あらすじ
はじまり
予期せぬ徹夜明けとなった天草亮は、めまいを起こしながらも出社のため、ふらふらしながら駅を歩いていた。途中、行きかう人とぶつかった亮は、階段から転げ落ちそうになったところを、偶然通りかかった女子高校生・有馬一花に助けられる。顔色の悪い亮を心配した一花は、彼が朝食を食べていないことを知ると、自分の弁当を亮に手渡し、走り去ってしまう。その後、出社した亮は一花が自分の妹・天草理緒と同じ学校の制服を着ていたことを思い出し、これも何かの縁とありがたく弁当を頂くのだった。その夜、亮が会社から帰宅すると、そこにはなぜか一花の姿があった。一花が理緒の友達であることを知った亮は、弁当と命を助けてもらったことへの礼がしたいと申し出る。もともと、女性に不自由しない人生を送ってきた亮は、いつもの調子で、自分とのデートやキスをお礼とするのはどうかと提案するが、一花はそんな亮を「気持ち悪い」の一言で一蹴。女性から冷たい言葉を掛けられた経験がなかった亮は、今まで培ってきた女性に対するノウハウがまったく通用しない一花に一瞬で心奪われ、逆にときめいてしまう。それ以来、亮は迷惑がる一花に対して熱烈なアプローチを繰り返し、一方の一花は、一歩間違えばストーカーになりかねない亮と距離を置くため、辛辣な言葉で彼をはねのけ続ける。
亮と多丸
有馬一花の高校の文化祭の日。人けのない階段で、ふいに天草亮に抱きしめられた一花は、表面上は冷たくあしらいながらも、内心はドキドキしていた。後日、一花はクラスメートの多丸快が、自分が大好きなアニメ「フォアワード・ワールド」の原作小説を読んでいるところに遭遇する。一花は同じ作品が好きな人がいたことに喜び、興奮して話し掛けるが、突然多丸から、天草理緒の兄と付き合っているのかと質問を受ける。多丸は文化祭の日に、亮に抱きしめられる一花の姿を偶然目撃していたことを明かし、心配するそぶりを見せるのだった。一生懸命言い訳し、誤解を解こうとする一花に対し、多丸は一花が亮にからかわれているように見えたと説明したうえで、大人の遊びを真に受けない方がいいのではないかと忠告する。思ってもみなかった言葉に、一花は自分がその可能性を考えなかったことに思い悩み始める。そんなある日、理緒の家に勉強をしに訪れていた一花は、亮に対し、自分の反応を見て面白がっているのではないかと切り出す。いつもならどんな言葉にも笑顔を見せる亮だったが、一花のその言葉にはショックを受けた表情を見せ、自分はいつでも真剣であると一花に告げると、その場から立ち去ってしまう。その瞬間、一花は亮を傷つけてしまったことに気づく。
修学旅行
修学旅行で訪れた沖縄の水族館で、天草理緒たちとはぐれてしまった有馬一花は、連絡を取ることもできず困っていた。そんな中、一花の前に多丸快が姿を現し、一人でいる者同士、いっしょに見て回ろうと一花を誘う。そこに天草亮の友人で、修学旅行のカメラマンを務める益田が現れ、二人に声を掛ける。一花と多丸の様子を後ろから見ていた益田は、そこで亮が修学旅行中の一花を必要以上に心配していたことを思い出し、彼の懸念材料が多丸にあったことを確信する。
一方、沖縄について行くこともできず、一花のいない寂しさを感じながら日常を過ごしていた亮は、社内で同僚の松島有枝と出会い頭にぶつかってしまう。その拍子に散乱した彼女のポーチの中身をいっしょに拾っているうちに、亮はアニメ「フォアワード・ワールド」のキャラクター「トウホウ」のアクリルキーホルダーを目撃する。かつて同じものを一花にプレゼントしたこともあり、これは亮にとってもなじみ深いものであった。アニメオタクである事実をひた隠しにしていた松島は、同僚の亮に知られてしまった事態に危機感を感じるが、このことを秘密にするように頼むうちに、彼もこのアニメに詳しいとを知り、亮のことを意識し始めてしまう。
