アートギャングスタ

アートギャングスタ

一人ぼっちで絵に打ち込んできた藤宮京介は、同級生で不良の逢沢涼にギャングチーム「Rabbit Foot」のデザイナーとしてスカウトされる。これまで絵を描くことだけを生き甲斐としていた京介が、さまざまな人たちとのつながりを経て、新たな世界に足を踏み入れていく姿を描いた青春ストーリー。「ヤングキング」2018年8号と、2018年18号から2019年13号にかけて掲載された作品。

正式名称
アートギャングスタ
ふりがな
あーときゃんぐすた
作者
ジャンル
不良・ヤンキー
関連商品
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あらすじ

デザイナー京介誕生

たった一人の美術部員として、いつも孤独に絵を描いている藤宮京介は、ある日、同じ高校の同級生で不良の逢沢涼にギャングチーム「Rabbit Foot」の溜まり場に呼び出される。そこで京介は涼に、最近街で壁やシャッターに縄張りを主張するかのようにマーキングを行なっている敵対チーム「Filth」に反撃するため、力を貸して欲しいと依頼される。マーキングをストリートアートに変えることで縄張りを奪還するという、突拍子もない提案に当初は難色を示していたものの、涼に連れられて公園の壁に描かれた卑猥なマーキングを見た瞬間、京介は自分のアーティスト魂に火がつくのを感じるのだった。こうして壁画を描くことになった京介だったが、その途中、Filthの襲撃を受けて窮地に陥ってしまう。だが、Filthは涼たちRabbit Footの迎撃により撤退し、京介もみごとにマーキングをストリートアートに変えることに成功。これ以降、京介はRabbit Footのデザイナーとして活動を開始する。そして、ジェリーとの出会いなどを経て、チーム「蓮冥門」との抗争に巻き込まれていく。

filthの復讐

以前潰したはずのギャングチーム「Filth」が再び不穏な動きを始めていた。街を侵食するようにマーキングを繰り返し、犯罪行為に手を染めるFilthに街の危機を感じた「Rabbit Foot」が動き出す。街中を舞台に両チームは激しい抗争を始めるが、圧倒的な人数差によりRabbit Footは窮地に追い込まれていく。しかしそんな中、藤宮京介の画策により、逢沢涼たちはFilthの幹部のもとにたどり着く。一方、囮(おとり)として動いていた京介はジェリーと再会し、今のFilthは以前のチームとは別物であることを知る。そして、Filth幹部たちの攻撃によりRabbit Footの中で戦える体力を残しているのは涼と成美千晶だけになるが、そこへ京介とジェリーが駆けつける。さらにFilthへ明確な敵意を向けるジェリーの参戦により、抗争の立場が逆転する。

京介の決意

ギャングチーム「Filth」との抗争以降平和に過ごしていた藤宮京介は、逢沢涼堺健太に「R」へ行こうと誘われる。訳もわからず連れて行かれる京介だったが、Rは「Rabbit Foot」メンバーの溜まり場で成美千晶が働いているバーだった。京介はオーナーに店の壁のペイントを依頼され、即興で描くことになる。そして京介は、作品の出来映えを気に入ったオーナーから、Rabbit Foot結成当時の話を聞く。また、Rからの帰り道に酒に酔った京介は立ち上がれなくなり、そこで初めて千晶と話すこととなる。そして千晶の両親や現在の生活状況、涼との出会いやジェリーとの関係などを知る。バンドをやっている千晶の考え方は絵を描く京介の心に響き、彼はついに自問していた答えに辿り着く。

登場人物・キャラクター

藤宮 京介 (ふじみや きょうすけ)

とある高校の3年生の男子。美術部に所属する唯一の部員で、いつも一人で絵を描いている。黒髪ミディアムヘアのごくふつうの少年。学校でのカーストや勉強、スポーツにまったく興味がなく、自分の描いた絵で世界を変えることを渇望している。ある日、学校一の不良と知られる逢沢涼に呼び出され、ギャングチーム「Rabbit Foot」のデザイナーとして敵対チーム「Filth」との抗争の助太刀を依頼され、以降正式なメンバーとなる。もともと人とのかかわりが薄く、不良とはいっさいかかわりを持たずに生きてきたため、涼に呼び出された時や、大谷陸と今井一哉を紹介された時もビビっていた。特に後輩である堺健太の第一印象は「怖っ」。Rabbit Foot加入当初は、涼のパシリとして周囲から認識されており、藤宮京介自身も涼や健太を笠に着ていると感じてコンプレックスを抱えていた。しかしチームの一員として行動する中で自らも成長し、最終的には学校の生徒にも一目置かれる存在となる。チームのアートデザイナーということもあり、喧嘩に参加することはほとんどないが、一哉に教えてもらった「先手必勝法」を駆使して敵対チーム「蓮冥門」のメンバーを一人倒したほか、不意打ち気味の一撃でFilthのメンバーも一人倒している。初めて人を殴った時は「殴る方もこんなに痛いのか」と感想を漏らしている。絵を描く際は異常なまでの集中力を発揮し、ふだんと雰囲気が一変して鬼気せまる表情になる。その精神力は後頭部を警棒で殴られても描くことを止めないほど強固。また、自分の思い入れのある公園の壁画をジェリーから守ろうとした時には意識を失いつつも、壁画の前で立ちはだかるという根性を見せた。その時に通りがかった成美千晶に「意外にロック」と言われ認められるようになる。涼と出会ったことで性格も変わり、殴られるとわかっていても自分の意見を相手に言えるようになる。当初、ジェリーからは京介の芸術は「娯楽」と言われていたが成長を遂げ、合作することとなる。

