覚悟はいいかそこの女子。

古谷斗和は幼少期から何もしなくても、つねにクラスの女子に囲まれている、いわゆる愛され男子。そんなある日、自分はモテると思い込んでいた斗和だったが、見た目だけでチヤホヤされているだけで、実はこれまで彼女がいたことがないため、観賞用男子と見られていることを知る。その言葉に焦りを覚えた斗和は、汚名を返上するために、学年で一番の美少女でミステリアスな雰囲気を漂わせた三輪美苑に告白する。当初は偽りの告白を見抜いて斗和を拒絶していた美苑だったが、彼の空回り気味な猛アプローチを受けて次第にペースを乱されていく。

美苑は美しい容姿の持ち主だが、人に心を開こうとしない孤高の存在。私生活も謎に包まれているが、実は家庭環境に恵まれておらず、美苑に関心のない水商売の母親と暮らしている。一方、斗和は整ったルックスと明るい性格の持ち主で、女子から圧倒的な人気を誇る。さらに高校では気の合う友達にも囲まれ、家庭では二人の姉から溺愛されており、美苑を取り巻く環境とはまったく異なる。ただし、斗和はモテはするものの実は恋愛は未経験。そんな斗和は、観賞用男子としての立場から脱却するために美苑に告白するものの、あえなく撃沈。しかし、ふられた事実を受け入れられない斗和は、美苑に猛アプローチを開始する。

美苑はシングルマザーの家庭に育ち、水商売の母親と顔を合わせることはほとんどない。また、ゴキブリやドブネズミが住み着いているアパートは、殺風景な寒々しいもので、ガラの悪い借金取りがたびたび母親を探しにやって来るなど、過酷な生活環境にあった。そんな美苑の心の支えは、クラスの副担任で古典を教えている柾木隆次。美苑は柾木に片思いしており、彼が担当している古典の授業を何よりも楽しみにしている。斗和は柾木に対抗意識を燃やしつつも、彼が美苑の心の支えになっていることを知っているため、複雑な心境を抱きながら彼女の恋が成就するように応援もしている。