デート
有馬一花は、久しぶりに会った天草亮と映画を観に行くことになった。だが、修学旅行以来、何となく多丸快のことが気にかかる一花は、大人としての余裕を見せる亮の姿を多丸と比べてしまっていた。そして亮の気遣いの一つ一つに女性とのデートに慣れていることを感じ、自分の子供っぽさを気にし始めるようになる。一方、亮の方も、修学旅行の自由行動日に一花が多丸と二人だけで回ったことを知り、心がざわついていた。一花に直接聞こうとは試みるものの、思うように話を切り出すことができず、亮は臆病になっている自分に気づく。
その頃、会社では亮の雰囲気が以前と変わって話しやすくなり、明らかに印象がよくなったのは、年上の彼女がいるからだという噂が広がっていた。亮に思いを寄せる松島有枝は噂の真相を探るため、普段飲み会にはあまり参加することのない亮を、同期での飲み会に誘う。そこで松島は、亮に関する噂が真実でないと知るが、同時に、彼が片思い中であることも知ってしまう。聞きたくもない片思い話を本人から聞き、落ち込みかける松島だったが、落ち着いて考えればまだ彼は片思いの段階にある。それならば自分にも可能性はあるはずと奮起した松島は、亮を振り向かせようと決意する。
バレンタインデー
バレンタインデーが近づく中、有馬一花は、連日にわたる天草亮からのチョコレート催促に頭を痛めていた。仕方なくチョコレートを準備することにしたものの、一花は大人の男性に対し、どんなチョコレートを贈ったらいいか悩んでいた。そんなある日、一花は益田から、亮が高校時代にバレンタインデーにもらったチョコレートがきっかけで、トラウマを抱えていることを聞かされる。そこで一花はチョコレートではないものをプレゼントすることにし、悩んだ末に「行動」で気持ちを示そうと考える。やがて迎えたバレンタインデー当日、一花は出社前の亮のもとを訪れ、彼の腕の中に飛び込んで抱きしめることで、チョコレート代わりのプレゼントとするのだった。その後、学校で友チョコを配り始めた一花は、多丸快から本命チョコがほしいという言葉と同時に、「付き合ってほしい」と思いを打ち明けられる。思いがけない多丸からの告白に、動揺を隠しきれない一花は、あらためて自分の気持ちと向き合い始める。一方、会社では、亮はチョコレートを受け取らないと同僚から聞いたことで、松島有枝は持参したチョコレートを渡せずにいた。だが残業ですっかり遅くなった帰り道、松島は駅の改札口で、先に帰ったはずの亮の後ろ姿を発見。覚悟を決めた彼女は亮をなんとか呼び止め、チョコレートを渡すことに成功する。
告白
多丸快からの告白に真剣に向き合った有馬一花は、自分の気持ちに答えを出した。土曜日に駅で待ち合わせをした二人は、公園に場所を移し、さっそく本題に入る。一花は、多丸の告白を嬉しかったとしながらも、ほかに好きな人がいることを打ち明け、多丸との交際を断る。だが、多丸といっしょに過ごす時間が楽しいことから、これからも友達でいてほしいと申し出た。嫌われるよりも避けられる方がつらいと多丸はそれを受け入れるが、自分の気持ちの整理がつくまで一花を好きなままでいることを伝えた。話がひと段落して帰路に就く中、いつもどおりの楽しい雰囲気となった二人は、駅で偶然に天草亮と遭遇する。亮が二人の様子を見てデート中なのかとからかうと、返答に困った一花の代わりに多丸が口を開く。そして多丸は、一花に振られたことを正直に亮に明かし、勢いに任せて一花を悲しませないでほしいと強気の言葉を亮にぶつける。上から目線の発言に亮は応戦しようとするが、歳の差を武器に大人ぶるのは逆に大人げないという多丸からの忠告を受け、言葉を飲み込む。一方、松島有枝は、亮がバレンタインデーにチョコレートを受け取ってくれたことをきっかけに、亮に自分の気持ちを打ち明けることを決意。そして、会社帰りに亮を呼び出していっしょにバーで飲み始める。
