忘却バッテリー

忘却バッテリー

中学球界屈指のバッテリーとして名を馳せた要圭と清峰葉流火は、突如圭が記憶喪失になったことで、野球部のない東京都立小手指(こてさし)高校に進学することになる。そんな二人がかつてのライバルたちに再会し、もう一度野球に挑む姿を描いた青春高校野球ストーリー。集英社「少年ジャンプ+」2018年21号(4月27日)から連載の作品。「次にくるマンガ大賞2019」Webマンガ部門で第6位に選出。2024年4月テレビアニメ化。

正式名称
忘却バッテリー
ふりがな
ぼうきゃくばってりー
作者
ジャンル
野球
 
部活動
レーベル
ジャンプコミックス(集英社)
巻数
既刊17巻
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あらすじ

出会い

東京都立小手指高校の1年生である要圭清峰葉流火は、かつて中学球界屈指のバッテリーとして名を馳せ、シニアリーグに所属していた野球選手の夢を打ち砕いてきた。そんな二人に敗北し、自らの限界を痛感した山田太郎は、高校では野球をやめる決意を固め、野球部のない小手指高校に入学していた。そして入学式の日、太郎は衝撃の事実を知る。私立の強豪校に進学したと思われていた圭と葉流火もまた、小手指高校に入学していたのである。思わず太郎は二人にこの高校に進学した理由を尋ねる。すると圭は突然記憶喪失になり、それを機にすっぱり野球をやめ、徒歩圏内のこの高校を選び、葉流火もついて来たのだという。太郎は、最初はこの言葉を冗談と受け止めるが、確かに太郎が対戦した時の圭とは別人のようになっていた。圭は当時「智将」と呼ばれるほど知的でクールな選手だった。しかし、現在の圭は明るくひょうきんで、野球のことも完全に忘れている様子だった。一方の葉流火は、再び圭と野球をしたい気持ちが強く、太郎はひとまず葉流火の強い希望で今年新設された野球部に共に入部することになる。

藤堂葵と千早瞬平

要圭は、野球部の先輩の楠田竜樹御手洗優作に絡まれたことにより、久しぶりに捕手として清峰葉流火のボールを受けることとなる。これで葉流火は、圭が野球への情熱を取り戻してくれるのではないかと期待するが、圭は相変わらず野球に対しての情熱はまったくない様子だった。そんな中、山田太郎は圭を積極的に練習に参加させ、少しずつその気にさせる作戦に出る。太郎にとって圭はあこがれの選手でもあり、才能あふれる彼が野球をやめてしまうのはもったいないと考えていたのだった。そんなある日、三人が練習をしていると、藤堂葵千早瞬平に再会する。二人もまた太郎と同じく、以前圭と葉流火に敗北したのを機に野球をやめ、野球部のない小手指高校に進学していた。これに運命的なものを感じた太郎はひとまず二人に事情を説明し、いっしょに野球をしないかと誘うが、二人にはにべもなく断られる。だが、ここで葉流火が二人を挑発したことで、一打席勝負をすることになる。

帝徳高校との練習試合

要圭たち五人は一打席勝負をきっかけに打ち解け、そろって野球部に正式入部する。圭だけは相変わらず逃げ腰だったものの、清峰葉流火が用意したご褒美に釣られて、練習に参加するようになっていた。千早瞬平は練習の中で、圭が記憶喪失になりながらも基本姿勢を完璧に覚えており、決して野球を忘れているわけではないことに気づいていた。そんな中、圭たち小手指高校は、名門私立帝徳高校と練習試合を行うことになる。本来新設の小手指高校野球部は、強豪と知られる帝徳高校野球部との練習試合を行えるような存在ではなかった。しかし、小手指高校野球部に圭たちがいることを聞きつけた国都英一郎の強い希望により、対戦することになった。ところが試合当日、圭と葉流火は英一郎のことをまったく覚えておらず、以前英一郎と交わした約束までも忘れていた。これに大きなショックを受けた英一郎は、今後努力を重ねて決して忘れられない存在になると宣言。そのまま試合が始まるが、圭は自分だけレベルが低すぎることに愕然とする。すると圭は、藤堂葵千早瞬平に対して、その実力を生かすためにも、帝徳高校に転校した方がいいのではないかと言い出す。

