岡崎に捧ぐ

岡崎に捧ぐ

作者の山本さほとその親友の岡崎さんとの友情を描く自伝マンガ。1990年代のゲームやマンガ、たまっごちやこっくりさんなどの流行りものが多数登場する。「ビッグコミックスペリオール」2015年第3号から2018年第18号にかけて不定期で掲載された。

正式名称
岡崎に捧ぐ
ふりがな
おかざきにささぐ
作者
ジャンル
教育・学習
 
趣味・ホビー
 
自伝・伝記
 
友情
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あらすじ

第1巻

1990年代、小学4年生の女の子の山本さんは、岩手から横浜へと引っ越して来る。新しい小学校になじめるか心配だった山本さんだったが、すぐに友達ができて新しい生活が始まる。同じクラスには、岡崎さんという、ちょっと変わった女の子がいて、無口で何を考えているのかわからない事から、クラスメイトから敬遠されていた。そんなある日、ふとした事から山本さんは、岡崎さんの家へ誘われる。まるでお化け屋敷のような岡崎さんの家は、物が散乱しており、岡崎父はパンツ一丁でうろうろし、岡崎母はつねにワイン片手でハイテンション、岡崎妹はやたらに怒りっぽくて凶暴だった。しかし、岡崎さんの家にはスーパーファミコンがあり、山本さんは好きなだけゲームで遊ぶ事ができた。ちょっと変わった岡崎家だったが、山本さんはすっかり居心地がよくなり、岡崎さんともなかよくなっていくのだった。

岡崎さんと岡崎妹は両親から育児放棄されていたようだが、当時の山本さんに詳しい事はわからず、毎日岡崎家へ入り浸ってはゲーム三昧の日々を過ごしていた。岡崎さんもよく笑うようになり、山本さんにべったり。面と向かって山本さんの事が大好きだと言ったり、自分は山本さんの人生の脇役として生まれてきたのだと思う、とまで発言するほどだった。面白くてクラスの人気者な男子の杉ちゃんともなかよくなり、三人で遊ぶ事もある。当時大ブームになったたまごっちを探して奔走したり、杉ちゃんにいたずらして遊んだり、山本さんと岡崎さんは楽しい毎日を過ごしていく。

第2巻

4月を迎え、山本さん岡崎さんは中学生になった。岡崎さんは校則に従って長い髪をバッサリと切り、ついでにビン底のような眼鏡も外すのだった。クラスは別になってしまったものの、あいかわらず毎日なかよくつるむ二人。2年生への進級も迫ってきたある日、岡崎さんが意を決して、新しくできる剣道部に、いっしょに入部しないかと山本さんを誘う。いつも山本さんまかせの岡崎さんが、自分から何かをしたいと言うのは初めての事だった。二人は剣道部に入部したものの、ほかの部員は部長の男子一人だけ。それでもすぐに新1年生が入部して、後輩から先輩としてちやほやされた二人は、ふざけてばかりで試合の結果はさっぱりだったが、剣道部での日々を満喫するのだった。山本さんが同じクラスの男子の小田原くんに初恋してすぐにふられたり、山本さんが学校でイラストやマンガを描いて人気者になったりと、楽しい日々はあっという間に過ぎ、高校受験のシーズンを迎える。岡崎さんは山本さんと同じ高校を受験するものの、山本さんだけが落ちてしまうのだった。

第3巻

女子高校生になった山本さん岡崎さん。別々の高校になってしまったものの、放課後はあいかわらず岡崎さんの家でゲームを楽しんでいた。山本さんの高校でのクラスメイトはオシャレや恋愛の話ばかりで、山本さんは居心地の悪さを日々募らせていく。一方、岡崎さんは道場の先輩に告白されて交際を始めるものの、山本さんといっしょにいるほうが楽しいと、たった1か月で別れてしまうのだった。そして杉ちゃんも加えた三人で旅行へ行ったりと楽しい日々を過ごす。そんなある日、山本さんは中学時代の初恋相手である小田原くんと再会し、メールでのやりとりを始める。浮かれる山本さんだったが、小田原くんから届くメールは「おっぱいもみたい」だの「パンツちょうだい」だのであり、あっさりと破局を迎えるのだった。

岡崎さんは高校でも剣道部に所属し、部活で帰りが遅くなっても、山本さんは岡崎さんのいない岡崎家で、まるで自分の家のようにくつろいでゲームを楽しんでいた。そんな山本さんはふとした事からバイクの免許を取る事を決意。ラーメン屋で半年アルバイトをしてお金を貯め、念願の免許とバイクを手に入れるのだった。

高校での成績がいい山本さんだったが、まったく勉強をせずに、授業中も居眠りを繰り返すうちに成績がどんどん下がっていく。学校へも行かないようになってしまい、自分の存在意義を見失うが、ふとした事から子供の頃に描いていたマンガを再び描き始め、自分のホームページにアップしていく。迷っていた進路も美大への進学を決め、美大予備校に通い始めるのだった。そこでは高校と違って趣味の合う友人もできて、楽しい日々を取りもどす山本さん。美大予備校で自意識をこじらせ、現代アーティスト気取りの痛い行動を取るようになってしまうものの、そんな山本さんを、岡崎さんはいつものように全面的に受け入れる。しかし、山本さんは美大受験に失敗して浪人確定、高校を卒業した岡崎さんはフリーターとして生活費を稼ぎ、杉ちゃんは大学へと、みんなそれぞれで大人への道を歩んでいくのだった。

