あらすじ
第1巻
都内のクラブを貸し切って、ヤクザの秘密の会合が開かれていた。集まったヤクザは七人。組長から若頭、ヒットマン、下っ端まで、組と縦の階級の垣根を越えて、同じ意思を持つ者が集まっていた。彼らは嗅覚が優れた者、視覚が優れた者など、ある感覚が人並み外れて優れているという共通点を持つ。秘密を洩らさないため、その場に用意された10人のホステス達は、全員鍵の付いたアイマスクで目を覆われている。会合の中心人物でもある「スメル」と呼ばれる嗅覚の優れた男は、秘密を洩らした人間がいると言い、その嗅覚で一人のホステスを見つけ出す。見せしめとするため、桜井と呼ばれた巨漢の男は、泣いて許しを請うホステスの左目にアイマスクの上から針を突き刺す。その直後、桜井の両目が何者かに潰され、顎に強烈なアッパーを喰らって巨体が後ろへ吹き飛ぶ。ヤクザ達が見ている目の前で、まるで桜井が自分一人で吹き飛んだように倒され、絶命していた。
何者かの急襲を受けて、味覚の男がナイフを出して身構える。しかし、その手元から落ちたように見えたナイフが味覚の男の眉間に深く突き刺さり、殺される。二人が目の前で殺され、残った五人のヤクザは、信じられないが透明人間との戦いを始めるしかなかった。視覚の男も透明人間の蹴りで顔を潰されて絶命。聴覚の男は、マシンガンを連射してホステス達に悲鳴を上げさせ、その絶叫に含まれる超音波から透明人間の居場所をつかむ。しかし、透明人間の囁きによって心を取り乱し、自身の鼓動の大きさに耐えきれなくなると、自ら心臓を撃ちぬいて死ぬのだった。
第2巻
聴覚の男が乱射したマシンガンによって店内には割れたガラスが散らばり、透明人間の男は革靴、透明人間の女はハイヒールを履く。その靴が動き回るのを見て、ヤクザ達は透明人間の殺し屋がこの場にいる事を認めざるを得なかった。触覚の男はついに透明人間の女をつかまえ、見えない透明人間の女のこめかみに拳銃を突きつけながら、女の体を触って確かめる。見えないがそこには確かに裸の女の体があった。触覚の男は、透明人間の女の女陰に指を突っ込み、膣内をまさぐるが、物凄い締め付けによって指をねじおられ、その隙に背骨まで折られて絶命する。嗅覚の男、スメルは五人が殺されても、落ち着き払っていた。自分が殺される恐怖よりも、二人の男女の透明人間への興味が勝るスメルは、透明人間二人を座らせ、酒を差し出す。ありとあらゆる臭いを嗅いで退屈していたスメルだったが、透明人間から漂うこれまでに嗅いだ事のないに臭いに歓喜する。さらなる臭いを欲するスメルの求めに応じて、店内でセックスを始めた透明人間に、スメルが酒を吹きかけて火をつけると、燃え上がる炎で男女の透明人間の姿が浮かび上がる。しかし、スメルは透明人間によって目と耳をつぶされ、舌も千切られて、嗅覚以外を失う。死を覚悟したスメルだったが、スメルは透明人間からの「五感を超えろ」というメッセージを感じ取るのだった。結局五人のヤクザが透明人間に殺され、銃撃などの巻き添えになったホステスも死亡し、スメルは姿を消し、生き残ったヤクザは第六感の男だけだった。この事件は、完全密室暴力団殺人事件として世間をにぎわす。警察は現場にいた第六感の男やホステスを取り調べるが、透明人間の存在などを信じるはずがなかった。しかし、透明人間という情報に興味を抱き、警察に協力する研究者の姉妹は、さまざまな証言や情報をもとに、五感に特化したヤクザ達が別次元から透明人間を呼び寄せたと推論。この次元へやって来た目的は「子供作り」であり、その子供としてスメルを選んだと結論づける。それを証明するかのように透明人間として生まれ変わったばかりで力の加減がわからないスメルは、その場にいた刑事、第六感の男、研究者の姉妹を殺してしまうのだった。その後も透明人間として都会をさまようスメルを、その誕生を祝福するように透明人間の男女が見守っていた。
登場人物・キャラクター
スメル
嗅覚が優れたヤクザの男。髪をオールバックにし、整った顔立ちをしたイケメン。あらゆる臭いを嗅いだ事があり、臭いからさまざまな情報を読み取る事ができる。一見はクールでスマートな雰囲気だが、酒は鼻の穴からゴクゴクと飲み干し、女の髪の毛を燃やしてその臭いを嗅ぐのが、どんなシャブやクスリよりも好きという危ない人物。
桜井 (さくらい)