約束

中学時代、国都英一郎要圭清峰葉流火に交わした約束とは、将来三人そろって帝徳高校野球部に入部して、甲子園を目指そうというものだった。しかし、これは英一郎の一方的な約束であり、忘れられても仕方ないものだと考えていた。それでも英一郎は、圭たちが帝徳高校のスカウトを断って野球部のない小手指高校に進学したことが理解できずにいたのだった。そんな中、試合は4回まで進み、意外にも小手指高校が2点リードを奪っていた。しかし帝徳高校の監督の岩崎は、圭の様子がおかしいことに気づき始めていた。記憶喪失の件を知らない岩崎にとって、シニアリーグ時代の圭と今日のプレーがまったく違うため、不可解なものに映ったのである。ここで圭にファウルボールが当たったことで、圭はさらに不調をきたし、まともにボールを捕ることさえできなくなってしまう。このスキを突かれ、5回の表で17点を取られたことで、試合は帝徳高校の圧勝で終了する。試合後、この敗戦にショックを受けた圭は、みんなにはゲームセンターに行くと言いつつ、山田太郎を誘ってバッティングセンターで練習をしていた。そんな二人の姿を見た藤堂葵千早瞬平は、帝徳高校への転校の誘いを断り、このまま小手指高校でプレーすることを決める。

イップス

帝徳高校野球部に完敗したのを機に、要圭は野球への意欲を取り戻しつつあった。そんな圭に山田太郎たちはあらためて基本練習から始めることにし、打倒帝徳高校を誓った小手指高校野球部のメンバーには、これまで以上の団結力が生まれる。しかし、ここで藤堂葵が衝撃の告白をする。葵は現在イップスになっており、遊撃手でありながら、一塁への送球ができなくなっているという。そこで葵は、本気で打倒帝徳高校を目指すのであれば、自分のポジションを変えた方がいいと考えていた。そんな葵を太郎たちは気遣うが、清峰葉流火だけは、治すための努力が足りないのではないかと厳しい指摘をする。葵はもっともだとこれを受け入れようとするが、圭はこの言葉に怒り、葉流火を叱責。そして、もし投げるのがつらいのであれば、一度ワンバウンドで送球してみてはどうかと提案する。これは遊撃手にとっては屈辱的な選択だったが、葵はこれを試すことにする。その後、太郎と千早瞬平の丁寧なサポートを受けながら練習を続けた葵は、ついにワンバウンド送球を安定させることに成功し、イップスを克服するのだった。

中堅手

藤堂葵は、イップスを克服しただけでなく、偶然中学時代の先輩の高須と再会したことで、すっかり調子を取り戻していた。葵は高須と再戦するためにも、甲子園を目指す気持ちが強くなっていく。そんなある日、要圭山田太郎は校内で野球好きな男子生徒の土屋和季に出会う。和季は以前軟式野球部に所属していたが、部の厳しい上下関係に辟易して退部した過去があった。そのため、現在は現実の野球には興味がなく、漫画やゲームに登場するフィクションの野球だけを愛しているのだという。そんな和季と奇妙な形で意気投合した圭は、現在空きポジションの中堅手に、和季が適しているのではないかと考える。そこで圭が無理やり和季を野球部に連れて行ってプレーさせると、和季が素晴らしい脚力の持ち主であることが判明。その後、千早瞬平の親切な指導や圭の後押しもあり、和季は野球部に入部することになる。

智将・要圭

ある朝突然、要圭は記憶を取り戻した。小手指高校野球部のメンバーは驚きつつも、昨日までとはまったく別人のように知的な圭の指示に従って練習を行っていた。そんな中、圭は氷河高校野球部との練習試合を組むことになるが、この頃から記憶喪失前の「智将」状態と、記憶喪失後の「アホになっている」と呼ばれる状態の境があいまいとなっていた。そして突然、記憶喪失後のように一発ギャグをしそうになるなど、精神状態が不安定になっていく。さらに氷河高校には、千早瞬平のシニアリーグ時代のチームメートの巻田広伸が在籍していた。瞬平と広伸は性格もプレースタイルも対照的で、広伸は当時から瞬平を強く意識していた。しかし、広伸は好意の伝え方が非常にひねくれており、そのうえ体格に恵まれない瞬平はコンプレックスを感じる相手であったため、あまりかかわりたくないと思っていたのである。そんな氷河高校との試合は、圭がどうにか智将状態を維持したまま進むが、小手指高校の1点リードで迎えた3回の表、圭に打順が回った途端、圭は完全にアホ状態に戻ってしまう。

信頼

小手指高校野球部と氷河高校野球部の練習試合は、要圭が「智将」状態から「アホ」状態に戻ってしまったことで、3回の裏に逆転されてしまう。この「アホ」状態は9回の表まで続き、千早瞬平がバッターボックスに向かう。体格に恵まれずパワーに欠ける瞬平は、それをテクニックでカバーする選手だった。シニアリーグ時代は、この技巧をチマチマしたプレーだと巻田広伸に揶揄されながらも、それが自分のプレースタイルだと信じていたが、この局面では、瞬平はパワー勝負をしなければ勝機がないと考えていた。そこで瞬平は長打狙いで粘るが、ほかにもう一つの方法を思いつく。それは四球で出塁し、要圭に勝負を託すというものだった。そして、瞬平が四球で出塁に成功すると、圭はみごと瞬平の期待に応え、初ヒットを放つ。気落ちした広伸はその後も清峰葉流火に打たれてしまい、最終的には5対2で小手指高校が勝利をおさめるのだった。これによって圭は大きな自信を得るが、その夜に奇妙な夢を見る。

