外道の歌

外道の歌

渡邊ダイスケの『善悪の屑』の続編。表向きは古書店を経営しているが、裏では復讐屋家業を営んでいる鴨ノ目武と、その仲間たちの復讐屋としての日常を描きながら、過去のエピソードを掘り起こしていく。少年画報社「ヤングキング」2016年第8号から2023年第5号まで連載の作品。

正式名称
外道の歌
ふりがな
げどうのうた
作者
ジャンル
裏社会・アングラ
レーベル
YKコミックス(少年画報社)
巻数
全15巻完結
関連商品
Amazon 楽天

概要・あらすじ

鴨ノ目武(カモ)は、団地で妻子とともに、裕福ではないが慎ましく平穏な日常を過ごしていた。そんなある日、仕事から帰宅したカモは、団地の前に多くの人だかりと警官の姿を見つける。嫌な予感がしたカモが、自宅へと急ぐと、そこにはシーツを被せられた妻子の亡骸があった。警官の話によると、何者かによって暴行を受けた末に殺害されたのだという。

突然の妻子の死に、カモは呼吸困難になるほどの衝撃を受ける。その後、何をする気にもなれず、自宅で引きこもる日々を過ごしていたカモだったが、刑事をしている叔父から、妻子を殺害した犯人と疑われている容疑者がいることを聞く。その日の夜、カモは話に聞いた容疑者の自宅へと向い、1人で外出するところを狙って後を付ける。容疑者が人気のない路地に入った瞬間、手にした包丁で刺殺する。

こうして独自の正義感を持つに至ったカモは、本業の古書店を経営するかたわら、裏で復讐屋家業を営むことになる。

登場人物・キャラクター

鴨ノ目 武 (かものめ たけし)

「カモメ古書店」を営んでいる男性。坊主頭でヒョウ柄のパーカーを好んで着用し、サングラスをかけていることが多い。4年前までは会社勤めをしていて、団地で妻子とともに慎ましく平穏な日常を過ごしていた。しかし、妻子を暴行された末に殺害され、その復讐として容疑者を刺殺する。これがきっかけとなり、家業の古書店を経営するかたわら、裏で復讐屋家業を始める。 額にある傷跡は、妻子の仇を討つ際に相手に爪で引っかかれて負った傷の名残。善悪に対して独自の価値観を持っており、その基準に従って依頼された復讐を無慈悲にこなしていく。時には本来の人情味溢れる優しい一面を見せる時もある。仲間たちの間では、「カモ」と呼ばれている。

島田 虎信 (しまだ とらのぶ)

「カモメ古書店」に居候している男性。長くて癖のある黒髪を中分けにしており、柄シャツを好んで着用していて、両肩から胸にかけてタトゥーが入っている。4年前に強盗に母親を殺害された事件がきっかけで鴨ノ目武(カモ)と知り合い、行動をともにするようになる。その後、自然とカモの自宅に住み着き、現在はカモの復讐屋家業を手伝っている。 関西弁を話し、カモとは対照的に明るい性格で、ムードメーカー的な存在ではあるが、一方で好戦的で喧嘩っ早い。元地下格闘技のチャンピオンでもあり、身体能力が非常に高い。趣味はゲームで、同居人の開成奈々子とは良きゲーム仲間でもある。仲間たちの間では、「トラ」と呼ばれている。

開成 奈々子 (かいせい ななこ)

「カモメ古書店」に居候している女性。長い黒髪を後頭部で一つに束ね、前髪をヘアピンで留めて額を出している。眼鏡をかけており、ボーダー柄のシャツを好んで着用している。「練馬の殺人鬼」こと園田夢二に両親といとこを殺されており、その犯人を捕まえて欲しいと、鴨ノ目武(カモ)に依頼した。その後、カモと交流を続けるうちに、自然とカモの自宅に住み着いた。 おとなしい性格で、普段は部屋に引きこもってゲームばかりしているが、カモたちの仕事を手伝いたいという気持ちもある。カモの復讐屋家業を手伝っている、同居人の島田虎信とは良きゲーム仲間でもある。

榎 加世子 (えのき かよこ)

「朝食会」の代表を務める女性。長い黒髪のストレートヘアで、普段はスーツを着用している。日本トップのシェアを誇る家電メーカー「ENOKI」の会長の孫。幼少の頃に鶴巻裕の父親に誘拐され、性的虐待を受けた経験を持つ。それ以来、犯罪加害者に対して過剰な嫌悪感を抱いており、犯罪の被害に遭った人たちの復讐を支援するため、「朝食会」を立ち上げた。 感情の起伏が少なく、冷酷無比な性格をしている。鶴巻をいつもそばに置き、ボディーガードにしている。

鶴巻 裕 (つるまき ゆう)

