寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。

寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。

三秋縋の小説『三日間の幸福』のコミカライズ作品。1年につき1万円で寿命を売り払い、余命3か月となった無気力な男子大学生が、絶望を繰り返しながら行きついた先を描く。「価値のある人生とは何か」をテーマに展開される、純愛要素の強いビルドゥングスロマン。「少年ジャンプ+」2016年36号から2017年47号にかけて掲載された。

正式名称
寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。
ふりがな
じゅみょうをかいとってもらった いちねんにつき いちまんえんで
原作者
三秋 縋
漫画
ジャンル
その他歴史・時代
関連商品
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あらすじ

第1巻

無気力な大学生のクスノキは生活に困窮し、やむを得ずに私物を売りに出向いた先で、古書店の老人CDショップの店員から、「寿命を買い取る店」を教えられる。その店で提示されたクスノキの人生の査定額は、最低価格の30万円。つまり、1年で1万円であった。捨て鉢な気持ちになり、寿命を買い取ってもらったクスノキは、監視員制度により、ミヤギという女性と、残りの余命3か月を共に過ごす事になる。クスノキは過去の人間関係にしがみつき、救いを求めて躍起になるが、クスノキに起こったであろう未来を知るミヤギは、今さら過去に縋るのは虫がよすぎると、批判めいた横やりを入れる。実はミヤギは、ミヤギの母の借金により、「時間」を売る監視員になったのだが、その際に査定された人生の価格は、クスノキと同じ最低価格だったという過去があった。その事実を知ったクスノキは、ミヤギを疎ましく思っていた自分を反省し、彼女にとって一番楽な監視対象者になろうと決意する。そんな中、クスノキは幼なじみのヒメノの存在が、どうしても気になっていた。

第2巻

クスノキはかつて、幼なじみのヒメノと、10年後にお互い相手がいなかったら結婚しようと約束していた。だがミヤギによれば、ヒメノは17歳で高校を中退して出産。18歳で結婚したが離婚し、その2年後に自殺するという悲惨な人生を送ると見られていた。それを聞いたクスノキはヒメノに会いに行き、後日デートの約束を交わす。美しく成長したヒメノに高揚するクスノキだったが、実はヒメノは17歳の時に救いを求めてクスノキに手紙を送ったが無視された事から、クスノキの事をひどく憎むようになっていた。そして本来であれば、ヒメノはその復讐として、クスノキの目の前で飛び降り自殺を実行する事になっていたのである。だが、クスノキが自分の人生を売った事で運命が変わり、ヒメノは死ぬ事なくクスノキの前から姿を消した。絶望し、寿命を売って得た金を投げ捨てたクスノキに、ミヤギは寄り添い、二人は次第に心を通わせる。

第3巻

ある日、クスノキミヤギに同情的な代理監視員との会話をきっかけに、無価値な自分の人生に同情したミヤギが、本当は30円にしかならない彼の人生に30万円を払ってくれた事を知る。ミヤギにとって、クスノキが自分の境遇に同情してくれた時から、彼は単なる監視対象者ではなくなっていたのだ。それを知ったクスノキは、他人からは見えないミヤギを、人前でも堂々と恋人として扱った。すると信じがたい事に、ミヤギの存在が町の人々に受け入れられるようになり、クスノキはちょっとした有名人になる。そんなある日、過去に絵筆を捨てたクスノキは、ミヤギの寝顔を一心不乱に描き出した。クスノキは、「寿命を買い取る店」で、残りの1か月間絵を描き続ければ絶大な評価を得る画家になると言われたが、彼はミヤギの借金を返すために、自分の残りの寿命を売ってしまう。そして残された3日間を過ごすため、独りで出掛けたクスノキは、現実にはミヤギがいないという喪失感に泣き崩れる。そんなクスノキを町の人々が慰める中、クスノキは聞き間違えるはずのない声を耳にする。