巨漢のヤクザの男。秘密厳守であるヤクザの会合の情報を洩らしたホステスの左目に、見せしめのために針を突き刺した。その直後、透明人間に目を潰され、殴り殺されたため、どんな感覚が優れた人物だったのかは不明。
味覚の男 (みかくのおとこ)
味覚が優れたヤクザの男。透明人間の襲撃でパニックになって叫びだすホステスを黙らせるために、ホステスの口にナイフを入れて頬を切り裂いた冷酷な人物。そのナイフに付いた血をバターのようにパンに塗りつけて食べた。見えない襲撃者に対してナイフを構えるが、透明人間にそのナイフを眉間に突き刺されて死んだ。
視覚の男 (しかくのおとこ)
視覚が優れたヤクザの男。本当の名字は「板橋」。関西弁で話す。色覚異常が進みすぎて、あるときから健常者には見えないものが見えるようになったという。特殊なコンタクトレンズを装着すると、温度をサーモグラフィのように見たり、赤外線らしきものも見えるようになる。その視覚で絨毯に残った透明人間の足跡を見つけるが、顔面を蹴られて死亡する。 ちなみに、視覚の男を殺したのが透明人間の男なのか透明人間の女なのかは不明。
聴覚の男 (ちょうかくのおとこ)
聴覚が優れたヤクザの男。本当の名字は「墨田」。耳がよすぎるため、自分の悪口を言うヤクザ仲間11人を殺しており、組長から補聴器で耳を塞ぐように命じられている。姿の見えぬ透明人を音で探すため、補聴器を外し、マシンガンを乱射してホステス達に悲鳴を上げさせ、その絶叫に含まれる超音波を利用して透明人間の居場所を特定した。しかし、透明人間に耳元で囁かれる事で過去のトラウマが呼び覚まされ、うるさく高鳴る自分の心臓の音を止めるため、銃で自身の胸を撃って死亡する。
触覚の男 (しょっかくのおとこ)
触覚が優れたヤクザの男。本当の名字は「港」。身軽な動きで、透明人間の女をつかまえる。透明人間の男から攻撃されないよう、透明人間の女のこめかみに拳銃をつきつけたまま、手で女の体を確かめる。女陰に指を突っ込み、巧みなフィンガーテクニックで女をイカせようとするが、膣で指をねじり折られる。そのスキに透明人間の女によってのけぞるように背骨を折られて死亡する。
第六感の男 (だいろっかんのおとこ)
第六感が優れた初老のヤクザの男。本当の名字は「品川」。目が見えないぶん、魂の存在に敏感な身体になったと語る第六感のスペシャリスト。完全密室暴力団殺人事件で唯一生き残ったヤクザとして、事件後警察から事情聴取を受ける。その場に現れたスメルと思われる透明人間の存在を感じ取るが、スメルに顔面をくり抜かれて死亡する。
透明人間の男 (とうめいにんげんのおとこ)
別次元からやって来たと思われると透明人間の男性。姿は見えないが、炎をまとった際に浮かび上がった姿やスメルのイメージ内では、髪が長く、たくましい肉体を持った美しく若い男の姿をしている。全裸、もしくは革靴や手袋だけを身につけた姿で、透明人間の女といっしょに行動し、ヤクザの会合を襲撃する。透明人間の女とは恋人もしくは夫婦のようで、スメルにうながされて店内で透明人間の女とセックスをした。
透明人間の女 (とうめいにんげんのおんな)
別次元からやって来たと思われると透明人間の女性。姿は見えないが、炎をまとった際に浮かび上がった姿やスメルのイメージ内では、髪の長い美しく若い女性の姿をしている。全裸、もしくはハイヒールや手袋だけを身につけた姿で、透明人間の男といっしょに行動し、ヤクザの会合を襲撃した。格闘能力が極めて高く、武器も持たずにやって来て、ヤクザを次々と殺した。
研究者の姉妹 (けんきゅうしゃのしまい)
若い女性の姉妹。完全密室暴力団殺人事件の調査で警察に協力する研究者。瓜二つの顔をしているため、双子と思われる。18歳でカーネギーメロン大学で応用物理学の博士号を取得し、その後、東大に大脳生理学で移籍した天才リケジョ。米国の国防総省の国防高等研究計画局で量子コンピュータの研究をしていた。さまざまな証言や情報をもとに、五感に特化したヤクザ達が別次元から透明人間を呼び寄せたと推論し、透明人間がこの次元へやって来た目的は「子供作り」であり、その子供としてスメルを選んだと結論づけた。 透明人間の二人をアダムとイブになぞらえ、ロマンチックと感想を漏らすが、透明人間として生まれ変わったと思われるスメルによって殺される。
クレジット
- 原作