心優しき強面男子と、かわいい系柔道少年の出会い
ガタイがよく、つり目で三白眼の寿々木薫は、理不尽な因縁をつけられがちな15歳の少年。高校入学初日には、さっそく電車で酔っ払いに絡まれてしまう。そんな寿々木を救ったのが、その場に居合わせた春名新。小柄な美少年ながら、酔っ払いをかんたんに投げ飛ばしてしまう。その後、クラスメートであることが判明した二人は友達になった。寿々木はいかつい見た目に反して、お菓子作りや植物の世話、ハウスキーピングが好きな心優しい少年。しかし、からかわれることを恐れ、自分の趣味を人に言えずにいた。一方春名は、女の子のようにかわいく、小柄ながら柔道が得意な少年。そして、見た目どおりではないことを自慢にしていた。本作は、見た目も性格も正反対な寿々木と春名の友情と、コミカルな高校生活を描いた青春グラフィティである。
春名に勇気をもらい、変わっていく寿々木
春の遠足に出かけた寿々木は、女子の服についた虫を、帽子でスマートに追い払う春名を見て、自分もみんなの役に立ちたいと考える。そこで、朝食を食べずにふらついて困っている女子に、グラニュー糖と粉寒天を溶かして固めた「琥珀糖」を差し出した。「琥珀糖」はクラス中で好評だったが、寿々木は自分で作ったというのをためらってしまう。しかし、以前春名から「自信持てよ」と言われたことを思い出し、お菓子作りが好きなことをみんなの前で告白する。中学時代は外見と中身のギャップから、「気持ち悪い」といじめられていた寿々木だったが、高校のクラスメートたちは、彼の優しさや個性を重んじ、「イメージと違ってかわいい、面白い」と受け入れてくれた。こうして、春名から勇気を得た寿々木は、少しずつ自信を取り戻していく。
外見と中身のギャップが激しい人々
強面だけど心優しくていねいな生活を送る寿々木、小柄でかわいいのにすごく強い春名。本作には、そんな二人のほかにも見た目と中身のギャップが激しいキャラクターが登場する。それは、寿々木の妹・珠子が通う保育園の先生・猪熊桜子である。母の代わりに妹のお迎えで保育園に行った寿々木は、キラキラした美女・桜子に一目惚れしてしまう。「どんな暮らしをしていたら、あんな素敵なひとになるんだろう」。そんな思いを抱く寿々木だったが、桜子の暮らしはサバサバした男っぽいものだった。酒とつまみを片手にオンラインゲームに勤しみ、バイオレンスなゲームのヤクザキャラの推し活に励んでいた。本作は、ギャップのあるキャラクターたちが大きな魅力で、外見だけでは判断できない人間の多様性を描いている点が特徴である。
登場人物・キャラクター
寿々木 薫 (すずき かおる)
15歳、高校1年生の男子。中学時代は水泳部に所属。父は単身赴任中で、4歳の妹・珠子、母と3人で暮らしている。大柄な体格、つり目、三白眼が特徴。いかつい外見から、輩に絡まれることも多いが、じつは純粋で心優しい性格。植物の世話やお菓子作り、ハウスキープなどが趣味で、ていねいな日常生活を送っている。中学時代はクラスでの細やかな配慮やお菓子作りなどに対して「気持ち悪い」といわれ、傷ついていた。
春名 新 (はるな あらた)
15歳、高校1年生の男子。寿々木薫のクラスメート。小柄で女の子と見間違うほどのかわいい容姿をしている。しかし、幼い頃から柔道を習っており、一般人なら大人でも華麗に投げ飛ばせる実力を持つ。小さいことにコンプレックスは持っておらず、逆に外見と中身のギャップを自慢にしている。寿々木の優しさを見抜き、親友となり彼に勇気を与える存在になる。
猪熊 桜子 (いのくま さくらこ)
寿々木薫の妹・珠子が通う保育園の先生。寿々木の憧れの女性で、左目の下にほくろがある。誰もが認める美人で、父兄と子どもたちから人気がある。私生活は酒とゲームに明け暮れ、ヤクザ社会を舞台にしたゲームのキャラ、関東最強の鮫洲組三代目の参謀・橘が推し。推し活の一環だという理由で、春名新が通う柔道場に通い始める。
書誌情報
寿々木君のていねいな生活 1巻 白泉社〈花とゆめコミックス〉
第1巻
(2023-08-04発行、 978-4592222514)
寿々木君のていねいな生活 2巻 白泉社〈花とゆめコミックススペシャル〉
第2巻
(2024-08-05発行、 978-4592222521)