概要・あらすじ
享和2(1802)年の江戸。浮世絵師の鈴呂は、陰間茶屋で働く男娼・初音をモデルに絵を描く日々を送っていた。ある日鈴呂は、初音の初恋相手の特徴と一致する男性を街で偶然発見する。しかし彼は、初音が語っていた話とはまるで違う苦しい生活をしていた。(エピソード「彼岸過迄」)
登場人物・キャラクター
鈴呂 (すずろ)
エピソード「彼岸過迄」に登場する。画家。男娼街にはそぐわない清潔な雰囲気の男性。主に浮世絵を描いて生活しており、特に初音をモデルにした絵は評判が高い。頻繁に陰間茶屋に通いながらも初音とは関係を持たず、友人のような、兄のような存在として接している。初音の美しさの所以は、どんな境遇にあっても変わらず兄を想い続けていることにあると考えており、2人の再会を願っている。
守谷 (もりや)
エピソード「ブレックファスト」に登場する。「人喰い症候群」が発症した男子高校生。古代の人喰い人種の遺伝子を受け継ぐ存在であったため背中に赤い斑点が発生し、「人を食べたい」という思いのあまり普通の食事ができない状態にある。発症後約5日間人肉を口にしなければ餓死できるという事実を知り、家にこもり死を待とうとする。
先生 (せんせい)
エピソード「指輪物語」に登場する。高校で英語教師を務める男性。以前交際していた教え子の望月朔也を今も想いながら、別の男子生徒都倉とも関係を持っている。自分の部屋で朔也と都倉、どちらが落としたかわからない指輪を発見し、どう伝えてもこれまで通りの関係ではいられないことを悟る。その上で、自分はどちらがより大切か考えることになる。
ヨシノ
エピソード「Honey β」に登場する。突如記憶喪失になった青年。身体の感覚に任せて登校し、ソメイのことを自分の恋人であると認識するが、ソメイには肯定とも否定ともつかない態度をとられてしまう。ソメイに自分との関係を思い出すように強く言われるが、感覚的に思い出せるのは「雨の日に家へやってくる客として一番似合うのはソメイ」という漠然としたものだった。
初音 (はつね)
エピソード「彼岸過迄」に登場する。陰間茶屋で男娼として働く少年。長い髪を1つに結い、かんざしを挿した中性的な雰囲気の人物。陰間茶屋にはもう5年ほど勤めている。元は武家の出だったが、父親が亡くなり家が没落した際に売られ現在に至る。その時に離ればなれになった腹違いの兄のことを現在も想っており、鈴呂に兄と似た雰囲気を感じ心を許している。
初音の兄 (はつねのあに)
エピソード「彼岸過迄」に登場する。初音の兄で、現在は街の用心棒をしている男性。一家が没落し初音と生き別れてからは、武家の面目も捨て職を転々としながら初音の行方を探していた。現在の自分は初音に合わせる顔がないと考えており、再会を勧める鈴呂の意見をかたくなに拒む。
麟平 (りんぺい)
エピソード「ブレックファスト」に登場する。守谷と同じ高校のバスケットボール部に所属する、後輩の男子生徒。守谷が「人喰い症候群」に発症したことを知らず家に泊まりにいきたいとねだるが、断られてなお守谷を心配し家にやってくる。守谷のそばを離れないという強い意志を見せており、何かを悟っているようにも思える。
望月 朔也 (もちづき さくや)
エピソード「指輪物語」に登場する。先生の教え子の男子生徒。以前先生と交際していたが、自分から振る形で別れた。現在は都倉と交際しており、彼を熱心に愛しているが、都倉の不義には感づき始めている。先生と過去に交際していたことは、都倉には秘密にしている。
都倉 (とくら)
エピソード「指輪物語」に登場する。先生の教え子の男子生徒。望月朔也と交際しながら先生とも関係を持っており、先生の自宅から朔也に電話をかけるほどの図太い神経を持った人物。朔也とお揃いの王冠の指輪をしており、アイルランドの慣習にちなみ指輪を逆さにはめている。
ソメイ
エピソード「Honey β」に登場する。ヨシノの友人とも恋人ともつかない青年。口元にほくろがあるのが特徴。記憶喪失になったヨシノに「頭では忘れていても、体が憶えているはず」と語りかけ「自分たちは恋人でないのではなく、恋人になれなかった関係」「自分たちは会うたびひと目で恋に落ちた」と、不可解な発言をくり返している。