概要・あらすじ
両親のすれ違い生活の末、母親に引き取られた遠藤香菜だったが、その母親も仕事で海外にいることが多いため、角島県の小舟町に住む祖母の吉本セツコに引き取られた。引っ越して来たばかりの小学5年生のとき、町民体育大会のかけっこで優勝した香菜は、賞品の授与をしてくれた町長港航一(41歳)に一目惚れ。
年の差は勿論のこと、やけに仲の良いロシア人とのハーフの友人入市アレクサンドルというライバルの存在や、小舟町の町興しの方法で2人は食い違い、恋の行方は前途多難。
登場人物・キャラクター
遠藤 香菜 (えんどう かな)
両親の不仲から、田舎の小舟町に住む祖母吉本セツコに引き取られた中学1年生の女の子。小舟町町長、港航一に運動会でメダルを貰ったときから彼に恋していた。「東京者」といわれて孤立していた香菜だったが、少し変わり者のクラスメイト篠原晶と「友達がいないもの同士」という風変わりな関係に。 一緒に行動するうちに、町長のやけに親しい友人でエロ漫画家である入市アレクサンドルの自宅に度々入り浸るようになる。少しでも町長に近づくため、早く大人になりたいと考えている。だが、大人の事情というものがどうしても理解できずに悩み、苦しむ香菜だったが、人の流出に歯止めが聞かない小舟町のために頑張る町長と気持ちは同じ。 小舟町を愛する気持ちは誰にも負けないと思っている香菜は、中学生の自分にも出来ることを探して、地元の知る人ぞ知る特産品や手作り商品をネット販売する活動を始める。それが町長のやり方と対立することになるとはつゆ知らず。ツインテールにクリクリした瞳がチャームポイントのかなり可愛い少女。 だが、かなり天然をこじらせていて、町長への片思いに妄想が止まらない。胸がないことを気にして毎朝牛乳をがぶ飲みしている。
篠原 晶 (しのはら あきら)
主人公遠藤香菜のクラスメイトで、地元の人間にも関わらず風変わりなものの考え方をするため、友達がいない。幼馴染の松本陽とは腐れ縁で、どつき漫才をする仲。本と漫画が大好きで、とあるエロ漫画家の大ファンである。そのエロ漫画家・入市アレクサンドルが自分の住む小舟町に住むと香菜から教えてもらうなり、山奥にひっそりと佇むその住まいに乗り込んで行く行動派。 自分をからかって遊ぶ入市に「エロオヤジ」と連呼して咬み付いてばかりだが、漫画家を目指している晶は、入市の姿にプロがどういったものなのかということを教えられることになる。小舟町の町長港航一と入市の本当の関係にいち早く気付き、町長に恋している香菜がそれを知った時にどうなるのかと心配している。 真っ直ぐの黒髪をピンで留め、メガネをかけた根暗な少女といった印象だが、女子力に生きるといってイメチェンしたらたちまちクラスの男子の注目を集めるほどの美少女に変身。そのことが、町の特産品を販売するための協力者を得るきっかけになったのだが、イメチェンにはすぐに飽きてしまう。
港 航一 (みなと こういち)
小舟町のやり手の町長。祖父もまた以前小舟町で町長をしていた。郵便局長の甥で郵便局が自宅になるが、同じ町に住む友人でエロ漫画家の入市アレクサンドルの自宅にちょくちょく泊まり込んでいる。戦中、軍艦の部品製造や漁業などで栄えていた町が衰退していく一方なのを、自分の力で何とかしたいとつねに思っている。 例えば、初夏の頃に町を上げて行なわれる「港まつり」では、テレビ中継を入れ、有名歌手を招致し神輿の後に町を練り歩く山車に戦艦型のものを加えたり、小舟町を舞台にした映画の製作など精力的に活動する。最終的な目的は、外国資本の工場を設立、また外国人向けの別荘地を整えて、小舟町を工業地兼リゾート地として再興しようと計画している。 41歳という年齢に見合わない外見の若さ、爽やかさは、晶をして「うさんくさい」といわしめるほど。友人入市の好き嫌いを完全に把握、魚の小骨を取ってあげる、ナイトガウンを2人で共有する、ベッドは1つしかないなど、怪しい関係。
入市 アレクサンドル (いりいち あれくさんどる)
