天王寺さんはボドゲがしたい

天王寺さんはボドゲがしたい

女子高校生の南森ゆきがコンプレックスを抱く、才色兼備で孤高の美少女、天王寺ユリアは、実際は極度の人見知りの天然少女だった。初めてプレイしたボードゲームで自分を負かしたユリアにリベンジするため、ボードゲームの奥深さにズブズブとハマっていくゆきの姿を描く学園青春コメディ。登場するボードゲームはいずれも実在のもので、作中では基本ルールも紹介されている。

正式名称
天王寺さんはボドゲがしたい
ふりがな
てんのうじさんはぼどげがしたい
作者
ジャンル
ゲーム
 
部活動
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あらすじ

第1巻

ある日、女子高校生の南森ゆきは、旧校舎の第3資料室に教材を運ぶよう先生に頼まれた。人気のない旧校舎内をおっかなびっくり歩いていたゆきは、たどり着いた第3資料室の前で、大声で話す人の声を耳にする。そこには、才色兼備で誰ともなれ合わない孤高の存在であるクラスメートの天王寺ユリアが、それは楽しそうに中二病全開の口上を叫びながらボードゲームに興じる姿があった。その場に居合わせた桃谷つばさから、ユリアが極端な人見知りであることを聞いたゆきは、周囲に対するこれまでのユリアの態度を納得すると同時に、ユリアの本当の姿に興味を覚えるのだった。後日、ユリアが落とした生徒手帳を拾ったゆきは、彼女に会うため、再び旧校舎の第3資料室を訪れる。そして成り行きから、つばさやユリア、堺ちなつ難波すずと共に、ボードゲーム「ZAUBER STAUBER(魔法の掃除機)」をプレイすることとなる。

第2巻

ボードゲーム「ZAUBER STAUBER(魔法の掃除機)」で、南森ゆきはあと一歩のところで天王寺ユリアに敗北を喫した。勝利を確信したところで足元をすくわれた自分の判断の甘さに強い後悔を覚えたゆきは、悩んだ末に、ユリアへのリベンジの機会を得るために海外文芸部に入部する。その日、海外文芸部では海外のボードゲームの翻訳を行うことになったが、部長の桃谷つばさは、まずはゆきの好みを知りたいと、彼女だけを別の部屋へと連れ出す。そしてつばさは、推理小説が好きだというゆきの言葉を聞き、連続殺人鬼の切り裂きジャックを題材にしたボードゲーム「Mr.ジャック」を取り出して、ゆきに勝負を挑む。ゆきが捜査官側、つばさがジャック側となり始まったゲームは、ルール上有利な捜査官側であるゆきが優勢にゲームを進めていくが、残りターン数がわずかになっても、つばさは強気な姿勢を崩さない。そんなつばさの姿に違和感を覚えたゆきは、相手の勝ち筋を推理するうちにつばさの目的を悟り、同時に順当に手を進めた場合、自分が敗北することに気づく。座して敗北を待つよりはいいと、自分の直感を信じて一つの賭けに出たゆきは、みごとに勝利を収めることに成功。するとそこに、隠れて二人の勝負を見ていたユリアが姿を現し、「ようこそ海外文芸部へ」と書かれたお菓子をゆきに差し出す。ユリアはそのまま顔を真っ赤にして逃げ去ってしまうが、つばさはゆきにユリアなりの歓迎の印だろうと、ユリアの行動の真意を告げるのだった。さらに後日、ユリアの提案で海外文芸部ではゆきの歓迎会が開かれることになる。