登場人物・キャラクター

クスノキ

無気力な男子大学生。少し長めの髪型をしており、頭はいいが、斜に構えたところがある。金が底をつき、「寿命を買い取る店」で、査定を担当したミヤギから、1年につき1万円、計30万円の見積もり提示され、得た金の代わりに余命3か月間を監視員のミヤギと過ごす事になる。子供の頃は自分が偉い人間になるとの思いが強く、周囲の子供達を見下していた。 当時から成績がよく、絵が得意だった。ヒメノとは幼なじみで、10歳の時、お互いに相手ができなければ、10年後に結婚しようと約束した仲。その後ヒメノは引っ越し、17歳の時に一度だけヒメノから手紙をもらったが、当たり障りのない返事をしたという経緯がある。地元で一番の高校に進学するが、平凡な大学に進学した。 17歳の冬以降、絵筆を握る事をやめた。焦燥感から19歳の時に絵筆を握った事で、絵を描く能力を失う。ミヤギによると、自身の失われた30年は、最も軽蔑していた職に就き、酒だけが楽しみとなり、30代後半で趣味のバイクで転倒して大ケガを負い、死ぬに死にきれず50歳まで生きるという悲惨なもので、実際には30円の価値しかなかった。 音楽や本が大好きで、酒とタバコを嗜む。

ミヤギ

クスノキの監視員となった女性。「寿命を買い取る店」でクスノキの寿命の査定の見積もりを担当した。ロングヘアの華奢な体型で、人間味が薄い印象がある。ふだんは冷めた目をしているが、たまに控え目な笑顔を見せる。クスノキ以外の人間には姿は見えない。また、今後クスノキの人生で起こるであろう事実を知っている。6歳の時、ミヤギの母が「寿命を買い取る店」で監視員となり、姿を消す。 母親は監視対象者に殺害され、なぜか「寿命」を買っていたため、自身が借金を背負う羽目になり、「時間」を売り監視員となった。自分の寿命にもほとんど価値がなかったため、否が応でもクスノキに自分を重ねてしまい、当初八つ当たりのような態度を取っていた。透明人間として扱われるのがつねであり、クスノキが自分を存在している者として接してくれるのが嬉しく、自分の境遇に同情してくれた日から、彼に好意を寄せるようになる。 淡々としているが、構ってもらうのが好き。幼い頃、共依存的な関係だった幼なじみの男の子がいる。のちに、余命30円の価値しかなかったクスノキに、善意で30万円与えたのは自暴自棄な利他行為だと明かしている。

ヒメノ

クスノキの幼なじみの女の子。頭がよく、いつもクスノキとテストの点数を張り合っていた。当時から、知的な風を装っていたが、案外抜けたところがあり、クスノキからすると放っておけない一面があった。クスノキと再会した20歳の時は、ロングヘアの美しい女性に成長していた。皮肉屋だが、どこか温かみがある喋り方は当時のままだった。 負けず嫌いで、クスノキへの対抗心から彼の絵を誉めた事がなかったが、本当は彼の絵を家に持ち帰って、眺めていたほどその価値を認めていた。10歳の夏に、お互いに相手ができなければ、10年後に結婚するという約束をクスノキと交わしたのちに転校。その後、17歳で出産して高校を中退。18歳で結婚するが、2年後には離婚し、20歳の現在は実家で子育てしている。 17歳の時に一度、クスノキに助けを求める手紙を送ったが、それに応じなかったクスノキを憎むようになった。彼にとって自分が欠かせない存在になった時、目の前で飛び降り自殺をしてやろうと決意していた。だがクスノキと再会した際、彼が「寿命を買い取る店」の話を延々とし出した事で頭がおかしくなっていると確信。 復讐を思いとどまり、彼の前から姿を消した。

古書店の老人 (こしょてんのろうじん)

古書店の主人を務める男性。クスノキが売りに来た本の趣味を気に入り、「寿命を買い取る店」を紹介した。口ひげを生やし、丸メガネをかけている。髪は無造作な短髪の老人で、眼光が鋭い。のちに、ミヤギの借金を返すためにどうすればいいのか悩んだクスノキが、自分の価値を高めるにはどうしたらいいかを尋ねた際、自分みたいな奴のアドバイスを信用するなと答えた。

CDショップの店員 (しーでぃーしょっぷのてんいん)

CDショップの店員の若い男性。シャギーの入った前下がりショートヘアに細身の体型。大量のCDを売りに来たクスノキに「寿命を買い取る店」を紹介した。実際、自分も寿命を買い取ってもらった事がある。ちなみに、クスノキの音楽の趣味を気に入っている。一個人の力を信用しておらず、のちに、ミヤギの借金を返すためにどうすればいいのか悩み、限られた時間で何かを成し遂げるにはどうすればいいかを尋ねて来たクスノキに、人を頼れと答えた。 また、何かを成し遂げるためには健康は欠かせないと、クスノキに傘を貸してやるなど優しい一面がある。

