バビロン

バビロン

野﨑まどの小説『バビロン』のコミカライズ作品。謎の自殺と、それにかかわる事件を調査する正崎善が、新域に潜む陰謀や黒幕にせまっていく姿を描くクライムサスペンス。「コミックDAYS」で2019年2月から2019年10月にかけて連載された作品。

正式名称
バビロン
ふりがな
ばびろん
原作者
野﨑 まど
漫画
ジャンル
その他サスペンス・ミステリー・ギャンブル
関連商品
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あらすじ

第1巻

東京地検特捜部検事の正崎善は、製薬会社「日本スピリ」の不正事件「アグラス事件」で押収した、捜査資料の山を検証していた。そこで善は、捜査資料の中に裏側に血で「F」の文字が書かれている怪文書、セイレンの治験実地状況報告書を見つける。善は部下の文緒厚彦と共に、この報告書を作成した参考人の因幡信の自宅を訪ねるが、そこには全身麻酔をしたまま死亡している信の姿があった。のちに信の死因は自殺だと判明するものの、明らかにただの自殺ではないと不審に思った善は、安納智数美女Aが2か月前から信のもとへ頻繁に通っていた事実をつき止める。さらに、智数が新域の域長選挙に出馬している野丸龍一郎の秘書であることから、一連の事件にはこの選挙戦が絡んでいる可能性が浮上する。アグラス事件よりも信の不審自殺の捜査を優先することになった善は、智数を追う中で龍一郎たちが選挙関係者への接待に美女Bを使っていた事実を知る。美女Bの自宅を特定して調査を進める厚彦だったが、彼は善にいくつかのメールを送信したあと、自宅で謎の自殺を遂げる。自殺動機のない厚彦の突然の死に納得がいかない善は、域長選挙を控えた龍一郎たちが関与していると推測しながら、二つの不審自殺の真相を追い続ける。九字院偲半田有吉の協力を得ながら捜査を進めた善は、事件の参考人として浮上した平松絵見子にGPSを仕掛けることに成功し、彼女を事情聴取することになる。

第2巻

正崎善は、域長選挙不正事件と連続自殺事件の捜査を続ける中で、一連の事件に謎の美女、曲世愛が関与していたことを確信する。妖艶な魅力を持つ愛は、さまざまな容姿を使い分けながら暗躍し、人を死に追いやる能力を使って自殺に追い込んでいたのである。さらに愛と手を組んで暗躍する齋開化は、新域庁舎集団自殺事件のあとも自殺法を推進していた。見かねた善は開化を逮捕しようとするものの、現時点では彼を法的に追及するのは難しく、自殺教唆だと証明する証拠が必要であった。その後も自殺法は世間にさまざまな影響を与え、全国の自殺者はさらに増え続けていた。特別捜査班を率いる善は、元凶の開化を抑えて自殺法の可決を阻止するため、ほかの検事や警察関係者と共に開化と愛を追うことになる。善は愛の過去を調べるため、瀬黒陽麻と共に京都へ向かい、愛の叔父でもある坂部蔵主の診療所を訪ねる。蔵主が語ったのは大南中集団自殺事件の詳細と、愛のカウンセリング中に起こった、彼自身の信じがたい実体験であった。曲世家の養女であった愛は、中学時代から周囲を虜にして対人問題を起こし、事件後のカウンセリング中に蔵主をも魅了していた。話を聞き終えて東京に戻ろうとした善たちは、蔵主の話にいくつかの不審点があることに気づき、急いで診療所に戻る。そこには行方をくらましていたはずの愛が現れ、蔵主を自殺させようとしていた。

登場人物・キャラクター

正崎 善 (せいざき ぜん)

