恐怖新聞Ⅱ

恐怖新聞Ⅱ

つのだじろうの『恐怖新聞』の続編。恐怖新聞を受け取った本堂幽子と謎の少年・田垣史人が超常現象や悪霊に立ち向かう姿を描いたホラーサスペンス。秋田書店「サスペリア」で1990年から1993年にかけて掲載された作品。

正式名称
恐怖新聞Ⅱ
ふりがな
きょうふしんぶんつー
作者
ジャンル
オカルト
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

あなたの首をください!!

京府高校に通う本堂幽子は、ある日の真夜中に突然自室に配達された「恐怖新聞」を受け取って以来、謎の悪霊たちに取り憑かれて不幸と恐怖のどん底に突き落とされる。恐怖新聞が届けられるようになった幽子は、恐怖新聞に書かれたとおりの事件が次々と起こり、彼女の周囲で不幸の連鎖が繰り返される。幽子は恐怖から逃れようとする中、首狩りの悪霊に追われるようになり、母親の信江を身代わりとして失うが、その後も恐怖新聞の告げる運命が彼女を不幸に陥れる。信江の死から1か月後、父親の本堂周平と二人暮らしをしていた幽子のもとに、周平が彼女を殺すという恐ろしい記事が書かれた恐怖新聞が届く。その夜に記事どおり、戦後の餓鬼から生まれた悪霊に取り憑かれた周平が幽子を殺そうとし、必死に逃れた夕子だったが、彼女を守ろうとした周平は自ら腹を刺して命を落としてしまう。ついに両親を悪霊に殺され、天涯孤独の身となってしまった幽子は、両親が残してくれていた貯金を頼りに一人で暮らすこととなる。孤独や恐怖を乗り越えてなんとか日々を生きようとする幽子のもとに、周平の弟、つまり彼女の叔父夫婦が幽子の実家を狙っているとの記事が書かれた恐怖新聞が届く。家から追い出される危機感を抱いた幽子は、叔父夫婦を追い出そうとするものの、なぜか金縛りに遭って逆らえなくなり、叔父夫婦はそのまま家に住みついてしまう。その日の真夜中、家が火事になると書かれた恐怖新聞が届き、彼女は必死に叔父たちを説得して火事を防ごうとする。だが、話を信じようとしない叔父たちは聞く耳を持たず、叔母がキッチンで朝食を作った途端に出火し、叔父夫婦は焼死して家は全焼してしまう。親も親戚も行き場もなくした幽子は、途方に暮れながら教師・西野の自宅へ身を寄せるが、悪霊が見えない西野は恐怖新聞の話を信じてくれなかった。そんな中、恐怖新聞に怯える幽子のクラスに田垣史人が転校してくる。両親を亡くしたと話していた史人に親近感を覚えた幽子は、彼が恐怖新聞のことを知っているのではないかと感じていた。

幽子の殺人

本堂幽子のクラスに転校してきた田垣史人は、父親と共に事故で死亡するはずだったが、鬼形礼の魂が宿ったことで生き返っていた。やがて史人は前世の礼の自覚や記憶を取り戻していき、彼と幽子は協力し合って、恐怖新聞の魔の手に立ち向かうが、今宵も誰かのもとに不幸の報せが掲載された恐怖新聞が、絶望や恐怖心と共に届けられるのであった。悪霊・ポルターガイストに取り憑かれて罠にはまってしまった幽子は、恐怖新聞の力で幽界へ引き込まれるが、彼女の危機を察知して幽界へ潜り込んできた史人に助けられる。しかし、幽界で取り憑いてきた妖怪「一つ目トカゲ」と一体化し、そのトカゲは幽子の脚から離れなくなってしまう。やがて一つ目トカゲは幽子の体内をあちこち動き回るようになり、次の日には幽子が殺人を犯すと書かれた恐怖新聞が届けられる。悪霊たちに抵抗する幽子だったが、一つ目トカゲにあやつられる形で体の自由が利かなくなることも多くなっていた。必死に抵抗を試みるも、ついにクラスメートを事故に巻き込んで死に追いやってしまい、このまま殺人を犯すことを恐れた幽子は史人に相談し、オカルト雑誌編集者を介して南郷史絵に会うことになる。史絵は幽子に取り憑いた妖怪の正体を見抜いて除霊を成功させるものの、肝心の恐怖新聞を霊視することはできず、彼女が恐怖新聞に取り憑かれたままの状態は変わらなかった。そんな中、これまで助けてくれていた史人まで殺しかけ、幽子は荷物をまとめて町から逃げ出し、学校にも通わなくなってしまう。史人は幽子がまた恐怖新聞の呪いに巻き込まれたのではないかと心配し、日光の滝に逃げ込んだ彼女のあとを追う。一方、日光の滝がある山奥までたどり着いた幽子は、このまま滝に身を投げて自殺しようと考えるものの踏みとどまる。そこで優しい老婆と出会って家に招かれるが、その老婆は実は妖怪で、幽子を殺して滝と一体化したポルターガイストへの生贄にささげようとしていた。間一髪のところで駆けつけた史人のおかげで命を取り留めたみやびだったが、史人は幽子を生き残らせるためにポルターガイストと心中するのだった。

