あらすじ
仁科ミュージックスクールに通う天音律は、全日本バイオリンジュニアコンクールの地区予選の練習に励んでいた。周囲から見れば自信に満ちあふれ、聴く者を魅了する天音だったが、天音は自らの音色が見い出せずに悩み続けていた。そんな中、天音は同じスクールに通う牧野小絃と友達となり、コンクールで弾く曲で悩んでいた牧野にさまざまなアドバイスを送る。これをきっかけにバイオリンを始めた頃の気持ちを思い出した天音は、地区予選では母親が決めた曲ではなく、自分の思い出の詰まった曲を弾きたいと直訴する。優勝しなければバイオリンを辞めることを条件に母親から承諾を得た天音は、練習を重ねて地区予選では自分の気持ちを素直に表現した音を奏でるのだった。
登場人物・キャラクター
天音 律 (あまね りつ)
小学6年生の少女。仁科ミュージックスクールのバイオリン教室に通っている。気品とあふれる自信をまとっており、才能と圧倒的な練習量に裏打ちされた演奏で聴く者を魅了し、バイオリンを弾く同年代なら知らない者はいない。周囲の人たちに対しては顔ではなく、声や奏でる音で記憶することが多い。2歳でバイオリンを始めてずっと楽しく弾いていたが、2年前に両親が離婚してからは母親と暮らすようになり、母親の言うがままに弾くだけになってしまう。今の自分は母親の指示に従って、楽譜どおりに音を出す機械だと思っており、自分ならではの音色を見い出せずに苦悩している。同じバイオリン教室の牧野小絃となかよくなり、かつて同じコンクールに出場したこともある神条アルマと再会したことで、バイオリンを始めた時の気持ちや情熱を思い出す。
牧野 小絃 (まきの こいと)
小学6年生の少女。仁科ミュージックスクールのバイオリン教室に通っている。明るく前向きな性格で、少々飽きっぽいところがあるが、テレビで見た演奏に感動して始めたバイオリンはずっと続けている。技術的にはまだまだ未熟ながら、自分の気持ちをそのまま表現したような音を奏でる。悩みを相談し合う中で天音律となかよくなり、天音が昔の情熱を思い出す手助けをした。
神条 アルマ (しんじょう あるま)
小学6年生の少女。天音律をライバル視している。情熱的だが勝ち気で短気な性格をしている。母親は有名な外国人バイオリニストで、神条アルマ自身も、海外のコンクールで数々の優秀な成績を残しているジュニアのホープ。破天荒な演奏スタイルで聴衆を魅了することから「ジュニア界の王者」とも呼ばれている。4年前の地区予選コンクールで天音に親切にしてもらい、全国大会でお互いの健闘を誓い合ったにもかかわらず、天音がそのことをすっかり忘れていたことに激怒。その後、スペインに引っ越して打倒天音を誓って猛特訓を重ねており、今年の全日本バイオリンジュニアコンクールの地区予選に参加するために日本に帰国。気高くて迫力はあるものの、攻撃的で恐怖を感じさせる音を奏でる。