夢幻紳士 迷宮篇

夢幻紳士 迷宮篇

夢と現実の世界を自由に行き来できるミステリアスな黒衣の紳士が、さまざまな怪事件を解決していく姿を描いた幻想的なホラーミステリー。「ミステリマガジン」にて連載された高橋葉介の代表作『夢幻紳士』シリーズ3部作のうちの3作目。「ミステリマガジン」2006年3号(3月25日号)から2007年2号(2月25日号)にかけて掲載された作品。

正式名称
夢幻紳士 迷宮篇
ふりがな
むげんしんし めいきゅうへん
作者
ジャンル
その他サスペンス・ミステリー・ギャンブル
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概要・あらすじ

夢幻魔実也は橋の上で「憎い憎いあの男が憎い」と叫び続けている女性と出会う。夢幻が女性に声をかけると、橋から男性が下の川へ落ちたと、先程叫んでいた言葉とはどこか矛盾したことを言う。夢幻は女性の指差す橋の下を覗こうと橋から身を乗り出すと、突然女性が夢幻の背中を押して川に突き落としてしまう。

登場人物・キャラクター

夢幻 魔実也 (むげん まみや)

痩せ型で背が高く、黒いつば広帽をかぶり黒いインバネスコートを身にまとった黒衣の紳士。長い黒髪に切れ長の目をしており、鼻が高く容姿端麗。夢を自由自在に操り、他人の頭の中に入り込むことができる他、他人に幻を見せることや、影を本体から切り離し、分身のようにして操ることもできる。怪事に悩むさまざまな人々を助けてはいるが、怪事を行う魔物には容赦なく、夢の中に牢獄を創り、未来永劫の地獄の苦しみを味わわせる非情な一面も持っている。

橋の上の女 (はしのうえのおんな)

橋の上に立っていた女性。巻き毛の長い黒髪で、襟元と裾に白いファーの付いた黒いロングコートを着ている。橋の上で両手を頬にあてて目を見開き、男が憎いと叫び続けていたところを夢幻魔実也に目撃されてしまう。叫び続けているのは、橋の上の女に声をかけてきた男性を道連れに自殺しようとしているためで、声をかけてきた夢幻も道連れにしようと企む。

医者 (いしゃ)

医者の男性。額から頭頂部にかけて毛髪がなく、鼻の下に髭を生やし、眼鏡をかけている。ワイシャツにネクタイを締め、ベストを着用し、ロングコートを羽織っている。妻と一人娘のミナコとともに屋敷で暮らしていたが、何者かに暗示をかけられ、妻が夢幻魔実也に誘惑されて家を出て行った末に夢幻に見捨てられてビルから飛び降りて自殺してしまう。 その後、娘は病で寝たきりになってしまったと思い込んでいる。自身の家庭を崩壊させた発端を作った夢幻を恨んでおり、復讐をしようと企む。

ミナコ

医者の娘。長い黒髪を中分けにして後頭部で束ね、眼鏡をかけている。襟の付いたワンピース着ており、外出時には白いファーの付いたロングコートを羽織る。医者の娘ではあるが、父親は暗示をかけられており、父親の前では女中の素振りをして、食事を作ったり、お茶を出したり、家事全般を行い、父親の身の回りの世話をしている。父親が客人として夢幻魔実也を屋敷へ招いた時にお茶を出したが、夢幻が手元を狂わせてお茶の入ったティーカップをこぼしてしまう。

本郷 義明 (ほんごう よしあき)

学生服の少年。黒髪で学生帽をかぶり、学ランを着て白い通学バッグを肩から提げている。医者の屋敷の近くにある日本家屋の屋敷に両親とともに住んでいる。趣味はスケッチをすることで、汽車等の乗り物を好んで描いている。夢幻魔実也が吸血鬼で父親の仇だと何者かに暗示をかけられており、父親の書斎から拳銃を持ち出して夢幻を射殺しようとするが、夢幻に暗示を解いてもらった。

義明の母 (よしあきのはは)

本郷義明の母親。長い黒髪を後頭部でまとめ、着物の上から黒い羽織を着ている。医者の屋敷の近くにある日本家屋の屋敷に夫と息子の義明とともに住んでいる。義明が医者の娘のミナコと仲良くしていることを快く思っておらず、ミナコのことを年増女と陰口を叩いている。何者かに暗示をかけられ、夢幻魔実也を夫の仇だと思い込み、日本刀を手に外出するようになってしまう。

本郷 真琴 (ほんごう まこと)

帝国海軍技術将校の大佐の男性。鼻の下に髭を生やし、軍服を着用している。本郷義明の父親で、手の目も芸を演じに行っている料亭に入り浸り、酒を飲み明かしている。家に戻る気はまったくなく、家に連れ戻しに来た息子の義明を邪険に扱って追い返す。

手の目 (てのめ)

右の掌に目がある少女。長い髪を後頭部でまとめてポニーテールにしている。芸人で、宴席や料亭等の座敷で芸を演じて生計を立てている。本郷真琴が入り浸っている料亭からもよく依頼をされ、その料亭で本郷義明を見かけて声をかけた。右の掌にある目をかざすことにより、その人に取り憑いている者の正体を見破ることができる。

寝たきりの老婆 (ねたきりのろうば)

屋敷に1人で住んでいる老婆。白髪で病に臥して寝たきりになっている。寝たきりの老婆が入院するのを嫌がり、病院から連れて来て雇っていた付き添い婦がいたが、老婆よりも先に亡くなってしまった。その後、付き添い婦の代わりに小娘を雇っていて、小娘が寝たきりの老婆の上から何か黒い影がかぶさっているのを目撃している。その黒い影は夢幻魔実也で、寝たきりの老婆の夢の中に入り込み、少女の姿をした老婆とともに空を飛び回り、襲いかかってくる魔物たちから老婆を守っている。

院長 (いんちょう)

病院の院長の男性。肥満体型で、額から頭頂部にかけての毛髪はなく、丸眼鏡をかけている。ワイシャツに蝶ネクタイを締め、ベストを着た上から白衣を羽織っている。義明の母が入院した病院の院長で、本郷義明が時々見舞いにやってきている。義明の母親の病状は快方に向かっていると言ってはいるが、義明は母親に対しての院長の治療方法や診断を疑っている。

船上の女 (せんじょうのおんな)

船上の女性。髪は肩ぐらいまでの長さのボブヘアで、モダンなドレスを着て日傘をさしている。船旅が長く、以前は日本に住んでいて、日本に想い人を残して船旅を続けている。それは、想い人が波間から「まだ帰るな」「帰ってはいけない」「まだすべては終わっていない」と告げているように思えるから。寝たきりの老婆の夢の中にも登場し、院長の病院の病室で少女の姿で眠り続けている。

(どらごん)

院長の病院の地下に棲む竜。巨体を鱗で覆い、大きく長い耳をしていて、頭部に2本角が生えている。額の上に大きな電波を受信する受信機が刺さっているが、これは単なる受信機ではなく、竜を封じるための頚木で、この受信機を抜くと竜の封印が解けてしまう。本来は人間の男性の姿をしていたが、過去に夢幻魔実也によって受信機を埋め込まれ、長い間病院の地下室に封じ込められているうち、埋め込まれていた受信機によって力が貯め込まれ、竜の姿になった。

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