概要・あらすじ
主人公ジェルミ・バトラーは母サンドラと二人で暮らす高校生。サンドラの再婚者グレッグ・ローランドから性的虐待を受ける。エスカレートする虐待を誰にも相談できないまま精神的に追い詰められたジェルミは、やがてグレッグに殺意を抱くようになる。殺人計画を実行に移すジェルミだが、事故当日サンドラを巻き添えにしてしまう。
一方グレッグの息子イアンは事故の真相を探るべく、ジェルミを追求し始める。
登場人物・キャラクター
ジェルミ・バトラー
真面目で素直な、母親思いの高校生。まつげが長く、陶磁器のような白くきめ細かい肌をもつ少年。父親と同じジェルミという名前をもつ。母親を名前で「サンドラ」と呼んでいる。義父グレッグから性的虐待を受けるようになるが、母を傷つけまいと誰にも相談できないでいる。グレッグの虐待に堪えきれず殺害を決意するが、事故当日サンドラを巻き添えにしてしまう。 イアンに殺害について詰め寄られ全てを語るが、イアンに受け入れられず、ボストンに帰省し髪を赤毛に染めてキャスと共に売春夫生活に陥る。キャスの更生施設入りを機に連れ戻され、ロンドンのハムステッド・ヒースでイアンと同居し、売春行為やドラッグをしないように言い渡される。
グレッグ・ローランド
『残酷な神が支配する』に登場する人物で、ジェルミの母サンドラの再婚相手。ジェルミに性的虐待をする。父親から会社を受け継いだ、資産家の当主。外見的には誠実で紳士的だが、独善的で支配欲・独占欲が強く嫉妬深い部分も持ち合わせる。前妻リリヤの同郷の元婚約者へ嫉妬し、浮気を疑いリリヤにロシア語を使うことを禁じる。 サディスティックな性癖を巧妙に隠し、親族や使用人を含め周囲のほとんどの人間を欺き、ジェルミはもちろん、元妻の姉、ナターシャにも虐待行為を行っていた。自動車事故に巻き込まれ重態となり、意識が回復することなく死亡。死んでなお、ジェルミの心に居座り苦しめ続ける。
サンドラ
『残酷な神が支配する』に登場する人物。夫を亡くして以来息子ジェルミに恋人のように依存する母親。精神的に弱いだけでなく心臓も丈夫ではない。始終ジェルミを心配させてばかりいる。グレッグの車に同乗し事故に巻き込まれ死亡。ジェルミのガールフレンド・ビビの手紙を盗み読んで、グレッグとジェルミの関係を悟る。 死ぬまでそのことを口外することはなかったものの、他人にジェルミを転移するなど、その精神が休まることはなかった。これらの心の内が綴られた日記はサンドラの死後ジェルミによって発見される。
イアン・ローランド
『残酷な神が支配する』に登場する人物で、グレッグの長男。長身で実母リリヤに似た美男子。特技はボクシング。女好きだが成績優秀、正義感も強い。事故の原因をジェルミに問い詰め、イアンの抱いていた父親像と全く別のものであったために受け入れられなかったが、ある日偶然グレッグの書斎で動かぬ証拠を発見したことで、ついに事件の全容を受け入れた。 その後、ジェルミを否定した罪の意識から、ボストンで荒んだ生活を送る、ジェルミを探し出して連れ戻し、ハムステッド・ヒースで同居する。またイアンはジェルミを追及、説得するうちにジェルミ引き込まれ、何度も関係を持ってしまい苦悩し続ける。
マット・ローランド
『残酷な神が支配する』に登場する人物で、グレッグの次男。両親のどちらにも似ておらず、グレッグから疎まれていたためグレッグのことを好きではなかった。また伯母のナターシャからは甘やかされたせいかわがままな性格。虚言癖もあり、本当のことを言ってもあまり信じてもらえないでいる。
リリヤ・ローランド
『残酷な神が支配する』に登場する人物で、グレッグの先妻。モスクワから移民してきたロシア人。リリヤの元婚約者との関係をグレッグから疑われ、ロシア語を話すことを禁じられていた。グレッグからの仕打ちに耐えられなかったリリヤはノイローゼになり、グレッグの目の前で首を吊り自殺。マットを出産した直後に亡くなった。
ナターシャ
