論破系男子×昭和系女子
弁護士の母親を持つ仁令は、母親の影響で物事を論理的に考える「論破系男子」として育てられる。そのため、現人は不器用な理屈っぽい性格で、恋人はもちろん友人すらいない、灰色のキャンパスライフを送っていた。しかしある日、大学の学園祭で出会った和に一目惚れしてしまう。仁令はなんとか和にアプローチを試みるが、彼女は極度のネット恐怖症で、昔気質の頑固な祖父の影響を受けた、今どき珍しい価値観を持つ「昭和系女子」だった。和はスマートフォンを持っていないため連絡を取るにも一苦労しながら、仁令はあきらめずに彼女にアプローチを繰り返す。
心理学や社会学に基づいた初恋のディベート
本作は、仁令が和との関係を深めていくラブコメディでありながら、恋愛を客観的に分析し議論するという独自の特徴がある。仁令は母親の教育方針に従い、家族でディベートを行うことが日常となっており、その題材として「仁令現人の初恋」がしばしば取り上げられる。このディベートは単なる家族の話し合いではなく、真剣に恋愛観を考察し、最適な行動を模索する場となっており、議論は実際の心理学や社会学に基づいて論理的に展開される。このように、本作は感情という論理では割り切れないものに対して、あえて論理で対抗する姿勢で挑んでいる。また、それを象徴する言葉として「論理は問題の整理はできるが、解決はしない」というフレーズがある。
日和らない和の過去の姿
本作のコミックスの巻末には、おまけ漫画『和さんは日和らない』が収録されている。この作品は本編の過去を描いており、和の高校時代をメインに描かれ、主人公は和の親友である伊成まりあの視点から物語が進行する。高校時代の和は、現在の穏やかな雰囲気とは異なり、鋭い印象を与えていた。物語はまりあが和と親しくなることで、和がどのように変わっていくのかが見どころとなっている。
登場人物・キャラクター
仁令 現人 (にれ げんと)
公立那古屋大学人文学部に在籍する2年生の男性。短く整えた黒髪に眼鏡をかけ、神経質そうな印象を与えている。弁護士である母親の教育方針の影響で、幼少期から論理的思考を身につけてきた。そのため、子供の頃にはいじめの標的にもなったが、母親がその状況を理路整然と切り捨てる姿を見て、「論理」に対するあこがれを抱くようになった。しかし、その論理的思考は周囲から「小難しくて面倒くさい奴」と見なされるようになり、いじめはなくなったものの、同時に友人もいなくなり、大学に入るまで孤立した日々を過ごしていた。そんなある日、学園祭の実行委員会の一員として活動している際に、ヘルプ要員としてやってきた和に一目惚れする。論理では説明できない恋心に振り回されながらも、和の気を引こうと四苦八苦している。仁令自身も異性から魅力的に見えないことを自覚しており、恋愛を論理的に解釈しようとするあまり、時には的外れな方向に進んでしまうこともあるが、根が生真面目な性格のため、根気強く和との関係を深めようと努力している。ちなみに、恋人どころか友達すらいなかった仁令と、極度のネット恐怖症である和の関係の進展は非常に遅い。趣味は読書で、最近読んだ本は「思考の整理学」。好きな食べ物はカレーライスで、嫌いな食べ物はイカとナマコ。
昭里 和 (あきさと なごむ)
サンドイッチ屋でアルバイトをしている女性。薄い色素の髪と白い肌を持つ。美しい容姿で、同性をも魅了するほどの存在。年齢は仁令より一つ年下で、大学には進学しなかった。スマートフォンやSNSに対して強い恐怖心を抱いており、極度のネット恐怖症を患っている。そのため、連絡手段は家の黒電話のみで、友人や異性から連絡先を尋ねられるたびに、密かに傷ついている。一軒家で昔気質の気難しい祖父と暮らしており、その影響で一昔前の価値観を持つ「昭和系女子」。スマートフォンを持っていないことやその価値観から、ほとんど友人がいないが、面倒見のいい同級生のまりあだけは友人関係を続けている。まりあの依頼で大学の学園祭準備を手伝った際、仁令に一目惚れされる。まりあの取り持ちで交流を持つようになり、不器用ながらも真摯な仁令に次第に心惹かれていく。高校時代から人を遠ざけるようになり、つねにマスクを着用し、コミュニケーションを拒絶していた。しかし、まりあはそんな和の冷たい対応にもめげずに交流を続け、今ではお互いを親友と認め合っている。和自身も「面倒くさい女」であることを自覚しているが、それでも人とのつながりを捨てきれないジレンマを抱えている。
伊成 まりあ (いなり まりあ)
和の親友である女性。黒髪ロングヘアで、カジュアルなファッションを好んでいる。明るくて面倒見のいい性格で、和とは高校時代からの親しい友人関係を築いている。ノリが軽そうに見えるが、実は頭の回転が速く、人間の本質を見抜く鋭い観察力を兼ね備えている。高校時代、誰とも友人になろうとしなかった和の本質を見抜き、まりあ自身の明るさと観察眼を活かして友人になった。また、仁令が和に一目惚れしたことにもすぐに気づき、アドバイスを送った。ふだんの明るさとは裏腹に幼少期には貧困に苦しみ、食べることさえ困難で、父親のDVによって母親は衰弱していた。高校2年生の時、弁護士の助けを借りて両親が離婚したことで家庭環境は改善されるものの、進学の道はあきらめていた。だが、NPO団体の支援を受けて大学に進学した。弁護士にお世話になった経験からあこがれを抱き、公立那古屋大学法学部に進学して自らも弁護士を目指している。周囲からの支えを実感し、その恩返しとして自らの夢を叶えようと努力している。
書誌情報
恋は論破できない 4巻 スクウェア・エニックス〈ヤングガンガンコミックス〉
第1巻
(2021-07-26発行、 978-4757573888)
第2巻
(2021-07-26発行、 978-4757573895)
第3巻
(2022-01-25発行、 978-4757576964)
第4巻
(2022-09-24発行、 978-4757581593)