榎加世子のボディーガードを務めている男性。癖のある黒髪で、眼鏡をかけており、白いシャツの裾をズボンの中に入れている。10歳の時に、父親が加世子を誘拐して性的虐待をした容疑で捕まり、それ以来、学校でいじめの被害を受け続けた過去を持つ。その後、18歳の時に加世子と出会い、加世子から強引にアメリカ国籍を取らされた後に、アメリカの軍隊に入隊させられた。 入隊してから2年後、無事に日本に帰国してからは、加世子にボディーガードとして仕えている。普段は無口でおとなしい性格だが、有事の際には軍隊仕込みの恐るべき戦闘能力の高さを発揮する。

園田 夢二 (そのだ ゆめじ)

出版社「ゴアゴアコミック」で編集者として働く男性。茶髪で右目が隠れてしまうほどに前髪が長く、ボーダーのセーターを好んで着用している。実は「練馬の殺人鬼」と世間で恐れられる連続殺人犯。高校時代から殺人を繰り返しており、開成奈々子の家族と親戚も、その手にかけている。職場では漫画家志望者の持ち込み作品を講評している。 自宅では自身も漫画を執筆していて、右手の薬指に大きなペンダコがある。漫画のネタになることに関しては異常なまでの執着を持ち、漫画のためならば殺人を犯すことも厭わない。自宅では「磯次郎」という名のカエルを飼っている。

カモの叔父 (かものおじ)

鴨ノ目武(カモ)の叔父。坊主頭で体格が良く、眼鏡をかけて、上唇の上と顎に髭を生やしている。黒いシャツの上からスーツを着用している。現役の刑事で、4年前にカモの妻子が殺された際に、カモに容疑者の情報を提供した。その後、容疑者が行方不明なったのをきっかけに、カモが実家のカモメ古書店を継ぎ、表向きは古書店を経営しながら、裏で何か危険な仕事をしていることに、薄々感づいてはいるが黙認している。 強面な外見とは裏腹に、カモのことを何かと気にかけ、身を危険に晒すような仕事を続けているカモの身を案じている。

鴨ノ目 美咲 (かものめ みさき)

鴨ノ目武(カモ)の妻。長い黒髪を後頭部で一つに束ね、髪留めでお団子にしている。夫のカモと娘の鴨ノ目里奈とともに、団地で慎ましくも平穏な日常を過ごしていた。里奈とスーパーで買い物をした帰り道に、警察官僚の息子に自宅まで後をつけられ、自宅に無断侵入された後、里奈とともに暴行され殺害された。生前は育児のストレスが原因で家事が疎かになり、料理をすることも少なくなっていた。 決して褒められるような良き母親ではなかったが、最期は命がけで里奈を庇いながら亡くなる。

鴨ノ目 里奈 (かものめ りな)

鴨ノ目武(カモ)の娘。黒髪のおかっぱ頭の少女。襟付きのギンガムチェック柄のブラウスを着用している。やんちゃで言葉遣いが悪く、よくカモや母親の鴨ノ目美咲の手を焼かせていた。そのため、美咲は育児ストレスで家事を疎かにしてしまうほどだった。また、子猫が飼いたいとカモにねだり、子猫を連れて来てもらった。その子猫に「日曜日」という名前を名付ける。 美咲にスーパーの買い物に連れて行ってもらった帰り道、警察官僚の息子に自宅まで後をつけられ、自宅に無断侵入された後、里奈とともに暴行された末に殺害された。

加藤 真理江 (かとう まりえ)

専業主婦の女性。長い黒髪をしている。母子家庭で母親と2人、古いアパートで暮らしていた。高校生の頃、必死に勉強して有名大学に入学後、一流企業に入社。その後、当時付き合っていた男性が会社を立ち上げることになり、それを機に結婚した。当初は裕福で円満な家庭生活を送っていたが、不況により旦那の会社の経営が傾き、現在はアルバイトをして家計を支える日々を送っている。 自己顕示欲の塊でプライドが高く、負けず嫌いなため、アルバイトをしている姿を知人に見られないよう、自宅から6駅も先のスーパーで働いている。

加藤 乃亜 (かとう のあ)

加藤真理江の娘。黒髪のおかっぱ頭の小学生。両親と3人で千葉で暮らしている。母親とは対照的に、おとなしくて控え目な性格。クラスメイトの前野あかりと仲が良い。しかし、母親同士の仲が悪く、あかりから誕生日会に誘われても、真理江から誕生日会に行くことを禁止され、泣く泣く誕生日会への参加を断念した。

前野 あかり (まえの あかり)

小学生の少女。長い黒髪をストレートにしたり、左右に分けてツインテールにしている。加藤乃亜とはクラスメイトで、自分の誕生日会にも招待する程に仲が良い。しかし、母親同士の仲が悪く、日を重ねる毎により険悪になっていく。その結果、真理江が運転する車に乗せられ、林の中に連れて行かれて殺害されてしまう。