小舟町町長の港航一の親しい友人にして、売れっ子のエロ漫画家。父親がロシア人のハーフである。自称子供嫌いで、初めて自宅を訪れた主人公の遠藤香菜に対して酷く素っ気ない態度を取るが、その後、篠原晶を連れてやって来た時には、町長に「とても機嫌がいい」といわれるくらいには晶を相手におちょくって楽しんでいる模様。 晶が漫画家を目指しているのを知って、厳しい態度でプロ根性を叩き込むことも。元外国人部隊の兵士でフランス軍に所属していて、そこでは恋人のアンリも一緒だった。だが、追い詰められた一般人の少年にその恋人を銃撃されて失い、それが心の傷となって入市を恋愛に対して臆病にさせた。 金髪碧眼に無精ひげを生やし、刺青を入れた身に着流しを纏うのが彼の普段着。髭を剃り、スーツで身を固めると、すれ違う誰もがモデルかと思うほどの美形。町長が町の人たちに混乱をもたらす政策を取るのを密かに心配している。
松本 陽 (まつもと よう)
篠原晶の幼馴染みで、何かと主人公遠藤香菜にちょっかいを出してくる少年。ちょっと頭の悪い態度を取っては、しょっちゅう晶にどつかれている懲りない部分も。地元の子供だが、他の若者と同じように高校進学は地元を出て都会へ、就職も東京にすると決めていた。しかし、片思いしている香菜が町興しのために何かできないかと模索し始めると、知り合いの東大生から経済学を学び、率先してその活動を手伝うようになる。 そこで、頭の悪いフリをしていただけだったということが実証されて行く。学校のクラブから始まった地元の商品を売りさばく活動を、れっきとした会社経営に持って行くことまで考えている。天然パーマにひょろっとしたスタイルの、一見頼りなさそうな少年。 まだ幼くて、町長に片思いしている香菜に振り回されっ放しだが、ときおり断固とした態度を取ることも。
山下 アヤ (やました あや)
主人公遠藤香菜や篠原晶のクラスメイト。父親は町の有力者である山下水産会社社長。町長のやることなすことすべてに反対の父親に影響されて、町興し推進派として見られている「東京者」の香菜に何かとつっかかる少女。昔から山下の家を継ぐことを両親からいい含められ、うんざりしている。 本当は東京に出て芸能人になるのが夢。小舟町を舞台に撮影される映画で、ヒロイン役を香菜に取られてその嫉妬心はさらに強まったが、小舟中学校で行なわれる学園祭の催し物である演劇で、香菜と協力することになってから、少しずつお互いを理解するようになる。ぽっちゃり体型にゲジ眉タラコ唇、と美少女とはいい難い容姿。 町の有力者を父に持つといって、学校では取り巻き連中を連れて、金持ちであることをアピールするような嫌味な子供。だが、小舟町全体がこのまま仲違いを続けるのはよくないことだとアヤ自身も気付いていた。
吉元 セツコ (よしもと せつこ)
主人公遠藤香菜の祖母で、両親が仲違いしているため香菜の面倒を見ている。ド田舎のおばあちゃんの典型で、昔ながらの浴衣を香菜に勧め、手作りの漬け物をゲートボールの仲間内に配っていたりする。難しい年頃の香菜を扱いかねて手を拱いていることもしばしばだが、どんなときでもマイペースで、香菜のことを信じているいいおばあちゃん。 ときおり手拭いを姉さん被りしていて、パーマをかけた頭髪に、細い目、アゴのない首と、小柄な体型の持ち主。
姉小路 玲奈 (あねこうじ れいな)
エロ漫画家入市アレクサンドルが漫画を描いている月刊ヤンガマの編集者で入市の担当者。ダイナマイト・ボディに派手な髪型と衣裳で香菜や晶の対抗心を煽るが、編集者としてはかなりのやり手。小舟町の入市の元を訪れ、町長の港航一と知り合い、その大きな胸を駆使した激しいモーションを仕掛けるも、まったく脈なしだった。 その為、町長が女に興味がなく、入市と恋人関係であることにすぐに気付いた人物でもある。漫画家を目指す晶に持ち込みすることを勧め、町興しのために東京の報道関係者を紹介して欲しいという香菜に、小舟町のような場所は日本中何処にでもある、と現実の厳しさを教えたりもする常識人。
