恋のキューピッド焼野原塵

恋のキューピッド焼野原塵

長谷川智広の初連載作品。モテないことを理由にクラスメイトからバカにされ、日常的に暴力を振るわれている男子中学生の吉丸が、恋のキューピッドを自称する元魔王の焼野原塵の助けを借りながら「一生恋人ができないまま死ぬ」という運命を変えるため、奮闘する姿を描いたラブコメディー。「週刊少年ジャンプ」2013年43号から2014年12号にかけて掲載された作品。

正式名称
恋のキューピッド焼野原塵
ふりがな
こいのきゅーぴっどやけのはらじん
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
 
ラブコメ
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あらすじ

ふつうの男子中学生の吉丸は、好意を寄せるクラスメイトの花井ユリ子をいつも離れた場所から眺めることを楽しみにしていた。しかしそれすらも、ユリ子の彼氏を自称する桐生からの暴力によって、思うように楽しめなくなっていた。そんな中、吉丸のもとに恋のキューピッドを召喚する手順が書かれた手紙が舞い込む。だがその手順に従って召喚されたのは、恋のキューピッドを自称する元魔王の焼野原塵だった。塵の恐ろしい容貌と、モラルを度外視した考え方に絶望感を抱いた吉丸だったが、その際、偶然にもユリ子と二人きりで話す機会を得る。しかし、それを桐生に知られてしまい、数少ない友人たちを人質に取られたうえに、屋上へ呼び出しを受けることになる。(エピソード「キューピッド地上に立つ」)

好意を寄せる幼なじみの女子を全国大会に連れて行くという、夢を持った柔道部員の春日の恋をサポートすべく、吉丸は未経験ながら柔道の大会に出場することになる。春日が相手チームの卑怯(ひきょう)な戦法で敗れ、あとがなくなるものの吉丸はなんとか引き分けに持ち込み、大将のゴルゴンへとつなぐことに成功する。しかし肝心のゴルゴンが、腐った弁当を食べたことで急遽(きゅうきょ)戦線離脱してしまう。相手校の大将は幼少期から柔道で名の知れた選手ということもあり絶望する吉丸だったが、そこに選手交代のアナウンスが入り、塵が姿を見せる。(エピソード「キューピッド青春を諭す」)

風紀委員長の椿潔武は、校内でもトップクラスのLOVE力を持ち、彼の恋をサポートしたことで、吉丸の運命の赤い糸は赤銅色にまで近づいていた。このままLOVE力の高い生徒の恋をサポートして成就させ続けることができれば、吉丸と花井ユリ子が恋人になれる日も遠くないと期待を膨らませる。しかし、次に恋のサポートをするのは他人とまったくコミュニケーションの取れない環境委員長の梔子今日子だった。ロンシアの目を以てしても脳内を覗(のぞ)くことすら困難な今日子を相手に、塵はまず「自分に自信を持て」と話す。だが、今日子の片思いの相手が教師の高橋だと知り、吉丸はこの恋を応援していいものか悩み始める。(エピソード「キューピッド心の交流をする」)

登場人物・キャラクター

吉丸 (よしまる)

恋実野中学校に通う1年生の男子。金髪をショートカットにしている。背が低いことを気にしており、花井ユリ子に片思いしているが、話しかける勇気もなく、遠くから眺めているだけだった。桐生に暴行されて帰宅した際に、恋のキューピッドを召喚する手順が書かれた手紙を受け取り、やけくそで実行すると焼野原塵を召喚してしまう。塵の暴力的な行動に恐怖し、周囲にも危害が及ばないよう気を配りながらも、次第に塵と打ち解けていく。ユリ子とは本来運命の赤い糸で結ばれた者同士だが、吉丸にLOVE力がまったくないことから糸が切れてしまっており、ユリ子と恋人同士になる運命が変わり、一生恋人ができないまま死ぬと断言されていた。しかし切れていた運命の赤い糸が、塵の登場によりかろうじて糸の形になったことをきっかけに、糸を完全に赤く再生させるため、他人の恋のサポートをすることになる。英語を非常に苦手としている。

焼野原 塵 (やけのはら じん)

吉丸が召喚した、恋のキューピッドを自称する元魔王。頭頂部だけ逆立った赤い髪で、牙のある大きな口に笑みを浮かべている。つねに顔の中央に影が差しているため、顔全体を把握することができない。3メートル近くある巨体で、目からビームを発射することができる。そのため、ふつうの人間は焼野原塵を一目見ただけで恐れおののいてしまう。やることなすこと常軌を逸したレベルで、恋愛成就の方法もあまりに暴力的で、花井ユリ子のことも一度は奴隷にして言いなりにしようとしていた。しかし、ユリ子の心のこもった手作りクッキーを食べてからは、ユリ子を奴隷化する考えは捨てた。塵が人間界に降り立ち、誓いの門に立てた誓いは「一生恋人ができないまま死ぬと運命づけられた、吉丸の運命を変える」というもの。だが、なぜ吉丸の運命を変えることになったかは語られていない。