ホワイトデー
有馬一花は、ホワイトデーのお返しに天草亮からスイーツビュッフェに誘われた。そしてお店では、目の前に広がる数々のスイーツに一花はテンションが上がりっぱなしとなる。一方の亮も、そんな一花を見てひそかにカメラを構え、わかりやすくテンションを上げるのだった。そんな中、一花は亮が初めてスイーツビュッフェに来たことを知り、ほかの女の子と何度も来たことがあると思ったと素直に話す。その言葉に亮は嫉妬しているのかと、いつもどおりの調子で浮ついた様子を見せ、さらにそんな亮の言葉に素直な反応を見せる一花に、心をわしづかみにされてしまう。こうして楽しい時間を過ごしていた二人は、不意に亮の会社の同僚の女性たちに声を掛けられる。女性たちは、亮といっしょにいる一花に気づき、亮の妹かと声を掛ける。即座に否定しようとする亮を遮るように、一花は妹であると笑顔を浮かべる。同僚たちが去ったあと、一花は妹だとウソをついたことを亮に謝罪する。亮は一花の気遣いに感謝しながらも、一花が好きな人だと紹介したかったと自分の思いを吐露する。そして亮は、自分が一花のそばにいることで、これからも意図せず自分が知り得ないところでウソをつかせたり、気遣いの笑顔を作らせてしまったりするのではないかと心配する。しかし何度考えても、亮が辿り着く答えは一花が好きだという事実だけだった。歳の差や世間体など関係なく、一花も自分を好きになってくれないだろうかと思いつめた亮は、突然一花にキスをせまる。その頃、松島有枝は、買い物中に亮からのメッセージを受信。そこには、ホワイトデーのお返しを渡したいことと、伝えたいことがあると記されていた。
好きな人
有馬一花は、お花見の席で天草亮に自分の気持ちを告白しようとするが、タイミング悪く遮られる形となり、告白できずに終わる。それ以来、亮は態度を一変させ、一花から距離を置き始める。半年間毎日欠かさず続けていた電話連絡もいっさいなく、顔を合わせることもなくなってしまった状況に不安を感じた一花は、天草理緒と百合子からの助言を受け、思い切って自分から亮に電話することにした。だが、久しぶりに聞いた亮の声はそっけなく、デートに誘っても忙しいの一点張り。そして電話はしばらくできないし、かけられても出られないかもしれないと冷たくあしらわれる。その言葉に一花は傷つき、それ以上何も言えなくなってしまう。実は亮は、自分に向けられた一花の好意に気づいた途端に過去の自分の行いを思い出し、こんな自分が好きな人を本当に大切にできるのかと自問自答し、自信をなくしていたのだ。そして亮は一花から身を引こうと決意し、そのことを益田に打ち明ける。しかし話を聞いた益田は、逃げ腰な亮に喝を入れるべく鉄拳を見舞う。その強力な後押しもあり、亮はもう一度一花と向き合うことを決意する。一方の一花は亮の変化に、これ以上どうにもできないと半ばあきらめかけていた。元気をなくした一花を助けたいと、理緒はいつもの調子で亮に連絡を取ろうとするが、そのお節介をあらためて一花から指摘され、売り言葉に買い言葉でケンカとなってしまう。そんな中、一花は自分では亮に釣り合わないと思いの丈を理緒にぶつけるが、理緒はそんな一花の後ろ向きな思いに寄り添い、励ますのだった。一花はそんな親友の存在に感謝しながら、もう一度亮と会う約束を交わし、今度こそ自分の気持ちをぶつける覚悟を決める。
メディア化
テレビアニメ