東京地検特捜部の検察官を務める男性。アグラス事件で押収した捜査資料からセイレンの治験実地状況報告書を発見し、部下の文緒厚彦と共に因幡信の捜査にあたった際、自宅で死亡している信を発見する。これをきっかけに、信の不審自殺とそれに関与している政治家たちの陰謀が絡む、新たな大事件を追うことになる。その捜査の途中で謎の自殺を遂げた厚彦を失い、これまでの事件への関与が疑われる平松絵見子を事情聴取するが、真相を明らかにする前に彼女を逃してしまう。その後も絵見子や美女A、美女Bを追う中で、この三人の女性の正体は曲世愛であったことを知る。愛と共に暗躍しながら自殺法を推進する齋開化の思惑を知り、彼らを自殺教唆の罪で逮捕することで、自殺法を阻止しようとする。このために編成した特別捜査班の本部係検事となり、九字院偲や瀬黒陽麻たちと協力しながら、開化と愛の行方を追っていく。捜査の過程で愛に何度か遭遇しており、厚彦が最期に遺した言葉をヒントに、彼女の持つ人を死に追いやる能力を防ぐために防毒マスクを持ち歩いている。クールで生まじめな性格ながら熱い正義感を秘めており、新域の裏に隠された新域構想や自殺法に対しては否定的な意見を持つ。長年の捜査経験から優れた洞察力と判断力を持ち、正義感も人一倍強いことから、部下や上司たちからの信頼は厚い。好物はコーヒーで、非常に味にうるさい。

曲世 愛 (まがせ あい)

妖艶な魅力を漂わせた謎の美女。域長選挙不正事件と連続自殺事件に関与している。数々の不審自殺にかかわり、新域の域長となった齋開化と手を組んで行動し、彼と共に失踪と暗躍を繰り返している。年齢は23歳ながら、さまざまな容姿と名前を目的に応じて使い分け、変装や演技力でまったくの別人に化けるのが得意。主に美女Aや平松絵見子のような妖艶な美女に変身するが、美女Bのようなまったく違う雰囲気の女性に変身することもある。新域構想の陰の立役者でもあり、守永泰孝には「愛がいなければ新域構想は10年遅れていた」と評されている。埼玉の曲世家に引き取られた養女で、義母の苗字を名乗っている。少女時代から無意識にその色香で対人問題を起こしていたが、中学生の頃に嫌がらせを受けた同級生の死を願ったのをきっかけに人を死に追いやる能力に目覚める。大南中集団自殺事件のあと、坂部蔵主のカウンセリングを受け、彼の診療所に通い続けることで一時は元気を取り戻した。しかしその後、蔵主がそそのかした遺族たちによって、養父と養母を惨殺されてしまう。能力を使って暗躍する中で、因幡信や文緒厚彦をはじめとする多くの人を自殺に追い込み、自殺法が提唱されたあとも開化と共に、正崎善たちに追われている。謎めいた行動や言動が多く目的や真意も不明だが、善に会うたびに正義の議論を交わすなど、人の善悪や正義には執着を見せる。

文緒 厚彦 (ふみお あつひこ)

正崎善の部下で、立会事務官を務める青年。軽口を叩くこともあるが根はまじめな性格で正義感も強く、上司の善を尊敬しながら検察官を目指して日々努力している。善と共にアグラス事件や因幡信の不審自殺の真相を追う中で、政治家たちの接待に利用されていた美女Bの自宅を特定する。しかし、美女Bの調査中に善に何通かのメールを送ったあと、駆けつけた彼の目の前で、動機のない謎の首つり自殺で死亡した。のちに善がこの不審自殺を捜査する中で、最後のメールを送る前に美女Bと接触していたことが判明する。

因幡 信 (いなば しん)

聖ラファエラ医科大学の准教授を務める、麻酔科医の男性。アグラス事件で押収されたセイレンの治験実地状況報告書の作成者であることから、正崎善によって令状なしの捜査が行われるが、自宅で死亡した状態で発見される。死因は自殺だが、自殺現場は全裸で椅子に座って大音量のクラシックを流しながら、全身麻酔機を用いて恍惚の笑顔で死んでいたという奇妙な状況だった。のちに自殺薬「ニュクス」を用いて自殺していたこと、自殺する前に安納智数や美女Aと頻繁に会っていたことが判明する。

美女A (びじょえー)

安納智数と共に因幡信のもとへ頻繁に出入りしていた謎の女性。信の不審自殺との関与が疑われている。妖艶な雰囲気を漂わせた黒髪ロングヘアの巨乳美女で、真っ赤な服をまとっている。その正体は曲世愛である。

美女B (びじょびー)