ぜったいノート

要圭は、氷河高校野球部の練習試合をきっかけに野球の楽しさを実感し、いつか「智将」状態の自分を超えることを目標に、前向きに練習するようになっていた。そんなある日、圭たち小手指高校野球部の1年生たちは、スポーツショップでユニフォームを作ることにする。そして山田太郎は、今後捕手を圭にゆずって一塁手に転向するためにファーストグローブを買う。その直後、圭たちは岩崎に誘われて、帝徳高校と氷河高校の練習試合を見に行く。そこでは自分たちとの試合とは明らかにレベルの違う戦いが繰り広げられており、圭たちは衝撃を受けつつも、気持ちを新たにするのだった。それから圭は清峰葉流火の決め球を確実に圭がキャッチできるように練習を重ね、練習に来るようになった3年生の御手洗優作楠田竜樹と共に、充実した練習の日々を過ごす。しかし圭は、練習をすればするほど自分が下手になっているような錯覚に陥っていた。まじめに練習に取り組むほどチームメートがいかに優秀なのかを実感し、今の自分の実力では、その差は簡単には縮まらないと不安を感じるようになっていた。そんなある日、要圭の母親が、記憶喪失前の圭が書いたノートを持ってくる。「ぜったいノート」というタイトルが付いたノートには、小学生の圭による、野球が上達するための大量のメモが記されていた。

西東京大会

「ぜったいノート」の記述を参考にした要圭は、めきめきと実力を伸ばしていく。甲子園の地方大会初戦でも、ホームランを放ち、小手指高校は横山高校に勝利をおさめる。次の谷間高校にもすんなり勝利するが、一番打者を藤堂葵から千早瞬平に変えたことがうまく機能したものの、代わりに二塁手のポジションについた葵は、これに気落ちしていた。今回の打順変更はお互い納得したものだったが、一番打者であることに強いモチベーションを見いだしている葵は、なかなか気持ちを切り替えられずにいた。そんな中、三回戦の相手が星明高校に決定し、星明高校に親しい先輩の高須がいる葵は気持ちを高ぶらせる。中学2年生の頃、試合中のミスに責任を感じた葵は、同時にイップスを発症したこともあり、シニアリーグをやめてしまった過去がある。その時葵は、当時親しかった高須と一方的に距離を置いたことを後悔していたのだが、先日偶然再会したのをきっかけに、再び交流を持つようになっていた。そこで葵は、星明高校との試合は自分に一番を打たせてほしいと瞬平に頼み込む。

VS星明(せいめい)高校

藤堂葵千早瞬平と話し合い、星明高校戦では葵がトップバッターを務めることになった。また、清峰葉流火の疲れを考慮して、投手経験者の鈴木が先発する。そして試合が始まり、鈴木は1回表に一挙4点を奪われてしまうが、要圭たちにとってこれは想定内の展開だった。1回裏に葵と瞬平がヒットを放ってすぐさま2点を返し、2回の表からリリーフした葉流火が好投して相手打線を0点に抑える。この試合展開に危機感を覚えた星明高校の津田は、遊撃手の葵を狙うことを提案。葵の元チームメートである津田は、もし葵がイップスを克服していなければ、うまく送球できない可能性があると見ていた。しかし葵は、練習で精度を高めたワンバウンド送球で対応し、5回の裏に3得点を挙げて小手指高校は逆転に成功する。その後は鈴木が投手としてゲームを作っていたが、7回の表、ついに鈴木に体力の限界が訪れ、満塁のピンチを迎えてしまう。そんな鈴木を救うために葉流火が再登板し、21球で試合を終わらせると宣言する。

巻田広伸の来訪

小手指高校と星明高校の試合は、最終的に7対4で小手指高校が勝利をおさめる。しかし清峰葉流火は、試合終了までに予定の21球よりも多い25球を投げてしまったことや、星明高校の格下選手に自らのボールをバットに当てられたことを悔やんでいた。そんな葉流火の態度に要圭は腹を立てると同時に、何かを思い出しそうになるが、結局記憶は戻らないままだった。その直後、清峰家を訪れた圭たちは清峰葉流馬から、次の対戦相手である帝徳高校と光和高校の試合のDVDをプレゼントされる。さっそくこのDVDを圭たちが学校で見ていると、そこへ突如巻田広伸が現れ、自分の成長ぶりをみんなに見せたいのでいっしょに練習しようと言い出す。仕方なくこの申し出に応じる圭たちだったが、広伸の真の目的は、次の帝徳高校との準決勝で敗北するだろう小手指高校のメンバーに、自分の投球を見せたいという思いだった。そんな広伸に、圭たちは決勝で会おうと力強く宣言する。