猫の少女

暴走がエスカレートしていく恐怖新聞は、あらゆる手段を使って本堂幽子田垣史人を殺させようとするが、いずれも失敗に終わる。鬼形礼としての記憶を完全に取り戻し、幽子を救った史人のおかげで彼女は恐怖新聞から逃れ、平穏な生活を取り戻したかのように思えたが、いつの間にか礼の力から逃れていたポルターガイストは、再び幽子に付きまとうようになる。恐怖新聞に書かれた内容は幽子の身の回りにとどまらず、あちこちに広がる怪現象の噂に関する情報も掲載されていた。そこで幽子は、オカルトに興味のある友人の望月御前零士と共に心霊研究会を結成し、恐怖新聞に書かれた超常現象を調査しては恐怖体験に驚愕する日々を送っていた。数々の心霊現象を体験した幽子は自然と霊感も強まっていき、似たような心霊現象に悩む学友や教師から頼られることが多くなる。そんなある雨の日、幽子は学校帰りにずぶ濡れになった子猫を拾う。その猫に「レイン」と名づけて家で飼うことにした幽子だったが、レインは次の日には彼女のもとから姿を消す。その日の真夜中、また恐怖新聞が届いたと思った幽子は目が覚めるが、彼女に話しかけるのは見知らぬ少女だった。言われたとおり次の日に着物を着た少女を連れ帰った幽子は、猫目雨子を名乗るその少女としばらく過ごすことになるが、雨子はなぜか幽子が恐怖新聞に怯えていることを知っていた。雨子の提案でマタタビを使ってたくさんの猫を家に引き込み、魔界で多くの種族と対立する猫族の力によって恐怖新聞の邪悪な霊力は追い払われ、その日から幽子のもとには恐怖新聞が届かなくなる。つかの間の平穏を取り戻した幽子だったが、零士に取り憑いていた悪霊の策略により、雨子が殺されてしまう。行方不明だったレインの死体を発見した幽子は、レインが雨子に化けて恩返しに来たのではと考えながらも、悲しみに暮れるのだった。そして、恐怖新聞を長らく読まされて寿命がじわじわと縮んでいた幽子には、死の時が刻々とせまっていた。

