概要・あらすじ
妖界で育った護国寺黒郎は、人間界の高校に通いながら、妖怪の医者として、助手の春日琴子とともに、妖怪の身体や心の傷を癒す日々を送っていた。だが、妖怪が人間に助けられることを快く思わない一部の妖怪に目をつけられ、命を狙われてしまう。自分と親しい友人や妖怪が争い事に巻き込まれ、傷つく様子を目の当たりにした黒郎は、己自身が強くなることを決意。
しかし、敵の本当の狙いは琴子であった。黒郎は一瞬の隙を突かれ、琴子を連れ去られてしまう。
登場人物・キャラクター
護国寺 黒郎 (ごこくじ くろ)
妖界で妖怪・濡れ女に育てられた人間で、高校生の男子。濡れ女の死後、妖界の医者である白澤のもとで医療のいろはを学び、妖怪の医者として人間界にやって来た。高校に通いながら、学校の片隅で診療所を開いている。医者としての立場を第一に考えているため、例え自分を傷つけた相手であっても、傷の治療を優先させる自己犠牲精神を持つ。 しかし、大切な仲間を傷つける者に対しては容赦しない。呪いを受けたため、強大な妖力を内に秘めているが、自制できずに暴走してしまうこともある。また、医者として妖怪を助けるのと並行し、人間界で人の手によって育てられたという、濡れ女の子供を探している。
春日 琴子 (かすが ことこ)
護国寺黒郎と同じ高校に通うクラスメイトの女子。霊感体質のため妖怪を目視することができるが、霊力は弱く、低級妖怪しか祓うことができない。妖怪に襲われていたところを黒郎に助けられて仲良くなり、助手として妖怪の医者業の手伝いをするようになる。人間も妖怪も分け隔てなく、困っている相手を助けたいという優しい性格。また、頼られると断れないという弱さもある。 妖怪に憑かれやすく、また好かれやすいため、トラブルに巻き込まれやすい。幼少期は、霊感体質が原因で親に気味悪がられたり、同級生にいじめられたという過去を持つ。黒郎とは医者と助手という、いいコンビで、黒郎の人柄を知っていくうちに、徐々に惹かれていく。
キューカン坊 (きゅーかんぼう)
護国寺黒郎の右腕とも言える変化妖怪。黒郎の意思に呼応して、小道具、武器、医療道具など、さまざまな物体に変化することが可能。小さな医療道具は、体内から吐き出すことができる。人間の言葉を発することはないが、理解はしている。白く丸い物体で、黒郎の周囲を常に漂っており、穂村絵衛のキューカン嬢と仲が良い。
ツチコロビ
山の中でコロコロと転がり、人の心を惑わせて道に迷わせる妖怪。緑色の丸い物体で、突起している部分から、目に見えない「霊気(エネルギー)」を食べて育つ。春日琴子が幼い頃に山の中で出会い、友達になった。霊気の食べ過ぎにより、醜く育ってしまったツチコロビは、琴子に気づいてもらえないまま、お祓いされてしまう。間一髪で護国寺黒郎が助けに入るが、召喚した式神に襲われる琴子の身代わりとなり、息絶えてしまったと思われた。 そこを黒郎の力を借り、小さなツチコロビとして再生する。その後、「ツッチー」という愛称で琴子と行動をともにするようになる。このツチコロビの一件を通して、琴子は黒郎の助手を務める決意を固めた。
猫又 (ねこまた)
護国寺黒郎の目付け役として、行動をともにする猫又の妖怪。黒郎に「マタさん」と呼ばれており、その呼び名が周りにも定着している。普段は2本の尻尾を持つ黒猫の姿をしているが、より優れた肉体を探しては、取り憑いて生きていく。その性質上、人の姿でいることもある。いざという時には、黒郎たちを助けられるほどの強い妖力を持つ。黒郎が人間と妖怪の中立的な立場にいるため、妖怪から恨みを買いかねない彼の身を案じている。 黒郎や春日琴子たちに妖力の使い方を教えたり、黒郎を敵視する妖怪を排除したりと面倒見が良い。
濡れ女 (ぬれおんな)
護国寺黒郎の育ての親。上半身は人型だが、下半身は蛇。両手には水かきがあり、青く、長い髪の毛を持っている。民俗学者の夫婦に我が子を盗まれ、取り返そうとするが見つからず、怒りのあまり夫婦を殺してしまう。我が子を失った悲しみの代わりに、殺した女性の腹の中にいた人間の子供を自分のお腹の中に入れ、産み落としたのが黒郎である。 通常、濡れ女は海で暮らす妖怪だが、黒郎に合わせて陸に移り住んだことや、民俗学者との攻防で胸に傷を受けたことにより、黒郎が幼い時に亡くなってしまった。
浦上 弥生 (うらがみ やよい)
高校生の女子で、護国寺黒郎や春日琴子とはクラスメイト。テニス部に所属している。勉強もスポーツもできるうえ、明るい性格のため友人も多いが、実は友達の輪に入るために盗みを働いている、という裏の顔を持つ。盗みを繰り返して百々目鬼に取り憑かれ、百々目鬼とともに神経をすり減らして弱って行く。「この世には盗んでいいものもある」という黒郎のアドバイスにより、百々目鬼と共存する生き方を選ぶ。 百々目鬼を助けてくれた恩や、自分に対して厳しく接してくれた黒郎に対して好意を抱いている。
