寄生列島

寄生列島

江戸川エドガワの代表作の一つ。独自の風習が残る離島「花山島」を舞台に、千堂千尋と瑞樹の親子が寄生虫に支配された島民と対峙する孤島パニックサスペンス。この島には独自の風習が残っており、住人たちが寄生虫による感染症によって狂気に陥っていく様子が禍々(まがまが)しく描写されている。講談社「ヤングマガジン」2020年14号から2021年49号にかけて掲載の作品。

正式名称
寄生列島
ふりがな
きせいれっとう
作者
ジャンル
サスペンス
レーベル
ヤンマガKCスペシャル(講談社)
巻数
既刊5巻
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「余所者」というだけで疎外される千堂親子

女子高校生の千尋は、両親の離婚を契機に東京を離れ、父親と共に花山島に移住した。父親の瑞樹は医療所を開業するも、島民から「ヤブ医者」と呼ばれ、千尋も周囲から疎外される日々を送ることとなる。さらに、千尋は模範的な教師から襲われ、同級生の放火事件に巻き込まれるなど、異常な状況が続いていた。そんな中、町内会長の息子である鴻島真の助けを借りて、千尋たちは彼の管理する蔵に住むことになるが、島の風習に関するおぞましい実態を目の当たりにし、戦慄する。さらに、海を渡ってきた研究者の蜷川理一郎と出会い、島で発生している異常事態の原因が寄生虫によるものであり、政府によって島が隔離されていることを知る。この絶望的な危機に直面し、千尋たちはさらなる困難に立ち向かうこととなる。

島民の心を支配する、恐るべき寄生虫

花山島では新種の寄生虫が蔓延(まんえん)しており、その形状は「ロイコクロリディウム」という種に類似していた。この寄生虫は人間の脳に寄生し、感染した人間は知性を持ちながらも倫理感を失い、放火や強姦、殺人などの凶悪な行為を容易に行うようになる。感染した島民たちは、島の風習を利用して悪行を重ね、さらなる感染を引き起こし、島はまさに地獄のような状況に陥ってしまう。そんな中、千尋と瑞樹は、感染を免れた島民や研究者の理一郎と協力し、この危機的な状況を打開しようと奔走する。一方で、感染の源である中島莉子は、寄生虫の特性を利用して千尋そっくりの姿に変異し、彼女が寄生虫の発生源であると誤認させるための妨害活動を開始する。

寄生虫を巡る各勢力の暗躍

花山島で発生した寄生虫による感染症は、日本政府に認知され、海上自衛隊が周囲の海域を封鎖する事態に至る。そんな中、厚生労働省の蟹江は島民の検査を行おうとするが、実際には島民を助けるつもりはなく、彼らの存在を抹消する計画を実行しようとしていた。一方で町内会長の鴻島は、寄生虫の特性を利用して島を支配しようと企んでおり、寄生虫の媒介者になった莉子は、島民全員に寄生虫を感染させ、さらに島外にも広げようと計画していた。千尋と瑞樹は、理一郎が開発中のワクチンに希望を託し、追手から逃れるために奔走するが、莉子と鴻島は彼らを第一の邪魔者と見なし、狡猾な手段で追い詰めようとする。 

登場人物・キャラクター

千堂 千尋 (せんどう ちひろ)

東京から半年前に花山島に引っ越してきた少女で、父親の瑞樹と住んでいる。父親を誰よりも大切に思っており、彼を裏切った母親、涼子に敵意を抱いている。正義感が強く、理不尽な状況にも屈しない気丈さを持つ。一方で、他者に迷惑をかけることを恐れ、特に父親に危機がせまると焦りを感じる傾向にある。現在は花山島にある高校に通っているが、閉鎖的なこの島では東京からやってきたという理由で疎外されている。さらに、寄生虫に脳を侵された教師や同級生に襲われて窮地に陥る。しかし、同級生の真や小島寛太といった寄生を免れた島民や、寄生虫の研究家である理一郎と協力し合い、事態の収拾を試みる。また、莉子とは島に来てすぐに親しくなったが、やがて彼女が感染したことで、対峙することになる。

千堂 瑞樹 (せんどう みずき)

千尋の父親。かつて東京で家族と共に生活していたが、妻の涼子から離婚を告げられた。これを契機に千尋と共に花山島に移住し、現在は医師の仕事に就いている。ふだんは穏やかで誠実な性格で、よそ者であることを理由に理不尽な仕打ちを受けているが、それを甘んじて受け入れている。また、強靭な体力と類まれな腕力を誇りながら、その力を振るったり誇示することはほとんどない。しかし、千尋が危機に直面した際には、自らの危険を顧みずに彼女を守ろうとする勇敢さを見せる。寄生虫に脳を侵された千尋の同級生によって家を放火されてからは、千尋の身を案じて島からの脱出を計画する。しかし、花山島が寄生虫によって隔離されていることを知り、千尋や感染症の研究者である理一郎と共に、事態の解決に向けて行動を開始する。

書誌情報

寄生列島 5巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉

第5巻

(2021-12-06発行、 978-4065261712)

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