生まれ変わり

床下の死体事件の怪に巻き込まれた本堂幽子は、恐怖新聞に取り憑かれてバラバラに体を引きちぎられてしまう。幽子の死体を発見した用務員は警察に通報するが、警察が調べても幽子の死体は一向に見つからず、彼女は生死すら不明のまま姿を消していた。そして幽子がいなくなったあとも、恐怖新聞はさまざまな人に怪奇現象をもたらし、多くの人を恐怖のどん底に陥れようとしていた。そして悪霊が起こす怪奇現象の恐怖は終わらないまま、今宵も誰かのもとに新たな恐怖新聞が届けられるのだった。一方、霊魂が地獄へ落ちたと思われた幽子は、その途中で鬼形礼の霊魂に助けられ、幽子は自分の前世と出会う。さらには守護霊のパワーにより、霊的に結ばれることになった礼の魂と合体する形で、別の存在へと生まれ変わって現世に戻ることとなる。合体霊魂となった幽子たちは九重みやびとして生まれ変わり、半人半霊のような存在となった彼女は、非常に高い霊力をもって恐怖新聞の怪異に立ち向かっていく。みやびは人々を不幸に陥れる恐怖新聞を殲滅(せんめつ)しようと試みるが、強力な霊力を持つ恐怖新聞は次々と人を恐怖に陥れ、時には人を死に追いやることもあった。そんなある日、みやびは謎の女性の悪霊に付きまとわれるようになった少女・鳥居ほたるに悪霊の気配を感じ取る。女性の悪霊・雪蝶は戦時中に戦死した恋人のあとを追って、水中に身投げをして死亡し、深い未練を抱えていた。水の中で死に切れなかった雪蝶はほたるを巻き添えにしてあの世に行こうとするが、それを間一髪で止めたみやびによってほたるは救われる。除霊に成功したみやびは、ほたるに恐怖新聞のことを告げながら、再び恐怖新聞に苦しめられる人々を救うために旅立つのだった。そんな中、恐怖新聞の噂を聞いていたふつうの女子高校生・美紀の周りで奇妙な事件が起こり始め、彼女のもとへは恐怖新聞が届くようになる。

真・恐怖新聞

新聞に電話とあらゆる手段で届けられる恐怖新聞により、不幸と恐怖に突き落とされていた本堂幽子は、とうとうその寿命が尽きて死亡する。しかし幽子は、共に恐怖新聞に立ち向かいながら命を落とした鬼形礼と合体し、複数の霊魂を宿した強力な霊能者の九重みやびとして恐怖新聞の脅威に立ち向かうようになる。みやびは至る所で恐怖新聞の気配を感じては、事前に恐怖新聞にとり憑かれそうな人を助け、時には青年や幼女に姿を変えながら人々を不幸から守っていた。さらには悪霊に取り憑かれた人がいれば即座に助けたり、地縛霊を見つけたら正しい場所に導いたりと、各地で大活躍をしていた。地道に恐怖新聞に対抗していくみやびは、人生を脅かされる人々を助けて悪霊を殲滅(せんめつ)することを目指しているが、恐怖新聞は彼女に探知されないように対策をしながら事件を起こすようになる。それでもみやびは悪霊の気配を探知して霊障の被害者を救っていたが、恐怖新聞の方もいよいよ本腰を入れて、邪魔者のみやびの存在を霊魂ごと消そうともくろみ、彼女を魔界へと引きずり込む。地球の人間を次々と悪の道に引きずり込んで征服しようと企む魔界の悪霊たちは、恐怖新聞を使って人間の魂を魔界に引き込もうとするものの、毎回邪魔をしてくるみやびを始末しようと画策していた。そんな中、みやびはついに強力な「悪の霊団」と化した因縁のポルターガイストに遭遇し、自らの存在や現世の人々の平和を巡って直接対決をすることになる。だが、悪の霊団の前にはみやびの強力な霊能力も通じず、次々と罠にはまってピンチに陥る。そんなみやびは自らの心の中に住んでいる分霊である青年と幼女に救われ、三人で協力しながら敵に立ち向かうことになるものの、二人とはぐれたみやびは地獄の業火にとらわれてしまう。だが、みやびたちを現世に遣わした張本人でもある上層霊界の神仏たちが、魔界に聖なる霊水の雨を降らせて彼女を救う。仲間と合流したみやびは、恐怖新聞の配達人をさせられる「霊鬼」と化した人々を地獄のような場所から解放し、強力な霊能力を発揮しながら最後の戦いに挑む。しかし、現世では幽霊向けの恐怖新聞「驚喜新聞」が配られ、現世をさまよう地縛霊たちを悪意によって地獄に引きずり込もうとしていた。霊たちを説得して驚喜新聞の企みを打ち砕いたみやびは、傷ついた霊体を回復させつつ再び魔界に戦いを挑む。

