奇抜で猟奇的な拷問による制裁
世の中には、非人道的な犯罪を犯しながら、未成年あるいは証拠不十分などの理由で不起訴になったり、軽い罪状に問われただけで悠々と社会で生活している加害者がいる。本作は、そんな加害者に制裁を加える「復讐屋」の活躍を描いたバイオレンス作品である。題材となっている事件は、実際の事件を思い起こさせるものが多く、不快極まりない犯行内容がリアルに描写される。また、本作最大の特徴は、鴨ノ目武(カモ)による奇抜で猟奇的な拷問である。被害者の苦痛と同程度の苦しみを加害者に与えるというのが「復讐屋」のやり方なのである。
冷静で無慈悲なカモと熱血漢のトラ
「カモメ古書店」を経営するカモは、まったく表情を変えずに、ターゲットに残虐な拷問ができる冷静な男性。「復讐屋」を始めたきっかけは、暴行された末に殺された妻と子どもの事件である。犯人が警察官僚の息子であったため捜査が進まず、自らの手で復讐したことから、復讐代行を請け負うようになった。カモの相棒のトラは、正義感が強い熱血漢。非人道的なクズを殺すことを目的としているが、カモのグロテスクな拷問には閉口している。母親を殺した犯人の量刑が懲役7年だったことに納得がいかず、犯人がシャバに出てきたら殺害することを心に決めている。そんな二人の「復讐屋」への依頼方法は、「カモメ古書店」で『善悪の彼岸』という本をレジに持っていき値段を尋ねること。給料3か月分、年金3か月分といったお金で依頼を受けることが多いが、カモたちは金に執着しておらず、心が動けば無料で動くこともある。
個性的な殺人鬼やライバルも登場
「復讐屋」のターゲットは悲惨な最後を迎えることになるが、中にはカモたちからうまく逃げてしまう者もいる。それが園田夢二である。園田は作家志望の漫画編集者であり、殺される人間の生の反応や感情を取材するために殺人を犯すサイコパスである。また、「復讐屋」の同業者として、榎加世子という若い女性が登場する。加世子が率いる「朝食会(ブレックファストクラブ)」は、復讐を代行する「復讐屋」と異なり、被害者本人たちに復讐させる手助けをする組織である。加世子はやり方が違うカモたちに「被害者になった人間の本当の気持ちを、まだわかってない」と、上から目線で言い放つ。これら個性的な登場人物は、それぞれスピンオフ作品『園田の歌』、『朝食会 RISE OF BREAKFAST CLUB』(原案:渡邊ダイスケ、漫画:小林拓己)に展開されている。
登場人物・キャラクター
鴨ノ目 武 (かものめ たけし)
「カモメ古書店」を経営する裏で「復讐屋」を営む男性。坊主頭と黒いサングラス、ゼブラ柄のパーカーが特徴。また、額に横長の傷跡がある。寡黙で冷静沈着な性格で、残虐な拷問を平然と行う。過去に建設関係の仕事をしていた。妻子を殺された事件がきっかけで復讐代行を行うようになる。通称「カモ」。
島田 虎信 (しまだ とらのぶ)
鴨ノ目武の相棒で「カモメ古書店」に居候する、関西弁が特徴の男性。両肩と背中にタトゥーがある。元地下格闘技のチャンピオンで体術に優れる。熱血漢で復讐の仕事に感情移入しやすい。母子家庭で育ててくれた母親を殺害した犯人を憎んでいる。通称「トラ」。
続編
外道の歌 (げどうのうた)
渡邊ダイスケの『善悪の屑』の続編。表向きは古書店を経営しているが、裏では復讐屋家業を営んでいる鴨ノ目武と、その仲間たちの復讐屋としての日常を描きながら、過去のエピソードを掘り起こしていく。少年画報社「... 関連ページ:外道の歌