概要・あらすじ
ある夏の日の朝。田舎町の高校生である塔野カオルが駅で電車を待っていると、「ウラシマトンネル」という耳慣れない単語を耳にする。それは、同じく電車を待つ女子高生たちの会話に出てくる言葉だった。彼女たちによれば、そのトンネルに入れば、欲しいものはなんでも手に入るが、その代わり一気に年をとってしまうという。しばらくすると駅員が現れ、前の列車が鹿を轢(ひ)いてしまい、電車が30分以上遅れることを知らせた。そんなわけで、カオルは学校に到着した時には、すでに1時間目は終了していた。ふと教室を見ると、見慣れない美少女が、静かに本を読んでいる。彼女は東京からの転校生の花城あんずだった。近づいてくるクラスメートを、けんもほろろに突き放す彼女は、転校初日にして孤高の人になっていた。学校が終わり、帰宅したカオルは食事の支度をする。5年前、妹のカレンが亡くなって母が蒸発してからは、カオルは父と二人暮らしであり、家事はカオルの役目である。カレンは2歳下で、カオルと二人で虫捕りにいった時に、木から落ちて死んだ。「もしあの時、自分がカレンの木登りを止めていたら」「そもそも虫捕りに行かなければ」妹は生きていたのだ。カオルは毎日のようにそのことを考え、後悔していた。酔っ払って帰ってきた父のために風呂を用意したあと、サトルはぶらりと散歩に出かける。夜の線路を歩いている途中、見慣れない階段を見つけたサトルは、その階段を降りてみた。するとその先には、古びたトンネルがあった。心霊スポットのような不気味さに、帰ろうとするカオルだったが、ふと朝の女子高生たちが話していたウラシマトンネルのことを思い出す。もし、これがウラシマトンネルなら、カレンを取り戻すことができるかもしれない。そう考えたカオルは、トンネルに足を踏み入れた。しばらく進むと、果てしなく続く鳥居のトンネルが現れた。安易に足を踏み入れてはいけないような雰囲気を感じるカオルだったが、鳥居の柱の下に「カレン」と書かれたサンダルを見つける。それは妹のカレンのもので、彼女が死んだ日に必死で捜したが見つからなかったものだった。サンダルを拾ったカオルは、さらに奥へと進む。すると今度は、昔飼っていて死んでしまったペットのインコが飛んできた。ここは本当にウラシマトンネルかもしれない。そう思ったカオルは、大事なことを思い出した。ウラシマトンネルでは、欲しいものが手に入る代わりに一気に年をとってしまうのだ。カオルは慌てて引き返し、トンネルを出て帰宅する。すると、父がものすごい勢いで肩をつかんできて「もう家出なんてやめてくれ」と訴えた。家を出てからほんの2、3時間だったはずが、実際は一週間もたっていたのだ。
登場人物・キャラクター
塔野 カオル (とうの かおる)
田舎町に住む高校生。大抵のことはどうでもいいと思いながら生きる冷めた性格。5年前、2つ下の妹のカレンと一緒に虫捕りに行った際、事故でカレンを亡くす。妹の死を自分のせいだと考えており、後悔の日々を過ごしている。カレンの死をきっかけに、母は蒸発したため、父と二人暮らしとなる。また、父とは血がつながっておらず、カオルは母の浮気相手とのあいだにできた子供である。ある夏の日の夜、「欲しいものは何でも手に入るが、その代わり一気に年をとってしまう」という、ウラシマトンネルを見つける。カレンを取り戻したいという気持ちから、クラスメートの花城あんずの協力を得て、トンネルの検証を始める。
花城 あんず (はなしろ あんず)
塔野カオルのクラスメート。ある夏の日、東京から転校してきた。黒髪のロングヘアと左の髪を束ねる紐リボンが特徴。人を寄せ付けない雰囲気のクールな美少女で文武両道。強い芯を持っており、どんな相手でも屈しない強い性格。自分の意志を貫くためなら暴力を振るうこともあるが、学校の外ではふつうの明るい女の子の側面もある。カオルが発見したウラシマトンネルに興味を示し、二人で協力し、トンネルの検証を始める。
クレジット
- 原作
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八目 迷
- キャラクター原案
-
くっか
書誌情報
夏へのトンネル、さよならの出口 群青 4巻 小学館〈サンデーGXコミックス〉
第1巻
(2020-12-18発行、 978-4091576194)
第2巻
(2021-03-18発行、 978-4091576323)
第3巻
(2021-08-19発行、 978-4091576484)
第4巻
(2021-12-17発行、 978-4091576668)