あらすじ
殺害したはずの夫
地域の夏祭りの日の夜、夏奈は計画どおり夫の亮を殺害する。激しいDVを受けていた夏奈は、これで理不尽な暴力から解放されたと安堵(あんど)するものの、暑い日が続いていることから、亮の死体の腐敗を心配していた。物置小屋に今は亡き祖父が使っていたアイスクリーム用の冷凍庫があったことを思い出した夏奈は、そこに亮の死体を隠すことを思いつく。夏奈はさっそく冷凍庫にスイッチを入れて死体を遺棄するが、翌日、物置小屋の冷凍庫に入っているはずの亮が、生前と変わらぬ姿で夏奈の前に現れる。
亮への違和感と蒲田との再会
夏奈は夫である亮を確かに殺害したにもかかわらず、生前の姿と変わらずに現れたことで、物置小屋にあるアイスクリーム用の冷凍庫に彼の死体があることを知る夏奈は、不気味に感じながらも生活していた。また、以前は激しいDVを繰り返していた亮が、殺害以来優しくなったことに戸惑いを覚え、夏奈は得体の知れない生き物と同居している感覚に襲われる。そこで夏奈は、亮の死体の一部を目の前にいる彼に食べさせたらどうなるのだろうかと考え、その日から解体した肉を夕食や弁当として亮に食べさせるようになる。そんなある日、夏奈は近所のスーパーで、独身時代にお見合いパーティーで知り合った蒲田と再会する。しかも亮と蒲田は偶然にも同じ職場で働いており、亮が彼を自宅に招待したことで、夏奈は再び蒲田と顔を合わせることになる。亮の企みがわからず夏奈は戸惑うが、そんな彼女に対して、蒲田は最近亮が何を考えているのか理解できないと夏奈に打ち明ける。
蒲田と駆け落ちを決意する夏奈
蒲田と引き合わされてから、夏奈はますます亮を不気味に感じるようになっていた。精神的に耐え切れなくなった夏奈は、蒲田に亮を殺害したことを打ち明ける。その後、自分の家でいっしょに暮らそうと蒲田に誘われた夏奈は、駆け落ちを決意。そんな中、貴重品を取りに自宅に戻った夏奈に対して、亮は自慢の肉料理を振る舞おうとする。目の前にいる亮がアイスクリーム用の冷凍庫に眠っている死体の存在を知っており、自らと同じようにその肉を調理して食べさせようとしていることに気づいた夏奈は、激しく抵抗する。
メディアミックス
TVドラマ
2021年4月から、本作『私の夫は冷凍庫に眠っている』のTVドラマ版『私の夫は冷凍庫に眠っている』が、テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知ほかで放送された。キャストは、夏奈を本仮屋ユイカ、亮を白洲迅、孔雀を斉藤由貴が演じている。
登場人物・キャラクター
夏奈 (なな)
夫のDVに悩まされていた女性。肩までのツヤのある黒髪のワンレングスで和風な顔立ち。些細なことで自分を殴りつける夫の亮に耐えかね、睡眠薬を飲ませて首を締めて殺害する。遺体は祖父の残したアイスクリーム用の冷凍庫に隠すなど、殺害後も冷静に行動する。夫を愛していたが、憎んでもいた。殺したはずの夫が帰ってきた時、動揺するものの、彼に亮の肉を食べさせてみようと復讐を思いつく。
亮 (りょう)
夏奈の夫。明るい髪色でハンサムな男性。働きもせず、妻に暴力をふるい、わがままし放題で離婚にも応じようとしなかった。子供ができた時も、貧乏するくらいならいらないと強引に夏奈を病院に連れていき、堕胎手術をさせた。夏奈に睡眠薬を盛られ、電気コードで首を絞められて殺される。夏奈と付き合い始めた当初は優しく、まじめに働いていた。しかし、学歴がないことに引け目を感じていた。コンビーフを開ける鍵を集めるなど妙な収集癖がある。
蒲田 (かまた)
独身時代の夏奈が、お見合いパーティーで知り合った独身男性。誠実な人柄ではあるものの今一つ決定打に欠け、カップリングは成立しなかったが、夏奈の記憶にずっと残っていた。近所のスーパーで買い物をしていた際、偶然夏奈と再会する。さらに夏奈の夫である亮と同じ職場で働いている縁もあり、夫婦間のトラブルに巻き込まれていく。人のよさそうな優しい顔立ちで、背が高く包容力のあるタイプ。
孔雀 (くじゃく)
夏奈と亮が住む一軒家のとなりに住んでいる中年の女性。ミステリー作家を生業にしている。本名は不明で、いつも孔雀のように派手に着飾っていることから、夏奈の心の中で「孔雀」と呼ばれている。夏奈とは顔を合わせればあいさつを交わし、簡単な雑談をする程度の間柄だが、亮とはお互いの連絡先を交換するほど親しくしている。また、夏奈からは亮の浮気相手の一人ではないかと疑われている。
クレジット
- 原作
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八月 美咲
書誌情報
私の夫は冷凍庫に眠っている 2巻 小学館〈裏少年サンデーコミックス〉
第1巻
(2020-10-16発行、 978-4098502974)
第2巻
(2021-04-12発行、 978-4098505043)