環境破壊された地球でのシェルター生活
舞台は、人類が「未来への課題」を先送りし続けた結果、環境が完全に破壊されてしまった未来の地球。防護服なしでは生きていけないほど地表が汚染され、かつて美しい緑を彩っていた植物は絶滅していた。人々はシェルターでの生活を余儀なくされ、閉鎖された環境が文明の衰退を招き、天文学や光学といった科学技術、さらには大部分の漢字さえも忘れ去られていた。特に日本のシェルターは異質で、空は曜日ごとに七色に変化し、街にはアニメや萌えキャラがあふれている。
人の姿をした惑星たちの訪問
S沢のもとに「地球」がやってきて以来、太陽系の惑星たちが次々と人の姿で彼の前に現れる。彼女たちは皆女性の姿をしており、太陽に近い惑星ほど薄着で、大気の多い惑星ほど大きなファーをまとっているなど、それぞれの星の特徴に応じた服を身につけている。また、各惑星はマスコットのように自分の衛星を連れている。地球が連れてきた月は人の姿ではまったく言葉を発することができないが、非常におしゃべりで、S沢たちに人類が失ってしまった経緯を語りかけている。
地球を救うための方法を探求する
S沢と及川は、地球を元気にする方法を探し続けており、惑星たちもその手段を模索していた。しかし、地球はほとんどの時間を昏睡状態で過ごしており、話を聞くことすらできない。月によれば、その原因は地表の汚染ではないという。唯一の手がかりは、太陽が訪れた際に一時的に回復した地球が語った「物事を知ろうとする時は、時には疑え。そうすれば新たな発見があるかもしれない」という謎めいた言葉だけだった。S沢たちは月から多くの知識を学び、さらには並行世界へ通じるブラックホールとも交流を持ちながら、シェルターで暮らす人類に隠されていた衝撃の真実を目の当たりにする。
登場人物・キャラクター
S沢 3国 (えすさわ みくに)
日本のシェルターの外で、宇宙に手紙を送る仕事に従事する男性。年齢は24歳。中年太りの体型に薄い髪、無精ひげといった風貌から、実年齢よりも年上に見られることが多い。ある日、瀕死の状態で倒れていた少女「地球」をふつうの人間だと思い保護したが、その後「金星」や「火星」といった惑星たちが次々と訪れ、地球と人類を救うための協力を求められるようになる。当初は「冥王星」に命を狙われる恐怖から逃げ出そうとしたり、宇宙の広大さに圧倒されて無気力になったりしたが、「月」から物理学などの知識を授けられ、次第に世界を救うことへの使命感に駆られるようになる。
及川 8月 (おいかわ はづき)
日本のシェルターの外で、地表のガラクタを収集する仕事に従事する女性。年齢は26歳。S沢の後輩で、金髪をショートボブにしている。かつては地表で働くことに夢を抱いていたが、厳しい現実に直面し、やる気を失い、S沢に対しても冷めた態度を示すようになる。しかし、「地球」を救うために集まった、人の姿をした惑星たちに感銘を受け、かつての美しい地球を取り戻すために協力することを決意する。もっとも、彼女の関心は自分の人生の再建にあり、地球そのものを救うことへの意識は薄いが、次第に人類に隠された真実を暴くために積極的に行動を始めるようになる。
書誌情報
惑わない星 9巻 講談社〈モーニング KC〉
第1巻
(2016-03-23発行、978-4063885699)
第2巻
(2017-03-23発行、978-4063887075)
第3巻
(2018-04-23発行、978-4065113233)
第4巻
(2019-05-23発行、978-4065154250)
第5巻
(2020-05-22発行、978-4065187302)
第6巻
(2021-03-23発行、978-4065225547)
第7巻
(2022-04-21発行、978-4065273852)
第8巻
(2023-05-23発行、978-4065315040)
第9巻
(2024-08-22発行、978-4065362136)







