女犯坊

竜水という名の性欲旺盛で怪異な風貌の僧侶が、江戸時代末期から明治時代初期にかけて大暴れする伝奇作品。物語は江戸の街や諸国を渡り歩いき、悪党や偽善者、果ては妖怪変化をも相手に立ち回る第一部、色欲と権謀術数がうごめく大奥を舞台に、その隆盛と滅亡を描く第二部、明治時代初期の長崎を舞台に切支丹弾圧と汚職まみれの政商たちに立ち向かう第三部に分けられる。連載は1974年から1976年まで続き、2007年には掲載誌と原作者を変えて、現代日本を舞台にした続編が描かれた。最初の連載の原作は滝沢解、続編は原作坂本六有となっている。作画はいずれもふくしま政美。

正式名称
女犯坊
作画
原作
原作
ジャンル
裏社会・アングラ
レーベル
QJマンガ選書(太田出版) / マンサン コミックス(実業之日本社)
巻数
全4巻
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概要・あらすじ

僧侶の女犯が厳しく罰せられる江戸時代、精力絶倫な僧侶竜水は建前ばかりの権力や戒律に反発し、自ら女犯坊と称する。その振る舞いは女は犯し、男は殺すという暴虐三昧。されど、時には弱きを助け強きをくじく一面も見せ、怪異な魔物たちを精力と神通力で降すこともあった。女犯以外では媚薬や権謀術数を駆使してライバルの高僧たちを抹殺し、ついには大奥に出入りできる力を手にした。

その大奥では大上臈姉小路と組んで栄華を満喫。その後、明治維新に伴う大奥の崩壊とともに一度は姿を消すが九州の地で復活した。そして、隠れ切支丹狩りや岩崎弥太郎との戦いを経て、竜水は鹿鳴館へと向かう。

登場人物・キャラクター

竜水 (リュウスイ)

強靭な肉体と絶大な性欲の持ち主。馬を担いで疾走し、大伽藍の柱もへし折るほどの体力と、呪殺から妖怪の調伏までできる神通力、さらには怪しげな媚薬や麻薬を作る才能まである。女犯教なる経典を掲げて世直しを宣言するが、実態は気に入った女を犯し、気にくわない男を殺すというもの。無論、刃向かうのなら女も容赦なく殺す。 第一部では従者の岩松とともに江戸を中心に諸国を放浪し、様々な事件を引き起こした。第二部では大奥に足を踏み入れ、権力者である大上臈の姉小路を籠絡。井伊直弼らと権力抗争を繰り広げつつ、千代田城の女たちを我がものとした。第三部では明治維新による大奥崩壊の際に姿を消したはずが、九州にある隠れ切支丹の隠れ家にて復活。 仏教の僧侶であるにも関わらず浦上五番くずれを代表とする数多くの切支丹狩りに巻き込まれてしまい、やがてその陰で金儲けに暗躍する政商たちに戦いを挑む。

岩松 (イワマツ)

第一部から第三部まで、竜水に従者として付き従ったせむしの寺男。いつも卑屈な笑いを絶やさない死体愛好家で、竜水の依頼を受けて女の手配から死体集め、暗殺など様々な下働きを務めた。基本的には竜水に心酔しているが、ときには竜水の常軌を逸した振る舞いについて行けず、愚痴をこぼすこともあった。 第二部の最後では竜水とともに千代田城の濠に身を投げたが、秘密の抜け穴から浦賀水道を経て長崎まで流れ着く。第三部では長崎で通詞をしていたが、切支丹狩りに巻き込まれた竜水が磔にされるところを救出し、以降は再び従者としてまた竜水を手助けしていた。

大僧正 (ダイソウジョウ)

第一部の第一話「破戒僧」に登場。浄土宗の大僧正で、僧侶の女犯を嘆いていたが、女の脳みそで作られた竜水の秘薬を騙されて飲まされ、気が狂って墓参りをしていた女を強姦。その罪によって打ち首獄門となり、大僧正の地位は竜水に奪われた。いわば『女犯坊』における竜水の最初の犠牲者。

荒木 狂四郎 (アラキ キョウシロウ)

第一部の第十二話「女犯流奥義」に登場。江戸星影流の皆伝を持つ剣術道場主だが、剣術が流行らないため、道場は全裸の女性を体操させる「安産道場」と化していた。しかし、女たちが体操をただのセックスの道具としか思っていないことに怒った竜水が、弟子の僧侶たちとともに道場を襲撃。荒木は竜水に「きさまのような奴は女の穴同然じゃ」と尻を犯され、これを恥じてか切腹してしまう。

姉小路 (アネコウジ)

第二部並びに第三部の最終話「不滅の男」に登場。大奥の女中たちを取り仕切る、最上位の大上臈である醜悪な老婆。竜水の絶大な精力の虜となり、ともに手を組んで徳川幕府を裏から意のままに操る。だが、占い師の預言におびえて目を自分で潰したのをきっかけに、運気は坂を転がるように急落。人間の子供を食べる鬼婆の疑いをかけられた際は拷問で両手を失い、官軍による千代田城引き渡しの際には侍によって両足を切り落とされる。 ついにはイモムシのような姿形になり、最期は韃靼人のブーリバに襲われて脳みそを食べられてしまう。しかし、体を失うことごとに姉小路の竜水への思いは肉欲から純愛のように昇華していった。 第三部の最終話では鹿鳴館の地縛霊として竜水の前に現われた。実在の人物上臈姉小路がモデル。

お美代の方 (オミヨノカタ)