VS帝徳高校

帝徳高校との準決勝では、千早瞬平がトップバッターを務めることになった。藤堂葵は一番打者に強い思い入れがあるが、瞬平の機動力を最大限に生かすには、瞬平が一番を打った方がいいと判断したのである。このオーダー変更が功を奏した小手指高校は、1回表に1点を奪う。さらに清峰葉流火も絶好調で、1、2回を圧倒的なピッチングで0点に抑え、さらに3回表は瞬平と土屋和季の活躍で、さらに1点を加える。一方で試合展開に危機感を覚えた岩崎が、投手の飛高翔太を一喝すると翔太は調子を取り戻し、その後さらに陽ノ本当を投入して攻めの姿勢を見せる。当の楽しそうなピッチングと、周囲からも慕われる姿を見た要圭は、何かを思い出しそうになる。現在の自分は当同様に仲間がおり、楽しく野球をしている。しかし、以前の自分は決してそうではなかったような気がしていた。そして4回の裏、キャッチャーフライを捕ろうとした圭は、フェンスにぶつかって気を失ってしまう。そして気を失った数秒間のあいだに、自分が子供の頃に葉流火の力を最大限に生かすために「智将」を演じるようになったこと、そしてその後、自分にとって野球が楽しくなくなってしまうまでの記憶を夢に見るのだった。

テレビアニメ

2024年4月テレビアニメ化。テレビ東京ほかにて放送。制作はMAPPA。要圭を宮野真守、清峰葉流火を増田俊樹が演じる。

登場人物・キャラクター

要 圭 (かなめ けい)

東京都立小手指高校1年1組に在籍する男子。野球部に所属している。右投左打、ポジションは捕手で、宝谷シニアリーグ出身。金髪のショートウルフカットで、たれ目で左目尻にほくろが一つある。明るくひょうきんな性格で、親しみやすい印象の人物。身長は172センチと、野球選手としてはあまり高くない。要圭自身は嫌がるが、顔や雰囲気は非常に母親に似ている。野球はリトルリーグから始め、当初はあまりやる気がなく、厳しい練習を嫌ってやめたがっていた。しかし、いっしょに野球をしていた清峰葉流火に付き合ううちに野球の面白さを知ってめきめきと実力を伸ばし、「智将」と評されるほどの選手になった。この頃には別人のように性格が変わり、知的でクールに振る舞っているが、これはそう見えるように自ら演じていたところがある。そのため、次第に責任感と重圧の中でプレーするストレスに耐え切れなくなり、ある日突然記憶喪失になってしまう。以来、野球を始める前のような冗談好きのお調子者で、打たれ弱い性格に戻ってしまった。特にあまり面白くない一発ギャグやダジャレを好むが、いずれも圭のオリジナルではなく、記憶喪失前に見たクラスメートやアニメをコピーしたものである。記憶喪失になってから野球に関する記憶はすべて消えてしまったが、野球における基本姿勢を体が覚えていたり、洞察力に長けていたりするなど、以前の経験を無意識に活用している部分もある。また、高校入学後は記憶の状態が不安定で、時に記憶喪失前に戻ることがある。そのため、記憶喪失前は「智将」状態、記憶喪失後は「アホ」状態と呼んで区別され、智将状態の時のみ、土屋和季には「様」付けで呼ばれている。誕生日は4月15日で、血液型はAB型。

清峰 葉流火 (きよみね はるか)

東京都立小手指高校1年1組に在籍する男子。、野球部に所属している。右投右打、ポジションは投手で、宝谷シニアリーグ出身。黒髪短髪で、身長185センチの長身。クールな性格で感情に乏しく、近寄りがたい印象の美形だが、これは幼少期の経験が原因で、泣いたり怒ったりすると年の離れた兄のイジりがさらに厳しくなるため、兄に何をされてもあまり反応しないようにしているうちに、極端に無表情になってしまった。要圭からは「葉流ちゃん」と呼ばれている。中学時代は完全無欠と評されるほどの天才投手で、その圧倒的な野球センスもあって四番を務めていた。野球は子供の頃に圭に教えてもらう形で始め、すぐに頭角を現していっしょにリトルリーグに所属した。この頃から才能を見込まれてさまざまな人物から指導を受けるようになるが、かえって調子を崩してしまう。これを重く見た圭に、これからは自分が指導すると言われてからは、圭にのみ従ってプレーするようになった。しかし、高校入学前に圭が突如記憶喪失となり、もう野球はしないと言い出した挙句に、野球部のない小手指高校に進学した。それでも圭について行く形で自らも小手指高校に入学し、素人同然となってしまった圭と、もう一度野球を始めようとする。ずっと野球に打ち込み、シニアリーグでもつねに一番であったことから、自分に強い自信を持っている。その一方で非常にマイペースな性格で、他者への関心が極端に薄い。そのため、コミュニケーション能力にやや難があり、悪気なく他人を傷つけてしまっては、周囲に迷惑をかけている。兄と圭に対してだけは基本的に絶対服従だったが、記憶喪失になってからの圭には反抗的な態度を取ることもある。誕生日は12月10日で、血液型はB型。