担任の先生 (たんにんのせんせい)

クスノキが小学校の時に担任だった女性教師。ロングヘアを下の方でお団子にしている。道徳の時間に「人間の命」は実際の金額にすると、いくらぐらいのものだと思いますかと質問。生涯賃金などに基づいた返答が飛び交う中、一度、常識的な考え方を捨てるように提案。そして、寿命の半分を譲ってほしいと言って来た誰かが、あなたの余命に1年につきいくら払ってくれるだろうかと再び尋ねた。

ワカナ

クスノキと同じ大学に通う女子。ショートヘアで小柄な体型をしている。4月に古書店でクスノキと知り合い、大学で再会。昼食を共にして、音楽や本について語り合う仲になる。クスノキに好意を寄せていたが、ヒメノとの約束を大事にしていたクスノキが、期待を持たせないようそっけない態度を取っていたせいで、ほかの男性のところへ行ってしまった。 「寿命を買い取る店」で寿命を買い取ってもらい、急に人恋しくなったクスノキがメールすると、アドレスが変更されていた。

ナルセ

クスノキの高校時代の友人。シャギーなショートヘアで明るい性格の男性。当時も人気者だったが、日陰者のクスノキと妙なところで気が合い、どんな嫌な事でも笑い飛ばせる仲だった。「寿命を買い取る店」で寿命を買い取ってもらったクスノキが呼び出して再会するが、クスノキが絵を描いていた事について揶揄したため、本当の友情がなかった事が露呈する。 ミヤギによると、実はクスノキが思っているほど彼の事を気に入っておらず、本来であれば2年後に喧嘩別れする事になっていた。

ミヤギの母 (みやぎのはは)

ミヤギの母親で、ロングヘアの薄幸そうな女性。ミヤギが6歳の頃、「寿命を買い取る店」で「時間」を売り、姿を消した。時間を何十年も売って、寿命を買ったが、その理由は不明。いつも現実に不満を漏らしていたせいでミヤギに嫌われており、自身も娘の事が嫌いで、こんなの産まなければよかったと暴言を吐いていた。監視員となったが、ミヤギが10歳の時に監視対象者に殺害され、これがミヤギが借金を背負う原因となった。

写真店の店主 (しゃしんてんのてんしゅ)

クスノキとミヤギが訪れるようになった写真店で、店主を務める男性。七三分けでドングリ眼をしている。人には見えないミヤギと笑い合っているクスノキを見て、そこに誰かいるのかと尋ねた。クスノキの説明を受けて、自身には見えないミヤギの存在をあっさりと受け入れるなど、柔軟な考えの持ち主。

隣の部屋に住む男性 (となりのへやにすむだんせい)

クスノキと同じアパートの、となりの部屋に住む男性。目付きが悪く、目が隠れそうなショートマッシュヘアをしており、骨太で大柄な体型をしている。自身には見えないミヤギといっしょに出掛けるクスノキを、当初は気味悪そうに見ていた。のちにクスノキの行為を、ミヤギが実在していると錯覚させるパフォーマンスと受け取り、自分に対してはそこそこ成功していると、好意を見せるようになる。 実際はミヤギの存在を感じ取っており、自分以外にも同様な者がいるだろう事を予見する。

駄菓子屋のおばさん (だがしやのおばさん)

クスノキの故郷で、駄菓子屋を営んでいた女性。クスノキが8歳位の頃、母親と喧嘩して家を飛び出し、駄菓子屋に駆け込んだ際に、訳を聞いてお菓子を出してあげた。さらに、クスノキの母親からの電話を受けた時には気を利かせ、あと1時間はクスノキが帰らなくて済むように伝えた。この事が、クスノキが心(しん)から他人に対してなにかを期待できるようになるきっかけとなった。 クスノキと再会した際、なぜ彼が故郷に来たかという話を聞かされたが、現在は年老いてボケており、その内容を理解していたかどうかは不明。だが別れ際には、「さようなら」とクスノキに声を掛けた。

代理監視員 (だいりのかんしいん)