関連作品

漫画

本作『恐怖新聞Ⅱ』は、つのだじろうの『恐怖新聞』の続編となっている。『恐怖新聞』は本作の10年前の物語を描いたホラー作品で、恐怖新聞にまつわる超常現象や怪事件、鬼形礼が悪霊に立ち向かっていく姿を描いている。秋田書店「少年チャンピオン・コミックス」から刊行されており、OVA化や実写映画化を中心に多数のメディア化が展開されている。

登場人物・キャラクター

本堂 幽子 (ほんどう ゆうこ)

京府高校に通う女子。年齢は16歳。城西区京府町にある一軒家で、両親と三人で平和に暮らすふつうの少女だったが、ある日の夜に突然届いた「恐怖新聞」に取り憑かれてしまい、次々と不幸な出来事に巻き込まれ、恐怖のどん底に突き落とされる。恐怖新聞に掲載されていた首狩りの悪霊に狙われるが、代わりに交通事故で母親の信江を亡くしてしまい、その1か月後には父親の本堂周平が別の悪霊に取り憑かれて襲われるようになる。さらには悪霊に取り憑かれて本堂幽子を殺そうとしていることを自覚した周平が自ら腹を刺して死亡し、両親を亡くして天涯孤独の身となってしまう。両親を亡くしてからは一人暮らしをしているが、恐怖新聞からの恐怖と惨劇からは逃れられず、さらなる不幸に見舞われるようになる。悪だくみをしていた叔父夫婦が火事で亡くなるとともに実家を焼失し、担任教師の女性・西野の家でしばらく暮らすことになった。恐怖新聞の記事どおりに田垣史人が転校してきたあと、彼の正体が鬼形礼の生まれ変わりだと知り、彼と共に恐怖新聞の悪霊に立ち向かう。これをきっかけに西野の家を出て実家の焼け跡に戻り、実家で再び一人暮らしをするようになる。ポルターガイストの罠にはまって幽界に引きずり込まれ、妖怪「一つ目トカゲ」に取り憑かれてしまい、さらには恐怖新聞に殺人を犯すという記事が載ってからは、自分が殺人を犯すのではないかと怯えるようになる。霊能力者に依頼して一つ目トカゲは除霊されたものの恐怖新聞までは除霊されず、恐怖のあまり町から逃げ出して日光の滝にたどり着く。そこで待ち構えていた老婆の妖怪に殺されかけるが、礼としての自覚を取り戻した史人に救われる。互いに自覚はしていないが、史人や礼とは相思相愛の仲。史人がポルターガイストと心中したあとは町に戻り、恐怖新聞も来なくなって平穏な日常を取り戻す。史人の死後に礼の霊魂が自分のすぐ近くにいると知らないまま、再び恐怖新聞に巻き込まれるようになり、望月たちと心霊研究サークルを結成するものの、彼女たちを巻き込みながら再び命を狙われるようになる。のちに恐怖新聞の影響で縮んだ寿命が尽きて死亡するが、幽界に渡った霊魂が礼の魂と一体化し、九重みやびという半人半霊の少女として生まれ変わる。

田垣 史人 (たがき ふみと)

京府高校に通う男子。「恐怖新聞」で予告された次の日に本堂幽子のクラスに転校してきた。なぜか鬼形礼と瓜二つの容姿で、彼と比べて少し顔つきが瘦せている。名字の「田垣」は逆から読むと、鬼形(きがた)になる。以前は東城高校に通っており、母親を幼い頃に亡くし、父親は事故で亡くなっている。実は事故で父親共々重傷を負って死亡したが、そこに礼の魂が宿り、生き返っていた。このため、死んだ時の記憶があいまいなものの、礼の記憶を無意識に引き継いでいる。また、霊魂や恐怖新聞についても知っている様子があるが、前世からのトラウマを抱えている。幽子に恐怖新聞について聞かれるうちに、礼としての記憶を取り戻していく。前世の影響で霊感が強く、霊魂など霊的な存在が見える。礼としての自覚を完全に取り戻したあとは、日光の山奥まで逃げていた幽子を守るためにポルターガイストと心中する形で死亡する。そして肉体から離れた礼の魂は、現世で浮遊霊のようにさまようようになるが、ひそかに幽子のことを守っていた。