逢沢 涼 (あいざわ りょう)

藤宮京介の通う高校の3年生の男子。ギャングチーム「Rabbit Foot」のリーダー的な存在。金髪のロングヘアを後ろでまとめた髪型がトレードマークのイケメン。学校一の不良と知られており、廊下を歩いているとほかの生徒から挨拶される。Rabbit Footのデザイナーとして京介をスカウトした。喧嘩が強く、Rabbit Foot結成当時は成美千晶と共にギャング気取りの半端者を潰し回っていた。女子に非常にモテるが、振る時は相手があきらめがつくように酷い振り方をする。中学時代には、堺健太が思いを寄せる女子を振ったことで逆恨みされ、ほぼ毎日喧嘩を売られていたが、全勝していた。街で健太と女子がチンピラに絡まれているところを助けたことで健太に懐かれるようになる。その際に左腕をナイフで刺されながらも勝利を収めている。高校の入学式では千晶と乱闘騒ぎを起こし、涼は失神して千晶は退学処分となる。面倒見がよく仲間思いの男気ある性格で、不良でない京介にも隔てなく接している。状況判断に長けており、敵対チーム「蓮冥門」を潰しに行く際には、京介を危険に晒(さら)さないように「足手まといだ」と戦力外を告げ、自ら嫌われ役になっているが、その優しい一面は相手に理解されにくいところがある。愛煙している煙草の銘柄は「echo」。

堺 健太 (さかい けんた)

藤宮京介が通う高校の2年生の男子。ギャングチーム「Rabbit Foot」のメンバーで、初登場時は前髪を上げたショートヘアだったが、途中から気合を入れるため坊主頭になる。童貞だということを堺健太自身は秘密にしているが周囲にはバレている。逢沢涼とは中学校時代からの付き合いで、出会った当初は健太が好きな女子を涼が振って泣かせたことで激怒し、ほぼ毎日喧嘩を売っていたが全戦全敗。その女子がチンピラに絡まれたところを助けに入り、逆にピンチに陥ったところを涼に助けられ、涼を慕うようになる。後輩キャラでRabbit Footのメンバーにイジられながらかわいがられている。喧嘩っ早く、怒ると顔面に血管が浮き上がりふだんと人相が変貌する。当初、京介からはその喧嘩っ早さを恐れられていた。チーム内では最弱だが喧嘩慣れしてるためふつうの不良よりは強いが、他チームとの抗争では最後まで立っていたことはない。フライドポテトが好物。自称「酒豪」ながらお酒は弱い。

成美 千晶 (なるみ ちあき)

藤宮京介と同じ高校に通っていた男子。ギャングチーム「Rabbit Foot」のメンバーで、ショートボブヘアにしている。入学式の日に逢沢涼と乱闘騒ぎを起こし、教師を殴って退学となった。施設の出身で、父親はギャンブル中毒、母親は男を作って育児放棄という家庭環境で育つ。そのため「酒と女とギャンブルは男をダメにする」という持論を持つ。バンドではベースを担当しているが、ライブ前日にもかかわらず所属するチームの喧嘩でバンド練習を抜けることもあり、バンド仲間からはチームに所属していることをよく思われていない。馴れ合いを嫌い、無愛想ながら京介が酔って立ち上がれなくなった時は、水を飲ませて回復するまで傍で付き添うなど実は優しい。バー「R」で働いており、オーナーの家に住まわせてもらっている。女性から合鍵を渡され、アパートにも泊まることがあるがその関係は不明。上半身には腹部以外、手首までタトゥーが入っており、これはジェリーの作品である。ジェリーと仲間だった時期があるようだが詳細は不明。喧嘩も強く、基本的になんでもありのスタンスを取り、涼に勝った唯一の男でもある。また、敵チームに囲まれた際に千晶自身は無傷だったが、相手の返り血を大量に浴びた状態でRabbit Footに合流してみんなに引かれた。敵対チーム「蓮冥門」のNo.2と対峙した際にも割れたビンで相手を躊躇(ためら)いなく刺したり、「Filth」の売人の口に大量にドラッグを詰め込んで飲み込ませるなど、大谷陸から「いつか人を殺しそう」と評されている。

大谷 陸 (おおたに りく)