山田 太郎 (やまだ たろう)

東京都立小手指高校1年1組に在籍する男子。野球部に所属している。右投右打で、ポジションは入部当初は捕手だったが、のちに要圭にゆずって一塁手に転向する。秋津シニアリーグ出身。あだ名は「ヤマ」で、「太郎」という名前は、父親から『ドカベン』に登場するキャラクター「山田太郎」から付けられた。焦げ茶色の短髪で、身長164センチの小柄でかわいらしい雰囲気を漂わせている。穏やかな心優しい性格で、まじめに練習を重ねて堅実なプレーを心掛けており、その人柄も相まって周囲からの人望は厚い。中学時代に圭と清峰葉流火と対戦し、あまりの実力差を痛感して引退を決意する。そこで、高校は野球部がない小手指高校に進学するが、入学してすぐに圭と葉流火に再会し、圭が記憶喪失になったという衝撃の事実を聞かされる。その後、葉流火の誘いもあり、新設されたばかりの野球部に入部して、もう一度野球をすることになる。部内では一番の常識人として、打たれ弱い性格の圭や野球に復帰して間もない土屋和季を精神的にフォローするなど、野球部の兄貴的な役割を担っている。誕生日は3月3日で、血液型はO型。

藤堂 葵 (とうどう あおい)

東京都立小手指高校1年2組に在籍する男子。野球部に所属している。右投右打、ポジションは遊撃手で、大泉シニアリーグ出身。金髪のセミロングヘアをハーフアップにしている。身長181センチの強面で、制服のズボンを腰ではくなど時代錯誤なスタイルをしているため、その風貌も相まって、ヤンキーだとカンちがいされることも多い。しかし生まじめな努力家で、やや単純で直情的なところもあるが、本質的には素直な性格をしている。その人柄から、シニアリーグ時代は高須をはじめとする先輩たちにも、非常にかわいがられていた。当時から強肩強打の大型遊撃手として名を知られ、自分のプレーに絶対の自信を持っていた。しかし中学2年生の時、要圭と清峰葉流火の所属する宝谷シニアリーグとの対戦中に大きなミスを犯して敗北。この敗北に強い自責の念を抱き、一塁側へ送球することができないイップスを発症してしまう。その後、イップスを克服しようと努力するもののうまくいかず、私立帝徳高校からのスカウトも断り、シニアリーグも退団した。そして野球から逃げるように、野球部のない小手指高校に進学を決める。しかし野球をやめていた期間中も野球道具のメンテナンスや、トレーニングは怠っていなかった。高校入学後は容姿も派手になり、一見非行に走ったかのように見えるが、体によくないという理由から煙草も一度吸ったきりでやめている。野球への情熱を捨てきれずにいた高校入学直後、圭と葉流火に再会し、再び野球をすることになる。誕生日は8月31日で、血液型はO型。母親を早くに亡くしており、父親と年の離れた姉妹の四人暮らし。そのため、家では家事全般を担い、料理が得意。

千早 瞬平 (ちはや しゅんぺい)

東京都立小手指高校1年2組に在籍する男子。野球部に所属している。右投両打、ポジションは二塁手で、富士見シニアリーグ出身。オレンジ色の短髪で、眼鏡を掛けている。クールで穏やかな性格で、落ち着いた雰囲気を漂わせている。ファッションには強いこだわりを持ち、独特な制服の着こなしをしている。また、同級生に対しても敬語で話す。身長167センチと野球選手としてはあまり体格に恵まれなかったことから、中学時代からの知識と理論に裏打ちされたプレーを心がけており、野球全般に詳しい。持ち前の俊足と巧みなバットコントロールで、バッテリーを動揺させて楽しむサディスティックな一面がある。このようなプレースタイルとふだんの人柄から、少し斜に構えていると思われがち。しかし、実際は血のにじむような努力を重ねて今のプレースタイルを築いた。中学時代はフィジカルの弱さを努力でカバーできると信じていたが、要圭と清峰葉流火の所属する宝谷シニアリーグと対戦し、世の中には彼らのような天才プレーヤーがいることを痛感する。これによってさらなる努力を重ねたものの、精神的に折れ、野球をやめてしまう。このような経緯から野球部のない小手指高校に進学するが、それでも野球への情熱を捨てられずにいた。入学直後、圭と葉流火に再会し、再び野球をすることになる。人に教えるのが非常にうまく、意地悪や皮肉を言うことはあるものの、なんだかんだで優しく面倒見がいい。そのため、イップスを克服しようとする藤堂葵を理論の面からサポートしたり、自分に自信の持てない土屋和季に、彼に合ったプレーを伝授したりするなど、チームの頭脳としても機能している。誕生日は9月28日で、血液型はA型。