鬼形 礼 (きがた れい)

私立石堂中学校に通っていた男子。かつてオカルト現象に遭って怪死を遂げたことで、本堂幽子の友人のあいだでも噂になっていた。以前はオカルト現象をまったく信じていなかったが、ある日突然、恐怖新聞が届いたことでさまざまな超常現象・怪奇現象に見舞われるようになる。その中で世の中や過去に起こった不可解な事件や霊的な存在を知り、同じような被害に遭っていた友達からも頼りにされていた。やがて恐怖新聞の除霊を試みるものの、強力な霊団と化したポルターガイストの強大な霊力の前に失敗に終わる。守護霊などと呼ばれている謎の霊に守られており、実際に何度か救われている。悪霊の影響で体が腐っていき、バス事故に遭って死亡するものの、この際に多くの人の命を守ったことで、霊魂が守護霊に守られて幽界に導かれる。その後は未練から現世に戻って恐怖新聞の配達人となっていたが、幽界で10年ほど修行したのち、事故で死亡した田垣史人の体に憑依する形で現世に復活した。その後は史人として幽子に協力し、恐怖新聞にまつわる悪霊に立ち向かっている。史人として行動するうちに幽子を守って死亡するものの、ある未練によって現世で浮遊霊として復活。謎の浮遊霊に指摘されるまで自覚はなかったが、幽子と接するうちに恋心を抱くようになる。浮遊霊の姿は幽子には見えなかったものの、陰から見守って彼女の命を守るために奔走し続ける。死亡した幽子の霊魂を導き、守護霊たちの力で彼女との合体霊魂となり、九重みやびとして生まれ変わった。

本堂 周平 (ほんどう しゅうへい)

本堂幽子の父親で会社員をしている。娘の幽子、妻の信江との三人暮らし。恐怖新聞が届いて以来、様子がおかしい幽子のことを心配しているが、原因が恐怖新聞であることは知らない。仕事が忙しく、帰りは夜11時を過ぎることが多いため、幽子からは距離を置かれがちだった。しかし、恐怖新聞が原因で信江が亡くなってからは、幽子のことを何かと気遣っている。戦後、娘の肉を食らうことで生き延びた男の悪霊「餓鬼」に取り憑かれ、その悪霊の記事が恐怖新聞に掲載されてから、幽子のことを殺そうと襲うようになる。これが原因でしばらくは会社を休み、再び幽子を襲った際に自我を取り戻すものの、幽子を守るために自ら腹を刺して死亡した。幽子に何かあったときは、弟(幽子の叔父)に彼女のことを頼んでいた。また、幽子の学費のための貯金として彼女の名義で預金口座を作っていた。

ポルターガイスト

「恐怖新聞」の配達人。生前は新聞配達をしていた男性の霊魂で、ポルターガイスト現象を起こすために人から「ポルターガイスト」と呼ばれているが、正式な名称は不明。特定の人物を狙い、狙った相手に対して毎晩のように恐怖新聞を読ませるためには手段を選ばない。実は一つの魂から生じた霊魂ではなく、長い年月をかけて悪霊化したことで大きな霊団と結託し、やがてたちの悪い霊魂たちと合体して強力な悪霊の集合体と化している。かつては鬼形礼に取り憑いていたが、次に本堂幽子をターゲットに定め、彼女にあらゆる手段で恐怖新聞を読ませたり、不幸や恐怖に陥れたりしている。また、単に新聞を届けるだけでなく彼女を騙したり唆したりすることもあり、騙して幽界へ引きずり込んだ出来事は彼女が妖怪に取り憑かれる原因ともなっている。ある事件をきっかけに、日光の滝へ逃げ込んだ幽子を殺そうともくろんでいたが、間一髪で駆けつけた田垣史人に邪魔されて失敗に終わり、彼と心中する形で彼女から除霊される。しかし、のちに史人から逃れて復活し、恐怖新聞を電話でも送りつけるようになるなど、再び彼女に取り憑くようになった。

西野 (にしの)