『残酷な神が支配する』に登場する人物で、イアンとマットの伯母でリリヤの実姉。モスクワから移民してきたロシア人。妹の死後、子供の世話役としてグレッグたちと同居していた。妹を亡くした悲しみからグレッグと関係を持つが次第に倒錯的行為を強要されるが、マットを盾にされ断ることができず10年間耐え忍んだ。 ジェルミとグレッグの関係を知っていたが、イアンとマットを守るためそのことを口外しなかった。
リンドン・エドリン
『残酷な神が支配する』に登場する人物。写真が趣味で妻は画家で、猫を7匹飼っている。保険調査員で、グレッグの事故の担当者。イアンと共に調査をするうちにジェルミとグレッグの関係を知るが冷静に分析し、混乱するイアンの良き相談相手となった。
シャロン
『残酷な神が支配する』に登場する人物で、サンドラの世話のためにローランド家に雇われたメイド。はっきりとした性格。病気の夫がいるがイアンと関係を持ち、グレッグとジェルミの関係を知ってふたりをそれぞれゆすろうとするが、グレッグの脅迫によりローランド家から逃げ出す。グレッグの死後ナターシャと偶然再会し、イアンに逃げ出した真相を語る。 その後再びローランド家で働く。
ナディア
『残酷な神が支配する』に登場する人物でオルガニスト。不幸な人に必要以上に同情してしまう癖がある。ナディアのパイプオルガンの音色がジェルミの支えとなる。イアンの恋人で、イアンの心がジェルミに向いてからは別の恋人と付き合うが、イアンへの思いが断ち切れないでいた。後に作曲家のヨルクと結婚し子供をもうける。
マージョリー
『残酷な神が支配する』に登場する人物で、ナディアの4つ下の妹。母親のクレアのバレエ教室でバレエを習っている。ジェルミとグループカウンセリングで出会う。幼い頃にした手術の後遺症で、自殺未遂を繰り返すようになった。ジェルミのことを気に入っていて、よくなついている。
クレア
『残酷な神が支配する』に登場する人物。ナディアとマージョリーの母親でバレエ教師。ナディアとは不仲だが、マージョリーのことを病的なほどに溺愛している。男好きの恋愛至上主義者。幼児期に性的虐待を受けたことがある。
パスカル
『残酷な神が支配する』に登場する人物で、ナディアとマージョリーの従兄。マージョリーと同居している。ロレンツォの元恋人。ドラッグマニアでマージョリーを訪ねてきたジェルミに乱暴し、マージョリーをバスルームに閉じ込め精神科に入院した。
ロレンツォ
『残酷な神が支配する』に登場する人物。クレアのインストラクターで恋人。バイセクシュアルで、パスカルの元恋人。落ち着いた大人の男性。
アダン・Z・オーソン
『残酷な神が支配する』に登場する人物。精神科医でジェルミが読んだ「十代の心身症」の著者。追いつめられたジェルミの相談相手になるが、末期ガンで亡くなる。名前を名乗れないジェルミを「アビー」と呼び、彼についての考察をレコーダーに記録する。
バレンタイン
『残酷な神が支配する』に登場する人物。オーソンの孫娘で、エリックの双子の妹。13歳の時にエリックとの子を妊娠するが、罪の意識から子どもを殺してしまい、自殺未遂をしたバレンタインはそのショックから言葉を発しなくなる。同年代のジェルミに共感し、やがて心の友となっていく。後にエリックに再会したことで、声を取り戻す。
エリック
『残酷な神が支配する』に登場する人物。オーソンの孫で、バレンタインの双子の兄。ジェルミとグループカウンセリングで出会う。17歳で妻と子供がいるが、無垢な子供のような性格。幼い頃にピアノ教師から性的虐待を受けていた。
ペネローペ
『残酷な神が支配する』に登場する人物で、ボストンから帰ってきた後のジェルミのカウンセラーの女性。ジェルミの話を慎重に聞いていき、共感、理解しようと努める。
ウィリアム・ラム
『残酷な神が支配する』に登場する人物で、ジェルミの寄宿学校のルームメイト。そばかすがある。落ち着いていてしっかり者。いつもジェルミのことを気にかけているが、グレッグに虐待され追い詰められていたジェルミはたびたびウィリアムを誘惑し、翻弄させられていた。