花井 ユリ子 (はない ゆりこ)

恋実野中学校に通う1年生の女子。黒髪を長めのショートカットにしている。恋実野中学校のアイドル的な存在で、男子生徒のあこがれを一身に受けているが、花井ユリ子自身にはその自覚はまったくなく、純真な性格をしている。男子の友人もいなく誰かに告白されたこともないため、アプローチを受けると非常に恥ずかしがる。吉丸とはクラスメイトで、本来運命の赤い糸で結ばれた者同士であることから、焼野原塵は吉丸とユリ子を付き合わせようとしている。塵に対しても物怖(お)じすることなく振る舞い、塵からも一目を置かれている。非常に食いしん坊で食べ物に目がなく、食べているあいだはどんな異常事態に陥ったとしても、いっさい気にせずにやり過ごすことができる胆力を持っている。

誓いの門 (ちかいのもん)

人間界と魔界をつなぐ大きな門。ふだんはアーチ部分に、鎖をかけられた天使の首像があつらえられた姿をしているが、人間界ではボンネット帽をかぶった金髪の少女の姿で現れる。大昔、魔族と人間が契約関係にあった時代に作られたとされる。この門を通るにはその者が強く望み、かつ達成が困難な誓いを立てなければならず、そして誓いを果たすまでは魔界に帰ることができなくなる。焼野原塵が人間界に降りたことや、それによる脅威を吉丸に伝えるべく人間界に降り立ったが、吉丸がすでに塵を召喚していたことを知ると「あなたがた人間がこんなにも頭が悪い生き物だと思わなかった」と涙ながらに絶望していた。

ゴルゴン

焼野原塵の唯一のライバルを自称している魔族の男性。長い黒髪をワンレンヘアにしている。「究極魔人」の通り名を持つ魔界のNo.2であり、塵に次ぐ魔力と戦闘センスの持ち主と評価されているが、塵には歯牙にもかけられていない。魔界で唯一瞬間移動の能力を持っているが、直接肌に触れている物しか運ぶことができない欠点がある。強さだけを求め、塵を倒すことだけを目的に生きているが、人間界に来てからはお金を所持していないため、つねに飢えに苦しんでいる様子があり、腐りかけた弁当を食べて腹を下すこともある。ゴルゴンが人間界に降りるため、誓いの門に立てた誓いは「焼け野原塵を倒す」というもの。この誓いを立てた際、誓いの門からは「もっと条件をゆるくしてもいいよ?」と言われたが、頑として譲らなかった。

ロンシア

焼野原塵の部下の女戦士。長い金髪を2本の三つ編みにまとめている。塵が不在となった魔界で、魔王の座を狙う魔族たちから単身で玉座を守り続けていたが、塵がいつまでも帰って来ないことに業を煮やし、人間界へやって来た。魔界一の目を持ち、見た者の能力や歴史、未来や考えていることを察知できる。この能力を使って、よりLOVE力が高く、かつ達成困難な恋をしている人間を探し出し、その恋をサポートすれば吉丸の運命の赤い糸が早く再生されるはずだと提案した。ロンシアが人間界に降りるため、誓いの門に立てた誓いは「焼野原塵と一緒でなければ永遠に魔界に帰らない」というもの。この誓いを立てた際、誓いの門からは「人間界では非常に複雑な状況になっているのでやめたほうがいい」と言われたが、まったく聞く耳を持たなかった。

椿 潔武 (つばき いさむ)

恋実野中学校に通う2年生の男子。ウェーブがかったショートヘアで、眼鏡をかけている。風紀委員長を務めており、生徒会長に次ぐ権力を持っていると噂(うわさ)されている。しかし、学校という場において恋愛感情を持ち込む人間をクズだと考えているため、同年代の女性と話すと虫唾(むしず)が走ると断言している。刑事の父親と教師の親のもとで厳格に育てられたが、清く正しく生きろと語っていた父親が長年下着泥棒だったことが発覚し、世の中にあふれるいかがわしいものを憎むようになり、恋愛もしないと心に誓った。しかし、相沢に話しかけられて彼女に思いを寄せるようになるが、不良や変態との戦いに相沢を巻き込むべきではないと考え、恋愛感情のないフリを通そうとしていた。

梔子 今日子 (くちなし きょうこ)

