概要・あらすじ
「泣く子はいねが~」と呼びかけながら、野良猫の遠藤平蔵は子猫の重郎を半纏の胸に抱き、心の中で泣いている人を探して、夜な夜なパトロールに出る。親の介護で疲れ切った人、いじめを受けている学生、小児病棟の子供、LGBTである自分を隠している若者、仕事を掛け持ちするシングルファーザー、自分の正義を通してリストラされ家族にも見捨てられたホームレス、50歳で無職になった独身女性。
平蔵は、そんな人たちの話を聞く。具体的な解決策などは出さずに、ただ寄り添い、「お前さんはよく頑張っている」と肯定する。雨の日も雪の日も、涙の匂いを探して、平蔵は街にでる。
登場人物・キャラクター
遠藤 平蔵 (えんどう へいぞう)
灰色の大猫。頭に魚の缶詰をのせ、半纏姿で夜の街をパトロールする。不細工なのを自覚しており、相手を励ましたり慰めたりしたい時、自分の笑顔では気持ちが伝わりにくいと思い、口で「にっこり」と言う。常に弱者に心を寄せ、話を聞いて寄り添う。
重郎 (じゅうろう)
野良の子猫。生まれたばかりの時に姑獲鳥(こかくちょう)に襲われ、片目をとられる。野良猫のボスであった元・重郎から、片目の子猫では生き延びられないから死なせてやれと言われたが、遠藤平蔵が助けた。平蔵の半纏の中で、いつも一緒に夜廻りをしている。
元・重郎 (もとじゅうろう)
地域一帯の野良猫のボスで、過去にはライバルの猫を千匹倒し、「中央線の牛」と呼ばれていたこともある。親も片目もなくして生き延びた重郎を祝福するため、自分の名前を与え、自らは名もない猫に戻った。
ニイ
自由を愛するニヒルな野良猫。白と黒のはちわれ。片目と片耳に大きな傷がある。縛られることを何より嫌い、名前をつけられることも拒否していたが、可愛がっている子猫の重郎から「兄さん」という意味の「にー」と呼ばれているうちに、それが通り名になった。メス猫に大変もてる。
永沢夫妻 (ながさわふさい)
動物思いの優しい夫婦。小型犬の永沢らぴを飼っている。傷ついた遠藤平蔵をゴミ置き場で見つけ、背中の傷を隠すために手作りの服を着せるなど、面倒見がいい。そのまま平蔵を飼おうとするが、本人に断られる。その代わり、平蔵から、弱っていた子猫の永沢ラミーを紹介され、飼うことになる。その後も、平蔵や重郎が傷を負ったり病に倒れたりすると、いつも助けてくれる。
永沢 らぴ (ながさわ らぴ)
永沢夫妻に飼われている小型犬。天真爛漫で、飼い主夫婦からの愛情を当然のように受け止めている。後から来た猫である永沢ラミーにも、お姉ちゃんとして振る舞い、可愛がっている。
永沢 ラミー (ながさわ らみー)
野良の子猫だったが、病気の身で雨に打たれているところを遠藤平蔵に見つけられ、永沢夫妻なら助けてくれるだろうと連れて来られた。永沢らぴのように自然に振る舞いたいが、遠慮が先に立ち、上手に甘えることができないのが悩み。
モネ
わがままな飼い猫。子供が独立して二人暮らしになった初老夫婦の家で飼われている。食事やお風呂など、細かい要求を次々に出しては甘える。しかし、それは飼い主夫婦の生活に張りを与えるためで、遠藤平蔵からは、「よく働いておる」と評価されている。飼い主以外の人間からの世話は、断固として拒否する。
シロー
飼い犬で、ゴールデンレトリバー。一家の父親がサブローという名のため、娘から「(太平)サブロー・シローでいいじゃん」と名付けられた。この一家は、かつて、ぶんか社から出版された深谷かほるの『かれんちゃん』というマンガの主人公だった。
宙さん (ちゅうさん)
先生に飼われている猫。友達が多く、腹をすかせた猫がいると、先生に頼んで食べ物を振る舞ってもらう。遠藤平蔵とは古い友人。和風住宅の庭は、しばしば宴会場となる。
先生 (せんせい)
宙さんの飼い主。古い和風住宅に1人で暮らしている学者。しばしば宙さんが友達の猫を招くので、その都度、食べ物を与えている。庭先には狸の親子も住み着くようになった。七輪でアンパンを焼き、中にバターをはさむのが好き。
ワカル
汚れた白い野良猫。「わかります~」が口癖。勝手に他人の家に上がりこんでは、住人の愚痴や悩みを聞いて、「大変ですよね~」「色々ありますよね~」と言い、その家の冷蔵庫を開けて料理を作り、ビールと一緒に出す。天然で、遠藤平蔵よりもノリが軽いが、癒し系キャラクターとして人気がある。
布美 (ふみ)
オッドアイの美猫。92歳になる、日本舞踊の師匠に飼われている。飼い主である老女が、すでに買っている事を忘れて、たびたび豚まんを買ってくるため、夜になるとおこそ頭巾をかぶり、腹をすかせた野良猫や貧しい人達に豚まんを配って回る。ねずみ小僧的存在の猫。
ゼン
親も名前もない野良猫だったが、猫集会に憧れ、1人で集会を開いては、見知らぬ誰かに呼びかけを続けていた。そのうちに遠藤平蔵とメロディが来るようになり、メロディと心を通わせ、「素敵な名前を全てあげたい」からと、「全部」という意味の名前をつけてもらう。それにより、何者でもなかった自分の存在が初めてリアルに感じられるようになった。
メロディ
裕福な家庭で飼われている、若いシャム猫。誰もいない広場で呼びかけを続ける、名もなき猫に惹かれ、集会に顔を出すようになる。その猫に恋をして、ゼンという名前をプレゼントする。姉のカラーにしばしば恋愛相談をしては、あきれられながらもアドバイスをもらう。
カラー
裕福な家庭で飼われている、太ったシャム猫。メロディの姉。サンドイッチが好物で、30回も試作させてレシピを作りあげたほどの美食家。頭がよく、皮肉屋だが、面倒見がいい。恋で周囲が見えなくなっている妹を、あきれながらも応援している。
書誌情報
夜廻り猫 10巻 講談社〈ワイドKC〉
第1巻
(2017-03-23発行、 978-4063378597)
第2巻
(2017-03-23発行、 978-4063378603)
第3巻
(2017-11-22発行、 978-4065105221)
第4巻
(2018-07-23発行、 978-4065117033)
第5巻
(2019-04-23発行、 978-4065151853)
第6巻
(2019-11-22発行、 978-4065177792)
第7巻
(2020-12-23発行、 978-4065217696)
第8巻
(2021-11-22発行、 978-4065257746)
第9巻
(2022-11-22発行、 978-4065296967)
第10巻
(2023-11-22発行、 978-4065337028)