京府高校の教師を務める女性。本堂幽子の担任を兼任している。黒髪のショートヘアに眼鏡をかけている。優しい性格で、両親を亡くした幽子のことを心配して気にかけているが、恐怖新聞のことは知らない。叔父夫婦と実家をなくした幽子を心配して自宅に招き、しばらくは彼女と同居することになるが、恐怖新聞が家で取っているふつうの新聞にしか見えず、彼女の話は信じていない。焼け跡と化した実家で幽子が田垣史人と暮らすと言い出したため、半ば強引に幽子を自宅に連れ戻そうとしていた。しかし、幽子を心配して彼女の実家に泊まった際に、恐怖新聞の悪霊の影響で家の外に吹き飛ばされ、車にはねられて死亡する。

南郷 史絵 (なんごう ふみえ)

日本有数の霊能力者として知られる女性。黒髪のロングヘアで和服をまとっている。オカルト雑誌の編集者・立木を通して本堂幽子、田垣史人の依頼を受ける。幽子に取り憑いた一つ目トカゲの正体が「醜トカゲ」という妖怪だと見抜き、霊能力で除霊した。しかし、彼女が最も危険視している恐怖新聞までは霊視できず、除霊はできなかった。

御前 零士 (ごぜん れいじ)

京府高校に通う男子。3年B組に在籍しており、本堂幽子の先輩に当たる。ホラーやオカルトが大好きで、幽子たちと共に心霊研究会「幽月心霊サークル」を結成した。望月と同様に、幽子の恐怖新聞の話を信じてくれる数少ない人物。サークルの研究として恐怖新聞を調べることになるが、幽子の家に泊まった夜に恐怖新聞を目の当たりにし、怪奇現象に巻き込まれるようになる。さらに、ポルターガイストの一部であるチンピラの悪霊に脅されて幽子を騙して陥れる羽目となる。

望月 (もちづき)

京府高校に通う女子で、本堂幽子のクラスメート。黒髪のボブヘアをヘアバンドでまとめ、眼鏡をかけている。オカルトに興味があり、恐怖新聞を見たことはないが、時折幽子の相談に乗っている。幽子の身近な友人の中では、当初から恐怖新聞の話を信じている数少ない人物。恐怖新聞の影響で通り魔に襲われるものの、無事に退院して幽子、御前零士と共に心霊研究会「幽月心霊サークル」を結成した。サークルの研究として恐怖新聞を調べることになるが、幽子の家に泊まった夜に恐怖新聞を目の当たりにし、怪奇現象に巻き込まれるようになる。その後も幽子と共に、恐怖新聞に書かれた怪事件を探っていたが、ある怪奇現象の噂を調べたのをきっかけに白髪になってやつれてしまい、幽子に逆恨みをして彼女とはかかわらなくなった。

猫目 雨子 (ねこめ あめこ)

本堂幽子がずぶ濡れの子猫・レインを拾ったあとに出会った謎の少女。着物を着用しており、おかっぱ頭で、小柄な体型に猫目が特徴。恐怖新聞の怪奇現象に悩む幽子に対し、魔界でも「猫族」として知られる猫をたくさん飼うことで魔除けにするように提案した。また、御前零士が悪霊に取り憑かれていることも見抜いており、彼を警戒していた。提案どおりに猫を飼った幽子は、恐怖新聞が届かなくなってつかの間の平穏を取り戻したが、零士に取り憑いていた悪霊の策略によって殺されてしまう。猫目雨子の死後にレインの死体を見つけたことから、幽子は雨子の正体がレインだったのではないかと推測していた。

九重 みやび (ここのえ みやび)