第二部に登場。大奥の女中である中臈の一人であり、とあるお花畑で竜水と出会う。その際、大奥における将軍との夜伽の仕組みを竜水に教え、そのお礼に自分だけが将軍の寵愛を受けるための性技を教わる。元々は清純な17歳の少女だったが、竜水に籠絡されてからはその肉体の虜となり、何度となく性交を繰り返した。

井伊 直弼

第二部に登場。吉田松陰を始めとする、自分の意に背いた者たちを片っ端から処刑する徳川幕府の大老。国政に関与しだした竜水と、その後ろ盾である姉小路に対して敵意をむき出しにしており、忍者や手練れの外国人を利用して亡き者にしようと企む。一度は反姉小路派の女中たちの手によって竜水と姉小路の暗殺に成功したかに見えたがそれらは影武者で、逆に反攻に転じた竜水たちの陰謀によって桜田門外にて暗殺される。 実在の人物井伊直弼がモデル。

ブーリバ

第二部、並びに第三部の最終話に登場した韃靼人で、『女犯坊』第二部における竜水最大の敵。最初は横浜に出没し、外国人相手の娼婦を抱いた後で殺めていた。その評判を聞いた姉小路はブーリバを大奥に招き、竜水と対決させる。ともに牛馬を殺すまで犯しつくすなど、勝負は一進一退。 だが、最後の一騎打ちで、ブーリバは口笛(竜水いわく「邪宗に伝わる口害の秘術」)によって竜水の体力を奪い、ついにはこれを倒した。これにより、姉小路に大奥の守護神に選ばれたブーリバは、ただちに女中を殺してその脳みそを食らう。女の脳みそを食うことこそが彼の力の源だったが、竜水の策略で脳梅毒の女の脳みそを食べさせられて死亡する。 その後、陸蒸気に乗った悪霊として復活。竜水をまたしても撃破して大奥中の女たちを片っ端から食い殺した。最後は竜水の肋骨が腹に刺さって倒れたが、死の直前に口から吐いた腸で竜水の首を絞めるなど、とことんまで竜水を苦しめた。

マリア

第三部に登場。処女ながらも母乳を出すことができる切支丹の少女。九州は福江島の岩山で岩に埋もれていた竜水をキリストだと思い込み、母乳を飲ませて復活させるも、その見返りとして竜水に強姦されてしまう。処女を失ってからも何度となく竜水に陵辱され、口ではケダモノと罵りつつもその精力の虜となる。 この陵辱は竜水が切支丹狩りの公儀船との戦いに敗れて、長崎に連行されるまで続いた。

モルガンお雪 (モルガンオユキ)

第三部に登場。精力絶倫な巨漢の白人女で、夜伽用に連れてこられた男たちを毎晩犯し、耐えきれなくなった者たちを全員投げ殺していた。しかし、モルガンお雪をものともしない竜水の精力に惚れ込み、以降は彼のことをダーリンと呼んで慕う。その後も何度となく竜水の肉体を求めるが、最後は竜水に生きたまま生皮をはがされ、その皮をハングライダーの材料にされた。 実在の人物モルガンお雪がモデル。

トーマス・グラバー

第三部に登場。長崎を代表する政商で、大久保利通ら明治維新政府の首脳ともつながりが深い。バチカンから日本政府の高官たちを切支丹に改宗させよという秘密命令も受けていた。土地の売買から軍艦の調達まで、様々な取引で大金を巻き上げてきたが、やがて竜水によって企みをことごとく妨害される。 実在の人物トーマス・グラバーがモデル。

岩崎 弥太郎 (イワサキ ヤタロウ)

第三部に登場。大久保利通ともつながりの深い政商で、政府と結んで13隻の汽船を無料で手に入れた。このため、切支丹弾圧の影で金儲けに走る政商たちに戦いを挑んでいた竜水のターゲットとされる。竜水の策略で汽船を沈められまくった岩崎は、過去に葬ってきた商売敵の怨霊が取り憑いているのが原因だと竜水に吹き込まれる。 これに怯えた岩崎はすっかり竜水に心酔し、以降は彼の片腕のように行動をともにする。実在の人物岩崎弥太郎がモデル。

場所

江戸城 (エドジョウ)

特に『女犯坊』第二部では物語の中心となった城。劇中では江戸城とも千代田城とも呼ばれる。徳川幕府の将軍が住まう城で、女中たちが女だけで暮らす大奥も存在する。実在する江戸城がモデルだが、大火で天守閣が消失した現実の江戸城と違い、『女犯坊』の世界では天守閣が存在している。

長崎 (ナガサキ)

江戸城の濠に消えたはずの竜水が福江島で復活した後、公儀の切支丹狩りに敗れて連行された土地。通詞をしていた岩松に助けられた竜水はこの長崎で切支丹狩りの裏で金儲けに走る政商や僧侶たちとの戦いに臨んだ。

その他キーワード

女犯経 (ニョハンキョウ)

『女犯坊』に登場する架空の経文。第一部では物語の締めとして使われていた。「女犯経にいわく~」という書き出しで様々な教義が述べられているが、仏教にこのような教えはない。なお、作中で竜水がよく唱える「念彼観音力」という経文は、実在する観音経の一節である。

書誌情報

女犯坊 全4巻 実業之日本社〈マンサン コミックス〉 完結

第1巻

(2008年6月発行、 978-4408171241)

第2巻

(2009年2月発行、 978-4408171654)

第3巻

(2009年7月発行、 978-4408171906)

第4巻

(2009年9月発行、 978-4408172033)

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