概要・あらすじ
現代日本にひそかに残る忍びの隠れ里、甲賀飛田の里では、多くの少年少女達が忍びになるべく修行を積んで暮らしていた。年少組の少女の杏子は、優秀な成績で周囲に期待されて育っていたが、次第に男子達に差をつけられるようになっていた。立派な忍びになるため、これ以上女の子らしくなりたくないと杏子は悩み始めていた。そんな中、名家、華山院家の次期当主の華山院楓が里を訪れる。
楓は、杏子達若い忍びの中から、自分専属の側忍をスカウトすると告げる。憧れの側忍になるため、修行に励む杏子は、楓の小姓として一緒に里を訪れていた朝霧という少年と仲良くなる。しかし、側忍の選考試験の時間が迫る中、朝霧が発作に襲われる。自分を置いて試験に行くようにいう朝霧の申し出を断り、朝霧を家まで送り届ける杏子。
しかし、そこで朝霧は、自身が楓であった事を明かし、杏子を側忍として迎えたいと言い出す。だが、今まで噓をつかれていた事に怒りを覚えた杏子は、その申し出を断るのだった。4年後、16歳になった杏子達は、結婚について意識し始めていた。年上の忍びから告白され、杏子は自分が今だに朝霧に対して想いを寄せている事に気づき始める。
登場人物・キャラクター
杏子 (あんこ)
現代日本にひそかに残る忍びの隠れ里、甲賀飛田の里に暮らす少女。16歳の年長組。幼い頃から優秀な成績を修め、周囲からは期待されて育つ。12歳の年少組のころには、男子との差が出始め、当時は自分が女である事を悩んでいた。しかし、朝霧から言われたある言葉がきっかけで、自分の性別を受け入れるようになっている。その頃から朝霧に対して想いを寄せているが、一方で彼が華山院家当主として横柄に振る舞う面に反感を覚えてもいる。
鐵男 (てつお)
甲賀飛田の里に暮らす少年。長髪で目付きが鋭い。杏子とは同い年の16歳の年長組。年長組の中ではトップの成績で、将来を期待されている。同い年の杏子に対しては、見下すような態度を取ってもいるが、何かと気に掛けており、彼女が朝霧の事を引きずっているのをたしなめようとしている。周囲からはそれを杏子に対して好意を抱いているためだと指摘される事もあるが、当人はそれを否定している。
華山院 楓 (かざんいん かえで)
名家、華山院家の次期当主の少年。当主は専属の側忍を召し抱えるという華山院家の習わしから、甲賀飛田の里を訪れ、若い忍びの中からスカウトしようとしていた。その際には、当主の素性を偽り、楓の小姓朝霧を名乗っていた。まるで女性のような顔立ちをしており、初対面の杏子からは「男の子なのに男の子じゃないみたい」と思われていた。 里を訪れたときに杏子の事を気に入り、自分の側忍として迎えようとした。しかし、素性を偽っていた事や、選考試験の際に発作を装った事が杏子の反感を買い、断られてしまう。
乱蔵 (らんぞう)
華山院楓の世話係の男。大柄で、鬼のような面を被っている。華山院楓が甲賀飛田の里を訪れたときに同行しており、里の若い忍び達には自分が楓であるかのように振る舞うよう、楓から申し付けられていた。面を被っているのは、「素顔の目つきが可愛すぎる」という理由から。
紗々女 (ささめ)
甲賀飛田の里に暮らす少女。杏子とは同い年の16歳の年長組。忍びとしての成績は最下位だが、その美貌からほかの忍びからの人気は年長組でトップクラス。そのためか、プライドが高い性格の持ち主。自分の育った里の事を嫌っており、他人の事を蹴落としてでも里の外へ出て暮らしたいと願っている。