第3巻

どこへ行っても売り切れの新作推理小説を買うため、大型書店の熊五郎書店を訪れた南森ゆきは、ふとした偶然から書店でボードゲームを売っていることを知る。そこで、海外文芸部で先日の歓迎会の際にプレイした思い出のボードゲーム「ザ・マインド」を見つけたゆきは、さんざん悩んだ挙句に購入する。だが、初心者の自分がいきなりボードゲームを買うなんて、天王寺ユリアたちに笑われてしまわないだろうかと妙なネガティブ思想が首をもたげ、ゆきは店を出たところで、恥ずかしさのあまりその場にしゃがみ込んでしまう。たまたま同じ書店を訪れていたユリアは、そんなゆきの姿を目撃し、驚きのあまり彼女に声を掛けるが、ゆきは挙動不審なまま。そこでユリアは意を決して、いっしょにゲームをしないかとゆきを誘う。そこにユリアを迎えにきた堺ちなつが姿を現し、二人を書店に併設されたレンタルスペースへと誘う。そして三人はそこで、先ほどユリアが購入したというボードゲーム「ソレニア」をプレイすることとなる。どうにか平静を取り戻したゆきは、ユリアにリベンジする千載一遇のチャンスと、並々ならぬ決意でゲームに臨むのだった。

登場人物・キャラクター

南森 ゆき (みなみもり ゆき)

女子高校生。1-Bに在籍し、海外文芸部に所属している。セミロングヘアで、頭の左側に小さなお団子を作り、眼鏡をかけている。非常に負けず嫌いで、努力に努力を重ねて学年2位の成績を収めているが、どうしても天王寺ユリアに及ばず、また彼女の何事にも興味のなさそうな様子に、自分のことなど眼中にないのだろうと決めつけて強い反感を覚えていた。だが、ユリアが海外文芸部で感情豊かに生き生きと活動している姿を偶然に見かけて以降、彼女の真の姿に興味を抱き始める。のちに、初めてプレイしたボードゲーム「ZAUBER STAUBER(魔法の掃除機)」で熱戦の末にユリアに敗れ、悔しさのあまりにリベンジを誓って海外文芸部に入部し、ユリアや桃谷つばさら部員たちと交友を深めていく。ちなみに、「ZAUBER STAUBER」での戦いはユリアにも強い感銘を与えており、つばさたち以外で、いっしょにゲームをしたいとユリアに思わせた最初の人物となった。ボードゲームにおいては、初めてプレイするゲームでも基本ルールを分析して勘所をつかむのがうまいが、少々詰めの甘いところがあり、最後の最後でひっくり返されてしまいがち。それでも最後まで勝ちの目を探すことをあきらめない、粘り強さを持つ。推理小説が好きで、ボードゲームも推理系のものを好む。ちなみに運動神経はあまりよくなく、美術の成績も2といま一つ。親しい友人からは、「ユッキー」と呼ばれている。

天王寺 ユリア (てんのうじ ゆりあ)

南森ゆきと同じ高校に通う女子。1-Bに在籍し、海外文芸部に所属している。部長を務める桃谷つばさとはいとこ同士で、互いに幼い頃から知っている。髪を高い位置でツインテールにした凛とした美少女で、無口で無表情、冷静沈着で誰ともなれ合わない孤高の存在。さらに運動神経抜群で成績はつねに学年トップ、ハーフの帰国子女という肩書きも相まって、学校内にファンクラブができるほど、男女問わず高い人気を誇っている。一方で、その何事にも興味のなさそうな様子から、成績で彼女の後塵を拝しているゆきには、当初は強い反感を抱かれていた。実は極度の人見知りで、これらはすべて意図的に人を避けた結果によるものである。学校内では、つばさをはじめとする海外文芸部の部員とだけはまともに話すことが可能で、彼女たちといっしょにいる時は、くるくるとよく表情が変化する、明るく元気で少々天然な少女となる。非常に負けず嫌いで、特に大好きなボードゲームにおいてはその性質が顕著に表れ、ボードゲームが上手なつばさや難波すずにはなかなか敵わないものの、最後まで勝負をあきらめずに勝ち筋を探す粘り強さを持つ。ただし、ふだんとは一転して極端に豊かになる表情から、その手の内は相手に筒抜けになっている場合が多い。また、ボードゲームのプレイ中は、例えば「木材」のカードが欲しい時には、「深き森の王よ その恵みを我に分け与えたまえ」などと中二病全開の言い回しをする癖がある。ちなみにこれはその場でパッと思いついたものではなく、ふだんからノートに書き留め、熟考を重ねた末の言葉であり、こういった言葉を記した「かっこいい口上まとめノート」はすでに複数冊に及んでいる。初めてのボードゲーム体験は幼い頃につばさとプレイした「ねことねずみの大レース」で、思い入れが非常に強いが、天性のサイコロ運の悪さにより、今でもあまりうまくはない。