林工業高校に通う3年生の男子。ギャングチーム「Rabbit Foot」のメンバーで、ライオンヘアの大柄な体型をしている。今井一哉と幼なじみで、相棒として仲がいい。明るい性格で、新加入した藤宮京介にもフレンドリーに接する。片手で人を投げ飛ばせるほどの怪力を誇り、同時に数人から組み付かれてもびくともしない。心身共にタフで打たれ強く、必殺技はドロップキック。スケボーが得意でよく一哉と滑っており、通学など移動手段としても使用している。一哉と共に堺健太にスケボーを教えている。

今井 一哉 (いまい かずや)

林工業高校に通う3年生の男子。ギャングチーム「Rabbit Foot」のメンバーで、ツーブロックをオールバックにしている。大谷陸と幼なじみで、相棒として仲がいい。明るい性格で、新加入した藤宮京介にもフレンドリーに接し、今井一哉自身の派手なビッグスクーターにペイントを依頼した。完成したバイクに「めちゃめちゃカッケェ!!!」と感嘆の声を上げたが、逢沢涼からは「またガラが悪くなった」と評されている。陸が成美千晶に軽口を叩いたことで、場の空気が悪くなった時も頭の回転のよさで場を収めるなど、チーム内のバランスメーカーとしての役割を担っている。敵対している「Filth」に潜入する際にも、持ち前の口の巧さと機転ですぐにチームに溶け込んだ。陸と共に堺健太にスケボーを教えている。

ジェリー

ドレッドヘアがトレードマークの大柄の男性。眉毛を剃った厳つい見た目に反して、口調は非常に丁寧。年齢不詳で一人称は「僕」。ギャングチーム「Filth」の依頼で公園の壁にグラフィックを描いた。どのチームもジェリーに干渉できない「治外法権」としての立ち位置を獲得している。しかし、復活したFilthがジェリーを的にかけたため、敵対することになる。ヤクザと揉めて彫師をやめた過去があり、成美千晶のタトゥーもジェリーの作品である。千晶とは仲間だった時期があるが、詳細は不明。「表現者」を自称し、自らの作品である公園の壁画を上書きした藤宮京介に興味を持つ。最初に京介と対峙した時には、自分の作品は「芸術」で京介の作品は「娯楽」だと批評したが、京介が成長を遂げたことで、「芸術」と「娯楽」の共鳴を求めて合作することとなる。

オーナー

成美千晶が働くバー「R」のオーナーを務める男性。左目の下に傷があり、顎髭を生やしている。自宅に千晶を住まわせて、オーナー自身は店で寝泊まりしている。ギャングチーム「Rabbit Foot」のよき理解者で、チームが街の抑止力となっていることを理解しており、メンバーをかわいがっている。過去にギャング気取りの半端者に店を荒らされ、その輩を撃退してくれた千晶と逢沢涼に感謝している。ロカビリーにこだわりを持ち、それをモチーフに店の壁のペイントを藤宮京介に依頼した。

集団・組織

Rabbit Foot (らびっと ふっと)

逢沢涼と成美千晶が結成したギャングチーム。もともとは街を荒らす輩を潰すための自警団的な役割を担っていた。現在のメンバーは六人。メンバーは全員兎の尻尾のようなチャームをネックレスにしていたり、キーホルダーにして腰に着けている。デザイナーの藤宮京介以外の戦闘能力は非常に高く、他チームのボスや幹部クラスの強さを誇る。街の不良少年は「Rabbit Foot」にあこがれている者も多い。ほかのチームに狙われることもあり、街を荒らすチームは容赦なく潰しにいく。明確なリーダーはいないものの、涼がまとめ役を務めることが多い。集合場所は潰れたパチンコ屋の駐車場。

蓮冥門 (れんめいもん)

コンテナ埠頭の第六倉庫を拠点にしているチーム。構成員は20人程で、メンバーは「蓮冥門」と書かれた腕章を着けている。蓮冥門の頭を張るにはその時の頭と一対一で喧嘩に勝つか、幹部のリンチに3分間耐えなければならないという掟があり、ギャングというより暴走族に近い。堺健太から「今どき漢字の化石野郎」と評されている。蓮冥門のNo.3が今井一哉を襲ったことから、ギャングチーム「Rabbit Foot」との抗争に発展する。

Filth (ふぃるす)

プータローや前科者で構成された極悪チーム。恐喝やレイプ、ドラッグと何でもありの犯罪集団。ボスはアンダーグランド界に太いパイプを持ち、チームの中にも麻薬密売人もいる。構成員は「Filth」と書かれたバンダナを首に巻き、縄張りを主張する意味を込めて町中にマーキングしている。ジェリーに依頼して公園の壁にペインティングしたが、藤宮京介の手によりストリートアートとして生まれ変わった。ギャングチーム「Rabbit Foot」により壊滅状態になったが、No.2に教員免許を持つ「レン」が加わってからは大幅な増員を果たして復活を遂げる。その後、凄まじい勢いで街を侵食しスラム化させる。

場所

R (あーる)

成美千晶が勤務するバー。オーナー曰(いわ)く、店名の「R」はロカビリーから由来する。オシャレな内装が自慢のバーで女性客からの人気も高い。店の壁には藤宮京介の作品が描かれている。ギャング気取りの半端者に荒らされたことがあったが、千晶と逢沢涼が撃退している。

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