第4巻

18歳になった山本さんは、美大受験の浪人生として、美大予備校に通っていた。予備校では毎日6時間デッサンを描かれるがなかなか上達せず、スパルタ方式で毎日校長や講師から罵倒される日々を送っていた。一方、岡崎さんはアルバイトを増やし、三軒の中華料理屋を掛け持ちしていた。山本さんは、あいかわらず岡崎家へ勝手に上がり込んではゲームで遊んでいた。そんな山本さんだったが、美大予備校に気になる男の子がいた。彼の名は佐々木くん。友達がいない一匹狼の変わり者で、話した事もなかったが、山本さんは佐々木くんに恋するのだった。そんな中、岡崎さんが自動車免許を取得し、山本さんのお父さんの車を借りて、二人で静岡にドライブ旅行へ向かう。変わらず仲のいい二人だったが、山本さんは佐々木くんにあっさりふられ、美大受験にまたしても失敗。ショックを受けた山本さんはネトゲ廃人になってしまう。傷心旅行として岡崎さんを連れて大阪へ旅行に行った山本さんは、旅行中に出会った大阪の人々の温かさに感動し、関西で独り暮らしをして人生を一からやり直すと宣言するのだった。

神戸市灘区に引っ越しした山本さんは新しい街の暮らしを満喫し、近所の家電量販店にあるゲームコーナーでアルバイトを始める。しかし、その職場は上司も同僚も客までも嫌なやつばかりで、山本さんはますますネトゲへとのめり込んでいく。ついに家族会議が開かれ、山本さんは都内にあるグラフィック関係の専門学校へと入るのだった。CGの制作に楽しさを見出した山本さんだったが、二度の美大受験失敗から美大コンプレックスに苦しむ事になり、ついに絵を描く事をやめてしまう。

専門学校も辞めてしまった山本さんは、日雇いのアルバイトを繰り返してはネトゲに没頭するという日々を過ごしていた。そんな中、小学校からの幼なじみである杉ちゃんが、夢を叶えてお笑い芸人としての一歩を踏み出す。杉ちゃんの出演するお笑いライブへ行った山本さんと岡崎さんだったが、会場に観客はまばら。さらに、舞台上に出てきた「しげる」と名乗る杉ちゃんの相棒はアニメの女の子の抱き枕だった。

21歳になった山本さんは、兄との喧嘩がきっかけで家を出て、江ノ島線沿いの安アパートで独り暮らしを始める。何度もアルバイトの面接で落とされ、ようやくリサイクルショップに採用されたが、上司は山本さんにセクハラを繰り返すうえ、店は経営に行き詰まり、給料さえ払われない。無職になってしまった山本さんは自分がくずに思えて、自分の事が嫌いでしかなかった。思い返すのは小学生の頃の楽しかった日々。それでも岡崎さんは山本さんにべったりで、いつものように山本さんを絶賛する。岡崎さんの中では、今でも山本さんが昔のままの明るくて面白いヒーローのままなのだった。そのギャップに苦しむ山本さんは、ささいな口論をきっかけに岡崎さんとついに絶交してしまう。

第5巻

山本さんは大手百貨店に正社員として就職し、婦人服売り場の販売員として忙しい毎日を送っていた。そんなある日、絶交状態だったかつての親友・岡崎さんから4年ぶりに連絡が来る。それは山本さんもよく知っている岡崎父が亡くなったという報せだった。葬儀場で再会した二人は、あっという間に仲直りし、夜が明けるまで語り合うのだった。さらに岡崎さんは勤めていた広告代理店を辞めて、山本さんと同じ会社へ転職する事になり、昔のように毎日顔を合わせる関係となる。ある日、山本さんは岡崎さんが結婚する事を告げられる。山本さんは嬉しくありつつも、なんともいえない寂しさを感じるのだった。後日、親友の杉ちゃんと飲んでいた山本さんは、杉ちゃんから漫画を描く事を勧められる。一度は無理だと言った山本さんだったが、岡崎さんとの事だったら描けると思い立つのだった。

登場人物・キャラクター

山本さん (やまもとさん)

女性漫画家。小学4年生の時に岩手から横浜に引っ越して来て、同じクラスにいた岡崎さんと知り合い、その後親友となる。両親と兄の家族四人で暮らしている。小学生の頃からマンガやTVゲームが大好きで、マンガやイラストを描くのが得意。明るくてクラスの人気者。中学校では岡崎さんといっしょに剣道部で楽しく過ごす。高校受験に失敗して岡崎さんとは別の高校になってしまい、高校になじめず一時期は不登校になる。高校卒業後は美大受験に落ちて浪人生となり、翌年の受験にも失敗してフリーターやネトゲ廃人になる。そのあいだも岡崎さんとは親友であり続け、いっしょに馬鹿な事をしたり、旅行をしたり楽しんでいる。岡崎さんからは今でも「山本さん」と呼ばれ、父親や一部の友人からは「サホ」と呼ばれる。作者である山本さほ本人がモデル。