篠原 泉 (しのはら いずみ)
篠原晶の実の兄。黒髪短髪にメガネの何処にでもいるような高校生。写メに写った妹の晶を、バスケ友達の鈴木強に知られ、強を家に連れて来たことにより、強の兄・鈴木勉と、香奈、晶が知り合うきっかけとなる。泉自身は自分の妹が美少女だとは思っていない。
八乙女 カケル (やおとめ かける)
小舟町の町興しにと町長の港航一が招致した映画「きみとぼく」の主演男優。アイドルの割に素朴な見た目の少年。プロ意識は高く、仕事に対しては真剣。ジャミーズ事務所所属のアイドルで、平成のウルトラジャンプと呼ばれている。彼の相手役として小舟町の少女の中から映画監督に選ばれたのが、遠藤香菜だった。 アイドルとして騒がれる割に、両親が忙しくておばあちゃんに育てられたというカケルは、香菜の祖母の用意した蒸しパンのおやつを懐かしいといって喜んで平らげるような取っ付きやすい少年。台本になかったキスシーンが入ることを仕事だからと割り切ろうとしたが、香菜がきっぱりと断ったために、自分も同じだと素直に告げる。 お互いに好きな人のことを思って抱き締めあうだけの演技をした結果、スタッフたちに「ぐっときた」といってもらえるシーンになった。
山下 (やました)
町長港航一の若き秘書。黒髪の純朴そうな青年。物語の2年前、山下が早稲口大学に在籍していた時に町長と知り合い、その人となりに憧れて小舟町にやって来た。恋人の入市と何となく不仲になってしまった町長が、代わりに山下の自宅に寝泊まりするなどして、憧れはいつしか禁断の恋心に変化していた。 しかし、町長のためによかれと思って香奈たちの活動を邪魔した結果、そのやり口の汚さに辞職を余儀なくされることに。振られた腹いせに町長と入市の関係を町民に暴露、入市が外国人部隊の元傭兵であることや、エロ漫画家であることも香奈たちのせいにして吹聴したため、町長は町民のリコールから退陣を迫られるまでに追い詰められてしまった。
場所
小舟町 (こぶねちょう)
角島県にある港と山に囲まれた小さな町。戦中は戦艦の部品製造に関わり業績を上げ繁栄するが、現在ではそれも過去の話。盛んだった漁業も振るわず、若者も将来に希望を持てずに都会に出て行ってしまうような、過疎化に悩む日本のありふれた町の1つ。戦艦の部品製造のときは、町民のが賛成派と反対派に二分し、賛成した方が成功して金持ちになったがために、反対派との遺恨が現代にまで残っている。 町長が町興しのためにと計画した外国資本の工場設立や外国人向けの別荘地の開拓にも、昔ながらの賛成派と反対派が生まれ、町民たちがいがみ合う結果に繋がった。
入市邸 (いりいちてい)
『恋と軍艦』の舞台のひとつ。小舟町の中でも商店街や駅のある港側とは反対の山側に位置し、人気のない場所にひっそりと佇む。入市アレクサンドルの住居は、玄関口にウッドデッキを持つお洒落な外観。山の上にありながらすぐ下が海になっていて、内装もドラマのセットのよう。2階の仕事部屋は漫画家らしく汚くて散らかっているが、入市も町長の港航一も料理好きなため、広くて奇麗なシステムキッチンがある。 主人公遠藤香菜とその友人篠原晶は何かと用事を思い付いては、この家に入り浸っていた。
こぼの実クラブ (こぼのみくらぶ)
『恋と軍艦』の舞台のひとつ。遠藤香菜が、小舟町の町興しに中学生の自分にもできることはないかと考えた末、バザー活動のようなものの延長線として学校で商売をすることを思い付いた。「お金クラブ」ではあんまりにストレートだったため「こぼの実クラブ」と名付けられた。その名の由来は、少し前に行なわれた小舟中学校での文化祭の催し物として、香奈たち1年生が実行した劇に登場する「豊穣と町民たちの団結の象徴」である架空の果実が「こぼの実」だったことから。 まずは、香菜が毎日食べていて当たり前だと思っていた漬け物、野菜、味噌、干物など、小舟町のお年寄りたち手作りの美味しさを全国に伝えたい、と思ったところから始まった。