土屋 和季 (つちや かずき)

東京都立小手指高校2年3組に在籍する男子。野球部に所属している。右投両打、ポジションは中堅手で、以前は軟式野球をしていた。ばらばらの長さに切った短髪で、左目を前髪で隠している。身長169センチの細身の体型で、少し気弱な印象を与える人物。まじめな心優しい性格で大の野球好きだが、少々オタク気質。気が弱くて自分に自信が持てないため、軟式野球チーム時代は、チームの雰囲気や体育会系特有の上下関係になじめず、やめてしまった過去がある。このような経緯から現実の野球を「三次元」、フィクションの野球を「二次元」と呼ぶようになり、三次元の野球は悪いもので、二次元の野球だけを愛するという、極端な思考に陥っていた。そんな高校2年生のある日、校内で要圭と山田太郎に出会い、野球経験者であると打ち明けたことで野球部に誘われる。当初は三次元の野球はこりごりだと考えていたが、練習に参加した際に千早瞬平からは非常に足が速いこと、圭からはまだ野球に未練があることを見抜かれる。また、この時に瞬平の丁寧な指導と、小手指高校野球部の和気あいあいとした雰囲気に惹かれて入部を決意した。入部後は三次元の野球への偏見をなくしていくが、「二次元」はいいものという考えはまだ残っている。そのため「智将」の圭のことを、フィクションの登場人物のように格好いいという意味で「二次元」と評したり、「様」付けで呼んだりする。誕生日は11月17日で、血液型はA型。

楠田 竜樹 (くすだ たつき)

東京都立小手指高校に通う3年生の男子。染めた髪の毛をセミロングヘアにしており、やや小柄な体型で、チャラチャラとした軽薄な雰囲気を漂わせている。御手洗優作とは、いつもいっしょにいるほど仲がいい。高校3年生になってすぐに新設された小手指高校野球部に入部するものの、野球に情熱を持っているわけではないため、練習はサボりがちだった。入部当初は要圭たち後輩に横柄な態度を取ろうとしたが、すぐに自分と実力が違いすぎることに気づき、部から逃げ出す。それでも野球そのものは好きで、優作といっしょにバッティングセンターで練習はしていた。そんな中、優作が積極的に部の練習に参加するようになったが、楠田竜樹自身はプライドが邪魔してなかなか練習に参加できずにいた。しかし根は単純なため、部員不足に困っている部を助けてやるというスタンスで次第に練習に参加するようになる。見栄っ張りなため、恋人がいるなどとすぐにバレるようなウソをついてしまう。背が低いことにコンプレックスを抱いている。

御手洗 優作 (みたらい ゆうさく)

東京都立小手指高校に通う3年生の男子。刈り上げた短髪で、大柄ながっしりとした体型をしており、チャラチャラとした軽薄な雰囲気を漂わせている。楠田竜樹とは、いつもいっしょにいるほど仲がいい。高校3年生になってすぐに新設された小手指高校野球部に入部するものの、野球に情熱を持っているわけではないため、練習はサボりがちだった。入部当初は要圭たち後輩に横柄な態度を取ろうとしたが、すぐに自分と実力が違いすぎることに気づき、部から逃げ出す。しかし野球そのものは好きで、やがてまじめに練習に参加するようになる。竜樹の素直になれない人柄を理解しており、なかなか練習に参加しない竜樹が部に出てきやすくするため、部員不足で野球部が困っているから助けてくれと、竜樹をうまく乗せて練習に参加させることに成功する。

国都 英一郎 (こくと えいいちろう)

