概要・あらすじ
喧嘩で無類の強さを誇る不良中学生・岩城凌。家の借金を返すためボクシングを始めた彼は、先輩ボクサーの三原健らに感化されて真剣に打ち込み始める。だが元クラスメートの女子生徒をレイプしようとした3人を半殺しにしてしまい、少年院へ。そこで暴力に取り憑かれた狂犬のような天才ボクサー・安岡条二に挑発され、いざこざを起こしてしまう。
やがて17歳になると同時にプロテストに合格し、初の公式戦で安岡と対戦。死闘の末、安岡を下して日本タイトルを奪う。安岡は重い障害を負った後、拳銃乱射事件の末に死亡。いっぽう強欲なアメリカの大物プロモーターに見込まれた凌は、第2戦で世界ウェルター級王者・レオン・フォードと対戦して勝利するのだった。
第3戦では、かつて反則で三原を引退に追い込んだベニー・サドラーをKO。サドラーは試合直後に死亡するが、凌も硬膜下血腫が見つかって引退を宣告される。だが医師を脅して診断書を偽造させた凌は、次が最後と覚悟して世界最強のヘビー級統一王者・マックス・コーベットに挑戦。
異例のリングに上がった凌は奇跡のKO勝ちを果たすと同時に、18年の生涯を閉じた。
登場人物・キャラクター
岩城 凌 (いわきりょう)
浪花寺北中学校卒。中学2年生の時に父親が借金を残して蒸発、返済に追われる母親と2人暮らしをしていた。背中に「天上天下唯我独尊」と刺繍した長ランを愛用し、ケンカで無敵を誇る。無口で激高しやすいが、正義感の強い一面も。喧嘩に明け暮れた結果、逮捕されて鑑別所に。鑑別所出所後、会長、二郎らの強い勧めでたこやき須賀ジムに入門。 礼子に借りた『矢沢永吉激論集 成りあがり』に強く感化され、ボクサーとして頂点を目指す。だが難波工業高校入学を控え、高橋麻由美をレイプしようとした杉浦一平らを半殺しにして河内曙少年院へ。退院当日に暴れ狂うベニー・サドラーを1発でKOするなど、早くから希有な天賦の才を開花させる。 サドラーとのエキジビジョンマッチは判定負けしたが、試合内容は互角の健闘。統一ウェルター級タイトルマッチ前哨戦となったプロ初の公式戦では、仇敵・安岡条二を再起不能に。第2戦でレオン・フォードからウェルター級世界タイトルを奪取した。第3戦となるその防衛戦でサドラーをKOして試合後死に至らしめるが、凌にも硬膜下血腫と脳水腫が見つかってしまう。 最後の試合となるヘビー級統一王者マックス・コーベットとの対戦に備えて単身渡米中、母親が病死した知らせが届く。コーベットを倒した後に絶命、ニューヨーク州カナストータの国際ボクシング名誉の殿堂博物館に「天上天下唯我独尊」と刺繍したガウンが収蔵されることになった。
杉浦 一平 (すぎうら いっぺい)
岩城凌の浪花寺北中学校時代のヤンキー仲間。シンナーを常習しており、前歯がない。ヤンキー少女にそそのかされ、シンナー仲間の尾崎、渡辺らとかつての同級生・高橋麻由美をレイプしようとした。後にヤクザ組織と関わってダフ屋になり、岩城凌の試合会場前でチケットを販売。 だが凌に感化されて更生を目指し、二郎に紹介されたラーメン屋の仕事に打ち込むようになった。
二郎 (じろう)
刑事だが、かつて日本タイトルを3回防衛した元ボクサーである。岩城凌が中学生時代にケンカで鑑別所に入った際、凌の母親に凌を自分に任せてほしいと頼み込んでたこやき須賀ジムに入門させた。同時に凌の母親に自己破産を勧めて借金を精算させる。たこやき須賀ジムの会長とは親友同士。 下品だが男気があって面倒見がいい。
会長 (かいちょう)
