あらすじ
第1巻
「ニケの冒険譚」の物語にあこがれて魔女になった少女のイレイナは、魔法使いの国を訪れた。この国は、魔法を使える人間以外の入国を拒むという独特のしきたりを持つ、魔法使いだけしか存在しない国だった。入国したイレイナが、屋根に看板のある独特な風景に心打たれていたところ、箒の操縦を誤った未熟な魔導師のサヤに激突されてしまう。気を取り直して観光を再開したイレイナだったが、魔法使いとしては最高位の魔女であるはずなのに、不思議と周囲から小娘として侮られた扱いを受けてしまう。釈然としない思いを抱えながら宿屋を訪れたイレイナは、そこで先ほど激突したサヤと再会。宿の受付として働く彼女との会話で、イレイナは自分が魔女としての身分を証明するブローチをなくしていることに気づく。慌てて街に戻ってブローチを捜すイレイナだったが、すでに暗くなり始めていた街中では満足に捜すことすらできなかった。すっかり意気消沈して宿屋へと戻ったイレイナが一息ついた頃、サヤが部屋へと訪ねてくる。そしてサヤはイレイナの前で土下座すると、試験の極意を教えてほしいと頼み込むのだった。(第一章「魔法使いの国」。ほか、3エピソード収録)
メディア化情報
テレビアニメ
2020年10月2日より AT-X ほか
CAST 本渡楓、花澤香菜、黒沢ともよ、日笠陽子
WEBラジオ
「魔女のラジ々〜配信するのは、そう、私イレイナです!〜」
2020年10月1日より音泉にて配信
小説
白石定規(著) SBクリエイティブ GAノベル
2016年4月15日 第1巻発売
既刊13巻
登場人物・キャラクター
イレイナ
平和国ロベッタ出身の魔女の少女。灰色の長い髪に由来する「灰の魔女」という魔女名を持つ。幼い頃に読んだ「ニケの冒険譚」という物語にあこがれて魔女を目指した。周囲が遠ざかるほどの才能を世に示した天才で、14歳の頃には史上最年少で試験を突破し、魔女見習いになった。その高い才能ゆえに、魔女になるための師匠を探すことに苦労していたが、平和国ロベッタの郊外に住んでいた魔女のフランと出会い、彼女の薫陶を受けて立派な魔女へと成長した。魔女となってからは幼い頃に読んだ「ニケの冒険譚」の主人公であるニケのように、世界各地を巡る旅を続けている。どことなく自分の才能を鼻に掛ける偉ぶった態度で、毒舌家。また、自分の手に負えない出来事には無関心というドライなところがある。一方で、自分にできそうであれば困っている人を助けることをためらわない、優しさも持ち合わせている。
サヤ
東国出身の魔導師の少女。魔法使いの国を訪れたイレイナと衝突したことをきっかけに知り合った。一人称は「ぼく」。同じく魔導師だった妹と共に魔女見習いになるため、この国を訪れていたが、妹の方が先に試験に合格して故郷へと帰ってしまい、現在は一人で暮らしている。元来、何かと妹に甘えるさみしがり屋な性格のため、故郷を遠く離れた異国の地で孤独に過ごす現状に、神経をすり減らされている。イレイナと衝突した際、彼女が落とした魔女の身分証明であるブローチを偶然拾ったのをきっかけに、ブローチを捜しに来た彼女に偶然を装って近づくと、試験の極意を教えてほしいとイレイナに取り入った。イレイナを国から出られなくして、自分の寂しさをまぎらわせようと画策したが、真実に気がついたイレイナに叱られたことで改心。その後はイレイナのような魔女になるため、修行に励むようになる。
ソロル
イレイナが花の国で出会った衛兵の青年。アルテミシアという美人の妹がいる。元は観光客で、花の国に伝わる恋結びの花を求めて兄妹で訪ねてきたが、この土地を気に入って定住した。妹のアルテミシアを溺愛しているが、美人の花売りとしてその存在が近隣諸国にまで知れ渡った結果、アルテミシア目当ての観光客が殺到したことを快く思わず、彼女を自宅に軟禁した。だが、それが裏目に出て、今度は近親愛にふける兄妹という噂が流れてしまい、衆目を集めた結果、アルテミシアは自宅を脱走して行方知れずとなってしまった。そのため、彼女の行方を心配して落ち着かない日々を送っている。国を訪れたイレイナに対して高圧的に接したため、彼女からの心象は非常に悪く、結果として最悪の結末を招くこととなった。
アルテミシア
花の国で花売りとして細々と生活する少女。ソロルという兄と共にこの国に定住した元観光客で、恋結びの花を求めてこの地を訪れたという過去がある。花が大好きで、花の国に伝わるロマンチックな言い伝えを素朴に信じる、純粋な心根の持ち主。美人の花売りとして周辺諸国に知れ渡るほどの人気を集めたが、それを快く思わなかった兄によって自宅に軟禁されることとなった。結果、それが裏目に出て近親愛にふける兄妹という噂が流れてしまった。のちに自宅を脱走して行方知れずになるが、その際、花の国を訪れたイレイナと郊外の花畑で出会う。