桃谷 つばさ (ももや つばさ)

南森ゆきと同じ高校に通う女子。3-Dに在籍し、海外文芸部の部長を務めている。ボーイッシュな黒髪ショートヘアで、気さくで優しい性格をしている。天王寺ユリアとはいとこ同士で、互いに幼い頃から知っており、ユリアの性格も熟知している。非常に面倒見がよく、当時は人といっさい話すことなく一人でいたユリアを誘っていっしょに遊び、彼女がボードゲームにハマるきっかけを作った。初めてのボードゲームの勝負で敗北したゆきの並外れた負けず嫌いを見抜き、リベンジのため再び自分たちのもとにやって来ることを予見していたりと、観察眼にも優れる。また、大好きなボードゲームにおいても、真剣勝負の末に敗北した際には素直に相手をたたえたりと、器の大きい人物。

堺 ちなつ (さかい ちなつ)

南森ゆきと同じ高校に通う女子。3-Dに在籍し、海外文芸部の副部長を務めている。ふんわりとボリュームのあるロングヘアで、いつもにこやかな笑みを浮かべており、口調も穏やかと、まさに大人の女性といった落ち着きと魅力を醸し出している。その見た目どおりの優しい性格で、みんなでボードゲームをする際にもインスト(ゲームの導入や解説役)を買って出たりと面倒見もいい。その一方で、学校ではアルバイトが禁止されていながら、変装用の伊達眼鏡をかけて大型書店の熊五郎書店で働いていたりと、まじめそうな外見に反する一面も持つ。魔法使いの空中レースがテーマの「ZAUBER STAUBER(魔法の掃除機)」をプレイする際には魔女のようなとんがり帽子をかぶったり、飛行船の運び屋をテーマにした「SOLENIA(ソレニア)」をプレイする際には指ぬきのレザーグローブをはめたりと、「雰囲気を出すため」と称して仮装する妙な癖がある。

難波 すず (なんば すず)

南森ゆきと同じ高校に通う女子。海外文芸部に所属している。非常に小柄な体型で、セミロングヘアを後頭部でまとめてアップにしている。馴れ馴れしい関西弁でしゃべりお調子者を装っているが、ボードゲームの腕は確かで、海外文芸部の部長であるつばさすらも手玉に取るほど。ふだんは口が悪く何かと偽悪ぶってはいるものの、ほとんどの場合においてそれは照れ隠しによるもので、実際は心優しい性格をしている。

堀江

大型書店の熊五郎書店で働いている若い女性。堺ちなつの同僚。また、南森ゆきが初めて自分でボードゲームを買った際に、彼女を案内した人物でもある。堀江自身もボードゲームが好き。

集団・組織

海外文芸部

南森ゆきが通う高校にある部活動。主な活動内容はボードゲームを楽しむこと。部長を桃谷つばさ、副部長を堺ちなつが務めており、部員は難波すずと天王寺ユリア。のちに、ゆきも入部して五人となる。部室は、ほかに訪れる人もほとんどいない旧校舎にある第3資料室を使っている。部活動の一環としてほかの空き部屋の管理を任されていることもあり、それらの部屋を自由に使うことも許されている。もともとはボードゲーム部として申請したものの許可が下りず、もっともらしい名称にしたことで、どうにか発足にこぎつけたという経緯があるが、ボードゲームには海外製のものも多いことから、つばさたちは「海外文芸部」の名称でなんら問題はないと開き直っている。また、自分たちで遊ぶため、海外製のボードゲームのルールを翻訳することも活動内容の一つとなっている。

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