たこやき須賀ジムの会長で、かつて東洋タイトルを6回防衛した元ボクサーである。礼子の父親。二郎からは欣ちゃんと呼ばれる。鑑別所を出た岩城凌にボクシングを教えると同時に、保護司として面倒を見ることになった。二郎に輪をかけた下品な醜男で、下ネタで周囲を凍りつかせることもしばしば。
三原 健 (みはら けん)
たこやき須賀ジム所属のプロボクサーで、岩城凌が信頼を寄せる先輩である。かつて硬派な暴走族のリーダーだったが、難波工業高校中退を経て20歳でボクサーを志すようになった。『矢沢永吉激論集 成りあがり』に心酔しており、浪花の成りあがりがキャッチフレーズ。27歳の時に北野宏一を予告通り1R17秒でKO、日本ウェルター級チャンピオンに。 礼子との結婚式の当日、統一世界ウェルター級チャンピオンのベニー・サドラーと対戦。正気を失ったサドラーの反則行為により、開頭手術を受けるほどの重傷を負う。必死のリハビリで後遺症を克服したが、リングには復帰できず引退を宣言。 大型トラックを購入し、自営の運転手として独立した。凌の対レオン・フォード戦の直前、息子・雄飛が生まれる。最終回に後日談として、プロボクサーに成長した雄飛がかつて凌が手にしたヘビー級タイトルを獲得する様子が描かれる。
ベニー・サドラー (べにーさどらー)
アメリカ人プロボクサー。統一世界ウェルター級チャンピオン。反則行為で三原健に重傷を負わせた際、止めに入った岩城凌にKOされる。復讐のためプロモーターのボー・マードックに凌と試合を組むよう迫り、エキジビジョンマッチで対戦。判定勝ちするが試合内容に苛立ってマードックを殴り倒し、恨みを買う。 続くレオン・フォード戦ではマードックに薬を盛られ、タイトルを奪われる羽目に。同時にあごと首の骨にボクサーとして致命的な傷を負った。試合後、マードックに無実の罪を着せられ服役。ほどなく出所し、フォード経由で凌に渡った世界王座を奪い返すタイトルマッチを挑む。 その試合直前、会場内でマードックの息子らを殺害。自分も凌との死闘の末、試合後に絶命した。
ボー・マードック (ぼーまーどっく)
アメリカ人プロモーターで、ボクシング界のドンと呼ばれる。岩城凌を金のなる木と見込んで高額なファイトマネーを提示、数々のタイトルマッチを組んだ。ベニー・サドラーに息子を殺害される。ヘビー級統一王者マックス・コーベットと対戦したいと言う凌に、アンクレジットマッチのタイトル戦として対戦をセッティング。
安岡 条二 (やすおか じょうじ)
南港ジム所属のプロボクサーで、かつてJ.ウェルター級新人王を獲得した。ボクシングの天才だが、狂気じみた暴力に取り憑かれている。かつて六甲拳闘会に所属していたが、タバコを注意したトレーナーを半殺しにして河内曙少年院へ。そこで出会った岩城凌もケンカで重傷を負わせる。 凌より一足早く退院してプロに復帰、日本ウェルター級チャンピオンとなった。凌との統一ウェルター級タイトルマッチ前哨戦では6RでKO負け。この試合のせいで脳に障害を負って廃人となり、警官の銃を奪って乱射事件を起こす。最後は警官に狙撃されて死亡した。
礼子 (れいこ)
たこやき須賀ジムの会長の娘。かつて三原健とともに暴走族をしており、レディースのリーダーだった。普段はたこやき須賀ジムに併設のたこ焼き屋でたこ焼きを焼いている。姉御肌で岩城凌の将来をあれこれ心配。のちに三原健と結婚、息子・雄飛をもうけた。
高橋 麻由美 (たかはし まゆみ)
岩城凌の浪花寺北中学校時代の同級生。密かに凌に憧れており、ボクシングを始めた際にはグローブ型のお守りをプレゼントした。杉浦一平、尾崎、渡辺に誘い出されてレイプされそうになるが、すんでのところで凌に助けられる。