「寿命を買い取ってくれる店」の監視員を務める男性。醜く太った薄毛の中年で、ミヤギの休みの日に代理として2日間、クスノキの監視を務めた。ミヤギの寿命を買い取る担当を務めた縁で、彼女の境遇を知っており、本当に可哀想な子だと同情している。クスノキに、自分の寿命が30万円だと疑いもせず信じたのかという言葉を投げかけ、クスノキが自分の寿命の実際の価値を知るきっかけを作った。 のちに、クスノキが絵を描いた事で価値が大幅に上昇した残りの寿命を、ミヤギの借金を返すために売り払った際にはミヤギに連絡を入れるなど、親切な一面もある。

同じ学部の大学生 (おなじがくぶのだいがくせい)

クスノキと同じ学部の大学生。ショートのマッシュヘアでクールな雰囲気を漂わせている。クスノキとは挨拶を交わす程度の仲で、大学に来ていないクスノキと偶然出会い、近況を尋ねた。自分には姿の見えないミヤギと遊び回っていたと言うクスノキを、頭がおかしいと思い、冷たい態度を取る。

ミヤギの幼なじみ (みやぎのおさななじみ)

ミヤギの幼なじみの男の子。現在は毛先を遊ばせたショートマッシュヘアのかわいい顔立ちの男性に成長している。世界のあり方に馴染めない者同士、ミヤギとは共依存的な二人の世界で生きて来た。だが、ミヤギが監視員になって初めての休日に様子を見に行くと、あっさりとミヤギのいない世界に順応していた。のちに、ミヤギがクスノキと様子をうかがいに行った際には、恋人と待ち合わせをしているところだった。

頭のいい道化 (あたまのいいどうけ)

クスノキの小学生の時のクラスメイトの男子。担任の先生が、寿命を売ってくれという誰かはあなたにいくら払ってくれると思いますかという問いに、白々しく自虐的に笑いを取っていた人物。頭がいいのを隠して周りから好かれようとしているように思え、当時のクスノキは彼の事が気に入らなかった。だが、ミヤギと恋人になった事で、クスノキは周囲と仲がいい頭のいい道化が羨ましくて仕方なかった事を悟る事となった。

受付の女性 (うけつけのじょせい)

「寿命を買い取ってくれる店」で、クスノキが2度目に寿命を売りに来た際に査定をした女性。左眼の下にホクロがあり、短い髪を後ろで結んでいる。余命1か月間、クスノキが絵を描き続ければ、遠い将来美術の教科書の隅に載ると断言し、クスノキが寿命を売るのを止めようとする。

場所

寿命を買い取る店 (じゅみょうをかいとるみせ)

クスノキが住む町にある、寿命を買い取ってくれる店。寿命のほか、時間と健康の買い取りもしており、それぞれ査定に3時間ほどかかる。古いビルの4階にある、一見小奇麗な店舗だが、棚には何も置いていない。クスノキの査定を担当したミヤギによると、詳しい査定は別の諮問機関が行っており、幸福度、実現度、貢献度などの要素をどれだけ満たしているかで、査定額は大きく変わるという。 監視員の大半は時間を売った人間であり、結果的に安全や交友関係も失った形となっている。ミヤギはミヤギの母の借金のせいで、30年ほどの時間を売っている。ちなみに、ミヤギの母親は時間を売って寿命を買っていたが、監視対象者に殺害されており、寿命を延ばしても、外傷や病気で死ぬ場合には効果はない。

その他キーワード

監視員制度 (かんしいんせいど)

「寿命を買い取る店」で寿命を売った人間が、余命1年を切った頃から自暴自棄になり問題行動を起こすという、多発する事態を防ぐために作られたシステム。寿命を売った監視対象者には、「時間」を売った監視員がつき、監視対象者が問題行動を起こした場合には、監視員が本部に連絡し、対象者の寿命を尽きさせるというシステムになっている。 なお、監視対象者が最期を迎える3日間だけは、監視が外れる。

タイムカプセル

小学生時代のクスノキ達が、担任の先生の指示のもと、未来の自分に向けての手紙を入れて埋めたカプセル。手紙には、10年後の自分に向けて「夢は叶いましたか」などと問いかけ、最後には自分が一番の友達だと思っている人の名前が書かれている。寿命を売ったクスノキが、タイムカプセル荒らしを行い、結果、自分が孤立していた現実を突き付けられる事となった。 ちなみにこの時、ヒメノの手紙は見つからず、のちに追い詰められた17歳のヒメノが、クスノキより先にタイムカプセルを掘り起こしていた事実が判明する。

クレジット

原作

三秋 縋

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