2021年4月から、本作『恋と呼ぶには気持ち悪い』のテレビアニメ版『恋と呼ぶには気持ち悪い』が、TOKYO MXほかで放送された。監督は中山奈緒美、脚本は柿原優子、池田ゆきが務めている。キャストは、有馬一花を小坂井祐莉絵、天草亮を豊永利行、天草理緒を長谷川玲奈、多丸快を榎木淳弥、益田を木村良平、松島有枝を花澤香菜が演じている。
コラボカフェOTAラボ
2021年2月10日~2月23日にアニぱらCafe渋谷店、2021年6月25日~7月13日に新宿マルイアネックス・渋谷マルイにて開催。
登場人物・キャラクター
有馬 一花 (ありま いちか)
高校生の女子で、天草理緒の親友。ある朝、駅で階段から転落しそうになっていた天草亮を助けたことがきっかけで、亮から一方的に想いを寄せられ、猛アプローチを受けることになる。基本的には優しい性格で、困っている人を放っておけないタイプ。しかし、亮に対してはなぜか必要以上に冷たく、厳しい態度を取ってしまいがち。当初は全力で亮を拒絶していたが、何かと時間をともにするうちに、亮の自分に対する情熱にほだされていく。 アニメや漫画、ゲームが好きなオタク気質で、発言の端々に、オタクっぽさや中二病的な要素を含んでいる。また、思ったことが、つい口から出てしまうことが多い。
天草 亮 (あまくさ りょう)
天草理緒の兄。ある朝、体調不良と混雑が重なり、駅で階段から転落しそうになったところを有馬一花に助けられ、それがきっかけで、一花に想いを寄せるようになる。自分を受け入れようとしない一花に対して、アプローチの方法はかなり強引で、一歩間違えば、ストーカーになりかねない状態にある。勤務先では課長代理を務めており、社内の女性からは密かに人気が高い。 基本的にはドMな気質で、冷たい言葉や態度を取られると、逆に燃え上がる。もともとは自分から告白したこともなく、女性に不自由したことがない女癖の悪いタイプだったが、一花に出会って、すべてが変わった。
天草 理緒 (あまくさ りお)
天草亮の妹で、有馬一花の親友の女子高校生。身長は166センチで、亮と似た雰囲気を漂わせたスレンダーなクールビューティー。クズで変態な亮の本質を知っていながら、「一花と亮が付き合ったら面白い」という興味本位だけで亮に協力して、一花との仲を取り持とうとする。亮とは年齢差が10歳あり、自分が幼かった頃に亮が何かとトラブルを持ち帰ることが多かったため、亮に対して苦手意識を持っていた時期があった。しかし一花との出会いをきっかけに、さまざまな変化を見せ始めた亮との関係はいい方向に変化し、現在は兄妹仲も良好。そんな亮と一花をそばで見ており、マイペースな二人にお節介を焼くことが多くなるが、その結果多方面に迷惑をかけ、ひそかに反省することもしばしば。中学生の頃は反抗期真っただ中で、父親からは亮が卒業した進学校への入学を勧められていたが、父親と亮への反抗心から現在の学校への入学を決めた。相撲好きで、理想の男性のタイプは力士。そのため、場所ごとの力士のチェックも怠らない。将来の夢は弁護士になることで、高校卒業後は法学部のある大学に進学を考えている。
女性 (じょせい)
色気たっぷりの大人の女性。以前に天草亮と何らかの関係を持ったと思われる。喫茶店で偶然亮を見かけ、話しかけた。亮の方は彼女の名前すら覚えていなかったことから、行きずりの関係にすぎないと思われる。喫茶店で亮と同席していた有馬一花に対して、亮の女癖の悪さを力説し、亮との付き合いをやめるように忠告する。
益田 (ますだ)
天草亮の中学時代からの友人で、フリーカメラマンの男性。最近、亮が女子高生に手を出しているという噂を聞き、その真偽を本人に確かめた。亮の本質を知っているからこそ、一途な片思いをしているとは信じられず、つい茶化してしまう。亮を変えた有馬一花の存在に興味を持つ。
