皇太子に溺愛されながらも離婚を目指す悪役妃
本作の舞台は、主人公のリリエルが前世で大ファンだったネット小説『フィヴルム帝国物語』の世界。小説の内容は、異世界から転生した「運命の乙女」が皇太子ルディウスと出会い、ともに困難を乗り越え世界を救うというものである。リリエルは運命の乙女を妬み、彼女を陥れようとする悪役妃で、最終的に断罪されて死ぬ運命にある。自分が生き残るには、ルディウスと円満離婚するしかない。もともと二人の結婚はライヒア王国とフィヴルム帝国の同盟のためで、原作では仮面夫婦だったはず。清く正しい皇太子妃として過ごし、運命の乙女が現れたら二人を祝福してフェードアウトすればよい。しかし、なぜかルディウスはリリエルをいたくお気に入りで、毎日甘い言葉で迫ってくる。本作は、完璧な容姿と口説き文句で迫ってくるルディウスにトキメキながらも、なんとか彼と離婚し、生存ルートを探ろうとするリリエルの奮闘物語である。
処刑を避けたい転生花嫁×運命に抗おうとする甘々ヒーロー
リリエルは、前世で『フィヴルム帝国物語』を何度も繰り返し読んでいる大の原作ファン。当然、皇太子ルディウスのことが大好きだが、処刑というバッドエンドを避けるため、何とかルディウスを遠ざけようとする。しかし、ルディウスを目の前にすると、ドキドキで顔が真赤になり、おかしな行動をしてしまう天然な一面を見せる。一方のルディウスは、容姿性格共に素敵で、完璧な皇子様。毎日のようにリリエルにキスしようとし、求婚する甘々なヒーローである。また、リリエルの前世の話をバカにせず優しく受け止めており「二人で運命に抗(あらが)ってみませんか」と優しくも力強い言葉をかける。
物語の登場人物から生身の人間へ
ルディウスには、原作小説には登場しない、美しい未亡人の女友達、ローエン伯爵夫人がいるという。それを聞いたリリエルは、じつはルディウスのことを何もわかっていないと感じてしまう。原作小説を読み込んでいるが、主人公である乙女が関わっていないことや、原作以前のことはわからないのだ。そんなある日、ルディウスから「物語の登場人物ではなく、生身の一人の人間として貴女の心に居場所を貰えないか」と言われたリリエルは動揺する。そして、二人の兄が次々と亡くなったため、幼いルディウスが厳しい皇太子教育を受けたこと、その様子を見かねたローエン伯爵が、自分の屋敷を隠れ家のように使わせたことをローエン夫人から聞く。ルディウスの少年時代の苦しみ、周囲の人々の優しさを知ったリリエルは、初めて彼を生身の人間として抱きしめたいと思った。
登場人物・キャラクター
リリエル
ライヒア王国の王女。金髪のロングヘアーと青い瞳が特徴。フルネームはリリエル・クローディン・ライヒア。フィヴルム帝国の皇太子ルディウスとの結婚が決まった際、前世の記憶を取り戻し、愛読していたネット小説の悪役妃に転生していることに気がつく。小説では、主人公「運命の乙女」とルディウスの仲を裂くために悪行の限りを尽くし、最後には処刑台に送られる運命にあった。そのため、処刑台を回避すべくルディウスとの円満離婚を目指す。
ルディウス
フィヴルム帝国の皇太子。黒髪と金色の瞳が特徴の美男子。若くして皇帝の補佐として働き、内政・外交・軍事のあらゆる面で才能を発揮する、帝国の誇り。ライヒア王国との同盟を強固にするため、王女リリエルと結婚する。リリエルが前世で読んでいた小説では、異世界からの「運命の乙女」と結ばれるはずだが、なぜかリリエルに好意を抱く。
書誌情報
帝国の恋嫁 6巻 白泉社〈花とゆめコミックス〉
第1巻
(2022-07-05発行、 978-4592221319)
第2巻
(2022-12-05発行、 978-4592221326)
第3巻
(2023-06-05発行、 978-4592221333)
第4巻
(2023-12-05発行、 978-4592221340)
第5巻
(2024-06-05発行、 978-4592221357)
第6巻
(2024-11-05発行、 978-4592222064)