百々目鬼 (どどめき)
盗みを働いている人間に取り憑き、盗みをやめさせる妖怪。手のひらサイズで、大きな一つ目に両手足が付いている。取り憑いた相手の身体の中に入り込み、身体のあちこちに目をつけることもできる。浦上弥生に取り憑くが、盗まないと友達がいなくなるという彼女に同情し、盗みに加担するようになる。盗みを働く人の心が傷つくと自身も傷つく、という風変わりな性質を持つため、度重なる盗みにより衰弱してしまう。 そこを護国寺黒郎に助けられる。弥生から「ドメ」という愛称で呼ばれている。
月島 秀人 (つきしま ひでと)
護国寺黒郎や春日琴子と同じ高校に通う男子。サッカー部に所属している。明るくお調子者で、頼りにされると断れない性格。恋愛脳で、琴子や浦上弥生とお近づきになるために、黒郎と行動をともにすることが多い。それにより、何かと事件に巻き込まれていく。妖怪を目視することはできるものの、妖力はないので、あまり役には立たない。 しかし、そのがむしゃらさが、時に功を奏することもある。幼少期に友人を亡くしており、トラウマとして引きずっている。
楠石 千里 (くすし せんり)
トサカのような金髪頭を持つ、スーツ姿の青年。妖界専門の盗賊で、「ペガサスの羽根」「ユニコーンの角」「かまいたちの薬壷」など、人間界で珍しいとされるものを妖界から盗んできては、人間界の金持ちに売る、という商売を行なっている。妖界では懸賞金をかけられている。幼少期に妖怪に襲われて右目と両手を失うが、義眼と義手で補っている。 普段は右目には眼帯を付け、両手には手袋をしている。今では本名も捨て、「楠石」という別名を名乗っている。楠石の「くすし」は「薬師」という意味でもあり、ある目的を持って薬探しもしている。
穂村 絵衛 (ほむら かいえ)
住み着いた家を繁栄させる妖怪・座敷童子。通常、子供にしか見ることはできないが、次の住み家として決めた家の娘であったマリ絵のみ、大人になっても穂村絵衛を認識することができた。マリ絵と心を通わして親しくなったが、年老いたマリ絵は、カイエを置いて先に亡くなってしまう。その哀しみから、自らの首を切って命を絶とうとするが、護国寺黒郎に助けられた。 首の部分に痛々しく残る傷跡はその時のもの。座敷童子は本来は子供の姿をしているが、絵衛はマリ絵の成長に合わせて、自らの姿形も変化させている。のちに脅され、黒郎の命を狙うようになる。被写体を人形化させる呪である「銀塩人形」を得意とし、キューカン嬢という変化妖怪を相棒にしている。
キューカン嬢 (きゅーかんじょう)
穂村絵衛の相棒の変化妖怪。手のひらサイズで、黒く、左右に小さな羽根が生えたような丸い物体。護国寺黒郎のキューカン坊と同様に、絵衛の意思に合わせていろいろな物体に変化できる。キューカン坊と仲が良く、よく戯れている。
天邪鬼 (あまのじゃく)
小さな角を2本持ち、虎柄のパンツを履いている鬼の子供。悪戯が好きで、人の言うことを真似したり、逆らったりする妖怪。天から落ちて来た際に、護国寺黒郎と春日琴子にぶつかって、2人と出会う。この時、怪我をしていたため、黒郎の診察を受けた。後に、経過観察として琴子の家に、しばらく居候することになる。嘘しか言えないという性質上、仲良くしてくれる妖怪がおらず孤独だった。 琴子が付きっきりで面倒を見たので友情が生まれ、その後、行動をともにするようになる。琴子にとって初めての患者でもある。
山野 サトリ (やまの さとり)
護国寺黒郎や春日琴子の高校の隣のクラスに転入して来た妖怪。短髪でボーイッシュな女性の姿をしている。相手の心の内を理解できる妖怪とされ、山野サトリの両親や兄弟は、その能力を活かして各方面で活躍している。一方、サトリ自身は、人間の感情というものが理解できず悩んでいた。妖怪として未熟なサトリは、触れないと相手の心を読むことができない。 ところが、楠石千里だけは触れても何も感じることができず、それ以降、楠石に興味を持ち、彼について回るようになる。
白澤 (はくたく)
妖界の医者で、護国寺黒郎の師匠。3つの角と3つの目を持ち、着物を羽織っている。濡れ女の亡き後、まだ幼かった黒郎を引き取って育てた。小柄で金髪の少年のような風貌だが、他の妖怪を寄せ付けない結界を張れるほどの実力者。黒郎に対しては厳しい面を見せることもあるが、身の危険を案じたりと、基本的には甲斐甲斐しい性格。見た目が老いることはないが、実際に年齢は重ねており、以前に比べて妖力が落ちるなど多少の衰えは出ている。 助けたことのある患者から、一度だけ力を借りることができる「邪縛法」を使いこなす。