岡崎さん (おかざきさん)

山本さんとの小学校以来の親友の女性。山本さんの事が大好き。両親と妹の四人で暮らしているが、両親は悪い人ではないのだが、ちょっと変わっており、育児放棄状態にあった。小学校時代は何を考えているのかわからないところがあり、クラスメイトからは敬遠されがちだった。山本さんとなかよくなってからは、よく笑うようになる。思いやりのあるとても優しい性格の持ち主。ビン底のような眼鏡をかけ、真ん中分けの長髪を後ろでまとめていたが、中学入学の際、髪が肩についてはいけないという校則のためバッサリと髪を切り、眼鏡も外した。自分の意見を言う事は少なく、山本さんの言う事はなんでも聞く。しかし、中学時代には山本さんを剣道部へ誘っていっしょに入部し、高校でも剣道を続ける。高校卒業後は生活のためにアルバイトをいくつも掛け持ちしている。

杉ちゃん (すぎちゃん)

山本さんと岡崎さんと小学校からのなかよしで、お調子者の男性。悪ふざけばかりしている山本さんのツッコミ役にまわる事が多い。山本さんからはよく天然パーマをいじられている。小学生の時の将来の夢はお笑い芸人。中学卒業を間近に控えた頃、お笑いコンビを組んで日本一を目指さないかと山本さんを誘い、お笑いコンビ「甲子園の砂肝」を結成するが、集まるのがめんどくさいという理由で、1か月で解散した。高校卒業後はエスカレーター式で大学へ進学。山本さん、岡崎さんとの交流は続いており、三人で旅行へ行く事もある。その後、お笑い芸人「しげる」となり、アニメの美少女キャラクターの抱き枕を相方にする、という芸風で頑張るものの、状況は芳しくない。

山本母 (やまもとはは)

山本さんの母親。過保護で娘の世話を細かく焼いてくれるが、しつけは一般家庭並みに厳しい常識人。

岡崎母 (おかざきはは)

岡崎さんの母親。常に赤ワイン片手でご機嫌だが、自由人で育児放棄気味。山本さんの説明によると、めったに出会えないレアキャラで、岡崎家のラスボス。極度のめんどくさがりのようで、作ってくれる夕食は、茹でただけのマカロニにケチャップをかけただけのものだったり、珍しく岡崎さんに作ってくれたお弁当がごはんとプチトマトだけだったりと強烈。 フラッとどこかへ行ってしまうことが多く、突然わけのわからないぶっ飛んだセンスのお土産を持って帰ってくる。

岡崎父 (おかざきちち)

岡崎さんの父親。休職中で平日も家にいる。優しいがいつもパンツ一丁の姿で床で寝ている。最終的には山本さんにゲームで遊ぶ時の「ひじ置き」として使われても文句ひとつ言わない。

岡崎妹 (おかざきいもうと)

岡崎さんの2つ下の妹。登校拒否気味でいつも家にいる。常時ヒステリックで、いつも何かに怒っている。口が悪く、姉へ暴言を吐くほか、部屋の壁にバカ、○ね、○ろす、などの落書きも。ドアや窓などを激しく叩き、家へ遊びに来る山本さんにも出てけと叫ぶ。それでも、岡崎さんと山本さんが作った生クリームを顔を赤くしながら食べる、子供らしい面もある。

宮部さん (みやべさん)

中学で山本さんに新しくできた友達。ダンス部に所属している。シュールで面白く、いつも山本さんをお腹が痛くなるほど笑わせてくれる。おしゃれで男子によくモテる。一時期、山本さんが宮部さんと原口さんと付き合いだし、岡崎さんとつるむ機会が減ったため、2人の友情が崩壊しかけた。

原口さん (はらぐちさん)

宮部さんと同じく、中学で山本さんに新しくできた友達。陸上部に所属している。明るい人気者で、いつも元気なムードメーカー。男子に自然にボディタッチができ、よくモテる。

小田原くん (おだわらくん)

山本さんが中学1年生の時に恋した男の子。ほかの女子からは「何考えてるかわかんない変なヤツでメガネのチビ」という評価だったが、林間学校で同じグループになったことをきっかけに山本さんの心を射止める。そのことにまったく気づかなかったが、中学卒業を間近に控えた頃、電話で山本さんから告白される。

ムラタク

山本さんの高校時代の同級生の男子。当時は眼鏡をかけた地味な容姿で、近寄りがたい変わり者だった。バイクをきっかけに山本さんと話をするようになり、不登校気味だった山本さんを気にかけていた。社会人になってからは、山本さん達がバーベキューに行く際に車を出して参加し、そこで出会った原口さんに一目惚れして告白する。

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