恋実野中学校に通う2年生の女子。ウェーブがかった長い金髪の一部を側頭部で二つのお団子にして、後頭部に大きなリボンを付けている。動植物の世話から、学校の衛生面までを管理する環境委員長を務めており、華やかな外見と滅多に人前に現れないことから「妖精」とあだ名されている。自分に自信を持つことができず、コミュニケーションを取ることが苦手で大きな声で話すこともできない。教師の高橋と運命の赤い糸で結ばれているが、距離を縮める勇気が出せないため糸が赤くなっていない。

下根 猛 (しもね たける)

恋実野中学校に通う1年生の男子。鼻の穴が異常に大きく、黒髪が逆円錐形になるようにセットしている。吉丸の幼なじみで、学校一の変態と知られ「低王」とも呼ばれている。誰よりもエロを愛し不純と不潔の塊のような男だと思われているが、ロンシアが脳内を覗き見た際、涙を流すほどのピュアな存在だと語っている。女子生徒からは嫌われるどころか迫害されているが、モテない男子のカリスマとして一定の人気を集めている。水泳部の女子更衣室に侵入しようとした際に、窓にハマって動けなくなっていたところを沈丁花彩に救出され、一目惚れした。なぜか本気になると服を脱ぐという悪癖がある。

沈丁花 彩 (じんちょうげ あや)

恋実野中学校に通う女子。生徒会長を務めている。長い黒髪をポニーテールにまとめ、右側頭部に花の髪飾りを付けている。日本有数の財閥として知られる沈丁花家の長女。文武両道の精神であらゆる英才教育を受けており、成績は全国トップクラスで、ピアノや剣道などすべての習い事でプロ級の腕前を持つと噂されている。しかし親から恋愛禁止を言い渡され、友だちも可能な限り作ってはならないと厳命されているため、笑ったことがほとんどない。しかしその反動から、自分に正直に生きている下根猛にあこがれ、尊敬している。ただし恋愛感情というもの自体に疎く、猛に対する感情が恋愛感情かどうかの自覚がない。

桐生 (きりゅう)

恋実野中学校に通う1年生の男子。黒髪をベリーショートヘアにしている。サッカー部に所属しているエースで、校内ではイケメンとして知られている。花井ユリ子の彼氏を自称しており、吉丸をはじめとする、ユリ子を眺めているだけの男子生徒たちに暴力を振るうなどしていた。ユリ子が吉丸について詳しく知ろうとしていることに気づいた際には、下根猛たちをリンチして詳細を聞き出したうえに、吉丸にも同じように暴力を振るうよう強要した。

山田 (やまだ)

ファミリーレストラン「ジョンソンズ」でアルバイトをしている男性。黒髪を襟足の長いショートカットヘアにしている。吉丸と同じく恋実野中学校に通う女子中学生が山田に一目惚れしたため、吉丸と焼野原塵、花井ユリ子が代わりにラブレターを渡そうと画策する。

店長 (てんちょう)

ファミリーレストラン「ジョンソンズ」の店長を務めている男性。黒髪を七三分けにしており、眼鏡をかけている。焼野原塵が来店した際には怯(おび)える店員をよそに、店長自身が接客係を務め、メニューにある食事や接客に対する姿勢を塵から褒められる。

春日 (かすが)

恋実野中学校に通う男子。逆立てたような黒髪をベリーショートヘアにしている。柔道部に所属しており、好きな女の子を全国大会に連れて行くという夢を持っている。しかし柔道の試合で勝つためなら、どんな卑怯な手も厭(いと)わないと知られているため、次々と部員が逃げ出し、棄権寸前になったことで吉丸や焼野原塵に助っ人を依頼した。

相沢 (あいざわ)

恋実野中学校に通う2年生の女子。黒髪のショートヘアで、前髪の右側をヘアピンで留めている。下校途中に不良に絡まれていた際、椿潔武に助けられたのをきっかけに一目惚(ぼ)れし、潔武に繰り返し話しかけているが相手にされていない。

場所

ジョンソンズ

駅前にあるファミリーレストラン。山田にラブレターを渡すという目的のために吉丸、焼野原塵、花井ユリ子が来店した日、銀行強盗が店員や来店客を人質に取るために立て籠もった。塵が「ジョンソンズ」を崩壊させると同時に銀行強盗を撃退し、さらに3日間でジョンソンズを再建したあとは、塵の行きつけの場所となっている。

その他キーワード

LOVE力 (らぶりょく)

人間の魂が生来持っている、恋に恵まれる力。LOVE力が高いほど恋愛に恵まれるが、吉丸は生まれながらにこのLOVE力をまったく持っておらず、運命の赤い糸を復活させるためには他人の恋のサポートをして、サポートした相手からLOVE力を分けてもらうしかない。

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