瑠璃 (るり)
高校生の女子で、有馬一花、天草理緒、五月の友人。長身で眼鏡をかけ、髪型は腰まで伸びるストレートヘア。一花とは同じ趣味を持つオタク友達ということもあって特に親しく、「るーちゃん」と呼ばれている。好きな食べ物は羊羹。現在、大学生の彼氏がいるが、理想のタイプは紅茶を嗜むような、落ち着いた初老の紳士。理緒の自宅で天草亮を見て以降、亮のイケメンぶりにのめり込んでおり、五月と一緒になって、ミーハー根性が全開になっている。
五月 (さつき)
高校生の女子で、有馬一花、天草理緒、瑠璃の友人。好きな食べ物はおにぎり。ヘアスタイルはベリーショートで、一見少年のような風貌ながら巨乳の持ち主。最近別のクラスの男子生徒から告白されたが、友達という関係から、ということになり、落ち着いた。日々ときめきを求めており、理想のタイプは爽やか系のイケメン。その中身にも細かい指定があり、語りだすと止まらなくなってしまう。 理緒の自宅で天草亮を見て以降、亮のイケメンぶりにのめり込んでおり、瑠璃と一緒になって、ミーハー根性が全開になっている。
多丸 快 (たまる かい)
高校生の男子で、有馬一花のクラスメート。身長165センチ。一花とは、アニメ「フォアワード・ワールド」の原作小説を持っていたことがきっかけで、本の貸し借りをするようになり、なかよくなった。一花にはひそかに思いを寄せているが、一花と親しい天草亮のことを知り、その存在を気にするようになり、何かとライバル視するようになる。一花とはいっしょに出かけたりと、共に過ごす時間も増えていく中、バレンタインデーにチョコレートを渡されたことをきっかけに自分の思いを伝えた。好きな人がいるという一花に、それでもいいから付き合ってほしいと食い下がるものの、結局断られてしまう。この時、一花からはいっしょにいる時間が楽しいとも伝えられ、これからも友達でいてほしいと切願される。多丸快は、自分の気持ちの整理がつくまで一花を好きでいさせてほしいと伝え、なんとなくギクシャクしながらもこれまでどおりの関係を続けることになった。中学時代はサッカー部に所属していたが、現在は文芸部に所属している。漫画はスポーツマンガが好きで、ゲームはソーシャルゲームとFPSが好き。面倒見がよく、3歳違いの妹がいる。将来の希望やチャレンジしたいことがないため、高校卒業後は文系の大学に進学を考えている。
百合子 (ゆりこ)
有馬一花の母親。娘に対してアプローチをし続けている様子の天草亮に興味を持っており、2人の関係を面白がっている。ある時、風邪をひいて寝込んでいた一花の見舞いにやって来た亮と初めて対面し、玄関で話し込んでいるうちに意気投合。すっかり亮の魅力に取りつかれてしまう。
松島 有枝 (まつしま ありえ)
天草亮と同じ会社で広報を務める女性。会社の入社面接試験の帰り際にパンプスのヒールが折れてしまい、困っていた際に同じく面接に来ていた亮と知り合う。その時、亮が代わりのパンプスを買ってきてくれたことで助けられ、お互いの採用を願い合った。のちに入社式で亮に再会し、部署は違うものの同期となった。容姿端麗ながら実はアニメオタクで、現在はアニメ「フォアワード・ワールド」にはまっており、部屋にはフォアワード・ワールドの原作小説だけでなく、ポスターやコンプリートしたアクリルキーホルダーが飾られている。アニメオタクであることを、仕事関係のみならず友達にもひた隠しにしていたが、ひょんなことから亮に知られてしまう。入社後からいつしか近寄りがたい存在になってしまった亮に苦手意識を持つようになっていたが、アニメオタクであることを同僚に秘密にしてもらう約束をしてから、亮のことを意識するようになり、思いを寄せるようになる。