私立帝徳高校に通う1年生の男子。野球部に所属している。右投左打で、ポジションは一塁手。1年生にして4番を担う天才バッターとして知られている。七三分けの短髪とたれ目が特徴で、身長184センチの長身。まじめで責任感が非常に強く、必ず約束を守る誠実な性格をしている。この人柄から部員はもちろん、目上の人たちからも尊敬されている。しかし一方で、理想が高く潔癖な一面があり、冗談が通じない。シニアリーグ時代のある日、要圭と清峰葉流火の所属する宝谷シニアリーグと対戦し、圭と葉流火の圧倒的なプレーにほれ込む。試合後、いっしょに帝徳高校に進学して野球部に入り、共に甲子園を目指そうと声をかけるが、その願いは叶わなかった。そんな高校1年生の春、圭と葉流火が新設校の小手指高校野球部でプレーしていると知り、非常に驚く。そのため彼らの現在の実力を知りたいと、監督の岩崎に頼み込んで練習試合を組んでもらうが、その試合で変わり果てた圭を目撃。現在の圭が記憶喪失であることを知らないまま、試合中の圭のちょっとした悪ふざけに激怒し、深く失望する。誕生日は5月23日で、血液型はA型。

飛高 翔太 (ひだか しょうた)

私立帝徳高校に通う2年生の男子。野球部に所属している。右投右打で、ポジションは投手。髪の毛全体をツンツンに立てた短髪で、185センチの長身。太眉の丸顔でかわいらしい顔立ちをしているが、飛高翔太自身は丸顔なことを気にしている。陽ノ本当を超えるほどの球質の重さを誇る、速球派のパワーピッチャー。すでにプロ野球のドラフト候補にもなっているが、翔太はつねに自らのプレーに対して思い悩んでおり、その結果、極端に卑屈で自分に自信のない性格になってしまった。これにより、周囲が心配して翔太を褒めても、叱っても、慰めても、勝手に悪い方に解釈するため、非常に面倒な人物として知られている。しかし思い悩みすぎた結果、ストレス値がマックスになると思考がショートして開き直り、ピッチャーとしての実力を最大限に発揮する。誕生日は3月6日で、血液型はAB型。食べ物の好き嫌いが多い。

陽ノ本 当 (ひのもと あたる)

私立帝徳高校に通う2年生の男子。野球部に所属している。右投右打で、ポジションは投手。金髪のウルフショートヘアで、195センチの長身。明るくおおらかで人当たりのいい性格をしており、野球部のムードメーカー的な存在で、陽ノ本当がいるとチームの雰囲気が明るくなることから、部員から非常に慕われている。また、細かいことを気にしないタイプのため、扱いづらい性格の飛高翔太に対しても、まったく気にせず接している。走攻守の三拍子がそろっているため、投手としての才能はもちろんのこと、打者としても優れた成績を残している。また、楽しそうに野球する姿は人々を魅了し、ファンも多い。誕生日は4月4日で、血液型はB型。食べ物の好き嫌いはなく、よく食べてよく眠った結果、素晴らしい体格を手に入れた。

岩崎 (いわさき)

私立帝徳高校野球部で監督を務める中年の男性。短髪を撫で付け髪にし、がっしりとした体型で頰が少しこけている。つねに冷静で厳格な名将として知られており、選手や野球部関係者からの信頼も厚い。しかし、常勝の野球部にしようと思うあまり優秀な選手に執着しがちで、シニアリーグで活躍していた要圭、清峰葉流火、藤堂葵、千早瞬平を全員入部させ、国都英一郎を加えて最強の1年生五人組をつくろうとした。英一郎以外の四人が推薦入学を断ったことでこれは叶わなかったが、小手指高校野球部に四人全員が入部したことを知って驚愕。このショックで情緒不安定になり、以来、四人を見かけたり四人の話題を聞いたりすると、突然取り乱してまるで若者のような口調となる。

巻田 広伸 (まきた ひろのぶ)

私立氷河高校に通う1年生の男子。野球部に所属している。右投右打で、ポジションは投手。富士見シニアリーグ出身で、千早瞬平とは当時からの知り合い。頭頂部とそれ以外で髪色が違う独特の短髪で、目つきが悪く、身長183センチの長身。野球においても人間関係においても直球勝負で、よくも悪くも裏表のない性格をしている。しかし無意識のうちに、自分が優秀であることをアピールしたがるため、無神経な発言で相手を辟易させたり、傷つけたりしてしまうことがある。その反面、自らが単純すぎるあまり相手の発言も言葉どおりに受け止めてしまうため、からかわれたり、騙されやすかったりする。特に技巧派の千早瞬平とは、野球選手としても人間としても正反対のタイプであるため、シニアリーグ時代はその実力を認めつつも素直になれず、嫌みばかり言ってライバル視していた。そんな中、努力し続けることに疲れた瞬平が突然シニアリーグをやめてしまったことを、今でも納得できずにいる。桐島秋斗にはいつもからかわれており「単細胞」や「ゴリラ」など言われ放題だが、巻田広伸も負けておらず、先輩の秋斗に対して強気に接している。ただし、決して仲が悪いわけではない。誕生日は7月14日で、血液型はO型。