チャーリー・ワーズワース
『残酷な神が支配する』に登場する人物で、ジェルミの寄宿学校のルームメイト。活発な性格。ルームメイトにもう一人チャーリーという名前がいるので「チキチキ」と呼ばれている。
チャーリー
『残酷な神が支配する』に登場する人物で、ジェルミの寄宿学校のルームメイト。おっとりしている性格。チキチキとよくふざけあっている。
パンジー
『残酷な神が支配する』に登場する人物で、寄宿学校の学生。グレッグからの虐待で痛む傷にと、ジェルミにヘロインを渡す。麻薬中毒者で、学校の屋根から飛び降り騒ぎを起こし、学校を退学した。
コスモ
『残酷な神が支配する』に登場する人物で、寄宿学校のジェルミの同級生。自動車マニアで、自動車事故の新聞記事をスクラップしている。このスクラップをヒントにジェルミは、事故と見せかけたグレッグの殺害計画を立てる。
キャス
『残酷な神が支配する』に登場する人物で、ジェルミのボストン時代の同級生。イギリスから戻ったジェルミと再会、同居し、売春で生計を立てる。ドラッグ常習者の不良であるが、親切で情に篤く、心優しい少年。その後マサチューセッツの更生施設で麻薬中毒から更生し、スタントマンの養成学校へ通うこととなる。
マーカス
『残酷な神が支配する』に登場する人物で、ボストンのルドルフ高校の教師。ジェルミのような売春で生計を立てる若者や不良少年などに声をかけ、勉強させようとしている。
ボンボン
『残酷な神が支配する』に登場する人物で、ジェルミとキャスと同居する少年。もともと父親に虐待され養子先を転々とし、画家と暮らしていたが捨てられ、ゴミ捨て場にうずくまっているところをキャスに拾われる。重度の薬物中毒者で亡くなるが、葬式に出す金もないためジェルミとキャスとでゴミ捨て場に運ばれる。
ディジー
『残酷な神が支配する』に登場する人物で、ジェルミがグレッグに連れて来られたメイスンのホテルで出会った娼婦。ナターシャがグレッグのもとを去った頃から、ジェルミと出会う前までのグレッグの客だった。ディジーはジェルミに、グレッグの異常な性格と性的嗜好を説明し、グレッグから逃げるよう忠告する。
ビビアン
『残酷な神が支配する』に登場する人物で、ボストン時代のジェルミの恋人。ビビにグレッグから性的虐待を受けていることを話せず、ビビを傷つけてしまう。その後ビビからジェルミ宛に送った手紙はジェルミには届かず、死後のサンドラの部屋から見つかる。ジェルミがロンドンへ引っ越した後もジェルミの身をずっと案じていた。
その他キーワード
ワルキューレ
『残酷な神が支配する』に登場する物語。実在するオペラ「ワルキューレ」の内容がモデルとなっており、人間の双子の兄妹ジークムントとジークリンデがエリックとバレンタインになぞらえている。
日本刀の鍔
『残酷な神が支配する』に登場する美術品。サンドラの働くアンティークショップにある日本刀の鍔。桜の模様の四角い形の鍔で、2つ揃って1組のデザインになり、サンドラとグレッグが偶然それぞれを持ち合わせていた。サンドラのものは亡き夫の形見で、グレッグのものは前妻リリヤの元婚約者からもらったもの。
書誌情報
残酷な神が支配する 10巻 小学館〈コミック文庫(女性)〉
第1巻
(2004-10-15発行、 978-4091916112)
第2巻
(2004-10-15発行、 978-4091916129)
第3巻
(2004-11-13発行、 978-4091916136)
第4巻
(2004-11-13発行、 978-4091916143)
第5巻
(2004-12-15発行、 978-4091916150)
第6巻
(2004-12-15発行、 978-4091916167)
第7巻
(2005-01-15発行、 978-4091916174)
第8巻
(2005-01-15発行、 978-4091916181)
第9巻
(2005-02-15発行、 978-4091916198)
第10巻
(2005-02-15発行、 978-4091916204)