忘れられたジュリエット

忘れられたジュリエット

「伯爵カインシリーズ」の第1部。中世のヨーロッパを舞台に、伯爵であるカイン・ハーグリーヴスが殺人事件の謎を解いていくゴシックサスペンスで、1話完結形式で物語が描かれる。「別冊花とゆめ」1991年12月号と1992年4月号に掲載された作品。「忘れられたジュリエット」「烙印のビビ」「クレオ・ドレイファスの死」の3つのエピソードが収録されており、「クレオ・ドレイファスの死」はコミックス刊行にあたり描き下ろされたエピソードとなっている。

正式名称
忘れられたジュリエット
ふりがな
わすれられたじゅりえっと
作者
ジャンル
サスペンス
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概要・あらすじ

貴族の娘であるシュゼットは、プリムローズの花のブーケを手に、愛する人に「誓います」と言う日を待っている夢見る少女だった。その夢は叶わぬままシュゼットは眠るように亡くなってしまうが、シュゼットの葬儀が終わった後、死体は墓場から消えていた。花屋としてシュゼットの屋敷に出入りしていたエリアル・アシュトンは、シュゼットの死体が墓場から消えた日、墓場でシュゼットのいとこであるカイン・ハーグリーヴスを目撃する。

シュゼットが墓から消えた後、街ではシュゼットの幽霊が屋敷を目指して歩いていたという噂が流れ、ついには墓守りやシュゼットの母緑の毒によって殺害されるという事件が発生するのだった。

登場人物・キャラクター

カイン・ハーグリーヴス (かいんはーぐりーゔす)

ハーグリーヴス家の伯爵でとても大人びているが、実際はまだ17、8歳程度の少年。金色がかった緑の目をしている。毒を飲み、仮死状態となったまま埋葬されたシュゼットを救うため墓場へ向かうが、カイン・ハーグリーヴスが行った時はすでにシュゼットは自力で逃げ出した後だった。その後シュゼットを見つけ、傷ついたシュゼットを匿い献身的に看病する。 のちにシュゼットのことが好きだったと気づく。「烙印のビビ」ではおじのリーランド・ラッセルに頼まれ、6年前に死んだリーランドの娘であるマデリーン・ヴィクトリア・ラッセルについて調べていた。そんな中、リーランドのもう一人の娘であるベアトリスと出会い、マデリーンとベアトリスに関する真実に近づいていく。

リフ

カイン・ハーグリーヴスの執事。カインが夕食用の鳥を使って新しい毒の実験をした時、コレクションを実用なさっては困ると苦言を呈した。事件の調査にも従事し、ベアトリスとその母親がラッセル家から逃亡したのが火事の後であることや、マデリーン・ヴィクトリア・ラッセルの遺体の状況などの情報を得る。

シュゼット

カイン・ハーグリーヴスのいとこの少女。身分は高いが金のない男性と交際して貢いでおり、親族からは交際を反対されていた。それでもいつか彼と結婚し、プリムローズの花のブーケを手に「誓います」と言う日を待っていたが、ある日、眠るようにベッドで冷たくなっていた。実は仮死状態だったのだが、死んだと思われ埋葬されてしまう。埋葬された後、自力で墓から逃げ出した。 その後は錯乱し、恋人を探して彷徨った。

エリアル・アシュトン (えりあるあしゅとん)

両親はおらず、叔父のマイルスの花屋で働いている。シュゼットの屋敷にも出入りしており、シュゼットからプリムローズの花について聞かれ、プリムローズが入荷したら一番に持ってくることを約束した。墓場へシュゼットを助けに行ったカイン・ハーグリーヴスを目撃し、カインがシュゼットの死体を持ち去ったのではないかと疑う。

マイルス

エリアル・アシュトンの叔父で花屋の店主。金持ちの娘であるクレアモントを、有り金をつぎ込んで口説き落とした。女性を口説く時は決まって「おおスイート。君は僕の小鳥だ。その美しい羽とつぶらな瞳で僕を永遠に包んでおくれ」というキザな台詞を言っている。