あかりの母 (あかりのはは)

専業主婦の女性。長い黒髪を後頭部で一つに束ねている。娘の前野あかりが加藤真理江の娘・加藤乃亜とクラスメイトのため、真理江とはママ友の仲。しかし、プライドが高くて自己顕示欲の強い真理江とは性格が合わず、陰で他のママ友と悪口を言い合っていた。のちに真理江に嫌悪感を抱いていることを悟られ、それをきっかけに2人の関係は険悪になる。 その結果、真理江にあかりを殺害されてしまう。真理江があかりを殺害した容疑で捕まってから8年後、真理江が刑務所から釈放されたのを機に、鴨ノ目武に真理江への復讐を依頼する。

滝谷 (たきや)

運送業者の男性。年齢は31歳。黒い短髪で、作業服を着用している。トラックを運転中、スマートフォンを見ながらの脇見運転で歩道に乗り上げ、その際に児童を巻き込んで、意識不明の重体にさせてしまった。その後まもなく、被害者の児童は搬送先の病院で亡くなり、過失運転致死で留置所に入れられることになった。留置所に入れられた後も、運転していたトラックに被害者の児童を巻き込んでしまったのはあくまでも事故であり、自分は悪くないと考え、まったく罪の意識を持ってはいない。 留置所の警察官からは「2053」という番号で呼ばれている。

五月女 (そうとめ)

詐欺師の男性。年齢は28歳。黒髪で目が細く、右肩におかめ、左肩に般若、背中に金魚の刺青が入っている。振り込み詐欺の犯罪グループの1人。当時2000万~3000万円の年収があったが、詐欺がバレて警察に捕まる。余罪があり、同じ詐欺グループの仲間のことも白状しないため、通常は20日ほどで出所できる留置所に4か月も入っている。 詐欺の常習犯なのにも関わらず、意外にも常識を重んじ、非常識なことを嫌う。

漫画家志望の男性 (まんがかしぼうのだんせい)

漫画家志望の男性。短い黒髪で、「縦音無尽」と書かれた黒いシャツの上からスカジャンを着用している。出版社「ゴアゴアコミック」に定期的に漫画を持ち込み、編集者の園田夢二に作品を見てもらっている。同性愛者で、園田に対して好意を抱いている。ある日、「ゴアゴアコミック」社内のトイレで突然園田にキスされ、思い切って園田に告白したものの、興味本位でキスしただけだと断られてしまう。 以来、逆上して園田のストーカーとなり、好意が次第に憎悪へと変わっていく。

警察官僚の息子 (けいさつかんりょうのむすこ)

警察官僚の息子。長い黒髪を中分けにし、シャツの上からフード付きのジャンパーを羽織っている。タバコを吸いながらテレビゲームをして毎日を過ごしており、外出するのはタバコや食料品を買いに近所へ出かける時のみ。鴨ノ目美咲が娘の鴨ノ目里奈とスーパーで買い物しているところに居合わせ、自宅まで後をつけて侵入。2人を暴行した末に殺害した。

集団・組織

朝食会 (ちょうしょくかい)

犯罪被害者の復讐を支援する組織。幼少の頃、鶴巻裕の父親に誘拐されて性的虐待を受けた経験を持つ榎加世子が結成した。鴨ノ目武たちとは違って、被害者やその遺族自身に復讐を実行させることを信条としており、被害者の側に立った復讐プランを提供している。

場所

カモメ古書店 (かもめこしょてん)

鴨ノ目武(カモ)が経営している古書店。1階は本の買取りと販売業務、2階は住居として使用している。カモ以外に島田虎信と開成奈々子が居候している他、カモが団地に住んでいた時に飼っていた「日曜日」という名の猫がいる。表向きは普通の古書店だが、裏では復讐屋家業をしている。

ゴアゴアコミック

園田夢二が勤めている出版社。主にコミックの出版をしており、漫画家志望者の持ち込みも歓迎していて、中には定期的に持ち込みをする者もいる。基本的に持ち込み作品の講評は園田が担当している。

前作

善悪の屑 (ぜんあくのくず)

渡邊ダイスケの代表作の一つ。続編に『外道の歌』、スピンオフ作品として『園田の歌』、『朝食会 RISE OF BREAKFAST CLUB』(原案:渡邊ダイスケ、漫画:小林拓己)がある。また、『外道の歌... 関連ページ:善悪の屑

書誌情報

外道の歌 全15巻 少年画報社〈YKコミックス〉

第14巻

(2022-06-27発行、 978-4785971588)

第15巻

(2023-03-13発行、 978-4785973377)

SHARE
EC
Amazon
logo