桐島 秋斗 (きりしま しゅうと)

私立氷河高校に通う2年生の男子。野球部に所属している。左投左打で、ポジションは投手。前髪を目が隠れるほど伸ばした短髪で、右側は下ろして左側は撫で付けた髪にしている。身長178センチで、クールな性格をしており、ひょうひょうとした雰囲気を漂わせている。大阪から東京の氷河高校にやって来た野球留学生で、関西弁で話す。お笑いが大好きで強いこだわりがあり、お笑いのセンスのない面白くない後輩は、ついイジってしまう。現在のイジりのターゲットは巻田広伸だが、先輩であるはずの桐島秋斗に対して強気に接してくる広伸のことも受け入れており、仲が悪いわけではない。ピッチングスタイルは変化球も多いが直球は一級品で、2年生にして氷河高校の絶対的エースとして君臨しており、プレッシャーにも動じない。誕生日は1月24日で、血液型はAB型。

高須 (たかす)

星明学園に通う2年生の男子。野球部に所属している。右投左打で、ポジションは左翼手。大泉シニアリーグ出身で、藤堂葵とは先輩後輩として親しい。短髪のたれ目で、おおらかで心優しい性格をしている。野球選手としての実力は今一つながら、気持ちの入った熱いプレーを信条としているため、チームメートからの人望は厚い。また、気持ちを言葉で表現するのがうまく、シニアリーグ時代に葵が悩んでいた際も、的確なアドバイスで解決に導いた。そのため、葵からは非常に慕われていたが、これは高須のもともとの人柄というよりも、いい先輩であろうと努力したところが大きい。中学3年生のある日、要圭と清峰葉流火の所属する宝谷シニアリーグと対戦したのを機に葵がイップスを発症し、シニアリーグを退団した時の、変わり果てた彼の姿にショックを受けて声をかけられなかった。現在もこのことを後悔していたが、高校2年生のある日、バッティングセンターで偶然葵を目撃。一度は気まずさからその場を去ろうとするものの、勇気を出して葵に声をかける。それからはかつてのような良好な関係を築き、甲子園の地方大会では、第3回戦で対戦することになる。

津田 (つだ)

星明学園に通う2年生の男子。野球部に所属している。左投左打で、ポジションは投手。大泉シニアリーグ出身で、高須とは当時から親しく、藤堂葵の先輩でもある。短髪で目に生気がなく、クールで無機質なロボットのような印象の人物。そのため感情表現に乏しく、何を考えているのかわかりづらい。まじめな性格でつねに努力を怠らず、堅実なプレーを信条としている。そんなたゆまぬ努力の結果、星明高校のエースとなるまでに成長した。『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の大ファンで、長期間休まずに継続して連載を続けているように、自分も継続して努力のできる人間になりたいと願っている。しかしその志の一方で、作者の秋本治と作品の主人公である両津勘吉を混同している節がある。津田自身が両津勘吉のようになりたいと言っている時は、実際は秋本治のようになりたいという意味合いで言っていることが多い。

清峰 葉流馬 (きよみね はるま)

とある会社に勤務する若い男性で、清峰葉流火の兄。極度の恥ずかしがり屋で、要圭たちが清峰家を訪問した際には、馬の頭を模したかぶり物で顔を隠していた。非常に礼儀正しい実直な性格ながら、葉流火に対してだけは容赦がない。子供の頃から葉流火を奴隷扱いし、厳しく接してきたため、葉流火からは非常に恐れられている。趣味はアダルトビデオの鑑賞および収集で、7000本以上のコレクションを保有している。また野球にも詳しく、野球とアダルトビデオの両方に精通した結果、相手が野球選手であれば、そのプレースタイルから好みのアダルトビデオの傾向を即座に言い当てることができるという特技を持つ。

要圭の母親 (かなめけいのははおや)

パートタイマーとして働く中年女性で、要圭の母親。ウルフカットヘアで、たれ目でやや太めの体型をしている。明るく社交的で世話焼きな性格で、よくも悪くも細かいことを気にしない。そのため、圭の記憶喪失については心配しつつも、基本的には深刻にとらえないようにしている。ややデリカシーに欠けるところがあり、圭の部屋を掃除して圭のプライバシーにかかわるものを掘り起こしては激怒されている。そのため圭には「ババア」呼ばわりされることもあるが、まったく気にしておらず、意外と家族仲はいい。

書誌情報

忘却バッテリー 17巻 集英社〈ジャンプコミックス〉

第1巻

(2018-09-04発行、 978-4088816036)

第14巻

(2022-09-02発行、 978-4088832524)

第15巻

(2023-03-03発行、 978-4088834429)

第16巻

(2023-08-04発行、 978-4088836171)

第17巻

(2024-01-04発行、 978-4088837604)

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