クレアモント

マイルスの婚約者で金持ちの娘。エリアル・アシュトンがシュゼットの葬式に行ったと知り、3日後に結婚式を控えた自分たちにとって縁起が悪いと言って非難した。マイルスのことを愛しており、エリアルが呆れるほどラブラブ。

シュゼットの母 (しゅぜっとのはは)

後妻であり、先妻の娘であるシュゼットとは血が繋がっていない。そのため、シュゼットにつらく当たっていた。シュゼットの葬儀に間に合わなかったカイン・ハーグリーヴスを強く非難する。シュゼットの葬式の後、ベッドで緑の毒により殺害される。

ベアトリス

マデリーン・ヴィクトリア・ラッセルの母親違いの姉妹。ベアトリスという名前だが、皆からはビビという愛称で呼ばれている。6年前に死んだマデリーンのふりをして父親であるリーランド・ラッセルの前に現れた。今は母親に命じられ売春宿で働いている。手の平に火傷のような小さな丸いあざがある。子供の頃、正妻の死に乗じて妾だった母親と共にラッセル家へ住み着いたが、6年前ラッセル家に火事があった後、母親と共にラッセル家から逃げ出した。 カイン・ハーグリーヴスが出会った子供の頃のビビと現在のビビとでは印象が異なる。

マデリーン・ヴィクトリア・ラッセル (までりーんゔぃくとりあらっせる)

リーランド・ラッセルの正妻の娘。明るく優しい少女で、父親に溺愛されていた。ラッセル家で火事があった直後、野犬に襲われ死亡している。遺体の損傷は激しく、顔の判別もつかなかった。カイン・ハーグリーヴスに密かに想いを寄せていた。

リーランド・ラッセル (りーらんどらっせる)

若い頃は放蕩息子だのプレイボーイだのと騒がれていたが、6年前に最愛の娘であるマデリーン・ヴィクトリア・ラッセルを亡くしてからは、すっかり疲れ果てて世捨て人のようになっていた。死んだはずの娘から10日後に会いましょうという手紙と成長した姿の写真が届き、カイン・ハーグリーヴスに助けを求める。

ベアトリスの母 (べあとりすのはは)

リーランド・ラッセルの妾でベアトリスの母親。マデリーン・ヴィクトリア・ラッセルの死後、娘を連れてラッセル家を出た。ラッセル家を出た後から娘を見放したように冷たくなり、娘に売春をさせている。昔、催眠術や占い屋のショーやって回っていたことがあり、その時に使っていた香を今も焚いている。

クレオ・ドレイファス (くれおどれいふぁす)

カイン・ハーグリーヴスの友人。両親を亡くしており、身内は兄のオーランド・ドレイファスしかいない。両親の遺言状では、遺産は兄には渡らず、クレオ・ドレイファスが成人後にすべて譲り渡されることになっていた。身の危険を感じたクレオはカインに手紙を書くが、その直後に亡くなってしまう。

オーランド・ドレイファス (おーらんどどれいふぁす)

クレオ・ドレイファスの実の兄。素行に問題があり、両親との折り合いが悪く別々に暮らしていた。しかし、遺言状が公開されるやいなや家に舞い戻ってきた。欲しい物はどんな手を使っても必ず手に入れる人物であり、クレオは兄に殺されるかもしれないと感じていた。クレオの死亡時、オーランド・ドレイファスは友人と地中海に行っていたというアリバイがある。

その他キーワード

緑の毒 (えめらるどふぉれすと)

カイン・ハーグリーヴスがコレクションしている毒のひとつで、その名の通り緑色をした毒物。100倍に薄めて飲めば一時的に仮死状態になり後で息を吹き返すが、そのまま使えば触れているだけで死に至る。シュゼットが恋人と結ばれるためロミオとジュリエットのようなことをしようと計画し、カインの旅行中に盗み出した。

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