10代後半くらいの若い女性。野丸龍一郎たちが建設業界会長の接待に使っている。セミロングの髪型で、儚げな雰囲気をまとっている。文緒厚彦が少女Bの自宅をつき止めて調査を開始したあと、謎の不審自殺を遂げており、正崎善の捜査によって、自殺する前の厚彦と単独で接触していたことが明らかになった。その正体は曲世愛である。

平松 絵見子 (ひらまつ えみこ)

野丸龍一郎たちが選挙関係者の接待に使っていた謎の美女。妖艶で蠱惑(こわく)的な雰囲気を漂わせている。正崎善による取り調べを受けるがあいまいに答えるばかりで、彼を挑発したり正義についての議論を交わしたりするだけだった。取り調べを終えないうちに奥田椋成によって解放され、行方をくらました。その正体は曲世愛である。

九字院 偲 (くじいん しのぶ)

多摩東中央警察署の警部補を務める男性。いつもひょうひょうとしているが、仕事においては切れ者と評価されている。正崎善たちの追っている因幡信の不審自殺事件の捜査に協力する。のちに特別捜査班に加わり、彼らと共に齋開化と曲世愛の行方を追うようになる。愛の人を死に追いやる能力について聞いたあとは対策の一環として、人を正気に戻す効果があるクリスマスローズの花を持ち歩いている。特別捜査班解散後も善が主導する「開化拉致作戦」に参加するが、開化の妻に化けていた愛の能力を受けてしまう。拳銃で九字院偲自身の足を撃ち抜くことで正気を保って善に警告するが、愛の能力の影響に抗い切れず、後事を彼に任せて拳銃自殺した。

野丸 龍一郎 (のまる りゅういちろう)

自明党幹事長を務める男性。国交大臣国家公安委員長も務めた経験を持つ元衆議院議員で、現与党の重鎮として新域の域長選挙に立候補しており、大本命として注目されている。二重アゴの小太りな体型をしている。選挙に出馬しているものの域長になるつもりはなく、真の目的は齋開化を持ち上げて手駒とし、彼のカリスマ性と新域の特権を駆使しながら、新域でしかできない新法や政策を次々と実施すること。このため、開化が域長に就任するのも希望どおりであったが、彼が謎の失踪を遂げて自殺法を掲げるなど予想外の行動に出たため、新域構想のために彼を利用するというもくろみは崩れた。その後は自殺法反対派の一人として公開討論に出席し、ほかの政治家と共に開化の陰謀を止めようとする。

安納 智数 (あのう ともかず)

野丸龍一郎の私設秘書を務める男性。自殺した因幡信のもとを頻繁に訪れていたことから、彼の自殺と新域域長選挙戦の裏に潜む陰謀とのかかわりが疑われている。龍一郎と共に、信や文緒厚彦の自殺には関与していないと主張している。

守永 泰孝 (もりなが やすたか)

東京地検特別捜査部の部長を務める男性。部下の正崎善たちに事件の捜査を指示する。過去に数回程度、曲世愛に会ったことがある。

三戸荷 勉 (みとに べん)

情報解析官の男性で、デジタル・フォンレジック担当係官責任者を務めている。正崎善の依頼で因幡信のパソコンを調査し、残されたデータから自殺に使用されたニュクスの詳細などを解析した。その後もデータ解析を進めては、善たちに新たな情報を提供している。白衣を着用し、いつもアメをくわえている。

半田 有吉 (はんた ありよし)

恒日新聞の記者を務める男性で、正崎善の大学時代からの親友。幅広い情報網を駆使して情報提供しながら、裏から善の捜査をサポートしている。

齋 開化 (いつき かいか)

新域域長選挙に立候補している若手議員の男性。地元トップの高校を卒業後に名門大学に進学し、市議で経験を積んだ経歴を持つ。容姿にも恵まれており、市民からの人気も高くカリスマ性にあふれている。野丸龍一郎の手駒として30歳の若さで域長に就任するが、秘書や会計担当者を含む側近たちと共に、謎の失踪を遂げる。実は曲世愛と手を組んで暗躍し続けており、再び新域に現れた際は新域庁舎集団自殺事件によるパフォーマンスで、自殺法を提唱した。その後も愛と共に失踪や暗躍を繰り返しながら、自殺法の推進活動を続けている。