国王 (こくおう)
イレイナが訪れた王国をおさめている若き王。国の経済を発展させるために硬貨の流通量を増やしたが、結果として物価の高騰を招いてしまい、国の行く末に不安を抱いている。街で評判の占い師としてイレイナを呼び出し、この国の未来について占わせようとした。自分に仕えてくれる優秀な側近たちを信じており、世襲制でなければ彼らに王位を継がせるべきだったと考えている。
フラン
平和国ロベッタの郊外に住んでいた魔女の女性。魔女名は「星屑の魔女」で、非常に優れた能力の持ち主。才能があるがゆえに周囲から嫌厭されていた、魔女見習い時代のイレイナの師匠を務めた。怠惰でマイペースな性格をしており、弟子となったイレイナを都合よく使い倒していた。師匠として、魔女としての知識をほとんど教えずにいたため、邪険に扱われているというイレイナのカンちがいを助長し、心を追い詰める結果となった。当初は才能が高いあまりに挫折を知らずにいた、イレイナの心を折るための企みだった。のちに、イレイナの素養の高さから方針を見直し、限界が来ても我慢してしまうイレイナに、我慢しなくてもいいと教えるようになった。出会ってばかりの頃は距離感のある関係だったが、一連の出来事を経てからは、イレイナが魔女として一人立ちするまで良好な師弟関係を築いた。実は平和国ロベッタとは別の国で働く偉い魔女で、どうしても会いたい人のために、1年間も国を空けていた。
場所
魔法使いの国 (まほうつかいのくに)
魔導師、魔女見習い、魔女といった魔法使い以外の人間の入国を断っている、奇妙なしきたりのある国。最低でも箒に乗って満足に飛行できることが入国の条件となっている。「空を飛ぶことを推奨する」という標識があったり、看板が家の屋根に設置してあったりと、箒に乗って空を移動する魔法使いたちの生活を前提とした、独特の街並みが広がる。また、宿屋などでは「魔法使い」としての階級に応じた割引制度が存在している。
花の国 (はなのくに)
恋結びの花の伝承で有名な観光地。現在は花畑の花に毒が見つかってしまい、廃れている。もともとは辺境に位置する国ということもあって貧困にあえいでいたが、哀れに思った魔法使いが周辺の花を増殖し、言い伝えをでっち上げたという過去がある。近年、この地に定住した美人な花売りが話題になり、観光客が多く訪れていたが、花売りが姿を消してからは客足もぱったりと途絶えてしまっている。花の国では毒を持った花が持ち込まれないよう、門では物々しい検疫が行われている。
平和国ロベッタ (へいわこくろべった)
イレイナの故郷。魔女たちの実力の低い国で、若くして才能にあふれるイレイナを教え導くことのできる魔女が存在しなかった。それどころかイレイナの才能をすっかり恐れてしまい、嫌厭(けんえん)して遠ざけたという過去がある。
その他キーワード
ニケの冒険譚 (にけのぼうけんたん)
幼い頃にイレイナが読んで、魔女を目指すきっかけとなった物語。「ニケの冒険譚」の主人公であるニケが世界各地を旅して、さまざまなものに出会う冒険が短編集の形で記されており、シリーズ作品となっている。中には、突然変異の植物が自我を持って暴れ回る物語など、イレイナ自身の旅の参考となったエピソードもある。
魔導師 (まどうし)
魔法使いの階級。最も低い階級で、女性ならばこのうえに魔女見習いと魔女という階級が存在する。魔法の才能は基本的に遺伝で継承される因子に左右される。
魔女見習い (まじょみならい)
魔法使いの階級で、女性のみに用意されている。魔導師が階級試験に合格することで、この階級を得ることができる。魔女見習いになると、その身分を証明するものとしてコサージュを与えられる。
魔女 (まじょ)
魔法使いの階級の中でも最高位のもので、女性のみに用意されている。魔女見習いが魔女に弟子入りし、一人前と認められた場合、この階級を得ることができる。魔女になると、その身分を証明するものとして師匠からブローチを与えられる。魔女となった女性は本名とは別に「魔女名」を師匠から与えられ、たとえばイレイナであれば「灰の魔女」というように、魔女固有の名前として認識される。魔女は国によっては敬意をもって迎えられ、特別な割引制度が存在することもある。
クレジット
- 原作
-
白石 定規
- キャラクター原案
-
あずーる
書誌情報
魔女の旅々 6巻 スクウェア・エニックス〈ガンガンコミックスUP!〉
第5巻
(2023-03-07発行、 978-4757584525)
第6巻
(2024-07-05発行、 978-4757592919)