隊の際には苛烈な勢いで反対していたほど、確たる信念となっている。また、塹壕貴族でないにもかかわらず戦争を望む者を人ではないと蔑視する根幹的価値観ともなっており、彼女の行動理念に深く根ざした言葉となっている。

除倦覚醒剤

戦時中のチュファルテク合同共和国軍内で、配給されていた軍用麻薬。栄養剤の名目で配給されていたもので、戦場で極度のストレス環境下に置かれる兵士たちから疲労や倦怠感、恐怖感などのさまざまな要素を一錠でポンと解決するというのが売り文句だった。「シルバー」とも呼称されており、問題を解決する魔法の薬や銀の弾丸とも揶揄されている。モルヒネやアヘンに比べて中毒症状は少ないとされていたものの、30秒で死ぬより3分で死ぬ方がましという程度の違いでしかない。そのため、戦時中にも麻薬の禁断症状に悩まされる人間が少なからず存在し、末期には戦友ですら薬欲しさに売るというありさまだった。戦後のチュファルテク合同共和国ではガルダリケ王国との国境部で、戦時中の激戦区となった東部地域で流通しており、他国の工作が疑われている。

クレジット

原作

カルロ・ゼン

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