奥田 椋成 (おくだ りょうせい)

検察事務官を務める男性で、正崎善の部下。検察庁に同行した平松絵見子の事情聴取を行っていたが、善がいなくなったスキに愛とかかわり、事情聴取が完了しないうちに彼女を解放してしまう。その後は新域庁舎集団自殺事件で、飛び降り自殺する。

瀬黒 陽麻 (せくろ ひあさ)

瀬黒嘉文の姪で、検察事務官を務めている。年齢は23歳。自殺した奥田椋成に代わって正崎善の立会事務官となり、彼の部下として共に事件を追う。あまり感情を表に出さないクールな性格。仕事は優秀にこなし、特別捜査班解散後も善の部下として捜査に協力。彼が立案した「開化拉致作戦」にも参加する。

瀬黒 嘉文 (せくろ よしふみ)

法務事務次官の男性で、瀬黒陽麻の叔父。齋開化を逮捕しようとする正崎善たちに、数々の助言を与えた。

坂部 蔵主 (さかべ くらうず)

精神科医の男性で、京都の山科で坂部診療所を営んでいる。曲世愛の養父の弟で、彼女の叔父にあたる。愛の素性を探るべく訪ねてきた正崎善たちに、大南中集団自殺事件の出来事や当時15歳だった愛に魅了された実体験を語る。大南中集団自殺事件のあと、生き残った数人の生徒たちと、愛のカウンセリングを務めていた。愛のカウンセリング中に彼女に異常なまでに魅了され、精神的に犯されているような体験をしていた。善たちには語らなかったが、かつて自殺した生徒の遺族を率いて愛の家に乗り込み、彼女の養父養母を遺族に殺害させた。カウンセリング後に愛から離れて京都に引っ越したことで、彼女の人を死に追いやる能力から逃れていると語っていたが、実は未だに愛の能力の影響を強く受けている。そして表向きは正常なふりをしながら、同じく愛に魅了されている者たちと裏で内通し、彼女の素性を探る人間を始末しようとしている。のちに診療所に姿を現した愛の能力を再び受け、首をナイフで切り裂いて自殺する。

寅尾 (とらお)

警視庁捜査一課監理官を務める男性。体格が非常によく威圧感を醸し出しているが、捜査に行き詰まった正崎善をフォローするなど、面倒見がいい。特別捜査班の編成に協力して自らも一員となり、特別捜査班解散後も善が立案した「開化拉致作戦」に参加している。しかし、曲世愛の人を死に追いやる能力を受け、経路警備や護衛班と共に集団自殺した。

筒井 三郎 (つつい さぶろう)

第六強行犯捜査係の警部補を務める男性。特別捜査班に加わり、正崎善の指示で曲世愛の素性と過去を探る。主に愛の家族構成や大南中集団自殺事件を調査し、その内容を善に報告したが、愛の足どりを追う中で何者かの襲撃を受けて入院した。

小木 (おぎ)

曲世愛の中学時代の同級生の男性。大南中集団自殺事件で自殺を図ったものの生き残った生徒の一人であり、現在はマンションで一人暮らしをしているが、部屋には大量のゴミが散乱している。愛の過去を探る筒井三郎の訪問後、何者かと連絡を取っていた。その後、ほかの大南中集団自殺事件関係者と共に自殺した。

太陽 (たいよう)

仮面で顔を隠した一般人の少年で、自殺法反対を訴える動画をアップロードした。両親が自殺法のもとに自殺しようとしていることで、自殺法に反対する意思を動画内で訴え、多くの反響と話題を呼んだ。その正体は齋開化の息子で、仮面の下の素顔は彼によく似た美少年。心臓に難病を抱えている。

集団・組織

特別捜査班 (とくべつそうさはん)

検事と警察関係者を中心に編成された特別捜査班。正崎善が本部係検事を務めている。結成の最大の目的は、自殺法を推進する齋開化の逮捕で行方をくらました開化の所在と彼の具体的な罪状を明らかにするべく、いくつかの班に分かれて捜査をしている。捜査を重ねるものの開化の罪状を明らかにすることはできず、善によって解散が告げられる。その直後に善が提案した「開化拉致作戦」に賛同したメンバー全員が残り、公開討論の結果に応じて開化を拉致することで自殺法を強制的に止めるという作戦が展開された。