本堂幽子と鬼形礼の魂が一つとなった合体霊魂。霊界から遣わされる形で半人半霊のような物質化霊として生まれ変わり、交通事故で亡くなったある女子高校生の肉体に憑依する形で現世に復活した。ふだんは幽子とよく似た赤茶色のロングヘアで、数珠を持ち歩くミステリアスな女子高校生の姿をしているが、時には長髪の美青年の姿や、怪しい雰囲気の幼女の姿に変身して行動することがある。これらの姿は悪霊の被害者を説得したり、被害者が悪霊に憑かれていることを知らせたりするために使い分けている。非常に高い霊力を誇り、誰彼構わず届くようになった恐怖新聞のさまざまな怪事件を解決しつつ、最終的には魔界に引きずり込まれ、ポルターガイストを中心とした悪の霊団に戦いを挑むこととなる。魔界では合体していた霊魂が分かれ、心の中に分霊として住んでいた青年と幼女も現れ、三人で協力しながら悪の霊団や魔界を統べる魔王・牛鬼に立ち向かう。霊団をあやつってさまざまな罠を仕掛けてくる牛鬼と死闘を繰り広げ、恐怖新聞の本拠地を殲滅(せんめつ)してからは霊力を大量に使い果たしたあと、再び分霊たちと共に現世に戻った。

鳥居 ほたる (とりい ほたる)

両親と三人で暮らしている女子高校生。外側にはねたショートヘアで、オカルトにはあまり興味がない。ある日突然、恐怖新聞が届いたのをきっかけに、戦時中に恋人の後追い自殺で死亡した女性・雪蝶の悪霊に取り憑かれるようになる。それ以来、夜になると布団ごと水の中に沈んだような感覚に襲われて苦しむようになり、高熱にうなされて死の危機がせまっていた。悪霊の気配を察知して駆けつけた九重みやびに命を救われるものの霊障が続き、なんとなく布団が重いような不快感に苦しめられている。

その他キーワード

恐怖新聞 (きょうふしんぶん)

真夜中に人の部屋に届けられる謎の新聞。明日起こる出来事や届けられた人の周囲で起こる奇怪な事件の詳細などが記事として掲載されており、その内容が外れることはない。ポルターガイストと呼ばれている元新聞配達員の悪霊によって届けられる。1回読むたびに100日寿命が縮むという噂があるが、これは噂にとどまらず、実際に読んだ人間は少しずつ寿命が縮んで、最終的には死に追いやられてしまう。また、戸締まりをしても強引に配達されるため、購読を拒むことはできない。強力な悪の霊団による呪いの一種でもあるが、恐怖新聞と無関係なほかの悪霊・妖怪の介入は極力排除しようとする。ポルターガイストを含め、恐怖新聞にまつわる悪霊は配達時にのみ現れるため、ふつうの人にはふつうの新聞にしか見えず、霊視能力を鍛え上げた霊能者にすら見えない。かつては鬼形礼にしつこく取り憑いていたが、本堂幽子の家に届けられるようになり、彼女を次々と不幸と恐怖に陥れ、彼女の両親をはじめとする教師や友人の命を奪っていく。当初は新聞という形で物理的に幽子の家に届けられたが、田垣史人の死後は新聞だけでなく電話で恐怖の予告をすることもある。幽子の生まれ変わりである九重みやびが悪の霊団の本拠地を殲滅(せんめつ)後、人間ではなく幽霊に向けた恐怖新聞として「驚喜新聞」が配られるようになった。

合体霊魂 (がったいれいこん)

似たような二つ以上の霊魂が、幽界で霊的に結婚して一つの存在となった不思議な霊体。恐怖新聞を読まされ続けた本堂幽子は、鬼形礼によって幽界に導かれ、前世にあたる守護霊と出会う。その守護霊たちの力を借りて、礼と霊的に結ばれた幽子は合体霊魂として現世に戻り、死んだ女子高校生に憑依する形で九重みやびとして生まれ変わった。

前作

恐怖新聞 (きょうふしんぶん)

つのだじろうが得意とする心霊オカルト漫画で同氏の代表作の一つ。少年鬼形礼のもとに届く、「一日読むごとに寿命が百日ずつちぢまる」と言われる恐怖新聞を軸に、超常現象や不可思議な事件を描いた作品。2020年... 関連ページ:恐怖新聞

関連

恐怖新聞 平成版 (きょうふしんぶん へいせいばん)

つのだじろうの代表作『恐怖新聞』の流れをくむ作品。ネットを介して広がる恐怖新聞の購読者に降りかかる、恐ろしい超常現象が描かれる。「読めば100日寿命が縮む」「逃げても無理やり読まされる」など、シリーズ... 関連ページ:恐怖新聞 平成版

SHARE
EC
Amazon
logo