同僚の女性社員たちからは、名前をもじって「アリエッティ」と呼ばれているが、松島有枝自身は子供じみていることを理由に嫌がっている。有馬一花とは、フォアワード・ワールドの新刊を購入するために書店に行った際、偶然にも推しキャラクターの「トウホウ」がディスプレイに映し出されたタイミングで、反応がシンクロしたことをきっかけに話しかけられ、知り会うこととなった。一花には好印象を抱いているが、一花が亮の片思いの相手であることは知らない。亮への思いは日に日に強くなり、バレンタインデーにチョコレートを渡したことをきっかけに、告白を決意した。亮に思い人がいることは知っていたが、それでも亮に好きになってもらうための努力がしたいと、亮への気持ちを打ち明けた。身長は159センチで、学生時代はバレーボール部に所属していた。地方出身で、年末年始には実家に帰省している。オタクの姉とスポーツマンの弟がいる。
渡辺 (わたなべ)
天草亮と同じ会社に勤めている男性。亮の直属の部下にあたる。実は10歳年上の彼女と交際中で、現在は些細(ささい)なことがきっかけでケンカしている。そんな中、仕事中にもかかわらず、社内で彼女と電話をしているところを亮に見られてしまう。その時は特に咎(とが)められることもなく、休憩時間に亮に誘われてコーヒーショップへ行くことになり、彼女との関係に悩んでいることを打ち明けた。年上の彼女が自分のことを明らかに年下として扱うため、それが原因となりケンカとなった。彼女はすぐに謝ってくれたものの、そんな彼女の気遣いがさらにカチンときてしまい、逆にひどいことを言ってしまった。彼女との年齢差については、ふだんは気にしないようにしているが、ふとした時にどうしても気になってしまうことがある。周囲からの批判的な反応や、彼女が気にしていることを敏感に感じてしまうことがあり、疲れを感じている。しかし亮から、それでも好きかと質問されたことで、改めて渡辺自身の彼女への気持ちを再認識することになった。
天草 好乃 (あまくさ よしの)
天草亮と天草理緒の母親。子供思いの優しい性格で、家族からも慕われている。なんの脈絡もなく突拍子もない行動を取ることや、不器用な一面は理緒と似ている。仕事中心の生活を送っており、海外出張が多いために家は不在がちで、亮や理緒に不自由な思いをさせていることに申し訳なさを感じている。しばらくぶりに自宅に戻り、夫のお父さんを交えた家族四人での楽しい時間を過ごすことになる。亮が理緒の友達の有馬一花に片思いをしていることは知っており、温かい目で見守っている。亮や理緒、一花、益田が花見に行く際には手作り弁当を持たせたが、その中身は切っていない太巻き4本で、うち1本はわさび特盛だったことでみんなを驚愕(きょうがく)させつつも楽しませた。
お父さん (おとうさん)
天草亮と天草理緒の父親。頑固な性格で、子供たちに自分の思いを強制させている。仕事の都合上、現在家族と離れて暮らしているが、しばらくぶりに自宅に戻って来たことで、家族四人での楽しい時間を過ごすことになる。昔から亮に対しては特に厳しく、理緒には甘かったこともあり、亮とは折り合いが悪かったが、久しぶりに再会しても状況は変わらなかった。ある時、理緒と妻の天草好乃の話を立ち聞きする形で、亮が理緒の友達に片思いをしていることを知る。これまでの亮の女性関係を把握しており、思うところがあったため、その事実を確認しようと「理緒の友達にまで手を出したのか」と亮に辛辣な言葉を投げかけ、亮の話を聞こうともせずに亮の生き方を批判した。基本的に亮が何か言い返そうとしても聞く耳を持たず、親に対しての口の利き方がなっていないと、まともに取り合うことはなく、昔から亮を抑圧し続けてきた。