場所

新域 (しんいき)

関東地方の一部に新設された行政区画。町田市、八王子市、多摩市と神奈川県から相模原市を合併する形で、東京都西部を中心に設置されている。政令指定都市などを上回る特別な権限があるため、「第2の東京」として扱われている。表向きは東京への一極集中を緩和するという目的で設置されているが、実態は新法などを試験運用するための「国の実験場」としての役割を持ち、野丸龍一郎をはじめとする政治家や権力者たちの陰謀がうずまいている。一般人には知らされていないが、新域を活用した計画や政策をまとめて「新域構想」と呼ぶ。

その他キーワード

人を死に追いやる能力 (ひとをしにおいやるのうりょく)

曲世愛が持つ能力。あらゆる人間を魅了して精神を乱し、直接自分の手を下さず自殺に追いやることができる。常識や理屈では説明できない謎の多い能力であり、直接かかわった相手や顔見知りの知人はもちろん、会話すらしていないすれ違っただけの相手でも、動機の有無を問わず自殺に誘う。能力にかかった者の大半は、愛の色香に狂って恍惚の笑みを浮かべながら自殺を決行する。能力を事前に知って対策をしている者や、強い精神力を持つ者でさえも魅了し、最終的に自我を崩壊させて自殺に追い込むほどの強制力がある。過去に愛のカウンセリングを担当した坂部蔵主は、嗅覚や視覚といった人間の五感に、大きな影響をもたらしていると推測している。

アグラス事件 (あぐらすじけん)

製薬会社「日本スピリ」が起こした不正事件。日本スピリが糖尿病治療の新薬「アグラス」の薬効を実際のものより高く示した、虚偽の研究結果の作成を複数の大学に依頼していたことが、厚生労働省の告発で明らかになった。

新域庁舎集団自殺事件 (しんいきちょうしゃしゅうだんじさつじけん)

齋開化が自殺法をアピールするためのパフォーマンスとして起こした、謎の集団自殺事件。新域庁舎の屋上庭園から、64人もの男女が同時に飛び降り自殺を図って死亡した。

大南中集団自殺事件 (だいなんちゅうしゅうだんじさつじけん)

曲世愛が通っていた大南中学校で起こった、謎の集団自殺事件。愛のクラスメートや担任教師たちが次々と自殺を図り、愛と数人の生徒を除く多くが死亡した。唯一自殺を図らなかった愛が元凶として疑われる一方、自殺した生徒の遺族や教師などが彼女を追及することはなく、真相は闇に消えている。この事件で生き残った小木をはじめとする生徒と愛のカウンセリングは、坂部蔵主が務めた。生き残った生徒たちはいずれもこのカウンセリングで、「直接触れられてはいないが、愛に酷いことをされた」「愛に精神的に犯された」と答えている。

セイレンの治験実地状況報告書 (せいれんのちけんじっちじょうきょうほうこくしょ)

アグラス事件で押収された捜査資料の一つ。睡眠薬「セイレン」の治験実地状況報告書で、作成者は因幡信で一見ふつうの報告書だが、裏側には信の血液で大量の「F」の文字が書かれている。この血液には信のDNAと一致する頭髪や大量のフケ、爪の一部が含まれていることから、彼が頭を激しく搔むしりながら血液で大量の「F」を書いた、と推測されている。のちに、この「F」は「女性」を意味する「Female」の頭文字であったことが判明する。

ニュクス

因幡信が開発して自殺に使用した毒薬。いっさい苦痛を感じることなく眠るように自殺できる。服用した者は自然と深い眠りについて二度と目を覚ますことはなく、そのまま数十時間後に死亡する。

自殺法 (じさつほう)

新域域長となった齋開化が施行宣言した、個人が自殺を選択することを肯定する新法。のちにこの自殺法の賛否を巡って、開化の提案で生放送の公開討論が開催された。当初は賛成派の政治家は開化のみだったため、否定派優勢で展開していたが、公開討論中のある出来事によって結果が大きく覆る。

クレジット

原作

野﨑 まど

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